鬱蒼と茂る緑。視界全てが緑に染められているといっとも過言ではない深い森。溢れ出る生命の実感が逆に生物感を薄れさせる森の中。悠然と、そしてどこかイラついているように闊歩する影が一つ
『フォンシャフェエジュジョ……デョブリョフォンミャミ‼︎』
地球では全く聞き覚えない言葉を並び立て影は苛立たしげに手にした長剣を振り回す
赤い甲冑を纏った騎士のような存在は明らかな殺意と怒りに目を輝かせながらのしのしと森を闊歩していく
『エブリョロデュンファン…オファシェデュン ルシュファウ フェシンブリョ ジャアシュ』
忌々し気に手にしたオレンジ色の端切れのようなものを握りしめ、騎士のような存在が長剣を振るう
振るった軌跡に赤い雫がこぼれたことを今更確認した騎士は左手の端切れで刀身に流れる血液を拭い、その匂いを嗅ぐ
『……アグランイジョ……シャファフェアエ……‼︎』
もう用は無いとばかりに端切れを地面に捨て踏みにじる
『フェションデョフォエ‼︎ ジェエデョエデョブリョジョジェ‼︎』
赤い騎士ーオーバーロードインベス・フェムシンムの戦士、デェムシュは苛立たしげな行進を再開した
「くそっ、こいつ……しぶといヤツだな……‼︎」
セイリュウインベスに大剣モードのDJ銃を叩きつけ吹き飛ばす鎧武
確実にダメージは溜まっているが、まだセイリュウインベスに倒れる気配はない
「絋汰さーーーん‼︎」
「友奈‼︎ ……そのロックシードは?」
「凌馬さんから借りたの‼︎ これでなら私も絋汰さんを手伝えるって」
友奈が誇らしげにイチゴロックシードを構える
「えっと……これをこうして……?」
《イチゴ‼︎》
絋汰たちより少しぎこちない手つきでイチゴロックシードが解錠されると友奈の頭上にイチゴ型の鎧が現れる。心なしか鎧武たちのものよりも小ぶりだ
「わっ、えっ、本当に出てきた⁉︎」
「マジか……すごいな、友奈‼︎」
「こ、絋汰さん、これどうすれば……⁉︎」
「最初はちょっとビビるけど、大丈夫思ったよりこわくねぇよ」
と話してる間にもイチゴの鎧が友奈に降りてくる
「あわわ、為せば大抵……なんとかなるッ‼︎」
《ソイヤッ!》
《イチゴアームズ‼︎シュシュっと、スパーク‼︎》
イチゴ型の鎧が友奈の頭にかぶさると同時に鎧が弾け友奈の勇者服に合わせて形が変わりながら友奈への武装が完成する
鎧武やデュークのものと比べると小振りな忍者のようなアームズが勇者服の上に装着されて友奈の『変身』が完了した
「ふわぁ……!ほんとに鎧になってる‼︎ あとなんだろこれ…?」
不思議そうに自分の身体を眺めながら友奈は自分の両手に小さなクナイが握られていることに気づく
「そいつは投げて使うんだ。こう、シュシュっと‼︎」
「こう?シュシュっと‼︎」
鎧武の身振りを真似た友奈がぎこちないながらセイリュウインベスにイチゴクナイを投げつけると小爆発が起こり、セイリュウインベスが吹き飛ばされる
「わぁ…‼︎これならやれそう‼︎」
「うし、一緒にやるぞ友奈‼︎」
「うん、行こう絋汰さん‼︎」
頷きあった2人がセイリュウインベスに向き直り、突撃する
「セェリャッ‼︎」
鎧武の大剣がセイリュウインベスを二度三度捉えてその体に確実にダメージを与えていく
「よいしょっと‼︎」
怯んだインベスに向けて友奈の側転からの蹴りが命中、勢いそのままにパンチを浴びせて吹き飛ばすと更にイチゴクナイを投げ撒いて更なるダメージを与える
《ガロ……ガロロロ……‼︎》
明らかに消耗しきったセイリュウインベスがよろめきながらも立ち上がるがもう遅い
「フルーツジュースにしてやるぜ‼︎」
《ロック、オン‼︎》
《イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン……》
大砲に戻したDJ銃にカチドキロックシードをセット、エネルギーを溜めながらDJ銃を腰だめに構える
「私も‼︎とうっ‼︎」
友奈は高くジャンプするとイチゴ状のエネルギー球を展開する
「名付けて、勇者イチゴキーーーーーック‼︎」
《イチゴスパーキング‼︎》
気合一発、エネルギー球ごとセイリュウインベスに蹴り込む
「ハー……セイハーッ‼︎」
《……オク、チョウ、無量大数‼︎》
《カチドキ、チャージ‼︎》
友奈が離脱すると同時にエネルギー球の爆発に閉じ込められたセイリュウインベスにDJ銃のエネルギーの凝縮された砲撃が直撃する
流石の防御力を持つインベスもこれは耐え切れずそのまま爆発四散する。後には何も残らなかった
「いよっしゃー‼︎」
「やったぁーー‼︎」
2人の勝どきが重なり響きわたる。そんな2人に見守っていた勇者の仲間たちが駆け寄る
「やったじゃない、絋汰‼︎ というかそんな強いのあるなら最初から使いなさいよ‼︎」
「かっこよかったです……‼︎ 大砲とか、すごく‼︎」
「そうか?そうだよな‼︎カッコいいだろ、これ♪」
「友奈あんた……かわいい勇者服になったわね…女子力ビンビン感じるわ‼︎」
「ゆーゆかっこよかったよ〜♪」
「あぁ、イチゴな友奈ちゃんも……ンンッ、お疲れ様、友奈ちゃん」
「ありがとう東郷さん♪」
さっきまでの緊迫した雰囲気は何処へやら、7人はすっかり談笑モードである
(実験は概ね成功、か……上々だな)
その様を側から眺めるデュークは満足気にくっくっと笑いを漏らす
(さて、後は神樹様だな……これは次の樹海化を気長に待つとしよう……それにしても……)
デュークが移した視線の先には路地があった。セイリュウインベスに投げつけられたヘルヘイムの果実の飛んできた先と見られる場所だ
(………我々以外に、何やら作為的な雰囲気を感じるね……警戒する必要があるようだ……)
うどん屋前の通りにはしばらく絋汰と勇者部のメンバーの楽しそうな喧騒が響いた
「うんまい‼︎」
「おいしい……‼︎こんな味はじめてです……(もぐもぐ)」
「はむはむ……おいしい〜ほっぺた落ちちゃいそうだよ〜♪」
閉店後のシャルモンの店内に元気な声が響いている
中では変身を解いた鷲尾須美、三ノ輪銀、乃木園子の3人がなんとも幸せそうな顔でパンとスープ、簡単なおかずを頬張っている
「あり合わせでごめんな、ちょうど買い出し途中だったから食材の蓄えが少なくて…」
「いえ、とんでもないです……むしろこんなおいしいものを恵んでもらえてありがたい限りです……‼︎」
「うんうん、腹ペコで死にそうだったんで助かりました‼︎」
「もふぁもごむぐふぁい!」
「園っち、食べてからしゃべりなさい…」
「それなら良かった。ったく、森から出てからいきなり倒れた時はびっくりしたよ」
あの後ロックビークルにまたがってヘルヘイムから沢芽市に帰還した5人だが鷲尾須美達が空腹でそのままへたり込んでしまい、凰蓮が快くシャルモンに招待する形になっていたのである
「ウィ‼︎ 余った材料でアップルパイも作ったわよ〜」
厨房から出てきたのはノースリーブから筋肉溢れる腕を露わに特徴的な帽子を被った巨漢。アーマードライダーブラーボから変身を解いた凰蓮・ピエール・アルフォンゾ、その人である
「こ、これは……(ジュルリ)」
「すっごいうまそうな香り……‼︎」
「ふわぁ…とろけちゃいそうだよ〜♪」
三人の反応は無理もない。凰蓮がパティシエを務めるこのシャルモンは沢芽市でも超がつく人気店。加えて従軍してまでフランスでパティシエを極めてきた彼の腕前は数々の賞が証明している
