ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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第十六R

 

「くは〜っ!先生、そこダメぇ〜」

 

「ダメと言われましても、きちんと診ておかないと」

 

「そうだけど、うぉっ!」

 

有馬記念に向けて最後の調整。既にマチカネタンホイザは診終わっていて今はナイスネイチャを診ている

 

「あー効くー。こりゃ一家一先生必要だね」

 

「自分を新しい単位にしないでくださいね」

 

「わかっちゃいるけど、こりゃダメだ〜」

 

「華の学生が出してはいけない声してますよ」

 

「気にしない気にしない。私と先生しかいないし」

 

「マチカネタンホイザさんもいるじゃないですか」

 

「マチタン気持ち良すぎて寝ちゃってるじゃん。ならいないのと一緒だよ」

 

「そんなものですか」

 

「そういうもんなんだよ。あ、先生そこイイ!」

 

確かに足の疲労を取るようにはしてるけどさ。そんな風呂上がりにマッサージチェアで癒されるおっさんみたいな声出してていいのかい...?

 

「はい、終わりましたよ」

 

「あちゃー終わっちゃったか」

 

「お疲れ様でした」

 

「んー!やっぱりさすが先生、さっきまでの疲労が嘘みたい」

 

「それならよかったです」

 

『あの、カノープスのトレーナーです。終わりましたでしょうか?』

 

「えぇ。入ってきていただいて大丈夫ですよ」

 

「失礼します」

 

マチカネタンホイザとナイスネイチャを迎えにきたカノープスのトレーナー。真面目な好青年だが、腰が低く、個性的なカノープスメンバーによく振り回されている。それでもテイオーの引退予定ライブのときに、テイオーにツインターボのレースを見せるというメンバー全員からの無茶振りにも近い計画を考える、スピカのトレーナーのようにウマ娘の自主性を第一に考えてそのサポートに徹するなど、なんだかんだメンバーから慕われているいい人だ。

 

「2人に異常はありませんでした」

 

「そうですか、ありがとうございました」

 

「いえ」

 

「いやー先生ってすごいよトレーナー。これなら今度こそネイチャさん有馬で一着取れちゃうかもなー」

 

「そうなれば私としても嬉しいです」

 

「あとは体調に気をつけていれば大丈夫でしょう。肌寒くなってきましたのでしっかり暖まってから寝るようにしてくださいね」

 

「りょーかい。んじゃ行こっかトレーナー。マチタン運ぶのよろしくねー」

 

「わかりました」

 

「手伝いましょうか?」

 

「いえ、先生にそこまで手を煩わせるわけにはいきませんので。それに、先ほどから部屋の外でソワソワされている方がいらっしゃいますし」

 

「ん?」

 

カノープスのトレーナーから聞いて部屋の扉を見てみると小さな影がサッと隠れた

 

「まだ時間には早いんですが」

 

「それほど先生にお会いしたかったのでしょう。では私達はこれで」

 

「先生見ててね。有馬では度肝抜いてやるんだから」

 

「えぇ、頑張ってください」

 

マチカネタンホイザをおぶったカノープスのトレーナーとナイスネイチャは部屋を出た

 

「お兄様...?」

 

「お待たせしました。入ってきて大丈夫ですよ」

 

「うん!」

 

待ってましたと言わんばかりにライスが一目散にオレに駆け寄り懐に飛び込んできた。オレは咄嗟に手を広げて受け止めた

 

「危ないですよ」

 

「ご、ごめんなさい。お兄様に会えたのが嬉しくって」

 

「大事なレースを控えてるんですから、気をつけてくださいね」

 

「うん」

 

「どこか身体に違和感があるところはないですか?」

 

「大丈夫。いつもお兄様が診てくれるからライス元気だよ」

 

「なによりです。じゃあそこに座って前屈してみてください」

 

「え...」

 

「自分は言いましたよね?トレーニングも大事だけどストレッチも同じくらい大切だと」

 

「うん...」

 

「前は全然曲がらなかったですけど毎日やってれば成果も出ますよね?」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

ライスは前屈すれば硬いままだとわかって怒られると思い顔を埋めて謝ってきた

 

