ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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第二R

 

テイオーの診断は骨折、菊花賞はおろか入院。さらには復帰は一年後という結果になってしまった。その報道は大々的に発表され今は6月で菊花賞は11月。テイオーの三冠は絶望的と誰もが思い、怪我がなければと悔しがるファンもいた

 

しかしテイオーは諦めなかった。菊花賞は絶対走るという強い意志をトレーナーに伝え、トレーナーもそのためのプランを練る。しかし...

 

「ダメです、許容できません」

 

「えー、お願いだよ先生!」

 

「いくらトウカイテイオーさんに強い意志があろうと医者が全治6ヶ月と判断した以上はその間走らせるわけにはいきません」

 

「大丈夫だよ、どうにかするから!」

 

「怪我は気持ちでどうにかできるものではありません!」

 

「っ!」

 

オレが声を荒げるのは滅多にない。しかし今回は声を荒げざるを得ない。これもテイオーのためなんだ

 

「それにサイレンススズカさんのことを忘れたんですか?彼女は今のあなたよりも酷い状態であり完治にもあなたよりも長い時間がかかった。トウカイテイオーさん、あなたは一年後には復帰ができるんです」

 

「でも、僕の夢は」

 

「無敗の三冠ウマ娘、シンボリルドルフ会長のような。でしたね?」

 

「うん...」

 

「ここでムリして夢を達成したとしてその後走れないことをシンボリルドルフさんは望んでいるのでしょうか」

 

「それは...」

 

「ファンの人にしてもそうです。怪我を負ったままムリして出る1レースと、完治してから本来の強さを見せられる多くのレース、どちらが見たいのでしょう。少なくとも自分は後者です」

 

「そうかもしれないけど...それでも!」

 

「...」

 

彼女の意思は固いようだ

 

「よう」

 

「何か...?」

 

するとスピカのトレーナーがやってきて分厚い紙束を渡された

 

「これは?」

 

「菊花賞までのテイオーのトレーニングメニューだ」

 

「本気ですか?」

 

「あぁ本気だ。テイオーが諦めない限り俺はそれを支える」

 

トレーナーは真剣な表情でテイオーを見る。その顔を見たテイオーも強い眼差しに戻ってオレを見てきた

 

「僕、やっぱり諦めたくない!」

 

「はぁ...」

 

オレは一回ため息を吐き渡された紙束に目を通した

 

「あなたはトレーナー失格ですね。普通ならばあなたが止めるべきなのでは?」

 

「そうなんだろうが、俺はできることをやってやりたいんだ」

 

「そのようですね。これもトウカイテイオーさんの怪我の後急いで資料なんかに目を通したのでしょ?」

 

「んぐっ!」

 

「ところどころ穴があります。修正は自分がしましょう」

 

「っ!先生それじゃあ...!」

 

「えぇ、自分もサポートしましょう」

 

「お前...」

 

「やったー!」

 

「ただしトウカイテイオーさん、いくつか約束があります。これを受け入れられない場合はあなたを縛り上げてでも止めます」

 

「(ゴクリ)...」

 

「まず提示されたこと以外の自主トレーニングなどは一切禁止します。二つ目にムリはしない。痛みや違和感などあればすぐに来てください。そして、ギリギリまでやってみてそれでも医師がノーと言えばそれに従ってください。言うことを聞かずに勝手にレースエントリーした場合はそれ相応の対処をとらせていただきます。これが自分との約束です。よろしいですか?」

 

「うん、わかった」

 

テイオーは力強い目をしたまま頷き了承した

 

「ではこのレシピは一旦お預かりします。明日にはお戻ししますので」

 

「わかった、よろしく頼む」

 

「先生、ありがと!」

 

テイオーとトレーナーは退出した

 

「さてと...」

 

2人が出て行ったのを確認してから机に向かってもらった資料を見返し、修正部分を直していった

 

「テイオーさん、思ったより元気そうでしたね」

 

「まだ残っていたんですか?グラスワンダーさん」

 

「練習が終わって先生に会いに来たら先客がいらっしゃったので」

 

「ではさっきの話は聞いていたんですね」

 

「えぇ」

 

「盗み聞きとはいい趣味ではないですよ?」

 

「そんなつもりはなかったんですが。すみません」

 

「口外はよしてくださいね。伝えるとしてもトウカイテイオーさん自身。あるいはスピカのトレーナーさんがするでしょうから」

 

「心得ています。それより先生...」

 

「はい?」

 

「今は放課後で私と2人きりなのですが」

 

「わかっているなら早く帰りましょうね」

 

「むぅ〜最近先生が構ってくれなくて私悲しいです」

 

「一週間前にお昼を一緒に取ったと記憶しているんですが?」

 

「一週間も間が空いたじゃないですか」

 

「どれだけ辛抱がないんですが」

 

「先生には毎日でも相手して欲しいんです」

 

グラスといいスキーといい練習が終わったなら早く帰って身体を休めなさいと言っているんだがな

 