本来なら鷲尾須美達のような子供たちだけでは到底手の出るような値段ではないが…
「お腹を空かせた子供たちを放っておくなんてできないわ♪ 遠慮なんてノンノン、子供が困ってたら助けるのがワテクシたち大人の務めなんだからきにしないの♪」
と須美達の頭を撫でる凰蓮。筋骨隆々ながらも優しく温かい手だった
「本当に……本当にありがとうございます……!」
「どういたしまして♪ その笑顔、十分パティシエ冥利に尽きるわ♪」
「しっかし……まだ信じられねぇな……勇者とか、バーテックスってやつとか」
城乃内がポツリと漏らす。三人の食事ついでに色々と話を聞いたのだがどれも荒唐無稽な話だった
なんでも三人は神樹様に選ばれた勇者という存在らしく、世界を壊そうとしているバーテックスという化けものと戦っていたらしい
ヘルヘイムの森に迷い込む直前もヤギみたいなのと戦い終えた直後だったらしい
にわかには信じがたい内容だが、城乃内たちもヘルヘイムやらアーマードライダー、インベスを知っている以上疑いきることもできず、目の前で勇者服とやらから制服に一瞬で変わったのを見せられると嫌でも信じざるを得なかった
「アタシらからしたら城乃内さんたちのアーマードライダーっていうのも正直よくわかんない……」
「ドングリが落っこちてきたのすごかったね〜」
「あれは俺もびっくりしたよ最初は…お互いさまだな、びっくりなとこは」
城乃内が苦笑を返す
「とにかく、貴女たちしばらくはここにいてもいいわ。帰ろうにもすぐには帰れそうにないみたいだし……」
「はい……私達が入った穴はすぐに閉じてしまいましたし…」
「とりあえずしばらくは情報収集だな……しばらく過ごすことになりそうだし明日は俺がこの街を案内するよ」
「そうね、頼んだわよボウヤ♪」
「何から何まで……すみません…」
すまなそうな顔をする須美に凰蓮が小さくわけたアップルパイを差し出す
「謝らなくていいわよ。子供は大人に目一杯甘えなさい?貴女たちだとそうもいかないのかもしれないけど、だからこそここではワテクシたちを思いっきり頼りなさい♪」
「………ありがとうございます、凰蓮さん、城乃内さん」
少々緊張気味だった須美の顔がようやくほころぶ
その笑顔に凰蓮もまた笑顔で返すのであった
「ここが友奈たちが通う中学校か〜」
「うんそうだよ。ようこそ絋汰さん♪」
セイリュウインベスを撃破した絋汰と勇者部の一行は絋汰が現在抱えるある問題解決の為に友奈たちの通う讃州中学校付近に来ていた
セイリュウインベスが暴れた後の処理はどこからか現れた平安時代のような衣装をきた仮面の集団が迅速に終わらせてしまった
戦極凌馬は友奈からイチゴロックシードを回収すると
「私は少々気になることと、調べたいことがある。すまないが別行動をさせてもらうよ。あぁ、帰る方法が見つかったらちゃんと共有するから安心したまえ」
とそそくさとどこかへ行ってしまった
「ここをまっすぐ行ったら寄宿舎です」
「一応ひなたに聞かなきゃだけど、いくらか部屋は余ってるはずだから多分大丈夫よ」
そう、この世界に迷い込んだ絋汰には今寝泊まりできる場所が無い。幸いこの世界と絋汰の世界で通貨は変わらないようなのだが、現在の手持ちでは心もとない。そこで東郷が讃州中学近くの寄宿舎を紹介してくれたのだ
「悪いな、みんな。こんなにしてもらっちゃって…」
「今更何水臭いこと言ってんのよ。困った時はお互い様、もちつもたれつって言うじゃない」
「困った人を助けるのも、勇者部ですから」
「本当ありがとな。代わり、といっちゃなんだが俺にも手伝えることがあったら手伝うぜ」
