ウマ娘 プリティーダービー 〜レース前には欠かせない存在〜   作:てこの原理こそ最強

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第5R

 

「チームスピカ」。それがスズカが新しく選んだ居場所らしい。本人が選んだんだからなにも言うことはない。ないのだが…少し不安である…なぜなら…

 

「おーい。いるかー?」

 

「げっ…」

 

「おいおい、それはヒドいんじゃないか?」

 

「……どうされました?()()()()()()()()()さん?」

 

「つめてぇな〜。いつものように()()()、でいいんだぞ?」

 

「……どうされました?」

 

そう。不安の原因がこの男にあるのだ。認めたくはないが血縁関係はどうしても切れないため認めざるを得ないこのダメ兄がスズカの新しいトレーナーであるのだ。不安で仕方ない

 

「トレーナー。この人は?」

 

「兄さんってことはトレーナーの弟?」

 

「へぇ〜。トレーナーと違ってイケメンじゃん!」

 

「おや、新顔さんがいらっしゃいますね」

 

「これから世話になるだろうからな」

 

「ということは、ようやくですか」

 

「あぁ。スズカとスペシャルウィークが入って5人。これでようやく挑戦できる!」

 

「それはよかったですね。ですがよくスペシャルウィークさんが入ってくれましたね。あんなことをしておいて…」

 

「あはは…」

 

あんなこととはそう、ついこの前彼女がこのバカ兄に痴漢行為をされた件だ。普通ならそんなやつがトレーナーのチームには入らないだろう

 

「私、スズカさんと走りたいんです!」

 

「ほぉ〜」

 

「この前の試合を見てからスズカさんと走りたい、スズカさんみたいになりたいって思いました!だからスピカを選びました!」

 

「それはいいことですね。憧れる存在がいるというのは大切です」

 

「はい!」

 

スペシャルウィークさんは体の前で手をグッとして強い眼差しをこちらに向けてきた。それだけで気合いの入りようがわかる気がする

 

「そちらの3人にも自己紹介しておいた方がよさそうですね」

 

「あぁ。スズカは当然としてスペシャルウィークがもう知ってたことには驚いたが、3人も一応世話になるはずだから覚えとくように。こいつは俺の弟だ」

 

「「「……いや、知ってるけど」」」

 

「あれ?」

 

「はぁ…初めまして。ここで保健医兼カウンセラーをしてる者です。失礼ですがお名前を伺っても?」

 

「俺は“ウオッカ”だ。目標はこいつに勝つことだ!」

 

「私は“ダイワスカーレット”よ。こいつには絶対負けたくないわ!」

 

お互いに指を差し合って負けない宣言をしながら自己紹介してくれる2人

 

「なるほど。2人はライバルですか」

 

「すんげぇ仲良しだよな〜?」

 

「「仲良くなんかない!!」」

 

「ほ〜ら。息ピッタリじゃないか。あ、私は”ゴールドシップ“。よろしくな」

 

「えぇ、よろしくお願いしますね」

 

「しっかしトレーナーとは似てねぇな」

 

「ほんとほんと。顔とか礼儀とか」

 

「本当に兄弟か?」

 

「お前ら…」

 

「いっそのこと他人ならよかったんですけどね…」

 

「おい!」

 

ホントに切に願う。今からでも遅くない。ぜひ赤の他人にしてください…

 

「そういや、なんでさっきからスズカは先生の隣にいるんだ?」

 

「本当だ」

 

「いつの間に」

 

3人の視線の先にはいつの間にやらオレの隣にピッタリとついているスズカの姿があった

 

「サイレンススズカさん?こんなところで自慢のスピードを使わなくてもいいんですよ?」

 

「……スズカ」

 

「へっ?」

 

「…スズカ」

 

「いや、でも…」

 

「スズカ」

 

「……スズカ」

 

「はい」

 

やっば!スズカさんマジこっわ!

