ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜 作:てこの原理こそ最強
6.7(日)。日本ダービー。皐月賞は「最も速いウマ娘が勝つ」、菊花賞は「最も強いウマ娘が勝つ」といわれるのに対し、日本ダービーは「最も運のあるウマ娘が勝つ」といわれているレースである
出馬するウマ娘は皐月賞を制したセイウンスカイさんに弥生賞を制したスペシャルウィークさん、そして4戦4勝の負けなしウマ娘であるエルコンドルパサーさんなど選ばれたウマ娘達がしのぎを削るレース。オレはそれを仕事場である学園のメディカルルームのテレビで観戦する
「チームスピカ」のトレーナーである兄や「チームリギル」のトレーナーさんから現場での観戦を直々にお誘いされたがお断りした。それぞれに所属している娘達にもお誘いを受けたがそれも断った。オレはだれかが勝ったからといって公の場でその娘だけに祝うことはできない。やってはいけないのだ
別に「おめでとう」、「よくやった」など祝いの言葉をかけないわけじゃない。それは個人個人にの話だ。優勝した娘、頑張った娘、残念ながら負けてしまって悔やんでる娘、それぞれに向き合って言葉をかける。これもオレの仕事だと思うから
今回の日本ダービー。1番人気はやはりエルコンドルパサーさん。彼女は強い。彼女もまた歴史を作るウマ娘の1人に登りつめるだろう。しかし彼女に1つ必要なものがあるとオレは思った。対等に競い合える
切磋琢磨。友人同士が互いに励まし合い競争し合って、共に向上すること。オレはこの言葉が好きだ。1人では必ず限界がくる。チームに所属していても、いくらトレーナーが優れていても、レースのときは1人だ。しかし隣に友人でありライバルがいるだけで自分の持ってる最大以上のものを引き出せる。まぁこれはとある人の口癖だが
エルコンドルパサーさんはこれまでの4戦、圧勝という形で終わってきた。負けを知らず接戦を知らない。でも今日はスペシャルウィークさんという同世代のライバルになれる可能性のある娘が隣にいる。これで彼女はまた1つ進化できるだろう
しかしこれはスペシャルウィークさんにも言えることだ。兄に聞かされた。彼女から限界を超えるにはどうすればいいか聞かれたと。オレはこれに即答することができた。
さて、前置きが長くなってしまったな。テレビの中では日本ダービーのファンファーレが鳴り響き今日出バするウマ娘達が続々とゲート入りしていった
「お、今日の解説は武さんですか」
実況の人が知り合いなことはとりあえず置いといて、レースがスタートした
いきなり飛び出したのはキングヘイローさん。続いてそれを追いかけるのが皐月賞を制したセイウンスカイさん。スペシャルウィークさんは中盤、エルコンドルパサーさんは後方から機会を伺っている様子のスタートとなった
そして第3コーナーを回っても変化なし。しかし第4コーナーを回ったところでセイウンスカイさんがしかけキングヘイローさんを一気に抜き去って坂にさしかかった。ここで後ろからあがってきたのがスペシャルウィークさん
これまで苦手としてきた坂をこの前タイキシャトルさんとの模擬レースで見せたピッチ走法でクリアした。セイウンスカイさんとの距離をぐんぐんと離していく
だがこれで終わらないのが今回の日本ダービー。解説も観客もボルテージが上がる。そうさせたのはスペシャルウィークさんの後ろをものすごいスピードで追いかける走る怪鳥、エルコンドルパサーさんだった
スピードに乗ったエルコンドルパサーさんがスペシャルウィークさんとの距離をつめ1位に躍り出た。実況や観客、オレでさえもこのまま終わってしまうと思ったが、スペシャルウィークさんが驚異の粘りを見せ巻き返していった。そしてそのまま並走する形でゴールイン。スペシャルウィークさんは勢いのあまり地面にこけ、エルコンドルパサーさんも全てを出し切ったように地面に四つん這いになった
結果は写真判定の末、スペシャルウィークさんとエルコンドルパサーさんの同着1位となった
「これは、スゴいですね…」
まずこの短期間で坂を完全に攻略したスペシャルウィークさん。そしてわかってはいたがエルコンドルパサーさんのあのスピード。そして最後のスペシャルウィークさんの粘りの走りと巻き返し。スゴいと言うしかなかった
「限界は越えたかな」
スペシャルウィークさんの限界は確実に越えただろう。そしてこれでエルコンドルパサーさんにもまた違った感情が芽生えたはずだ
テレビではスペシャルウィークさんとエルコンドルパサーさんが抱き合っているシーンが流された。お互いにいいレースができたってことなのかな
「皐月賞はセイウンスカイさん、日本ダービーはエルコンドルパサーさんとスペシャルウィークさんの同率1位。あとは菊花賞か。それにどれもC組か」
ここでオレの頭の中にはあるウマ娘が浮かび上がった。同じC組でありながらケガで戦線を離脱している彼女を。彼女もおそらくこの同世代対決に入れるだけの実力は持ってるはずだ。だから早く完治させて復帰できるようにさせてあげなくては!、と自分のとりあえずの目標を立てた
「あとは、あれどうしますかね…」
オレの頭を悩ましているもの。それはついこの間NHKマイルカップの会見の場で公にお願いされたことだった。ホントにどうしよう…