「お兄様ごめんなさい!怒らないで!」

 

「落ち着いてください、怒りませんから」

 

「本当...?」

 

「まぁお説教したい気持ちは少しありますが」

 

「ひっ!」

 

「でもレース前なのでなしにしましょう。今度から気をつけてくださいね」

 

ライスはオレの顔を見上げながら勢いよく首を縦に何度も振った

 

「では足の方を診せてもらいますので向こうで横になってください」

 

「あの、もう少しこのままじゃダメ...?」

 

「...仕方ないですね。もう少しだけですよ?」

 

「うん!お兄様大好き!」

 

うーん、どうしてもライスは甘やかしてしまう。年齢的には他の娘と同じなのに。いかんなこんなことでは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライスの調整はすぐに終わり次の娘達の時間まで少し時間があったためライスを寮まで送っていった。

 

そして戻ってきた時には既にチケットとハヤヒデがメディカルルームにおり、なぜだかすごい怒られた

 

「先生、チケットとハヤヒデ...きてるね」

 

「タイシン、どうしてここに?」

 

「いや別に。特にすることもなかったし先生の顔見てから帰ろうかなって思ったら今日チケットとハヤヒデ調整受けてるんじゃないかって思って」

 

「そういうことか。こんな体勢ですまない」

 

「いいって。チケットは、あぁ...」

 

「Zzz...」

 

チケットを終えてハヤヒデの調整を行なっているとタイシンがやってきて、眠ってしまったチケットを見て「いつも通りね」と一言言って空いてる椅子に腰掛けた

 

「何のお構いもできずすみません、ナリタタイシンさん」

 

「いいよ。調整中に来ちゃったわけだし。どう?2人は」

 

「いい具合だと思いますよ。ウイニングチケットさんは長距離を見越してスタミナ重視のトレーニングにしてきたみたいですね。比べてビワハヤヒデさんはまた少し大きくなった気がしますね」

 

「なっ!先生まで私の頭が大きいと言うのか!」

 

「いえ体付きがです。長距離で疲れ切ったラストでも力を出せるよう体幹とともの強化をしてきたのがわかります」

 

「そ、そうか...それならいいんだ」

 

「ハヤヒデは考えすぎなんだよ。だから頭でっかちなんて...「誰の頭がでっかいって!?」...はぁ」

 

「前にも言いましたがビワハヤヒデさんの頭は標準です。安心してください」

 

「ふむ、先生がそういうのだから問題ないな」

 

「ハヤヒデも先生の前だとすっかり素直になっちゃって」

 

「タイシンだってそうじゃないか」

 

「まぁね。気を許せる数少ない人のうちの1人だからね」

 

「ありがたいことですよ」

 

「なぁ先生。気になっていたんだが今は放課後だぞ?」

 

「おっとそうだった。もう癖になってるからなー」

 

「やっぱり先生はフランクな話し方の方が落ち着く」

 

「なんだそりゃ」

 

「私も同じだ。気を許してくれていると実感できる」

 

「そうかい。しかし、入学当初オレを穴が開くぐらい睨んできてた2人が嘘みたいだよ」

 

「なっ!」

 

「ちょっと先生、そのことはごめんって...」

 

「あぁ別に気にしてるわけじゃないよ。変わるもんなんだなって思っただけだ」

 

「あ、あの時は色々と初めてで警戒していたんだ!」

 

「知り合いだっていなかったし。でも先生の周りは生徒がいっぱいで、疑問に思ってただけで...」

 

「何度も聞いたさ。でもこうして慕ってくれて嬉しいよ」

 

「...私がこうしてここまで成長できたのは先生のおかげだって思ってる」

 

「私もだ。それに私達が困っていればいつも間に入って助けてくれた。感謝してもしきれない」

 

「それが教師であるオレの仕事だからな。まぁ大変な時もあったけど。チケットが誤ってタイシンの携帯を落としちゃったときのやつは大変だった...」

 

「あれはチケットが悪い」

 

「だからって一週間も無視することはなかったんじゃないか?」

 

「...今では少し悪かったって思ってるよ」

 

