魔法科高校に通う謎の青年   作:ジーザス

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久々の投稿です。
長い間書いていないと話忘れそうになりますね。


S2

予想外の再会(といっても今の今まで忘れていた)があったが、高校最初の友人を連れて言われた通り講堂に入ると、7割以上の席が埋まっていた。歩きながら見渡すと、その座り様に溜息をつきたくなる。前半分が〈ブルーム〉、後ろ半分が〈ウィード〉という差別意識を有しているのが一目瞭然の有様だ。

 

「差別を最も意識しているのは差別を受けている身である…か」

「何か言ったか?」

 

ボソッと呟いた言葉を達也は完全にではないが、聞き取っていたらしく気にかけてきた。

 

「いや、なんでもない。それより早く座らないと始まってしまう。始まるまで立っていたらどんな眼を向けられるかわからないからね」

「その心配は無用なようだ。既に向けられている」

 

苦笑している達也の言葉通り左へとちらりと視線を向けると、蔑むような視線をこちらに向けている一科生が数人ちらほらと見えた。直接的な行動には出ていないが不愉快なことに変わりはない。

 

「気にした方が負けだ」

 

素っ気なく言い放ち、席を探し始めると達也は苦笑しながら付いてきた。手頃なところに席が4つ空いていたのでそこに座ることにした。座席の位置は達也が階段側で俺がその横だ。

 

「やれやれ、なんとか開始前には座れたな」

「よっこいしょっと。それもそうだな」

「ジジイか」

 

座るときに声を出すと鋭いツッコミを入れられた。シャープな顔立ちで甘さの全てを捨て去ったような風貌の見た目通り、言葉にも甘さが微塵もない。

 

「初ツッコミおめでとう」

「馬鹿にされた気しかしないんだが?」

「遊んだのは事実」

「あの〜すみません。お隣は空いていますか?」

 

達也とじゃれ合っていると左から声をかけられた。振り返ると眼鏡をかけて豊満な胸元を、意図せず揺らしている少女が問いかけてきていた。その奥には赤毛の活発そうな少女が立っている。

 

「ええ、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」

 

どうやら2人で座れる場所を探していたらしく、偶然ここに来たようだ。

 

「私、柴田美月と言います。よろしくお願いします」

 

予想外の自己紹介に少々驚く。横に座らせてもらったぐらいでお礼を兼ねての自己紹介は、初対面にしてはいささか疑問に思える。隣になったからといってクラスメイトになる可能性があるわけでもなく、ましてや友人になるとも限らないのに。

 

まあ、クラスメイトにならないのは俺が一科生で2人の少女が二科生ということがあったのだが。それはともかく、相手に自己紹介させて自分がしないという失礼な態度を取るべきではない。

 

「初めまして自分は島波海道。んで隣のこの目つきの悪い奴が司波達也だ。達也と呼んでほしいらしい。ゴフッ!?」

 

達也の自己紹介をすると不服だったのか、海道の右脇腹に左の拳を叩き込んできた。痛くはなかったが、不意打ちだったのでつい声が溢れてしまった。

 

「あたしは千葉エリカ。エリカでいいわ。それにしても2人は仲がいいね。もしかして幼馴染とか?」

「残念だけど外れ。つい1時間前に会ったばかりだよ」

「本当かな怪しい〜」

「エリカちゃん…」

 

眼をギラギラと怪しく光らせて謎の詮索を始めるエリカを、美月が宥めてくれたおかげで、事情を説明する必要はなかった。

 

『これより2095年度新入生入学式を執り行います』

 

アナウンスによってざわついていた講堂は静まり返り、神聖な儀式を執り行うに相応しい空気となった。

 

 

 

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入学式が終わるとすぐにIDの交付が行われた。自分が1年間生活することになるクラスに分けられふのが、一瞬でわかる優れものだ。ちなみにこれは生徒証とでも言える代物だ。校内の買い物や、机の挿入口に差し込んでシステムへのアクセスなどにも使える。ちなみにこれで出席確認もできるので、常に携行していなければならない。

 

