ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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第六R

 

「全治6ヶ月か」

 

「はい。宝塚記念に出走できないのは甚だ残念ではありますが、一時学園を離れて実家で療養いたします」

 

「チームからも少し離れるということか」

 

「えぇ。トレーナーからの了承も得ています」

 

春の天皇賞、テイオーとの劇的なレースに勝利したマックイーンだったが宝塚記念を目前に左足を骨折。治療を余儀なくされてしまった

 

「マックイーン...」

 

「そんな顔をしないでくださいまし、先生」

 

「だが...」

 

「先生は多忙な方です。現にミホノブルボンの調整を彼女のトレーナーさんから直々に頼まれたと聞いています。それに他の生徒も診ているのでしょう?」

 

春の天皇賞の後、オレは日本ダービー、それに菊花賞に向けたブルボン達の調整を頼まれた。学園の方からもそっちについてくれとお達しがあったためマックイーンを診てやれなかった

 

「テイオーは何か言っていたか?」

 

「はい?」

 

「君達はライバルなのだろう?春の天皇賞でも激戦を称え合っていた」

 

「天皇賞はもう終わったことですわ。その先をどうするのか、私はそれだけを考えます」

 

「そうか...」

 

「勝ちたいという本能に逆らえるウマ娘はいませんわ。では失礼致します。先生」

 

「ん?」

 

「必ず戻って参りますわ。あなたの元に」

 

「あぁ、待ってるよ。焦らず無理せずにな」

 

「心得ていますわ。ではしばしのお別れです」

 

「時間ができたら見舞いにでも行くよ」

 

「それは嬉しいですわ。楽しみにしています」

 

マックイーンは諦めず完治したその先を見据えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ」

 

「珍しいですね、先生がそんな長いため息つくなんて」

 

「マックイーンが骨折して、オレはまた怪我人を出してしまって」

 

「残念ではありますが先生の体は一つなんです。それにメジロマックイーンさんはもう戻ってこれないわけではないんですよね?」

 

「確かにそうですが...」

 

「ならあの娘を信じましょ、ね?」

 

「たづなさん...」

 

今日は行きつけのバーで学園で理事長の秘書を務めている駿川たづなさんにやけ酒に付き合ってもらっていた

 

「ねぇ先生」

 

「はい?」

 

「話が変わりますが、あの話考えてくれましたか?」

 

「あの話?」

 

「えっと...その、お...お付き合いの...」

 

「あ、あぁ...」

 

去年の夏休み前、学園の生徒のほとんどが合宿などに赴いて学園の清掃を教員一同でしていた時。たづなさんから告白のようなものを受けた

 

「えっと...すみません。自分はまだ仕事に打ち込みたくて...」

 

「そう、ですか...」

 

「あ!でも決してたづなさんのことが嫌いってわけではなくてですね!自分が学園に来た時からよくしてもらってますし!」

 

「ふふっ、慌て過ぎですよ先生」

 

「はっ!すみません...」

 

「先生のそういう慌てるところ可愛いです。いつもはしっかりとしているので、ギャップ萌えと言うやつでしょうか」

 

「ど、どうでしょう。自分もそういう言葉には疎くて」

 

「そうでしたね」

 

少し沈黙が訪れグラスの氷が溶けて音がする

 

「ちょっと酔ってしまったかもしれないです」

 

「あ、すみません付き合わせてしまって」

 

「大丈夫です。でも、家までお願いしますね♪」

 

「...かしこまりました」

 

その後お代を支払ってタクシーを使ってたづなさんを家まで送った。タクシー内でたづなさんが妙に距離が近かったのは誰かに見られてないことを祈るしかない

 

ちなみに朝起きたたづなは昨夜の行動、言動を思い出して恥ずかしさで押しつぶされそうになっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菊花賞。ブルボンが無敗で三冠を獲ることが期待されていたが、その夢は小さな刺客によって達成されなかった

 

