ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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第十四R

 

 

『本日は菊花賞。世代最強を決めるBNW最後の戦いの結末を見るため多くのファンが詰めかけています』

 

この日のための調整を請け負っていたハヤヒデ、タイシン、チケットは最高のコンディションで送ることができた。クラシック三冠の最後を締め括るのがその3人の中の誰かなのか。はたまた他のウマ娘が待ったをかけるのかわからないが誰が勝ってもおかしくない

 

「あの、お兄様...」

 

「どうかしましたか?ライスシャワーさん」

 

BNWの3人には会場に来て最後の戦いを見てほしいと言われたがあいにく別の娘の調整を受けていたので会場に出向くことはできなかった

 

しかし3人の勇姿を見ようと中庭のベンチに座って自分の携帯でレースの始まりを待っているとライスがやってきた

 

「私も一緒に見ていい?」

 

「構いませんよ」

 

恐る恐る聞いてきたライスが許可が出て嬉しくなったのかパッと笑顔になった。ウキウキ

で近づいてきて隣に座るのかと思いきやそれが普通かのように自然とオレの膝の上に座った

 

「ライスシャワーさん?」

 

「どうしたの?」

 

「隣が空いていますよ?」

 

「?ライスはここでいいよ?」

 

なんでそんなこと聞くの?みたいな顔でオレを見上げるのは止めなさい。こっちが間違ってるのかと思うわ

 

「ほらお兄様、始まるみたい」

 

「はぁ...」

 

「わかるよお兄様。誰が勝つんだろうね」

 

「いやそういうわけじゃ」

 

「違うの?」

 

「あぁ、うん。もうそれでいいです」

 

「?」

 

キョトンとしているライス。なにを言ってもわからないだろうし変に力づくでどかすといじけるだろうな

 

もう諦めてその状態のまま画面に目を戻した。レースは序盤からハイペースに進んだ。ハヤヒデは中団、チケットは後方から、タイシンは最後尾からといつもの展開となった

 

一度目の正面を抜ける際は特に動きはない。しかし第2コーナーを回った時には1人がどんどんと追い抜かれて遥か後方へ。そんな中ハヤヒデは三番手の位置につけチケットも六〜七番手に位置づけた。タイシンもここぞという機会を狙ってる感じだった

 

『第4コーナーを回って最後の直線に入りグッと伸びて抜け出したのはビワハヤヒデ先頭に立った!BNW無冠の最後の1人が遂にここにきて頭角を表すのか!ウイニングチケットも伸びてくるがしかしビワハヤヒデ!リードが4バ身、5バ身とさらに突き放す!圧倒的安定感!他に強さを見せつけるビワハヤヒデ!今ゴールイン!』

 

クラシック最終戦の菊花賞を制したのは皐月賞、日本ダービーと惜しくも二着に終わっていたハヤヒデが制した

 

『なんと二着に5バ身差!最も強いウマ娘が勝つと言われているG1を制覇しました!こ、このタイムは!レコードだ!前回のライスシャワーの記録を上回ってきた!』

 

「すごい...」

 

「そうですね」

 

「去年のライスよりも...」

 

「一概にそうとは言えませんね。でもこの世代で一番強いのは彼女なのかもしれませんね」

 

「もし、ビワハヤヒデさんが有馬記念に出たら」

 

「ライスシャワーさんも出走予定でしたね」

 

「うん」

 

「強敵なのは確かです。しかしこの世に絶対はありません。ビワハヤヒデさんが有馬記念に出るからと言ってあなたが一着を取れない道理はありませんよ?」

 

「お兄様...」

 

「有馬記念まであと2ヶ月ほど。もっとトレーニングに励まなければですね」

 

「うん..うん!ライス頑張るよ!」

 

「その意気です」

 

