魔法科高校に通う謎の青年   作:ジーザス

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早くに書き上がったので本日2度目の投稿です


S3

達也と深雪は、翌日の昼休みに生徒会室に来ていた。

 

深雪が生徒会室に来ていても新入生総代であるため可笑しくはないが、達也が来ていることに意外感を覚える。深雪と達也がここに来ているのは、登校中に真由美から誘いをいただいたからである。断る必要も無かったのでありがたく思いながら椅子に座っていた。

 

「会長、いつまでこの状態なのですか?」

 

達也はここに来てから5分程の時間で話が全く進まないというより、勧める気のない真由美に質問した。しびれをきらしたのではなく、呼ばれてここに来たのに話が進まないことに疑問を感じたのだ。

 

「もう1人来る予定だから少し待っててね。すぐ来ると思うから」

 

コンコン。

 

真由美の言葉が終わった頃に生徒会室のドアがノックされる。一番近くに座っていた小さな女子生徒が鍵を外してドアを開けた。ドアの外に立っている生徒を見て、達也と深雪が軽く眼を見開く。

 

「遅れてすみません1-A 島波海道でゲフ!?」

 

自己紹介中に謎の言葉を発して後ろに倒れ込んだ海道を見て、達也と深雪は呆気にとられる。残りの3人も眼を見開いていた。

 

ん?3人?

 

達也は4人ではないことに疑問を感じ、視線を真由美と摩莉の間に向けるとそこはもぬけの殻。もしやと思い友人へと再度視線を向けると、友人の腰に抱きついている女子生徒がいた。

 

「ちょっとリンちゃん!?貴女は一体何をしてるの!?」

「私の彼です」

「「「「「…はあ?」」」」」

 

リンちゃんと呼ばれた上級生は、爆弾発言をしながら真顔でこちらを見つめてくる。いや、言い方は悪いが眼によろしくない光が浮かんでいる。それがらんらんと光っているように見えた。

 

「...とりあえず先輩方、海道の治療を」

 

達也の言葉で現実に帰還した海道以外のメンバーは、海道を復帰させるために行動を開始する。全員が着席すると、当初の目的通り3人を生徒会室に呼んだ理由を話し始めた。

 

「入学式で説明しましたけどもう一度しますね。海道君の隣に座っているのが会計の市原鈴音 通称リンちゃん」

「私をそう呼ぶのは会長だけです。海道さんにはお好きなように呼んでもらえると嬉しいです」

「イラっ!その隣は風紀委員長の渡辺摩莉。そして書記の中条梓 通称あーちゃん」

「会長、お願いですから下級生の前であーちゃんはやめて下さい。私にも立場というものがあるんです」

「もう1人副会長のはんぞー君を加えたメンバーが今期の生徒会役員です」

「私は違うがな」

 

手足が長く身長が高い鈴音・小柄で童顔な梓の文句を無視して真由美は説明を続けた。摩莉はその様子をさらに無視して補足説明をする。

 

「お話は分かりました。つまり深雪に生徒会役員として入会してほしいということですね?」

「理解が早くてお姉さん嬉しいわ」

「「誰がお姉さんですか」」

 

真由美の小悪魔的な発言に、達也と真由美と鈴音に両手を抱きしめられ、頭部に包帯を巻いた海道が同時に突っ込む。周りからの視線を気にせず好意を隠そうとしない2人に触発されたのか。深雪も達也へ密着し始める次第だ。

 

摩莉は我関せずを決め込み、梓は眼から入り込んでくる刺激的な絵面に脳がオーバーヒートを起こして顔を真っ赤にしていた。

 

「新入生総代を務めた1年生には生徒会役員になっていただいています。深雪さん、私は貴女が生徒会に入ってくださることを希望します。引き受けて頂けますか?」

 

海道の左腕から離れて、真由美が生徒会長としてのお願いをする。

 

「…先輩方は兄の入試の成績をご存じですか?成績優秀者・有能な人材を生徒会に迎え入れるのであれば、兄でも問題ないと思われます」

「おい、深雪!」

「デスクワークであれば実技は関係ありません。一度協議していただけませんか!?」

 

達也の制止を彼女にしては珍しく無視して意見を告げる。確かにデスクワークは処理能力があれば、実技が悪くても作業の妨げにはならない。

 

だが根本的に不可能な理由がある。

 

「残念ながらそれはできません。生徒会役員は一科生から選ばれます。これは不文律ではなく規則です。これを覆すためには正式な会議で協議し投票を行い、3分の2以2上の票を集めない限り変更できません。そして一科生と二科生がほぼ同数である現状では、制度改定は限りなく不可能です」

 

海道の右腕から離れ、申し訳なさそうに話す鈴音に深雪は何も言えず黙ってしまう。

 

「それにね司波さん、たとえ制度改定されたとしてもすぐにわだかまりが解けるとは限らないと思うよ?人の感情って理屈じゃないからね。自分で思っていても実際はそう思っていないことだってある。制度改定されて直ぐに『二科生への差別をやめます』だなんて無理だ」

「...確かにそうですね。分を弁えぬ差し出口お許し下さい」

 