「まぁいいです。先生が人気者なのは今に始まったことではないですし」

 

「それは自分が望んだわけでは...」

 

「それでもなんです!さ、先生ももう帰るんですよね?よかったら一緒に帰りませんか?」

 

「申し訳ない。自分はまだしなければならない仕事がありますので」

 

「働き過ぎはよくないですよ?」

 

「わかってます。しかしこればっかりは今日中に仕上げなければならないので」

 

俺がそう伝えるとグラスは明らかに残念そうに頭を垂れる

 

「わかりました。あまりムリしないでくださいね」

 

「ご忠告感謝します。グラスワンダーさんも気をつけて帰ってくださいね」

 

「はい。テイオーさん、早く良くなれることを祈っていますね」

 

「っ,,,これからは自分自身との戦いになる。グラスのときと同じようにな」

 

「先生...」

 

「それだけか?それならほら、そろそろ帰りな」

 

「頭撫でてくれたら帰ります」

 

「まったく君は。お淑やかに見えてなかなか逞しい性格をしてるよな」

 

「先生にだけです♪」

 

仕方なくグラスの頭を撫でると気分が上がったのかルンルンで帰っていった

 

 

 

 

 

 

 

「はいこれ」

 

「おいもしかしなくてもお前、徹夜したのか?」

 

「これぐらいなんでもない。いいか?テイオーにも言ったがトレーナーも焦るなよ」

 

「わかってる」

 

翌日の朝には修正終了した冊子を渡した。しかしこれでテイオーが間に合うという保証はまったくない

 

「ありがとな」

 

「本来ならオレは反対の意見だ。でも怪我した本人とそのトレーナーがやるっていうんならそれを止めるなんてことは現状はしない。あとは今後の状態をみてその都度判断させてもらう」

 

「すまねぇな」

 

「今回の件はオレにも責任がある。テイオーが望むならスズカやグラスみたいにつきっきりで看ることもする」

 

「それはテイオー次第だな。今日聞いてみる」

 

「あぁ」

 

そしてテイオーの戦いは始まった。まだギブスもついたままで松葉杖状態のため練習はスピカのメンバーが走っている様子を観察し、自分ならどう走るかひたすらシミュレーションすることからであった。そして毎日オレが足の状態を診ながらむくみを取ったりの処置をした

 

それから一ヶ月後にはギブスが取れ歩行のリハビリに移った。テイオー本人もここからが本番と感じていたのかやる気を見せるが焦らずトレーナーのメニューをきっちりこなす。テイオーはオレのつきっきりのリハビリは...

 

『僕が先生を取っちゃうと会長や他のみんなから怒られちゃうからね。いつもの調整だけで十分だよ』

 

...と大丈夫なようだった

 

「やぁ先生」

 

「テイオーのこと気になってるのか?」

 

グラウンドでリハビリを頑張っているところを見ているとハヤヒデとブライアンがやってきた

 

「もう練習は終わりですか?」

 

「いや一旦休憩だ。先生こそこんなところでサボっていていいのか?」

 

「これは手厳しい。では自分も休憩中、ということにしておいてください」

 

「ふっ、ならばそういうことにしておこうか」

 

「先生、テイオーの具合はどうなんだ?」

 

「順調ですよ。怪我発覚から1ヶ月でギブスが取れて、サポーターをしてはいるもののああして歩行のリハビリもできています」

 

「そうか。菊花賞には...」

 

「それはわかりません。トウカイテイオーさん自身とスピカのトレーナー次第ですね」

 

本音を言えば非常に厳しい。4ヶ月足らずでレースで走れるような身体に戻すことは困難であるのは事実だ

 

「センセー!」

 

「うおっ」

 

「エルコンドルパサー 、危ないだろ」

 

「センセーを見つけて居ても立っても居られなかったデス!」

 

いっつも思ってるんだけど君達が突っ込んできたらオレ粉砕骨折ものだからね?わかってるのかな

 

「きょ、今日も元気ですねエルコンドルパサー さん」

 

「ハイ!センセーに会えたのでもっと元気になりまシタ!」

 

「それはよかった」

 

「先生はエルコンドルパサー やタイキシャトルに甘すぎだ」

 

「まったくだ」

 

「先生は優しいですカラ!」

 

「お前は甘えすぎなんだ」

 

「イタッ!」

 

勢い良く抱きついてきたエルにブライアンがチョップを入れハヤヒデが首根っこを掴んで引き離した

 

「アーン、センセー」

 

「いい加減にしろエルコンドルパサー 」

 

「先生すまないな、私達は練習に戻る」

 

「えぇ、頑張ってください」

 

ハヤヒデがエルの首根っこを掴んだまま引き摺るように連れて行きエルが手をパタパタと抵抗するも無駄であった

 

「先生」

 

「はい?」

 

最後にブライアンが不意にオレの胸ポケットに入れてあった棒付き飴を取った

 

「これはもらうよ」

 

「まいったな」

 

ブライアンはいい笑顔を見せてハヤヒデを追いかけた

 

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