「銀、園っち、大丈夫?」
「だいじょばない、かもしれない……」
「さっきから森ばっかりであきてきたよ〜……」
鬱蒼と茂る森、ところどころに毒々しい紫の木の実のなる薄暗い森の中に人影が3つ。3人ともかなり小柄で見たところ小学校高学年くらいに見える
「樹海から変な穴を通ったらこんなところに出てしまうなんて…」
一人は黒髪を結い上げたしっかりした印象の女の子
「樹海の結界からほんとに樹海に繋がってるってなんの冗談だよ〜」
続いて歩くのは活発な印象のあるショートヘアの女の子
「早く帰ってみんなと会いたいよ〜…サンチョ〜……」
最後尾にはロングヘアののんびりとした口調の女の子
三人ともに共通するのは何やら巫女服のような特徴的な服と武器に思えるものを持っていることだ
黒髪の子は淡い紫の服に弓を構えている
ショートへアの女の子は紅い服に重そうな二挺の斧を腰に下げている
ロングヘアの女の子は濃い紫の服にヘトヘトの体で手にした長槍を杖代わりに歩いている
ぐぅ〜………
不意に誰のとも知れない腹の虫が鳴き、三人が揃って赤面する
どうやら三人同時に鳴いたらしい
「お腹すいたな……」
「……お昼時にお役目が入って、それから1時間ほど歩きっぱなしだもの…」
「はぅう〜……お腹と背中がくっつきそうだよ〜……」
とロングヘアの女の子がふと隣の木に実っている美味しそうな紫の木の実を目に留める
「……じゅるり」
「ちょっ、園っち⁉︎それは流石に毒がありそうだから無理よ⁉︎」
「でもわっし〜……すごく美味しそうだよ〜……」
園っちと呼ばれたロングヘアの女の子はわっしーと呼ばれた黒髪の子の制止を半ば無視し、木の実を摘み取る
見れば見るほど食欲のそそられる美味しそうな色合いだ
「……一個くらいなら……」
「銀⁉︎銀まで何を……⁉︎ でも確かに、美味しそう……」
園っちが木の実を手にしたのを皮切りに銀とわっしーも食欲をそそられてしまったのか木の実に手を伸ばす
「美味しそう〜……いただきま〜す…♪」
園っちの呑気な声が森に響いていった
「……私たちから説明できるのは以上です」
「…………」
「成る程、成る程、ありがとう東郷美森。これでようやく仮説が核心に変わりそうだ」
凌馬との「取引」に応じた6人からポツポツと話された内容は絋汰には到底信じられない内容だった
まず、友奈たち6人ーと今は他にも別行動中の何人かがいるらしいがーは讃州中学という学校の「勇者部」というボランティアやら人助けを活動内容とする部活動であること。これはまだ理解できた
次からが問題だ。勇者部の活動内容はそれだけでなく、神樹様という存在に選ばれた勇者としてバーテックスという外敵と戦うことも含まれること
先程絋汰が6人と出会った極彩色の大地と黒い空の広がる場所は勇者たちがバーテックスを迎えうつ為に展開される「樹海の結界」であること
友奈たちが絋汰に驚いていたのは樹海の結界の中には一般人は入れないはずだからということ
とにわかには信じがたいことが(公にはできないのか筆談で)友奈たちから語られた
絋汰もあの異形ーバーテックスや勇者になった友奈たちを見ていなければ信じられなかったかもしれない
今ですらかなり混乱している。あまりにも自分がいた世界では現実離れした話に
「さて、では私の見解を発表しよう。単刀直入に言って、私たちと君たち勇者部の世界はおそらく別の世界ということになる」
「はぁっ⁉︎」
「えぇっ⁉︎」
絋汰と友奈が同時に声を上げる。無理もないだろう
「じ、じゃあ、絋汰たちは異世界人ってこと?」
「……信じられない、でも……」
困惑した様子ながらどこか得心のいったような反応を返す犬吠埼姉妹
彼女らは絋汰が鎧武に変身している姿も、そこから解除して絋汰に戻る姿も見ている。異世界というのがまるっきり荒唐無稽とは思えなくて当然だ。絋汰も同じ心境なのだから
「ふわ〜すごいね〜かずっちとごっくんファンタジーだね〜♪」
「いや、園っちそういう問題じゃないと思うわよ……」
「はは、柔軟な思考だな君は……ごっくんってまさか私のことか?」