今のところ有馬記念に出走予定なのはライス、パーマー、ナイスネイチャ、マチカネタンホイザ、それに加えて出るとしたらBNWの3人にマックイーン。注目はクラシックを分かち合ったBNWと去年宝塚を制した後、テイオー・ライスを破った前回覇者のパーマー。2度も栄冠を阻止したライスと天皇賞春3連覇を逃したものの今年の宝塚記念を制したマックイーンと言ったところか。しかし2年連続有馬記念3着のナイスネイチャにマチカネタンホイザだって最近調子は上がってきている様子。もしここに本調子のテイオーが加わっていたら今年は例年以上に誰が勝つかわからないだろう

 

「先生」

 

「メジロマックイーンさん。トレーニングですか?」

 

「えぇ」

 

ライスの頭を撫でながら次の有馬のことを考えているといつの間にかマックイーンの姿があった

 

「ライスさん、少々先生をお借りしてもよろしいかしら?」

 

「あ、はい。あとで返してくれるのでしたら」

 

「大丈夫ですわ。すぐ済みますので」

 

「わかりました。じゃあお兄様、またあとでね」

 

「えぇ」

 

ライスはオレから降りて校舎の方へ向かった

 

「何かありましたか?」

 

「えぇ。少し診ていただきたいのです」

 

「わかりました。メディカルルームに移動しましょう」

 

マックイーンは左膝をさする。何か違和感があるようだ

 

場所を移動してマックイーンをベッドに座らせ言われたように左足を触診してみる

 

「...メジロマックイーンさん。しばらくトレーニングを控えてください」

 

「それはどういう...」

 

「自分も確信が持てるわけではないですが、最悪あなたは走れなくなります」

 

「っ!」

 

マックイーンはオレの言葉に驚く

 

「急いでメジロ家専属のドクターに診てもらうべきです。自分の予想通りなら...」

 

「ま、待ってください先生。冗談ですわよね...?わたくしが走れなくなるなんて...」

 

「...」

 

「なにかしら怪我をしていたとしても、以前のようにまた治りますわよね...?」

 

「...」

 

現実を受け止められないマックイーン。オレは無言で診察を続けるしかなかった

 

「そんな...そんな!」

 

「あくまで自分の状況判断です。間違っている可能性もあります」

 

「...」

 

マックイーンは顔を手で覆い涙を流している

 

マックイーンの代わりにオレがメジロ家の執事の方を呼んでマックイーンを連れて帰らせた。そして数時間が経ってメジロ家当主から連絡があった。マックイーンは...左足の繋靭帯炎と診断されたそうだ

 

これは完治するまでに最低でも8か月~1年、たとえ完治できたとしてもまた再発する可能性が高いというウマ娘にとって不治の病とも呼ばれている。この怪我に幾度とないウマ娘達が引退を余儀なくされた

 

「クソが!テイオーの次はマックイーンかよ!」

 

チームスピカのトレーナーはメディカルルームの壁を殴るなどして感情を露わにしていた

 

「壁に当たるのは止めてください」

 

「お前はなんとも思わないのか!テイオーが復帰してマックイーンとのライバル対決がやっとって時なんだぞ!」

 

「なにも思わないわけないでしょう。だからこうして昔の文献を読み直して緒を見つけようとしてるんじゃないですか」

 

「お前...」

 

「自分達が慌てたってメジロマックイーンさんの足が治るわけじゃない。悔やんでいる時間なんてもっと無駄でしょう」

 

「そうか...そうだよな」

 

するとそこでオレの携帯に着信が入った

 

「もしもし」

 

『私だよ』

 

「これはご当主。珍しいですね、あなたが電話なn...『マックイーンが姿を消した』...なんですって...」

 

『安静にしておくよう伝えたら逆に出ていってしまってね』

 

「わかりました。捜索に加わりましょう。どこか宛はありますか?」

 

『プライドと意識の高い娘だ、どこかで無理矢理足を動かしてるかもしれないね』

 

「なるほど。さすがご当主、わかってらっしゃいますね」

 

『どうなろうと私はあの娘の祖母さ。家族のことがわからないでどうするさね』

 