「海道君はどこだった?」

「A組だ」

「てことは魔法力が高いってことだよね?」

「A組になったからといって魔法力が絶対に高いってわけじゃないよ。魔法力が均一になるようにクラス分けされるらしいから、自分の成績が良いのか悪いのかは知り得ないかな」

 

実際、中学校や普通科高校では学力が均一になるようクラス分けされる。魔法大学付属であったとしてもそれを無視して行うとは考えにくい。

 

「司波君は?」

「E組だ」

「やったね一緒だ!」

「私もです」

「俺だけハミゴか…」

「一科と二科なんだ。別れるのは当たり前だろ」

 

本心で言っていないと3人とも分かってくれていたので、空気は重くはなくむしろ軽かった。

 

「A組となれば深雪と一緒のクラスだろう。俺の名前を出せばすぐ仲良くなれる」

「達也はシスコンか…痛い!」

 

達也が海道の背中を軽くつねった。

 

「妹ってことは双子?」

「よく言われるけど双子じゃないよ。俺が4月生まれで妹が3月生まれなんだ」

 

エリカの疑問はもっともだろう。同い年で入学していれば双子と思うのが普通だ。

 

「なるほど。じゃあ俺はこれで帰るわ。また明日な3人とも」

「また明日な」

「バイバーイ」

「お疲れ様です」

 

3人と別れて海道は家路に着いた。

 

 

 

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翌日、妹と共に家を出て昨日と同じように学校に向かう。教室に入ると多くのクラスメイトが1人の少女を囲み、親密になろうと我先にと話しかけていた。その少女が今年の新入生総代であり、達也の妹であることは疑いようのないことだ。

 

あのように笑顔を振りまいてはいるが、困惑というより「少々迷惑です」と雰囲気に出ているのが察知できる。海道がある特殊な訓練を受けていたからこそ気づけた変化であるが、今はその話をするべきではない。

 

自分の席でボケーと頬杖をつきながら眺めていると、後ろから歩いてきたクラスメイトに声をかけられた。

 

「お前は話しかけないのか?」

「生憎俺は人間関係を築くのが下手でな。絶世の美少女は畏れ多くて接し方がわからない。それにあれだけ囲まれてたら話しかけようにもできないしな」

「そんな遠目から見てても話しかけてもらえないし仲良くできないぞ」

 

海道に対して鼻で笑いながらその男子生徒は、群衆に紛れ込んでいった。小心者とでも言いたいのだろうか。悪いが深雪の兄と友人である以上はどうしようとも関わりがある。何より兄の高校最初の友人だと知れば、過多な接触が増えると予測している。

 

勝ち組だと露骨に言い放つつもりはないし、あのように人の気持ちを知ろうともしない奴とは関わりたくない。深雪を絶世の美少女と評価しながら、囲まれている様子を眺める後ろ姿を、少しばかり熱っぽく見つめる女子生徒が2人いることに、本人は気付いていなかった。

 

 

 

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人の気持ちを知ろうともしない奴とは関わりたくないと思ったまではよかったが、案の定その気分が悪くなる接触はその日の昼食時にやってきた。一悶着している友人たちの近くを偶然通りかかった俺は、何が起こっているのかをある程度予想した。

 

「友人と何より兄と昼食をとりたい司波さん」と「司波さんと昼食をとりたいA組メンバー」及び「昼食出司波さんの隣または前に座りたい男子生徒」が言い争っているのだと。

 

A組の場合「ニ科生ごときが司波さんと昼食をとるな」や「一科とニ科のけじめはつけなければならない」というくだらない理由を思い浮かべているのだろう。特に男子生徒は。

 

別に何もせず他人事または知らんふりをして通り過ぎてもよかったが、めざとく見つけた友人に後で何をされるかわからないので、騒ぎを収める方が楽だという結論に至り止めることにした。

 

というより既に司波さんがいることで、食堂の空気が止まっているという事件が勃発しているが、それは割愛させていただく。

 

 

 

 

4人で楽しく食事をしていたところに深雪が参加しようとしたのだが、取り巻きのように見える深雪のクラスメイトが喰ってかかってきた。たったこれだけのことで喚くとはあまりにも情けない。

 

「今すぐ席を代わ…」

 

