ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜 作:てこの原理こそ最強
今日は有馬記念。誰もが待ち望んだこのレース、オレも会場で観戦することになっているがその前にとある娘を迎えにきていた
「お」
「先生!」
チームメイトであるテイオーの応援のために遠征先のアメリカから一度帰国したスズカがオレを見つけるや否や小走りで近づいてきた
「お迎えありがとうございます」
「直接連絡が来たからな。さすがに断れなかった」
「急ですみませんでした」
「いいよ。久しぶりだなスズカ」
「本当ですよ。前回からだいぶ間が空いてませんか?」
「そう言ってくれるなよ。アメリカなんてそんな頻繁に行けるところでもないんだから」
「それはそうですが...」
「年が明けた1月に一回行く予定だから」
「本当ですか!」
「あぁ。多分後々通知が行くと思う。オレかどうかはわからないけど」
「絶対先生が来てください!」
「それを決めるの理事長だからな」
「...わかりました。後で直談判に行きます」
「お、おう...」
なんだこのプレッシャーは...スズカ、君アメリカで何を学んでいる...
『さぁ、今年もいよいよこの日がやってきました。暮れの中山レース場。寒風を跳ね返すほどの異様な熱気がターフと観客席を包んでいます。G1有馬記念です!』
『そうですね。豪華メンバーが揃っていますし、素晴らしいレースが期待できます』
「さて着いた。オレは車停めた後行くところがあるから」
「え、一緒に見れないんですか?」
「あぁ、すまんがスピカのメンバーと一緒に見てくれ」
「そうですか...」
「終わったら嫌でもテイオーのところに集まるだろ。そこでまたな」
「っ!はい♪」
スズカを入り口で下ろしオレは駐車場へ。車を停めて関係者席に足を運んだ
「よく見える。理事長に感謝だな」
今回理事長が気を利かせてレース場2階にあるガラス張りの関係者席を用意してくれた
『さぁウマ娘が続々とターフに姿を現しました。ヒールか、はたまたヒーローか。祝福の星、ライスシャワー』
『メジロマックイーンに勝って制した春の天皇賞は強かったですね。名ステイヤーの一員として一体どんな走りを見せてくれるのか期待しましょう』
見やすいようにガラスの前に立つとアナウンスで紹介されたライスと目があった。集中していた顔から一変満点の星空を見たかのようなキラキラとした目でこっちを見るとオレに向かって笑顔で小さく手を振った。よくわかったな...
『おっと、こちらは昨年の有馬記念覇者メジロパーマーです』
『逃げウマ娘としては一級品です。スタートから一気に出てペースを作れば連覇も夢ではありません』
『長距離ならば他者に比肩を取らないこのマチカネタンホイザも怖い存在です。ナイスネイチャもブロンズコレクターの名を返上し有馬の栄誉を手にしたいところ』
『そして次世代を担うウマ娘の1人、ウイニングチケットが奥にいます』
『なんと言っても今年のダービーウマ娘ですからね。相応しい走りをしてくれるのではと私も注目しています』
\ワー!/
ここで一際大きい歓声が上がった
『はっ!一年振りにターフに姿を見せたトウカイテイオー。休み明けもなんのその4番人気で有馬記念に挑みます』
『彼女の復帰を多くの方が待っていましたからね。応援する気持ちが人気の高さに表れている感じです』
\ワー!!/
そしてまた大きな歓声が沸き起こる
『注目はこのウマ娘、ビワハヤヒデ。連対率は驚異の100%!堂々の1番人気、ファンの期待に応えることはできるのでしょうか!』
『夏を過ぎてからさらに才能が開花しましたし、なかなか彼女を負かすのは難しいのではないでしょうか』
凛々しい姿でゲートインを待つハヤヒデ。そんな中ふとこちらを見上げ何かを決意したかのようにさらに目をキリッとさせて目線を戻した
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『場内にファンファーレが響き渡ります。さぁ今年のナンバー1を決める有馬記念。各ウマ娘枠入りは順調に進んで行きます。それぞれ真剣な面持ちで応援を送るファンの期待に応えるべくゲートが開く瞬間を待っています。最後に大外、メジロパーマーが入ります。さぁ14人枠入りが完了しました。今年最後のG1有馬記念、今スタートしました!』
『まずはメジロパーマー、いいスタートをきりました。各ウマ娘一斉に綺麗なスタート。さすが選ばれた14人、優秀です』
出遅れの娘はいない。スーッとパーマーが前を取る予想通りのレース。観客は何を思っているのか。パーマーの連覇か。ネイチャの三度目の正直か。チケット、ハヤヒデによる次世代優勝か。テイオーの復活か。はたまたライスによる連覇阻止か
(まだ足は残ってる!)
(菊花賞は譲ったけど今度は勝つ!)
(このレースに勝って祝福を!)
(三着でも二着でもない!一着を取る!)
(負けられない!負けるもんか!)
(...)
