ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜 作:てこの原理こそ最強
2期も書いていこうと思います。ミスターシービーの情報がほとんどないので完全に自分の感性で表現してますのでご了承ください
第一R
「こちらはメディカルルームです!身体の不調とかあったらここで診てもらえるからね」
「おや案内ですか?」
「はい先生。この娘達が見学に来てくれましたわ」
「「こんにちは!」」
「こんにちは。楽しんで行ってください」
今日はトレセン学園のオープンキャンパス。立派なウマ娘を夢見る娘達がたくさん見学に来ている。そしてその娘達の案内係に任命(ハズレクジだが)されたのがチームスピカだった。現に今テイオーとマックイーンが見学の娘を連れて回っているようだ
「あの!」
「はい?」
「あなたが有名な先生、ですか?」
「有名?」
「いろんな雑誌でいろんなウマ娘の方がコメントで書いてあったんです!」
「私も見ました!みなさん揃って『私がいつも以上の走りができるのはとある先生のおかげ』って!」
「あー、そういえばマックイーンもこの前の取材でそんなこと呟いてなかった?」
「えぇ事実ですもの」
「やっぱりそうなんですね!」
「そうですわ。まさしくこの方が我々ウマ娘にとってかけがえのない存在の殿方ですわ」
「「おー!」」
「そんな大袈裟ですよ」
「先生は謙遜しないでくださいまし。現に
「ありがとうございます。しかし勝ったのはメジロマックイーンさんの実力です。自分はほんの少しお手伝いしたに過ぎません」
「それだけでも私達ウマ娘にとっては大事なことですわよ」
「...では、ありがたく受け取っておきましょう」
オレとマックイーンのやり取りを見学の二人は目をキラキラさせながら聞いていた
「あの!私も絶対トレセン学園に入って立派なウマ娘になりたいです!」
「私も!それで私も先生に診てもらいたいです!」
「そうですか。あなた達が来てくれる日をお待ちしています。お名前を聞いても?」
「キタサンブラックです!」
「サトノダイヤモンドです!」
「わかりました。キタサンブラックさん、サトノダイヤモンドさん、入学を待っていますね」
「「はい!」」
「むぅ、先生はまたそうやって...」
「あんなちっちゃい娘に妬いてんの?マックイーン」
「や、妬いてなどいません!ただ先生がたらしにならないか心配しているだけですわ!」
「あーそう」
「なんですその顔は!」
見学の娘二人に頑張っての意味を込めて頭を撫でてやると「えへへ♪」状態となり、それを見るマックイーンは「むむむ...」状態となっていた
オープンキャンパスも終わりそれぞれのウマ娘はそれぞれの目指すレースへと意気込んでいた。特に春の天皇賞を勝利したマックイーンと無敗の三冠バを期待されているテイオーに注目が集まっていた
「お、やってるな」
「一心不乱。テイオーは夢に向かって突き進んでいるよ」
「ルドルフ。やっぱり気になるか?」
最近遅くまで自主トレーニングをしているテイオーを見かけるとそこへ無敗の三冠ウマ娘であるルドルフがやってきた
「気にならないと言えば嘘になるな」
「そうか」
「先生からはどう見える」
「調子は上がっていてコンデションもいい、んだが...」
「ん?先生にしては煮え切らない発言じゃないか」
「少しオーバーワーク気味なのが気になる。テイオー的には許容範囲内らしいんだが」
「そうか。スピカのトレーナーはなんと?」
「トレーナー的にも想定よりもほんの少し多いぐらい。ちゃんと食ってちゃんと寝てればなんの問題もないだと」
「そうか」
「テイオーにはふわっと伝えたんだけどな。いつもの「大丈夫大丈夫!」といなされてしまってな」
「テイオーらしい。...先生」
「わかってる。ダービー前最後の調整の時にダメそうなら止める」
「ありがとう。やはり先生は頼りになるな」
「一番頼られてる生徒会長様にそう言ってもらえるのは恐悦至極」
「先生。その言い方はさすがに嫌だぞ」
