ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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第14R

「やっちまったな〜」

 

天皇賞が迫る中、オレは現在布団の中で寝込んでいた。頭の下にはアイスノンを敷き額には冷えピタをつけている。枕元にはスポーツドリンクと水がペットボトル1本ずつ置いてある

 

「保健医のくせして情けないな」

 

この世の中風邪を引かない人はいないだろうが、一般の人よりも気をつけることができるのにやってしまった

 

「まさか1年に1回の風邪っぴきが今日とはな」

 

これが特になんの仕事も用事もないときならどってことない。1日や2日そこらちゃんと3食取ってきっちり水分摂って寝てれば治る、のだが...今回はタイミングが悪すぎた

 

スズカとエルが出る天皇賞が2日後に迫っているというタイミングだった。ホントなら今日から調整をしていかなきゃいけないのだがオレが風邪引いたばっかしに…

 

「早く治して明日には復帰しないと」

 

前日の1日だけでも調整をするのとしないのでは全然違う。そのためには今日の内に熱だけでも下げなくてはならない。ダルい身体を持ち上げ、アイスノンと冷えピタを変えて再び布団に入って眠りに就いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来たる11月1日(日)の天皇賞。結論から言うと調整は()()()()()()。今日はノドはまだ痛いがなんとか熱は下がったので会場である東京レース場に足を運んだ

 

メジロライアンさん、ナイスネイチャさん、ウイニングチケットさん、エル、ヒシアマゾンさんと次々と出てくる名だたるメンバーの最後にスズカが登場した

 

『最後に出てきたのは1番人気、サイレンススズカ!』

 

\ワァァァァァーーーーーー!!!!!!!/

 

『割れんばかりの声援です!』

 

さすがは1番人気。だがオレには1つ気がかりなことがあった。オレが風邪を引く前のスズカはチームの特訓以外にも自主練習を行っていて完全なオーバーワーク状態だった。そのときにスズカには抑えるように伝えたんだがその後すぐに風邪で寝込んだためどうなったかわからない。しかも調整もしてないから今のスズカの身体の状態もわからない

 

「なにもないことを祈るしかないか…」

 

しかしその矢先、左足の靴紐が切れた。こんなときに不吉な…

 

♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

ファンファーレが鳴り選手達は続々とゲートインしていく。スズカは観客の方をキョロキョロと何かを探すような素振りを見せたが見つからなかったのかゲートに入ろうとする。そこにエルがスズカに近づいて行った。リベンジ宣言でもしているのだろうか。自分のゲートに戻るエルの目はまるで獲物を捕らえようとする怪鳥のように鋭く見えた

 

『さぁ、12人のウマ娘達がゲートに入ります。エルコンドルパサー、ヒシアマゾン、ウイニングチケット、メジロライアン、ナイスネイチャ。果たしてサイレンススズカを捕まえることはできるか!?今、ゲートが開きました!』

 

いつも通り初めから抜け出したスズカ。それを2番手で追いかけるエル。しかし…

 

『サイレンススズカ!後続をぐんぐんと引き離す!なんというスピード!』

 

速い。いや、速すぎる。エルとは既に10馬身以上は離れてるかもしれない

 

『1000mのタイムは、なんと57秒4!』

 

その驚くべきタイムに会場はどっと盛り上がる

 

『飛ばしに飛ばすサイレンススズカ!』

 

『こんなに速いウマ娘、今まで見たことがありません』

 

『一体もう何バ身差ができたのか!?会場の盛り上がりは最高潮に達しています!』

 

これだけでは終わらずスズカはさらにスピードを上げる。だがなんだ…見る限り不調な様子はない。でもこの状況…あのときと同じだ…

 

そのときだった。スズカが急激に失速し始めた。足の回転もどんどん落ちていきどこか左足を庇っているように見える

 

「っ!スズカ!」

 

オレは一目散に走り出した。ノドが痛いなんて関係ない。人混みを掻き分け最前列のバーを飛び越える。そこでスピカのメンバーと兄貴を見つけた

 

「兄貴!救護班だ!早く!」

 

兄貴の反応も確認せずにオレ自身はスズカの元に走る。その走るオレの横をものすごいスピードで駆け抜けて行った影があった。スペシャルウィークさんだった

 

「これ以上左足を地面につけちゃダメだ!」

 

スズカにもスペシャルウィークさんにも向けて叫んだ言葉。聞こえているかわからない。だが今は叫ぶことと全力で走ることしかできなかった

 

「スズカ!」

 

「せん…せい……」

 

意識はある。左足も最悪の状態ではない

 

「スペシャルウィークさん、ありがとう」

 

スペシャルウィークさんがいなかったら、スペシャルウィークさんがスズカの元に駆け寄るのがもう少し遅れていたら。ホントに彼女には感謝しかない

 

その後、救護班の人と一緒にスズカを救急車に乗せ付き添いとして病院まで同行した。救急車の中で最善を尽くし左足を固定する。他にも身体の別の場所にも異常がないか出来る限り調べた。幸いにも他に異常は見つからなかった

 

着いた病院の先生に後を委ね、オレは診察室の前でじっと待っていた。どれくらい時間が経ったかは覚えていないが兄貴とスピカのメンバーが到着した

 

「スズカの容態は!」

 

「先生!スズカさんは!」

 

「…オレの見た感じでは左足の骨折。それ以外に異常なところはなかった」

 

「そうか…」

 

「大丈夫なんですよね!?」

 

「あぁ…()()()()()()()…」

 

「よかった…」

 

それを聞いて涙を流し出すスペシャルウィークさんとスピカのメンバー達

 

「後を頼む、兄貴」

 

「おい、スズカの顔を見なくていいのか」

 

「…オレにはもう、あの娘達を見る資格はない」

 

「っ!おい!」

 

兄貴の叫ぶ声が聞こえてくるが振り向くことはせずに病院を出た

 

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