突如声を荒げたが言葉を最後まで発さず崩れ落ちた生徒を、友人が肩に担ぎ上げていた。

 

「何もなかったことにしといてくれるとありがたいかな」

 

俺の言葉を聞く前に高校最初の友人は、喰ってかかってきた深雪のクラスメイトを担いでどこかに消えていった。その様子を呆気にとられていた残りの深雪のクラスメイトは、現実味を帯びない表情でそそくさと退散を決定した。

 

「…お兄様、あの方は一体何をされたのですか?」

 

深雪は何が起こったのかわからず達也に聞いていた。

 

「…背後から攻撃を加えて気絶させたとしか言えないな」

「何をしたのかまったくわからなかったんだけど…」

「何かしたんですか?」

「誰なんだあいつ?」

 

残りの4人も何が起こったのか理解できていないようだ。若干1名はそれ以前の質問だったが。

 

達也は海道が偶然通りかかったのを、食事しながら視界の端に見つけていた。呼び寄せようとした瞬間、痺れを切らしていつの間にか大声を出し始めた男子生徒の背後に現れて気絶させた。そしてそのまま何処かに消えていったとしか説明できなかった。

 

何をしたのかまったくわからなかった。言い方は悪いが不気味だな…

 

達也は友人に悪いと思いながらも、本能的に少しばかり危険な人物だと認識した。

 

「それより昼食を続けよう。深雪、待っているから自分の分を持ってきなさい」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

深雪は高校で初めて達也と昼食を過ごせる(どちらかというとこちらの比重が9割)ことと、友人と昼食を食べれることに喜びながらメニューを頼みに行った。その様子を残りの3人が微笑みながら見送っている。

 

その後は軽く自分たちの趣味などについて笑いながら話をしていたため、海道のことを疑問に思うことなく昼休みは終わりを告げた。

 

 

 

 

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俺も達也もこれで何事もなく終われると思っていたが、現実はそう甘くはなく面倒くさいことになっていた。事態の悪化は下校時に急加速する。

 

「深雪さんは達也さんと帰ると言っているんです。いい加減諦めたらどうなんですか!?」

 

意外にも普段は大人しい美月が真っ先にキレて、ド正論を深雪のクラスメイトにかましている。達也たちは少し離れたところからそれをヒヤヒヤしながら見守っていた。

 

「…なあ達也、これって俺のせい?」

「なわけあるか」

「私のせいです、よね?」

「深雪よ何故お前のせいになる?気にするなという言葉では気休め程度にしかならんが、今日のことはお前のせいじゃないさ」

 

達也は俺と司波さんを宥めながらため息をつく。そうしながら美月・レオ・エリカの3人を後方から見ていた。レオとエリカが熱くなりやすいのを今日の朝から知っているが、先に手を出さないか心配だったのだ。

 

「それにしても森崎は〈ウィード〉と〈ブルーム〉ということに異常なほど関心があるようだな」

「森崎君は正義感が強いからだと思いますよ?」

「でもほのか、それだったらそれくらいの溝でここまでしつこく執着しないと思う」

 

俺の横に立つのは、クラスメイトの明るい性格と高校生には刺激的過ぎるプロポーションを持つ光井ほのか。感情が薄く無口に見えるが実はかなりの辛口で、幼児体型だと思い込んでいる北山雫がそれぞれの意見を述べている。

 

2人は司波さんを新入生総代と女性として憧れながらも、森崎の過剰と思える反応に困り果て、達也たちに助けを求めてきていた。俺が敢えて使った差別用語に対して何も言わなかったのは、わざと使った理由を鋭く理解してくれていたからである。

 

「これは1-Aの問題だ。〈ウィード〉如きが僕たち〈ブルーム〉に口出しするな!」

「同じ新入生じゃないですか。今の時点であなたたちが一体どれほど優れていると言うんですか!?」

「「まずいね(な)」」

 

森崎と美月の売り言葉と高い言葉に危険性を感じ、俺と達也は同時に言葉を漏らした。

 

「どれだけ優れているかだって?なら教えてやる。これが才能の差だ!」

 