そしてついこの間、マックイーンが復活のレースに出走。前回雨だった阪神大賞典、今回は綺麗に晴れてマックイーンの復活を喜んでいるようだった

 

そして世間はまた夢を抱く。天皇賞三連覇。前代未聞のこの挑戦に挑むマックイーンを多くの人が応援していた

 

あの春の天皇賞以来気持ちが落ち込んでいたテイオーも走る気持ちを取り戻していっているらしい

 

しかし問題が一つ。ライスがブルボンの三冠を阻んだ菊花賞以来頻繁に俺のとこに来るようになった

 

「お兄様助けて!」

 

「おっと!どうしました?」

 

「先生ライス来てる?いた!」

 

「ひぃ!!」

 

ライスが逃げ込んできたと思ったらテイオーとブルボンがライスを探してやってきた

 

「おーよしよし。本当に何があったんですか?」

 

「ライスが春の天皇賞出ないって言うんだ!」

 

「しつこいです!もう放っておいてください!」

 

「しつこいのはライスです!あの菊花賞、凄まじいしつこさだったじゃないですか!」

 

「菊花賞の話なんてしないで!!」

 

うおー、この至近距離でその大声はやめてほしいぞー?

 

「ライスは認めてほしかった...ブルボンさんに勝つことができればきっと認めてくれると思った。だから一生懸命頑張った!でもライスの勝利なんて誰も求めてなかった。ライスが勝ったのに!誰もライスのこと認めてくれなかった!」

 

ライスは泣きじゃくりながらオレの肩あたりに顔を埋める

 

「ライスはテイオーさんやブルボンさんとは違う...ライスはヒールなんだよ。みんなから嫌われて、ブーイングされて、みんな不幸にしちゃう...祝福の名前をもらったのに、ライスシャワーなのに...だから私はもう走らないんです」

 

「ライス...」

 

「しのごの言わずに走りなさい!」

 

「どうしてそんなこと言うの!」

 

「あなたに走って欲しいからです」

 

「わかんない!走りたくないって言ってるのにそんな...ライスが走っても誰も喜ばない!勝っても誰も喜ばない!走る意味がない!それなのになんで!」

 

「あなたは私のヒーローだからです」

 

「え...」

 

オレの肩に埋めていた顔をブルボンとテイオーの方に向けるライス

 

「今度はあなたに勝ちたい。あなたがいるから私は菊花賞で負けても挫けず、走るのを止めることなく頑張れた。確かにあなたは私から夢を奪いました。でもあなたは新たな夢を、闘争心を私にくれた」

 

「ブルボンさん...」

 

「あなたはヒールじゃない。ヒーローなんです」

 

「私が...ヒーロー...」

 

「それなのになんですか!あの有マ記念8着は!」

 

先日の有マ記念。1着はパーマーでライスは8着。ちなみに隣にいるテイオーは11着とさらに下の順位だったりする

 

「あなたは私のヒーローなんです!強いウマ娘なんです!天皇賞に出てそれを証明しなさい!」

 

「...なんだ、そんな表情もできるじゃないかブルボン」

 

「先生...」

 

「なぁライス。さっきライスが勝っても誰も喜ばないって言ったよな?」

 

「はい...」

 

「オレさ。2人ほど心当たりがいるんだよ、ライスが勝って喜ぶやつに」

 

「え...」

 

オレは静かにまずブルボンを指差した

 

「あの娘と」

 

そしてその指をゆっくり自分に向ける

 

「ここに」

 

「〜っ!お兄様...!お兄様ぁぁぁぁぁ!!!」

 

ライスは泣いた。これ以上ないほど泣いた

 

しばらくしてようやく泣き止んだ

 

「私、天皇賞出ます」

 

「ライス!」

 

「やったー!」

 

ライスが心を入れ替えたことにブルボンとテイオーが喜びをあげる

 

「ライス、頑張るねお兄様♪」

 

 

 

 

 

 

それから数日後、ライスは学校から姿を消した...

 

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