「そんなつもりはなかったんだが、すまん」
「それに先生がいつでも頼ってくれと言ってくれたじゃないか」
「あーそんなことも言ったかもな」
「ふっ」
全く身に覚えがない。そんなこと言ったかな
「そういえば今日のオープンキャンパスにテイオーやマックイーンを目指す娘がいたよ」
「そうなのか」
「その時思い出したよ。ルドルフが三冠ウマ娘になった時のこと」
「あーあの時か」
「記者の中くぐり抜けて出てきたのがちっちゃいテイオーだったな」
「懐かしいな。そんなテイオーが今や私と肩を並べるほどのウマ娘に成長した」
「そうだな。時は経つものだな」
「おじさんくさいぞ先生。先生だってまだ若いだろうに」
「まぁな。でもこの体で持つのもあと何年かね」
「そんな縁起でもないことを言うもんじゃないよ先生。私はまだ先生に診てもらいたいのだから」
「別に死ぬ訳じゃないさ。オレ自身も君達がどこまで行くのか観たいからな」
「君“達”か...」
「どうした?」
「いいやなんでもない。そろそろ帰ろう。これ以上遅くなるのはよくない」
「確かにそうだな。いつの間にかテイオーもいなくなってるし」
話に夢中になってしまいテイオーももういなくなってしまっていた
日本ダービー前の最後のテイオーの調整。テイオーの身体を隈なく診ていく
「トウカイテイオーさん。この辺違和感ありませんか?」
「ん?別にないよ?」
「そうですか」
オレはテイオーの左足にごく僅かな違和感を覚えた。しかしテイオー本人にそんな感じはないらしい
「これは痛くないですか?」
「大丈夫」
「これは?」
「全然へーき♪」
捻ったり押したりしても痛みを我慢してる様子もなかったためテイオーを帰した。しかし気になったので一応スピカのトレーナーにはメールで伝えておいた
『国民的スポーツエンターテイメント、トゥインクルシリーズ。実況は私赤坂と解説は細江さんでお送りします』
『よろしくお願いします』
『本日のメインレースは日本ダービーです!なんと入場規制がされるほど多くの人がここ東京レース場に押し寄せています!会場にお越しになれないファンのためにここ東京レース場の様子は生配信されています。八枠、最後に登場するのは一番人気、トウカイテイオーです!』
『テイオー!』
『テイオー!!!』
日本ダービーで大外八枠に入ったウマ娘が勝ったことは一度もない
「さて、どうやって走るのか」
テイオーの走りを考えていると目の前が真っ暗になった。誰かに手で覆われたようだ
「だーれだ♪」
スキーだな
「誰だろー。ちょっとわからないなー」
「えぇ〜、先生私よ私」
「新手の私私詐欺かな。申し訳ないんだが財布の中にはそんなに入ってなくてね。他をあたった方が」
「もぅ!先生なんでわかってくれないの!」
「おうスキーだったかー。全然わからなかったー」
「むぅ!」
「ふっ、先生も人が悪いな。本当はマルゼンスキーだとわかっていたのだろう?」
「ルドルフもいたのか」
「ちょっとそれ本当!?そうなの先生!?」
「まぁな。こんなことする娘なんてスキーぐらいだしな。そうじゃなくても声でわかったしな」
「じゃあ普通に当ててよ〜」
「いつもスキーに弄られてばかりだしたまにはな」
そう言ってスキーの頭を撫でてやる
「も、もぅ。こんなことしてご機嫌取れるなんて思わないでよね♪」
表情と尻尾でわかるんだよな
「そうだ。テイオーは勝てないと言われている大外枠なんだが、どうなると思う?」
「ここはスタート直後に急カーブがあるため大外は不利とされているが、それを不利と見るか有利と見るかはウマ娘次第さ」
「そうか。なら、テイオーなら大丈夫だな」
「どうしてそう思うんだ?」
「テイオーならそんなことで悩んだりしないだろ」
「ふふっ、確かにな」
ん?おーこれは珍しい
「ちょっとはずすな」
「もうすぐスタートだが?」
「それまでには戻るさ」
オレは気になる娘の元に歩み寄った
「シービー。君も来ていたのか」
「やぁ先生。会えて嬉しいよ」