「うん、せんごく、だからごっくんだよ〜♪」
「…………」
園子のマイペースさはどうやら凌馬にも難解なようで、あの凌馬がしばし沈黙する
「まぁともかくだ、君たちの勇者という存在やら神樹という存在も我々と世界が違うことの根拠の一つではあるが、もう一つ決定的な証拠がある」
行儀悪く凌馬が割り箸を振りちゅうもくを促す
「それは神樹様の結界、樹海と呼ばれるあの場所だ」
「神樹様の結界が……理由?」
「あぁ、そうだとも。実は私はこの世界には彼よりも早く来ていてね、恐らく結界の展開された瞬間、街のテクスチャが上書きされる瞬間に立ち会ってるのさ」
「上書き……? この街の上にあれが広がるのか⁉︎」
「うん、凌馬さんの認識で間違い無いと思う」
「えぇ、結界とは言いましたが樹海は一旦現実世界の上に神樹様の空間を重ねてるようなものなんです。故に、樹海がバーテックスに侵食されたら現実でも同じ場所に被害が出ます」
「そんな……‼︎」
「私も最初は驚いたがね、すぐに変身して精密分析して驚いたよ。私の分析計器には樹海が映らず、変化する前の街並と動きの止まった住人が映っていたからね。樹海の展開に際してこの世界が一時的に停止すると考えれば、私たちが停止も上書きもされずに樹海にいれた理由にも、私たちが異世界出身であることにも説明はつく」
淡白な説明を述べた凌馬は注がれた冷たい麦茶を流し込み喉を潤す
「まぁ、我々にわかりやすく例えるならばあの結界はまさしくヘルヘイムのようなものだろう。限定的な状況下だけで世界と繋がる異世界のテクスチャ。同じ植物的な存在と考えると、神樹様とやらもヘルヘイムと関連があるのかもしれないね…」
「ヘルヘイム……? 絋汰さんの世界にも神樹様がいるの⁉︎」
「……いや、あれはそんな大層なもんじゃ無いさ……」
友奈の好奇心が少しこもった質問に絋汰の顔が曇る
「……ふむ、では私たちの世界についても話しておこうか」
「えっと、つまりあんた達の世界は今ヘルヘイムっていう別の世界から侵略されてて……」
「あと1年もしないうちに、絋汰さんたちの世界も、ヘルヘイムになっちゃうってことですか……⁉︎」
重々しく絋汰が頷く
「なにそれ……めちゃくちゃヤバイじゃない…‼︎」
「私たちが戦うバーテックスと同じ立ち位置に異世界そのものがいる……想像するだけでゾッとしますね…」
「なんか……怖い……」
当然の反応だろう。絋汰も以前、アーマードライダー・斬月、呉島貴虎に真実をーヘルヘイムの奥底に広がっていたかつての文明の廃墟を見せられた時は樹以上に怖気付き、東郷以上に恐怖し、夏凛以上に絶望した
「あぁ……途方も無いだろ? まぁでもできることが全く無いって訳じゃない。俺は、少しでも可能性があるならそれを試していきたい。俺たちの世界そう簡単に滅ぼさせやしないさ」
「……彼の言う通りさ。余所者にくれてやるほど私たちの世界は安くないからね〜」
凌馬の物言いには何やら含みがあるような気もしたが、絋汰は気にせず笑顔で告げる
「そっか……絋汰さん、強いんだね!」
「カッコいいよ〜かずっち〜♪」
「へへっ……そうかな〜」
恥ずかしそうに絋汰が頬をかく
「さて、葛葉絋汰……キミ何か忘れてないかね?」
「は?何を……ってあぁ‼︎帰れねぇ‼︎」
絋汰とセイリュウインベスが通ってきたクラックは樹海の遥か上空に開いていた。かつ特殊な措置無しにはクラックはすぐに消えてしまう
現在絋汰は帰り道を絶賛失った状態にも等しい
「いや、それもそうだが……」
と凌馬が何かを言いかけたその時
キャアアアアアアア‼︎
店の外から絹を裂くような悲鳴が響く
「何⁉︎」
絋汰と勇者部がすかさず店から飛び出す
店の前の通りは騒然となっており、人々が何かから必死に逃げている
その何かは…
「あいつは……‼︎ あの時のインベス‼︎」
絋汰の視線の先で暴れていたのは絋汰と同時にこの世界に落ちてきたはずのセイリュウインベスであった
「私が言いたかったのはこちらのことさ。キミ、最初は樹海がヘルヘイムのようなものとでも考えてただろう? 残念だがインベスも我々と同じ世界の存在だ。だから樹海が消えればこちらに残留するのは当然だろう?」
