ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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第16R

 

とある海岸線。夕日が沈みかけている時間帯の中、オレはそこにある慰霊碑の前にあぐらをかいて座り込んでいた。ちゃんと慰霊碑を掃除して花も手向けた後の行動だ

 

「やっぱり、ここにいたか」

 

「よく、わかったな…」

 

「まぁな」

 

もうすぐ夕日が水平線へと落ちきるというときに背後から声がした。それはオレの兄貴のものだった。兄貴はオレの隣でしゃがみこみ目を瞑って手を合わした

 

「ここに来るのはお盆以来だな」

 

「あぁ」

 

「ここに来てなんて報告したんだ?」

 

「…」

 

おそらく兄貴はわかっているのだろう。だからオレがここにいるのがわかったんだと思う

 

「オレはもう、ウマ娘には関わらない。そう伝えに来た」

 

「お前は本当に俺に似て大バカ者だな」

 

「…そうさ。オレは同じ誤ちを犯した大バカ野郎だ」

 

「逃げるのか?その誤ちから」

 

「逃げる…そうかもしれないな」

 

オレは立ち上がりその場を離れようとする

 

「そんな誤ちを犯したにも関わらず、お前を慕ってくれるあの娘達を見捨てても行くのか…?」

 

「っ!なら、どうしろってんだ…オレは!“キース”を追い込み、スズカもケガさせさたんだぞ!」

 

「確かにその事実は変わらねぇ。でもな、それ以上にお前に救われてる奴らもいるだろーが!」

 

「オレがいたのに、スズカはケガをしたんだぞ!」

 

「だがちゃんと生きてる!復帰もできる!ここでお前がいなくなったらこれから先、ケガする娘がもっと増える。下手したらその場で命を落とす娘が出るかもしれねぇんだぞ!それなのに!お前はどっかへ消えるってのか!」

 

「現にケガする娘が出た!オレがいたところで変わらない。結局オレは誰も救えねぇんだよ!」

 

先生!!!

 

兄貴に背を向けたまま話していたオレの目の前に大声でオレのことを叫ぶ1人のウマ娘がいた

 

「スキー…なんで…」

 

「そんなの…はぁはぁ…車を追いかけて…はぁ…来たからに…決まってるじゃない…はぁはぁ…」

 

それはスキーだった。息をきらし肩が大きく上下に動いている

 

「ふぅ…先生、さすがの私でも怒るよ?先生が誰も救えない?そんなわけないじゃない!」

 

いつもの穏やかな表情から一変、激しく怒りを露わにしている

 

「先生と出会って先生の調整を受けてから私は一回もケガをしてない。それは他の娘も一緒。そのおかげで最高のコンディションでレースに臨めてる。これでも救ってないなんて言う気!?」

 

「それは、別にオレじゃなくてもできることだ!」

 

「ふざけないで!先生が来てからの学園のケガした人数知ってる!?0()よ!」

 

「だから、別にオレじゃなくても…「たらればの話をしてるんじゃないの!」…っ!」

 

「先生は結果を出してる!昔にそういう誤ちがあったとしてもそうならないように最善を尽くしてくれてる!だから慕ってる!尊敬してる!みんなも、私も!なのに…」

 

「…」

 

「なのに…なんで私達の前から消えるなんて言うのよ!」

 

「っ!」

 

あのスキーが泣いてる。いや、泣かせたのはオレか。オレはバカ野郎じゃなく、クズ野郎だったわけか

 

「キースのことは俺も思うところがある。だがな、キースみたいな娘を増やさないためにもお前の力が必要だと俺は思う。ウマ娘にとっても、俺達トレーナーにとってもな」

 

「…」

 

「それにお前にはお前のことで泣いてくれる娘がいる」

 

「…だが、オレが看るからってケガ人が出ない保証はない」

 

「そんなん誰にもわからん。だが発症率は格段に下がるはずだ」

 

「買い被りすぎだ」

 

「自慢の弟だしな」

 

「こんなときだけ…」

 

オレは下を向きながら大粒の涙を流すスキーの元にゆっくりと近づき目の前で足を止める

 

「スキー、ありがとう」

 

「…戻ってきて、くれるの……?」

 

「あぁ。君のおかげだ」

 

「…抱きしめてはくれないのね」

 

「オレにそんな資格はまだない」

 

「そう。()()ね。なら、その資格を持ったときは1番最初に抱きしめてもらうから」

 

「それだとオレが何人もやることになるんだが…」

 

「私にはそうなる未来が見えてるわ」

 

「そうか…君には一生返せそうにない恩ができてしまったな」

 

「私と先生の仲じゃない。こんなの、正式なお付き合いか結婚でチャラにしてあげるわ」

 

「冗談キツいな…」

 

「冗談じゃないですからね。先生、スズカのところに行ってあげて」

 

「…」

 

今、オレはどんな顔してスズカに会っていいかわからなかった。ケガ人を出すことに怯え、逃げようとしたやつが会っていいのか

 

「今のスズカにはどんなものよりも先生が必要なのよ」

 

「…必要か」

 

「えぇ。本当はこのまま先生と駆け落ちしてもいいのだけれど、それじゃフェアじゃないしね。ちゃんと実力で奪い取るわ」

 

「そっか。兄貴、車借りるぞ」

 

「お、おぉ…」

 

「スキーも乗ってけ」

 

「やった。先生とドライブ」

 

「さっきまであんなに泣いてたのにな」

 

「先生のせいだし、そもそも泣き顔なんて先生にしか見せないわよ」

 

「はいはい」

 

「おい!」

 

「?」

 

「スズカを、頼むな」

 

「…あぁ」

 

オレはスキーを助手席に乗せて病院まで急いだ

 

「…あれ、俺は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院に着いたのは面会時間ギリギリだった。スキーは待合室で待っているとのことなので1人でスズカの病室に向かった。そしてスズカの病室の前、オレはノックしようとしたが躊躇ってしまった。さっきの考えが再び脳裏をよぎった

 

『スズカにはあなたが必要なのよ』

 

「必要…こんなオレをか…?」

 

『スズカを、頼むな』

 

「…よし」

 

コンコン

 

「し、失礼するぞ…」

 

「せん…せい…」

 

スズカは驚きの表情を見せてから口元を手で隠して涙を流し始めた

 

「先生…あの、私…「すまなかった!」…」

 

スズカが何かを話し始める前にオレは頭を下げた

 

「先生、なんで…」

 

「オレは!君を放って逃げようとした!オレは最低な人間だ!」

 

「先生!私も先生の言うことを聞かずに…あげくケガまでしてしまって…すみませんでした!」

 

「許してもらえるとは思っていない。でも約束する!絶対君を完全復帰させてみせる!」

 

「っ!はい!」

 

言うことは言ってベッドの横にあった丸イスに座る

 

「先生…手を、貸してください」

 

「あ、あぁ…」

 

オレはスズカの言われるまま右手を差し出す。スズカはその手を自分の頰に持っていった

 

「よかった…もう、先生とは一生会えないかと思ってました…」

 

「…すまなかった」

 

「先生」

 

「ん?」

 

「私のリハビリ、看てもらえないでしょうか…」

 

「そうするつもりだ。まぁ病院の先生を説得しないとなんだけどな…」

 

「よかったです」

 

「まだ決まったわけじゃないが、一緒に頑張ろう」

 

「はい!」

 

それからすぐに面会終了の時間になり、待合室で待っていたスキーと一緒に帰った

 

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