ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜 作:てこの原理こそ最強
オレは、いやもしかしたらブライアンがかもしれないが豪運の持ち主かもしれない。とある家電量販店のテレビを見ているタイシンを発見した。オレはすかさず車を止める
「ブライアンはここにいてくれ」
「でも」
「大丈夫、任せろ」
「...あぁ、頼む先生」
ブライアンを車に乗せたままオレだけ外に出る。だって駐禁のおじさんとか怖いじゃん?
「タイシン」
「っ!先生...」
「はいチョップ!」
「いたっ!何するんだ先生!」
「チョップに決まってるだろ!まーたお前はみんなに心配かけて」
「別に、頼んでない...」
「頼まれなくても心配するんだよ。友達なら特に」
「っ!」
「どうせまたネガティブな考えしてたんだろ。何かは知らんが」
「ならほっとけば」
「はいもう一回チョップ!」
「たっ!だから!」
「ほっとけるわけないだろ。大切な生徒の一人なんだから」
「...」
「引退の理由はわからないがタイシンは怪我はない。どんな気持ちを持ってるのかもわからない。でもたくさんの人がタイシンを待ってる」
「っ!」
「証拠にほれ」
タイシンはおずおずとオレの指差すテレビに目を向けた
『タイシン早くこいよ!タイシンがいるのはそこじゃないよ!』
『みんな待っているぞ!』
「チケット...ハヤヒデ...」
「わかったなら早く乗れ」
「...うん!」
説得成功?最終的にはチケットとハヤヒデな気はするけどまぁいいか
「ブライアン!」
「よかった。ありがとう先生」
「最初からチケットとハヤヒデと話させればよかったのにな、とオレは思ってる」
「そう拗ねるな先生。ほら早く会場へ」
「はいはい」
「?」
まったく。あとはハヤヒデだな。さっきチラッと見たけどまた顔が赤くなった
駅伝の第六中継地点に着いたのはちょうど六区を走るメンバーが襷を受け取ったぐらいのタイミングだった
「タイシンさん?」
「私は全力で走る!それだけだ!」
「「タイシン!」」
「あれ?そうなるとこのフードは?ってあれ?」
先程いたフードのタイシン(?)はいなくなっていた
「あれ?何が何やら...」
「ほ、ほらインタビューの続きをしようよ!」
「遅いぞタイシン」
「悪かった。私はお前達の期待までは裏切れなかった」
「ありが...」
「はいそこまで。額触るぞハヤヒデ」
「すまない、せんせ...い...」
熱を確認しようと手を伸ばすオレにもたれかかってきたハヤヒデ。そのハヤヒデを抱えテントの中の簡易ベッドに寝かせ改めて熱を測った
「ダメだな」
「私は走る」
「ダメだ。許可できない」
「でも私は二人と走るためにここまで全力で...」
「ハヤヒデ!」
「っ!」
「言うことを聞け...こんな状態の君を走らせるわけにはいかない」
いつになく大きな声を出してしまったがこれだけは譲れない。いくら本人が言おうと
「私が弱いから...私は何にも応えられない...」
「なんだよ...なんでなんだよ!」
「姉さん」
「ブライアン!?」
ハヤヒデの額に濡れたタオルを置いているとブライアンがテントに入ってきた
「なんでここに」
「大丈夫か?」
「ブライアン。心配しすぎだぞ。それよりお前に頼みがある」
「奇遇だな。私もだ」
あとは4人に任せてオレはルドルフに連絡か
『もしもし』
「もしもしルドルフか?」
『先生!一体何をしているんだ!』
「すまんな。タイシンを送り届けてた」
『そうか。ならタイシンは』
「あぁ、無事送り届けた。しかし悲報だ。ハヤヒデが熱発した」
『なっ!』
「今のハヤヒデを走らせるわけにはいかない」
『...そうか。なら駅伝は今走っている区間で終了に』
「いや、そこで提案だ。ハヤヒデは走れないが代走としてブライアンが走る」
『ブライアンが?...先生は最初からこうなるとわかってブライアンを?』
「いや念のためだった。ハヤヒデに異常があるとは思ったからな。頼む。これはハヤヒデの願いでもあるんだ」