走っている最中ウマ娘がそれぞれ何を思っているのかは観客にはわからない。しかしこれだけはわかる。全員が勝ちたいと思って走っている
『先頭は依然メジロパーマー。ビワハヤヒデは現在4番手。外からライスシャワーも行く』
『トウカイテイオーは少し下がった位置にいますね。一年振りのレース、一体どう感じているのでしょうか』
『各ウマ娘一回目のホームストレッチに入ります』
観客の声が聞こえるホームストレッチ。走っている側はどう聞こえているのか。何を聞くのか。はたまた目の前に集中して耳に入らないか
『さぁ第二コーナーを抜けて向こう正面に入りました14人。現在の並びを確認していきます。メジロパーマーが先頭。ビワハヤヒデは4番手。その後ろウイニングチケット、ライスシャワーがいる。久々トウカイテイオーがこれに続く。ナイスネイチャは後方、そして最後方にマチカネタンホイザ』
昨年のようにパーマーの爆逃げを許さず14人が10バ身以内に収まる形。昨年の覇者が逃げ切るか。それとも他の挑戦者達が差し切るか
『レースはいよいよ第三コーナーに入ります』
(絶対に勝つ!)
(絶対に勝つ!)
(絶対に勝つ!)
(絶対に勝つ!)
(絶対に勝つ!)
(絶対に!絶対に!)
『さぁ第四コーナーにさしかかる。前を行くビワハヤヒデにウイニングチケットがじわじわと追い上げる!おっとここでビワハヤヒデが仕掛けてきた!菊花賞ウマ娘のビワハヤヒデ、ぐんぐんとスピードを上げていく!』
第三コーナーから第四コーナーに入ったあたりでハヤヒデがスパートをかけた。他を置き去りにし直線に差し掛かった
『メジロパーマーを抜く!ビワハヤヒデ先頭!ビワハヤヒデ先頭!やはり強い1番人気ビワハヤヒデ!果たしてついて来られるウマ娘はいるんでしょうか!?ライスシャワーか!ナイスネイチャか!ウイニングチケットはどうだ!』
覇者も刺客もライバルも、誰も追いつけないスピードで駆け抜けるハヤヒデ。そんな彼女を懸命に追いかけるウマ娘が1人
『トウカイテイオーがきた!え?トウカイテイーがきた!?』
実況も驚きの一言。誰が予想できたと言うのだろうか。前回走った有馬記念は十一着。それから一年のブランク。3度の骨折で元の走りは出せないと思っていたテイオーが距離を詰める
「行けっ...」
「行け...!」
「行け...走れ!」
テイオーが負ける姿を想像しなかなかレースに目をやれなかった者。テイオーのトレーナーとして誰よりも近くで彼女の帰りを待ち望み、もう一度テイオーの走りを見たいと願っていた者。そしてテイオーの憧れの存在としてあり続け、そんなテイオーに最後の言葉をかけ勇気を与えた者。そんな3人の声が届いたかのようにテイオーが駆ける
『トウカイテイオーだ!トウカイテイオーがきた!ビワハヤヒデとの距離をぐんぐん詰める!残り200を切った!一年振りのターフだトウカイテイオー!必死に迫るトウカイテイオー、ビワハヤヒデに追いつくことはできるのか!』
観ている者全てが涙を流す。そして声援を送る。今この時会場、また画面の奥で叫んでいる声がテイオーの背中を押し足を回してくれる
『追いかけるトウカイテイオー!譲らないビワハヤヒデ!その差は1バ身!後少しの差が縮まらない!菊花賞レコードの力を見せつけるビワハヤヒデ!トウカイテイオー抜かせない!しかしトウカイテイオーくる!ターフに戻った帝王がじりじりとその差を詰めていく!』
行け!行け!行け!ともはやテイオー一色になる会場。全員が見たいものは一緒だ。その想いは届いているのか。おそらく今のテイオーにそんこと考える余裕はない。だがわかっている。肌で感じている
『残り100を切った!いけるかトウカイテイオー!新世代覇者ビワハヤヒデ!蘇るのかトウカイテイオー!中山が!中山が震えているぞ有馬記念!一体どちらが勝つのか!』
あと少し。もう少し。苦しい。足が重い。限界。心を埋め尽くすそんな言葉の羅列。しかしその奥に見たのは、自分を信じて待つマックイーンの姿
『トウカイテイオーだ!トウカイテイオー抜けたか!わずかに前に出たトウカイテイオー!しかしその差はわずか!トウカイテイオーとビワハヤヒデ!ダービーウマ娘の意地を見せるかトウカイテイオー!』
君と夢をかける。その実現のためにテイオーは最後の力を振り絞る
『トウカイテイオーだ!トウカイテイオーだ!トウカイテイオー!奇跡の復活!』
決着。選ばれし14人のウマ娘で1番にゴールしたのは、364日ぶりに舞い戻ったトウカイテイオーである