ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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お久しぶりです。


第二十R

「ふぅ~」

 

メジロ家からの熱烈な勧誘から逃げ延びて行き着いた先は中庭だった

 

「あ、先生」

 

「タイシン」

 

中庭のベンチでいつものように携帯をポチポチしていたナリタタイシンを発見した

 

「見ないと思ったらここにいたのか」

 

「ああいうところ苦手だから」

 

「そうだったな。でもいいのか?美味しそうな料理たくさんあったぞ」

 

「始まってすぐにチケットが山盛りに持ってきたからいい」

 

「あー。容易に想像がつく」

 

「先生」

 

「ん?」

 

「ん」

 

タイシンはスッと静かに横にスライドし人一人分ほど入るスペースをあけた。あたかもここに座れと言わんばかりである

 

「じゃあお言葉に甘えて」

 

「別に何も言ってないし」

 

「そうだったな」

 

携帯から目を離さずツンケンした態度を取るタイシンだがその尻尾は静かに揺れていた

 

「先生は今日のレースどうだった?」

 

「すごかったな。レース自体1年ぶりのテイオーがまさか1着とは予想できなかった」

 

「それって先生もテイオーのことは諦めてたってこと?」

 

「いじわるな言い方だな。でもその通りかもな。3度の骨折。テイオーには夢を諦めるななんて言っておきながら情けない」

 

「ふーん。でもさ、テイオーが復活できたのも先生のおかげなんじゃない?」

 

「お?慰めてくれてるのかタイシン」

 

「別にそんなんじゃない」

 

「そうか。まぁテイオー復活劇の一役を担えたなら光栄かな」

 

「先生それ本気で言ってんの?」

 

「どういう意味だ?」

 

「もしかして先生は自分の功績って自分ではわかってない鈍感系主人公なの?」

 

「失敬だな。そもそも一介の保健医がそんな功績持ってるはずないだろ」

 

「はぁ~」

 

タイシンはそれは特大の溜息をはいた。そして何かを調べるため指を動かした

 

「これ見て」

 

「なんだこれ」

 

「ウマ娘月刊誌」

 

「そんなものあるのか」

 

タイシンが見せてきた携帯の画面にはウマ娘に焦点を当てた雑誌が載せられていた

 

「ほらここ」

 

「ん?なんじゃこりゃ!!!」

 

タイシンがとあるページの一画を拡大すると『トレセン学園保険医英雄譚』とでかでかした見出しで載せられていた

 

「え、ホントになにこれ...」

 

「やっぱり知らなかったんだ」

 

「雑誌とか見ることないし」

 

「まぁこんな感じでその時レースで活躍した娘からインタビューしたりして記事になってるらしい」

 

「なんでこんな...」

 

「先生が有名なわけだよね。だって個人名は書かれてないにしてもトレセン学園の保険医なんて先生しかいないし」

 

「ほぼプライバシーの侵害じゃねぇか!」

 

「別に先生の過去とかが書かれてるわけじゃないし。先生に直接インタビューとかして得てることじゃないらしいから、あくまで噂レベルじゃん」

 

「それでも許可というものが」

 

「学園長が許可したって聞いたけど」

 

「マジかよ...」

 

自分の知らないところでこんな恥ずかしいことが出回っていたと思うと羞恥で頭がおかしくなりそうだ

 

「落ち着いてよ先生。別に悪いことが書いてあったことなんてないんだし」

 

「そういう問題じゃないんだよ。そもそも誰だよ。こんなこと始めたの」

 

「んー。よくは知らないけどオグリ先輩の復活劇のときとか生徒会長が7冠取ったときからもうあったみたい」

 

「ってことは...」

 

一人のウマ娘が思い浮かぶ。その二人よりも前の世代となると思いつくのは少ない。その中でこんなことやりだしそうな娘に心当たりがあった

 

「あれ、先生とタイシンじゃん」

 

「シチー先輩」

 

「シチーか...」

 

そこへふらっとゴールドシチーがやってきた

 

「え、どうしたの先生。なんかくたびれてない?」

 

「あぁ。多分これだと思います」

 

「ん?あー月刊誌じゃん。あたしも表紙やったことあるけど、なんでこれなの?」

 

「先生の英雄譚あるじゃないですか。その存在を先生知らなかったみたいです」

 

「マジ?教室とかみんな話題で上げてるのに」

 

「マジか...」

 

「あ、追い打ち」

 

普段教室で自分の話題が出ていることを知ってより恥ずかしさが増す

 

「先生もさ。そろそろ自覚しなって」

 

「自覚もなにも」

 

「自分なんて何もしてないって言うんでしょ?もう何回も聞いてるよ」

 

「うっ...」

 

「確かにあたしらも努力してるけどさ、先生に一言褒めてもらえただけでもすごくやる気が湧くんだよ」

 

「私もよく相談とか聞いてもらってるし」

 

「それは仕事で」

 

「その仕事で助けられてんの」

 

「そうか...」

 

「でも先生。最近特定の娘に贔屓しすぎ」

 

「え...」

 

「それはあたしもそう思う」

 

風向きが変わった

 

「そんなことはないと思うけどなー」

 

「グラスでしょ?エルでしょ?」

 

「うっ...」

 

「スズカでしょ?」

 

「いや別に...」

 

「まぁ特に贔屓すごいのはやっぱりマルゼン先輩だよね」

 

「勘違いだ。みんな向こうからやってくるんだ」

 

「それでも一緒にいる頻度他のウマ娘より断然多いでしょ」

 

「それは最近レースが多かったから」

 

「昼休みとかもよく一緒にいるよね」

 

「気が付いたらいるんだよ」

 

タイシンとシチーからの圧により汗が止まらない

 

「でも最近はタイシンもよく先生のところに通ってたでしょ?」

 

「そうでもないですよ。私は途中からレースはあきらめてトレーニングに集中してたので」

 

「でもアフターケアとかで先生のところ行ってたんでしょ?」

 

「それはまぁ...」

 

「へー、いいじゃん」

 

「シチー先輩だってこの前先生連れてカフェに行って来たんですよね?」

 

「よく知ってんじゃん」

 

「デジタルに聞きました」

 

「あの娘はなんでも知ってるんだね」

 

「いいじゃないですか」

 

「一緒に行ったって言っても仕事の合間だったから30分かそこらだよ」

 

「それでもその時間は先生を独り占めにできたんですよね?」

 

言葉を交わすにつれてタイシンとシチーの間にバチバチと火花が散るのが見える

 

「あの、二人とも...?」

 

「先生、今度私ともカフェ行こうよ。静かなとこがいいな」

 

「次のレースまで私のこと診てよ先生」

 

「シチー先輩には専属のケアマネージャーさんついてるじゃないですか」

 

「タイシンだってカフェぐらい仲のいいハヤヒデとチケットと行けばいいんじゃない?」

 

二人のバチバチ具合はさらにヒートアップしていった。もうダメだと感じそろりそろりとその場を抜け出そうとするがあっけなく二人に肩をつかまれた

 

「どこ行くの先生」

 

「ちゃんと決めてくんないと」

 

「あ、あはは...すまん!」

 

肩をつかむ手が一瞬緩んだその瞬間にその場から離れた

 

「...バカ」

 

「バカ...」

 

残されたタイシンとシチーは悲しそうに一言呟いた

 

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