「おっしゃる通り。見つけ次第お伝えします」

 

『頼んだよ。私のところに連れてきな』

 

「ほどほどにお願いしますね」

 

『約束はできかねるね』

 

そこで通話は途切れた

 

「どうした...?」

 

「メジロマックイーンさんが姿を消したそうです」

 

「なに!?」

 

「落ち着いてください。どこにいるかの目処は経っています」

 

「本当か!?」

 

「行きますか?」

 

「当然だろ!」

 

まぁそうだろうなと思いつつ2人で車を飛ばした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降りしきる中、マックイーンがいると思われるメジロ家が保有するターフ場に着くと先にテイオーがいた

 

「運命ってさ残酷だよね。どうしてもボクとマックイーンを勝負させたくないみたい。宝塚記念で一緒に走れると思ったらまた骨折しちゃって。もう元のようには走れないなんて言われて…それで今度はマックイーンまで…。きっとさ、もう諦めちゃったほうが楽なんだよね。でも、ボクはまだ諦めたくない。もう一度キミと走りたいよ。マックイーンは違うの?」

 

「そんなの...走りたいに決まってます!だけどもう無理なんです!もう一生まともに走ることなんてできない!奇跡でも起きない限り元の様に駆けることは叶わない!あなたと一緒ですわ!...はっ!」

 

「なら大丈夫じゃないか」

 

「先生...」

 

「先生...どうしてここに」

 

「メジロ家当主様からお願いされました」

 

「お婆様が...くっ!」

 

「マックイーン、テイオーと一緒とキミは言ったな?」

 

「それは...」

 

「ならキミも復活できるということだな」

 

「っ!」

 

「なにを言って...」

 

「テイオー。君もそう言いたかったんだろ?」

 

「えっと...」

 

「マックイーン。時間はかかったがテイオーはこうして復活した」

 

「でも、前のような走りは...」

 

「うん。まだ走れてない。奇跡が起きなきゃ無理だ。だから起こすよ、奇跡」

 

「テイオー...」

 

「僕が証明して見せる。ボクとマックイーンがもう一度絶対走れるようになるって。今度の有馬記念見てて。ボクは誰よりも先にゴールする」

 

「そ、そんなこと不可能です。今のあなたが勝つなんて...」

 

「それでもボクは勝つんだ。奇跡を望んで頑張れば必ずできる!」

 

「それ、って...テイオー...」

 

マックイーンは前に自らテイオーにかけた言葉を思い出す

 

「マックイーン、キミはテイオーが戻ってくることを信じて走り続けた。今度はキミがテイオーを信じる番だ」

 

「先生...でも...」

 

「それに君は何か勘違いをしてるよ。確かに繋靭帯炎は再発リスクが高く不治の病なんて言われてるけど、なにも完治する可能性が0なわけじゃない」

 

「え...」

 

「そのリスクゆえ発症してしまったウマ娘は引退する娘が多い。未だ科学的にも完全に完治できる術があるわけでもない。でも絶対に再発してしまうという記述もない」

 

「じゃあ、わたくしは...」

 

「まだ諦めるのは早いってことだ」

 

「先生...」

 

「マックイーン!」

 

「トレーナー」

 

「俺はもう一度お前が走るところを見たい!」

 

「それテイオーにも同じこと言ってなかったか?」

 

「変な横槍はよせ!いいんだよ。マックイーン、諦めるな。諦めなければ道は開ける!」

 

「ボクが走るのを諦めかけた時引っ張ってくれた。挫けそうなとき、傍にいてくれた。ボクの目標になる強いウマ娘であり続けていてくれていた。待っているって言っていたのはマックイーンだった。今度はボクの番だ。だから見てて、マックイーン。最強であり続けてくれて、待ってくれていたマックイーンに、見せてあげる!」

 

テイオーの覚悟を聞いてそれを応援するかの如く、マックイーンの心模様を表すが如く、降っていた雨が止み、雲間から光が差し込み、虹が架かった

 

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