海道の少しばかり辛辣な言葉は、何故か不思議と心に染み渡り深雪も怒りを感じなかった。

 

「ということで深雪さん、書記として今期の生徒会に加わって頂いてもいいですか?」

「はい、精一杯務めさせていただきますのでよろしくお願いします」

「ちょっといいかな?」

 

話が終わり一息つこうとした達也・深雪・海道の3人だったが、摩莉の言葉で気を引き締め直した。

 

「風紀委員の生徒会推薦枠の内前年度卒業生分の一枠空いている。確か生徒会役員選任規定は、生徒会長を除き一科生から選ばなければならないだったはずだ」

「ええそうよ」

「一科生でなければならないのは副会長・書記・会計だったよな?」

「摩莉、貴女まさか…」

「つまり風紀委員の生徒会枠に二科の生徒を選んでも規定違反にはならないわけだ」

 

予想外の提案に全員が驚くがその理由では弱いとも思った。

 

「ナイスよ!」

「「はあ?」」

 

意外な言葉に達也と海道はまたしても同じ言葉発している。深雪は既に決まったとばかりに誇らしげに笑みを浮かべている。

 

「ちょっと待って下さい。確かにその理由は間違いではないかもしれません。しかし二科生が風紀委員になるのは外聞が悪いです。それならば海道でいいのではないしょうか。彼なら適任だと思われます」

「彼は教職員推薦枠で入る予定になっている」

 

海道が「は?」とばかりに首を傾げている。つまりは彼も生徒会室に招待された理由を知らなかったということだ。この場で言うか、後ほど連絡事項として伝達されたのかは不明だが。

 

「摩莉、もう言っていいの?」

「どうせ後々言うことになるんだろ?今言うか勧誘週間前に言うかの違いさ。特に問題は無い。それよりも君が風紀委員になってくれれば、色々と刺激になると思うが違うかな?司波もそう思うだろう?」

「はい!私にお兄様の活躍している姿を見せて下さい」

「…わかった」

 

深雪にまで言われれば達也は白旗を掲げるしかない。内心を古典的に表すと「ああブルートゥスお前もか」だろう。海道は友人が風紀委員に任命されたことに嬉しく思い笑顔を向けると、達也も脱力気味に軽く微笑んだ。

 

「放課後に風紀委員会本部に来てくれ」

「「わかりました」」

 

返事をしたところで予鈴が鳴ったため達也・深雪・海道は、腰を上げ生徒会室を後にした。生徒会室を出るまでさみしげな視線を感じたが気にしないと決め込んで無視するのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

放課後。共通の友人たちに断りを入れて、海道は達也と2人で風紀委員本部へと赴いていた。深雪は生徒会室で梓からワークステーションの操作方法を教えてもらっているためここにはいない。

 

コンコン。

 

「入ってくれ」

「「失礼します」」

 

風紀委員本部のドアをノックすると、中から入室するよう言われたので2人してドアを開ける。中に入るとあまりの悲惨さに眉をひそめて2人は聞いてみた。

 

「「委員長、ここを片付けても良いですか?」」

「何故だ?」

「魔工技師志望として、このように雑な置き方をされる状態は耐え難いものがあるんですよ」

「なるほどな。海道君はどんな理由だ?」

「単純なことです。汚すぎるので整理整頓したくなっただけですよ」

「うぐ!」

 

海道の容赦ない言葉に摩莉は打ちのめされている。海道自身は傷つけるつもりで言ったつもりはなかったのだが。自分の弱点を知っていた摩莉は、とてつもないダメージを受けていた。

 

 

10分後。

 

 

足の踏み場が僅かにしかなかった床が、ゴミの欠片がなくなるまで綺麗になっていた。主に達也がCADと書類を機種ごとや内容別に選別し、海道が箒で床に溜まったほこりやゴミを取り除いていた。どちらも魔法を使わなかったのは、手で作業出来ることに対して見境無く使ってしまえば、余計にだらけてしまうと心配したからだ。

 

「これで粗方終わりましたね。それでここに連れてこられた理由はなんでしょうか?まさか掃除させるためだとは言いませんよね?委員長」

 

海道が人の良い笑みを向けると委員長は眼をそらし始めた。露骨な動揺に怒るより、むしろ微笑ましく思える。つい笑いをこぼしてしまったが、それは達也も同様らしく苦笑を漏らしていた。

 

「君達は本当に仲が良いんだな」

「知り合ったのは3日前ですよ」

「その割には昔からの知り合いのように見えるがね」

 

達也は海道が人の心に入り込んでくるにもかかわらず、何故か心地良く感じてしまうことに若干驚いていた。自分の「心」に「感情」が1つだけしか残っていない。海道が話しかけてくれることに嬉しく思っている自分に違和感を覚えていた。不快なものでないのだから無くすわけにはいかない。大切にしようと達也は心に決めた。

 

「お互い最初にできた友人ですから」

「そういうことにしておこう。今日は悪かったな。風紀委員は全員片付けが苦手なんだよ。2人が入ってくれて助かるよ」

 

男前な笑みに男として負けた気がした2人だったが、純粋にお礼を言ってくれていたので敗北感は薄まった。

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