あれから月日は流れ、高校3年。
映司はちょくちょく学校を休むようになった。きっと、世界を回って子供たちを助けているのだろう。が、もうそろ卒業式が近い。
「そろそろ来ないと、ヤベーイことになるよ〜。」
と、独り言を呟きながら俺は、教室から外の景色を眺めていた。まだ冷え込む日が続いてはいるが、桜の花が咲きそうな感じだ。
「アイツ、風邪とか引いてないだろうな?」
「元気にしてるよ。」
「そうか。なら、良かった!?」
当たり前のように返事をしたが、「なら」の辺りで違和感に気づき、「良かった」と言いながら、全力で振り返る。
「やぁ、久しぶり。拓海こそ、元気してたか?」
「ったく、心配かけさせやがって。」
「ごめんごめん。」
(こうも気のいいやつが、あんな目にあうのか。止めたい、友人として……結末を知っているものとして。だが、それをやると世界が壊れる。)
「そういえば、拓海は卒業後どうするつもりなんだ?大学受験とか?」
「え?しないよ。だって俺、王様になるから。」
「は?」
「え?冗談だよ、冗談。まぁ、会社を設立するんだけどね。」
「へぇ〜、何の会社?」
「うーん、まぁいろんな事業に手を出せるような会社だな。」
「まだ具体案は決まってないんだね。」
「それにまだ下準備が済んでないからな。」
「え?」
「あぁ、なんでもない。」
俺が少し話をはぐらかしたところで、この話題はおわった。
更に月日は流れ、卒業の日。
映司は卒業式には出ず、国外へと旅立った………俺が渡した大量の派手目のパンツと共に。
俺は卒業証書を受け取り、式の終わりを待つ。
卒業式終了と同時に、俺はオートバジンでとある場所を目指す。
目的地は何をやってるかわからない企業『鴻上ファウンデーション』。
予めアポを取ってあるので、入るのは問題なかった。
会長室に入ると、いつも見ている絵面……鴻上光正がケーキを作っている。
「君が、稲生 拓海くんかね。」
「えぇ。お初にお目にかかります、鴻上会長。前座とかご機嫌取りなんかは苦手なんで、本題に入らせてもらうぜ。今から2、3年後、あんたも予測しているだろうが800年前に封印された怪人『グリード』が復活する。俺は、やつらによる被害を最低限にするために動くつもりだ。そのために、アンタの力を借りたい。」
「ほう、グリード復活を予見するか。」
鴻上会長は、俺がグリードについて知っている事に関しては何も聞いてこない。
「では、我々にメリットはあるのかね?」
「あぁ、出資してくれれば、ウチの会社の売り上げ……4割をそっちに譲渡しよう。それから、俺がヤミーを倒した時に発生したセルメダルも……全て渡そう。その代わり、もし出資してくれるのなら、ケチケチせずにドーーンと出資してくれ。俺は、企業がデカくなれば研究が進むから、戦いやすくなる。この世界を守るのは俺の仕事じゃない。俺は自分が戦いたいから戦う。アイツのサポートもしながらな。」
「………いいだろう!だが、4割ではなく……3割で構わない!」
そう言いながら、完成ケーキをこちらに差し出す。そこには、3割とデカデカと書いてある。最初から売り上げは狙っていたようだ。
「私たちの新たなる契約に、ハッピーバースデーッ!」
こうして鴻上ファウンデーションとこれから設立するスマートブレイン社が契約を結んだ。
約3ヶ月ぶりの更新となりました。
大変お待たせしております。