流れるように一切の無駄なく腰のホルスターから特化型CADを取り出す様子は、紛れもなく魔法を使って他者を攻撃することに慣れている証だ。ホルスターから抜き出して敵を照準までは賞賛してもいいが、引き金を引いて魔法を発動させるまでの時間は遅すぎた。

 

何故なら俺が身体的な能力を発揮しただけで、簡単に防ぐことができたからだ。

 

「照準までは良かったけどその先はまだまだだな」

「ぐっ!はなせ!」

 

森崎はCADで狙いを定めている手とは反対の手に対して関節技を決めている俺へ、憎しみのこもった視線を向けながら命令した。

 

「いつの間に…」

「すごい…」

「今のは魔法?」

 

様々な言葉が聞こえてくるが、俺の意識はこいつに向いている。

 

「懇願なら許してやってもよかったが命令ね。それほどまでに怪我をしたいか?」

「あがぁぁぁぁ!」

 

関節への決めをさらに強めると、あまりの激痛に森崎は脂汗を浮かべ絶叫している。

 

「海道、落ち着け」

「何事だ!?」

 

達也の制止と女性でありながら低めの声が同時に聞こえてきた。振り向くと遠くから女子生徒が2名こちらにやってくる。

 

「君たちはA組とE組の生徒だな?事情を聞きます。全員生徒会室まで来なさい!」

「すいません悪ふざけが過ぎました」

 

俺が人の良い笑みを浮かべながら森崎への関節技をやめ、命じた女子生徒の前に歩みを進める。

 

「悪ふざけ?」

「はい。森崎家の《クィックドロウ》は有名ですからね。後学のために見せてもらっていました」

「それにしては君の関節技はかなり決まっていたが?」

「あまりにも真に迫り過ぎていましたので、本能的に防衛してしまいました」

 

心底申し訳なさそうに俺は腰を45度曲げながら謝っている。女子生徒は後学とも喧嘩ともどちらにでも取れる説明と事態に困惑しているようで、不安そうに俺の曲げられた背に視線を向けている。

 

「本当に行き違いだったんです。お手を煩わせて申し訳ありません」

「えーと…」

 

司波さんの登場により女子生徒の気持ちはさらに揺れ始めた。だがその動揺にトドメを指したのは、俺と達也にとって意外な人物だった。

 

「もういいじゃない摩莉。え〜と海道君?本当にただの行き違いだったのよね?」

 

もはや「お姉さんにはお見通しだぞ☆」と言っているかのようには見えたが、ありがたいのでその言葉通りに答えた。

 

「もちろんです。やましいことは何もありません」

「生徒同士で教えあうことは素晴らしいことですが、生徒会が許可した場合と指定された時間と場所でのみ行う方がいいでしょうね」

「会長がこう仰っていることもあるので今回は不問にします。以後このようなことはないように」

 

関わった全員がその言葉に頭を下げ感謝の意を示す。摩莉と呼ばれた女子生徒は去り際に聞いてきた。

 

「君と制止した君の名前は?」

「1-A 島波海道です」

「1-E 司波達也です」

「覚えておこう」

 

面倒くさいことに巻き込まれる気がしたが、不可抗力であることを祈った。

 

「…借りだなんて思わないからな」

「思ってないから安心しろ。それに決定打になったのは司波さんの言葉だ。感謝の言葉はしっかりと言っておけよ?」

「僕はお前を認めないぞ司波達也・島波海道!僕の考えは変わらない。それが正しいといつか証明してやる!」

 

捨て台詞を吐きながら森崎は、連れの男子生徒2人と校門を出て行った。

 

「はぁ」

 

少しばかり大袈裟な溜め息を吐きながら安堵する。明日から何があるかはわからないが、今日はこれ以上何も起こらないとわかるだけで気分が軽い。

 

「じゃあ帰ろうか。海道には余計な仕事させたが」

「No problemさ。みんなが無事ならそれでいい」

 

『一高前』という便利なコミューター乗り場までの学園通りを達也のクラスメイトのレオ・昨日会った美月・エリカ・俺と司波さんのクラスメイトの三井さん・北山さんの計8人は、何事もなかったかのように穏やかな笑い声を周囲に響き渡らせながら、夕焼け色に染まる空の下を歩き始めた。

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