『わかった。説明はこちらでなんとかしよう』
「すまない、助かる」
オレは電話を切りテントに戻った。そこではもう着替えも終わり走る準備は整っていた。そして襷を渡す六区の走者も近づいていた
最初に着たのはチームNのゴールドシップさんだ
「タイシン!負けんなよ!」
続いてチームWのテイオー
「頼んだよ!」
「任せて!」
そして最後にチームBのマックイーン。全員スピカじゃん
「お願いしますわ!」
「わかった」
ハヤヒデの想いを託されたブライアンも走り出した。オレはそれを見送りハヤヒデのいるテントに入った
「3人行ったよ」
「そうか」
ベッドの傍の椅子に腰掛け備え付けのテレビでハヤヒデと一緒に結果を見届ける
『会場のボルテージは今日一番!』
『わんこそばもスパートをかけているぞ!』
わんこそば?あぁオグリね...なんとなく見なくてもわかっちゃうわ
『さぁ!アンカーが学園に帰ってきた!果たして先頭のナリタタイシンを捕らえることはできるのか!?』
『キタキタキター!シャドウロールの怪物、ナリタブライアンが一気に詰める!』
『ついに選手達が校内を抜けトラックに戻る!ラスト一周!ラスト一周です!第一、そして第二コーナーを曲がった!さぁ誰が前に出る!』
「チケットもタイシンもさすがだな。三冠ウマ娘であるブライアンに遅れを取っていない」
タイシンは皐月ウマ娘、チケットはダービーウマ娘。伊達にそう呼ばれてるだけのことはある
『ウイニングチケット前に出た!ナリタタイシン苦しいか!?』
「走り慣れないコンクリートで足にきてるか?」
『外からナリタタイシンがウイニングチケットを捕らえる!おっと内からナリタブライアンも上がってきたー!』
そのまま3人横並びの状態でゴールテープを切った
『同着!完全なる同着!まさに感動のゴール!』
「だってよ」
「あぁ。聞いたよ」
「閉会まで少し時間がある。少し寝な」
「そうしよう。なぁ先生」
「なんだ?」
「こうして二人きりなのだ。その、寝るまで手を繋いでもいいだろうか...」
「熱出て素直になったか?」
「い、いいだろうこんなときぐらい!」
「ダメなもんか。ほら、寝るまでだぞ?」
「あぁ」
いつも大人っぽいハヤヒデも熱が出て甘えたくなったのだろう。オレの手を大事そうに握って眠りにつくのだった
『審議です!』
『えぇぇぇ!』
ちなみに今回の実況はチームリギルからグラスとエルだったりする。しかも今回の駅伝を見にわざわざフランスからブロワイエも来ているとか
『チームNですがご覧のようにゴールドシップがワープ!ショートカットの反則デス!』
『そしてチームWですが中継線手前で襷を受け取るのはルール違反です!』
『チームBは坂道でメジロマックイーン選手がトウカイテイオー選手を妨害していマス!これも反則デス!』
『あ、あのーということは...会長?』
『優勝チームは、なしです』
『えー!』
『この度の駅伝ではBNWの対決は実現できませんでした。が!一ヶ月後の大阪杯で彼女らの勇姿を見届けてください!』
『おぉぉぉぉぉ!!!』
ルドルフによる締めで会場は大いに湧き終了、と思われた
『ちょっと待ったー!!!』
待ったをかけたのは第六中継地点にいるスマートファルコンだった
『会長は今回優勝はなしとおっしゃいました!しかし私は見てしまいました!今回の駅伝はビワハヤヒデさんの一人勝ちです!!』
そう言ってスマートファルコンの手を向けた先にカメラが移動。ベッドの傍に座りテレビを見ているオレと手を繋いで熱発で倒れたとは思えないほど笑顔で眠っているハヤヒデの姿が。ん?オレはテレビから目を外し恐る恐る顔を横に向けると、中継用のカメラがこちらを狙っていた
「...み、みなさん。お、お疲れ様でした」
その瞬間方や先程までマイクを持っていたもの、方や実況席に座っていた二人、方や駅伝を走り終えたもの、特定多数のウマ娘が会場からカメラの向こう側を目指し走り去ったことをオレが知ったのはその波が押し寄せてきてからである...
その後何があったかというのはキオクニゴザイマセン...