「あとはチケットがハヤヒデの顔に落書き事件とかな。ちょっと待て、オレチケットに振り回されすぎじゃないか?」

 

「「え、今更?」」

 

「その時は仲直りさせるのに必死だったから気づかなかったが」

 

「逆に私とハヤヒデはそんなにケンカすることないよ」

 

「記憶の限りはないな」

 

「そういえばそうか」

 

「でも、チケットがいなかったら毎日こんな楽しく過ごせてたかどうかはわからんがな」

 

「それは言える。ただチケットが毎日はしゃいでるとも言えるけど」

 

「そうか」

 

今回の有馬記念タイシンは出走を見送ったが、またいつかこの3人の勝負を見てみたいな

 

「先生きったよー!お?まだ早かった?」

 

3人で話しているとパーマーがやってきた

 

「おっともう時間か」

 

「もしかして邪魔しちゃった?」

 

「大丈夫だ。私もチケットも終わっている」

 

「私はただの見学」

 

「そうなの?」

 

「先生、長々とすまなかった」

 

「こちらこそ。時間を忘れて話しちまった」

 

「チケットは私とハヤヒデで連れていくから」

 

「助かる。よろしくな」

 

ハヤヒデがおんぶでもして連れて行くのかなと思いきや一旦床に寝転がせ、2人で片足ずつ持って引きずって行ってしまった。それでもチケットは起きる気配はなかった

 

「先生、あの3人と仲良いんだ」

 

「まぁ結構な付き合いになるからな」

 

「へぇー」

 

「おっとすまん、すぐ始めよう。ベッドに寝てくれ」

 

「はーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかな先生。特に問題ないと思うんだけど」

 

「えぇ。異常なところはありません。よくがんばりましたね」

 

「本当!イェーイ!だってよトレーナー!」

 

「あぁ、あとは本番を待つだけだな!」

 

最後にテイオーを診て問題なしと判断した

 

「なぁ、お前からみてテイオーの勝率はどのくらいだ?」

 

「それはわかりませんよ。もしかしたらトウカイテイオーさん以外の出走者が明日腹痛で棄権するかもしれないですし、レース場に隕石が落ちて延期になるかもしれない」

 

「そんなこと...」

 

「まぁ今のは極端な例ですがレース当日ゲートインするまで何が起こるかわからないんです。勝率などの数字で全てが決まるならこの世界はもっと合理的でつまらないでしょう」

 

「うーん、ボクにはイマイチわからないよ。トレーナーわかる?」

 

「いや、こんな大層な返しをされるとは思ってなくてな。俺もさっぱりだ」

 

「簡単に言えば、有馬記念頑張ってくださいということです」

 

「そっか!ありがとう先生!ボク頑張るよ。マックイーンのためにも」

 

「トウカイテイオーさん...「わかってる」...」

 

「先生の言いたいことはわかってるよ。マックイーンのこともあるけどまずは自分のことだって言いたいんでしょ?」

 

「えぇ。有馬記念を走るのはあなたです。他人の想いを力に変えるのはよくあることです。しかしその力の根幹、つまり自分の意思がないとそれは空虚なものになってしまいます」

 

「大丈夫。ボクはマックイーンの希望、みんなの期待、そしてボク自身の勝利を掴み取ってみせる!」

 

「テイオー...」

 

いつの間にこんなに成長したのか。ついこの間までルドルフの後を「会長!会長!」言って付いていってた娘がこんなにも...

 

「トウカイテイオーさん。おそらくあなたが考えているよりずっと多くの人達があなたの帰りを待ち望んでいます。3度の大怪我を乗り越え、生まれ変わったあなたの走りを見せてください」

 

「うん!期待しててね先生!」

 

無敗の三冠ウマ娘になるという夢を断たれ、無敗のウマ娘でいるという夢を断たれ、ライバルとの再対決を幾度となく阻まれ、怪我に苦しんだ天才。一度は走ることを諦めかけたウマ娘がもう一度その姿を現す。もうダメかと思った、しかし彼女はまだ走れる。誰もが願った1人のウマ娘の復活。それが叶うのかが遂にわかる。その舞台が今始まる。

 

有馬記念。トウカイテイオー復活となるのか...それとも...

 

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