「ふ〜ん、ならビシバシこき使ってあげるわ」
「お、お手柔らかに頼むぜ……?」
一行が談笑していると件の寄宿舎が見えてきた
入り口近くにはロングヘアの女の子が1人立っていたのだが、何やら様子がおかしい
「あれ?ひなたちゃん?どうしたの?」
「皆さん……大変なことになりました……」
ひなたと呼ばれた女の子は切迫した表情でゆっくりと告げる
「若葉ちゃんたちが怪我をして……球子さん、杏さん、須美ちゃん、銀ちゃん、園子ちゃんが行方不明になってしまってるんです……」
「え……」
一同の表情が固まる
今別行動している勇者部の仲間がいることはうどん屋で絋汰も聞いていたが、おそらくひなたが告げたその名前がその仲間たちだったのだろう
「若葉さんや須美ちゃんが⁉︎」
「嘘、なんで……」
「詳しいことは若葉ちゃんが……助けてくれた男の人と一緒に羽波病院にいるらしく、私もこれから向かうところで…」
「私たちもいくよ、ひなたちゃん」
「ありがとうございます、皆さん…」
ひなたに先導される形で一行は病院へと向かうことになった
「杏、大丈夫か?」
「う、うん、まだなんとか」
薄暗い森の中少し弱々しい声が響く
声の主はオレンジ色の特徴的な服をきたどこか猫のような雰囲気の少女と白っぽい服を着たおっとりとした雰囲気の少女
2人とも息を切らして少し消耗しているように見える。見るとあちこちに生傷もあるようだ
「タマっち先輩こそ……その腕……」
杏という少女が指した腕には袖ごと引き裂かれたかのような大きな傷ができていた。流れ出している血の量は決して少なくない
「こんくらいならタマにはかすり傷だ!」
からからと笑って見せているがどこかその笑顔にも翳りが見える。タマもおそらく杏以上に疲弊しているのだ
「はぁ……しばらくこの岩の陰で休んだらまたあの穴を探さなきゃだな……あれを通れたら多分帰れる」
「うん、もう少し、頑張ろう」
2人が岩に寄りかかり少し息を整えようとしたその時
ズガァアアアアアン‼︎
「ぅあっ⁉︎」
「きゃあっ⁉︎」
2人が寄りかかっていた巨岩の上半分が轟音と共に爆ぜた
粉々になった岩の小片が吹き飛ばされた2人に降り注ぐ
「杏‼︎」
小片に混じった大きな破片をタマが手にした盾で弾く
「っぐ‼︎」
「タマっち先輩‼︎」
腕の傷に響いたのか傷口をかばいながらタマがうずくまる
『ダシャショ………』
砕け散った岩の残骸の上に人影が現れる。それはタマと杏にはわからない、だが確かに意味をなすような言葉でがなり始める
『メジュシュイジョダン……シャデュオンブリョフォンミャ…‼︎』
言葉の意味は伝わらない代わりにその視線に吐き気がするほどの殺意を乗せて赤い異形の戦士ーデェムシュは剣をタマと杏に向けた
はい、またキャラが増えた第6話ですw
どっちの作品も結構キャラいるよなぁ……大好き
今回クロスオーバーらしい勇者+アームズも出せてかなり満足ですw
自分がこのクロスオーバーしたくなったの、実は鷲尾須美たち3人と凰蓮、城乃内のシャルモン組を絡ませてみたかったのが始まりでここで叶ってきてます、ようやくw
あとデェムシュが出てきましたというか完全にやらかしてますな彼……実は企画段階だとここの立ち位置はシドにやってもらうつもりだったんですが、転移先がヘルヘイムならこっちの方が…ってことでデェムシュに…(彼のセリフは日本語→オーバーロード語翻訳サイトで翻訳しながら書いたのでオーバーロード語→日本語サイト使ったら翻訳できたりしますw)
後書き長くなりましたが、見ての通り次回からのわゆ組も登場、わすゆ組の沢芽市生活やらもえがいていきますので、お楽しみに!