"ミスターシービー"。ルドルフやブライアンと同じように三冠を達成した三冠ウマ娘。ウマ娘界きっての追い込みウマ娘で有名だ。また勝利のセオリーが存在したレース場で次々と常識はずれな勝利を掴んできたのもその名を上げている原因だろう
「天下のミスターシービー様が注目のウマ娘が今日出るのかな?」
「意地悪だな先生、その言い方」
『二番人気リオナタール。ターフへやってきました』
『そして三冠ウマ娘のミスターシービーが期待を寄せる三番人気シガーブレードが入場です』
シービーは入場したシガーブレードに対してグッドサインを出した
「なるほど、そういうことか」
「あぁ。皐月賞では二着だったし今日もいい走りができると思う。でも...」
「でも?」
『そしてここまで無敗のウマ娘、トウカイテイオーが皐月賞に続き二冠を制するかどうか非常に注目されます』
「トウカイテイオー、彼女の方が一枚も二枚も上手なのは事実なんだ」
「そうか。んじゃオレは戻るよ」
「おや、一緒に観てくれないのかい?」
「先にルドルフ達と会ってな。よかったらシービーも一緒に来るか?」
「いや遠慮しておこう。先生、今度は二人きりで、な?」
「その約束はできかねるな」
「そうか。では今度誘いに行くとしよう」
「話聞いてた?」
これ以上話しても意味ないことはすぐ理解したので戻った
「おかえりせんせ」
「何かあったのか?」
「シービーに会ってきた」
「あら、さっき名前が出たからもしかしてとは思ったけど」
「本当に来ていたのか」
「あぁ」
♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜
『枠入りが始まっております。各ウマ娘順調に枠入りしていきます。最後にトウカイテイオー悠然とした表情でゲートに入ります。無冠の二冠ウマ娘が期待されているトウカイテイオー、皐月賞に続きこのレースを制することができるのか!大きな歓声、大きな期待に包まれて東京有償日本ダービー、今スタートしました!』
テイオーはいいスタートを切り中盤大外に位置づけた
「各ウマ娘がスーッと内側に切れ込んで第一コーナーに向かいます。トウカイテイオーは1、2、3、4、5、6、7、八番手で第一コーナーに差し掛かります」
「先生が言った通り大外スタートでも関係なかったようね」
「マルゼンスキー覚えているか?昔テイオーに君がかけた言葉」
ルドルフが三冠を達成した日に現れたテイオーにスキーは『ルドルフちゃんみたいになるには才能、努力、運の三つが完璧に備わってないとね』と伝えていた
「えぇもちろん」
「テイオーの生まれ持った素質である膝や足首の柔らかさは才能、毎日の人並み以上してきた努力、そしてあれだ」
「ダービーは最も運があるウマ娘が勝つと言われてるからね」
「まさに今日のレースは運が試される」
『向正面から第三コーナーへ。トウカイテイオーは外側七番手の位置。そして第四コーナーを回ってた!トウカイテイオー五番手に上がってくる!』
テイオーの目の前には誰もいない。外側を回る利点はここだろう。内側だと他のウマ娘に囲まれて身動きが取れなくなってしまうことも多々ある
『トウカイテイオースパートをかける!外からトウカイテイオーがやってくる!トウカイテイオーがくる!残り40m、トウカイテイオーがきた!しかし他のウマ娘もやってきた!』
「うわー強い」
「こうなったら無重力状態だな」
『トウカイテイオー抜けた!三馬身から四馬身!文句なし!これは文句なし!大外不利もなんのその!トウカイテイオー、日本ダービー制覇!二冠達成!まさに横綱状態!トウカイテイオー、シンボリルドルフ以来無敗の二冠達成!』
『テイオー!テイオー!テイオー!テイオー!』
『おっとテイオーコールだ!』
無敗の二冠達成に大盛り上がり、その熱気はその後のウィニングライブにも続いた。しかし舞台袖で見ていたオレやルドルフは気づいてしまった
「っ!?」
「ルドルフ...」
「先生」
「すまん、テイオーの三冠は叶えられないかもしれない」
「...」
テイオーの違和感に気づいた者は何人いただろうか