「あーあー。まーた、負けちゃったよ」
黒いナニカが、暗闇の中で囁く。まるでそれは、ゲームを楽しんでいる無邪気な子供のように。まるでそれは、命なんてものを考えもしないまま虫を踏み潰す幼児のように。
「次はどうやって遊ぼうかなぁ?」
無邪気な黒いモノは考える。次はどうやって楽しもうか、次は彼らがどこまでたどり着けるのだろうか。そんな事を思い馳せながら…。
「…うーん。思い浮かばないなぁ…、そうだ。本でも読むかー」
何もない空間から本を取り出し、あーでもない、こーでもない等と愚痴を溢しながら読むナニカ。時に笑い、時に泣き、様々な貌をナニカは見せている。
「へぇ、アッチやソッチの世界じゃ、こんな面白い事やってたのかー。…あっれ?」
数秒の間の後、すぐに本を放り投げ、ナニカはふて寝してしまった。
「………なんだよ、また抑止力じみたモノに防がれてるんだなぁ! ぷんぷん」
(ツマラナイ、嗚呼、ツマラナイ。なんだって、こいつらが出しゃばってくるのか。…そうだ、世界をいっそ面白くするのだから、混ぜたりするのはどうだろう?
きっと、ありえないモノが出てきて、それはそれは面白い世界になるんじゃないのか? 考えるだけでも、ワクワクしてくる)
急に悪い事を思いついたナニカはすぐに作業に取りかかる。ガサゴソと粘土をこねくり回すように空間を掴んでは混ぜ、掴んでは混ぜを繰り返す。
それはさながら、オーケストラの指揮者のよう。
「やっぱり、混ぜちゃえば面白くなるでしょ?
………え?
ツマラナイなんて知らないよ。ボクはやりたくてやるだけだもの」
暗闇の世界が様々な色彩を帯びてくる。
それは、幻想的で、でも破滅的で、ただただ気持ち悪くて。
そんな色とりどりの世界の中心で、黒いナニカは嘲笑う。
………狂った人形のように。ゼンマイのような音を立てて。
「…でも、こっちだけ強いのも問題アルよなぁ~。前はこっちが一方的に蹂躙しちゃってつまらない結果になったし、その前は一方的にあちらが強すぎてこちらが瞬殺されたし…よし、決めた! せっかくだし、ゲストを出しちゃおう! 珍しく大盤振る舞いなんだよ、ねぇ、【魔を断つ剣】クン?
…ふひ、ふひひひ。面白くなってきたぞぉー」
その日、不思議な世界は創られた。
【混沌】と呼ばれるナニカの手によって。
「さぁさぁ、開演のお時間です。皆様、映画館で映画を観るようにポップコーンを片手にでも、リビングでゆっくりとコーヒーを片手にくつろぎながらでも、満員電車の移動時間のお供にでも、どうぞご自由にね。ふひひひ…」