悠々と店から出てきた凌馬が呑気に告げる
《シィイィイイイイ……》
その間もセイリュウインベスは通行人に牙を剥き始める
「ハァっ‼︎」
すかさず絋汰がセイリュウインベスを蹴り飛ばし、襲われかけていた人を助ける
「逃げろ!」
「は、はい‼︎」
「絋汰さん‼︎」
「友奈はみんなを頼む。こっちは、俺の責任だからな」
一般人の避難を友奈達勇者部に託した絋汰は改めてロックシードを構える
《オレンジ‼︎》
解錠とともに絋汰の頭上にクラックが開き、オレンジ型の鎧が現れる
《レモンエナジー‼︎》
「‼︎お前…‼︎」
見ると凌馬もロックシードを構え解錠し、頭上にレモン型の鎧を召喚している
「今は異世界、帰る方法やら何やらはいがみ合ってても見つからないだろう? 何よりこの世界の貴重な知り合いの信頼は得ておきたいからね」
「……勝手にしろ……変身‼︎」
渋々と言った様子で共闘を承認した絋汰は改めてロックシードを戦極ドライバーにセットする
《ロックオン‼︎》
「やれやれ、変身」
《ロックオン》
絋汰のドライバーのカッティングブレードと凌馬のドライバーのコンプレッサーがほぼ同時に動作し、ロックシードが開封、エネルギーが解放される
《ソイヤッ‼︎ オレンジアームズ‼︎》
《花道、オンステージ‼︎》
《ソーダ……レモンエナジーアームズ‼︎》
《ファイトパワー‼︎ファイトパワー‼︎ファイファイファイファイファファファファファファイッ‼︎》
それぞれの鎧が装着され絋汰はアーマードライダー鎧武に、凌馬はアーマードライダーデュークに姿を変える
「さぁ、こっからは俺のステージだ‼︎」
一方、冒頭の森では
「いただきま〜す………♪」
「待った待ったちょっと待った‼︎」
園っちが被りつく寸前の果実が何ものかによってはたき落とされる
「ふぇっ⁉︎なになに〜?」
「危なかった……そっちの二人もそれ捨てろ、食べたらロクなことならねぇぞ」
「あなたは……?」
園っちの邪魔をしたのはメガネをかけた青年だった。どこか理知的……というかはチャラついた印象を受ける
「俺?俺は城乃内秀保。まさかここにこんな小さな子が迷い込んでるなんて……」
「‼︎城乃内さんは出口を知っているんですか⁉︎」
「あ?あぁ知ってるよ。ちょっと待ってろ、今凰蓮さんに連絡して……」
《ガァアアアアアア‼︎‼︎》
突然の咆哮とともに現れたのは人と同じくらいの体格の異形
絋汰が戦っていたものと同じインベスの一種、シカのような形態のシカインベスである
「な、なんだあれ⁉︎」
「バーテックスじゃない……⁉︎ なんなのアレ……」
「うわぁ〜かわいい〜‼︎」
「「え?」」
「呑気なこと言ってないで下がってろ‼︎ここは俺が……」
と城乃内が懐からドングリのレリーフの彫られた錠前を取り出す……のとほぼ同時のことだった
ズガァァン‼︎
《ガッギッ……⁉︎》
かなり痛そうな轟音と共にシカインベスに何かが命中し、その体躯を大きく吹き飛ばす
飛来してきたものは丁度城乃内の前に勢いよく突き立つ
それは深緑色のトゲトゲしいノコギリ
「これは……‼︎」
「ナイスガッツよ、ボウヤ‼︎」
と城乃内たちの後方から嫌に野太いながら乙女チックな響きというなんだか矛盾した声が響く
声のした方向から現れたものにわっしーたちは絶句した。絶句せざるを得なかった
そこにいたのは……
「可憐なガールズに手を上げようなんて、お天道様が許してもワテクシが許さないわ‼︎ 覚悟しなさい、ケダモノ‼︎」
と野太いながら乙女感全開に話すトゲトゲ鎧とモヒカン、更にもう一挺のノコギリを完備した悪漢臭しかしない緑の巨漢であった
はい、出ちゃいました最強の大人のあの方、満を持して弟子と共に参戦ですw
実は3話とまとめるつもりでしたがぶった切ってシャルモン組とわすゆ三人組の合流シーン混ぜ込んで4話にしました。おかげで二つの世界がいい具合にジンバーもといミックスしてきましたよ〜w
次回は多分戦闘メインに……お楽しみにです‼︎