 

「驚いた。スズカさんってあんな顔もするのね」

 

「だよな。いつもの凛々しいって感じより、今はなんか可愛いって感じ?」

 

「随分とスズカに慕われてるんだな」

 

「知らず知らずのうちに」

 

「先生」

 

「はい?」

 

「今は放課後です」

 

「…そうだな」

 

「はい」

 

「あ、口調が変わった」

 

「え、どういうことですか?」

 

「こいつが敬語使ってるとこはあくまで生徒と先生ってときだ。普段のこいつはこんなんだ。スペシャルウィークは知ってるだろう?」

 

「あ、そういえばあのときは盛大に怒鳴られてましたもんね、トレーナーさん」

 

突然口調が変わったことに驚きを隠せないでいるスズカとバカ兄以外の4人

 

「それで?今日は紹介だけかい?」

 

「いや。実は頼みごとがあってな」

 

「金なら1円たりとも貸さんぞ」

 

「んなんじゃねぇよ?俺のことなんだと思ってるんだ」

 

「ただのだらしない大人だ」

 

「なっ!」

 

「「「わかる〜」」」

 

「お前らなー!」

 

「いいから、とっとと要件を話せ」

 

「くっ!もうすぐスペシャルウィークのデビュー戦があるんだよ。そのための調整を頼みたい」

 

「デビュー戦?彼女はつい先日に転校してきたばかりじゃないのか?」

 

「あぁ。だが素質はある。お前もわかってんだろ?」

 

「……わかった。デビュー戦はいつなんだ?」

 

「明後日だ」

 

「はぁ!?いくらなんでも急すぎだ!そういうのは前もって連絡しろと言ってるだろ!」

 

「す、すまん…特訓のことで頭がいっぱいでだな…」

 

「ふざけんな!いくら特訓しようがアフターケアをしっかりしないといけないのわかってんだろ!?」

 

「すみませんでした…」

 

「せ、先生。私は大丈夫なので…」

 

「…」

 

いきなり大声を上げてしまった。ダメだな。未だに()()()()が治ってないのか…スペシャルウィークさんもオドオドしてしまっている。でもなんでだろう…なんでスズカは笑顔なんだろう…

 

「…今日のところはスペシャルウィークさんに免じて許してやる。だが今後チームの誰かがレースがあるなら前もって連絡してくれ」

 

「あぁ、恩にきる」

 

「すっげぇ〜な。先生って温厚な性格してそうなのにあんな怒鳴るなんて…ん?スカーレット?」

 

「…」

 

ウオッカさんも驚かせてしまった。でも隣のダイワスカーレットさんは固まってこっち見てるな

 

「ん?スカーレットさん」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

「ちょっとじっとしててください」

 

「えっ!あのっ!」

 

オレはダイワスカーレットさんに向かって近づいていく

 

「ん〜…!」

 

「はい、取れましたよ。どうされました?」

 

ダイワスカーレットさんの頭についていたゴミを取っただけなのにダイワスカーレットさんは目をギュッと力強く瞑っていた

 

「大丈夫ですか?」

 

「へっ?は、はい…」

 

「ならいいですけど」

 

オレは踵を返して元の位置に戻った

 

カッコいい…」

 

「ん?なんだって?」

 

「な!なんでもないわよ!」

 

後ろでまた仲良くしている声が聞こえる。戻る最中にスズカと目があった。さっきまでの笑顔はどこかに消えてしまっていた

 

バカ…」

 

オレには読唇術の能力でもあるのか、スズカが呟いたことがわかってしまう。なんでそう言われたかは不明だが…

 

「それじゃあスペシャルウィークさんは明日の放課後にまた来てください」

 

「はい!」

 

「悪かったな。急な話で」

 

「まったくだ。次からは気をつけてくれ」

 

「わかってる」

 

「先生じゃあな〜」

 

「お疲れ〜」

 

「ま、また来ます!」

 

「失礼します」

 

兄が先頭で続々と部屋を出て行くスピカのメンバー。ダイワスカーレットさんだけ声が裏返ってたのが気になるが、まぁいいか

 

「先生」

 

「ん?」

 

「私も明日の放課後来ますね」

 

「えっ」

 

なぜに…?

 

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