「おい、ヴィータ起きろ」
「ん…」
目を覚ますと、シグナムが横に立っていた。
「なんだよ、シグナムもうちょっと寝かせろよ…」
「寝ぼけるな、ここはどこだ?」
「え?」
目をごしごしとこすると、そこは洞窟の中だった。
「そうか、あたしらおかしな空間から脱出できたんだな…。はやて! はやてはどこだ!?」
「ここだ」
シグナムが抱きかかえる形で、はやてはすやすやと眠っていた。ポケットにはリインもいる。問題になった本も一緒に抱えていた。
「いたっ! いたいですぅ~」
読子の声が暗闇から聞こえてきた。
「読子せんせー、どこだ~」
ヴィータが魔法を使い、火の玉サイズの光球を近くに照らし出すと、四つん這いに
なった状態で、読子が右往左往と捜し物をしている所だった。
「すみませぇん、メガネを探してもらえませんかぁ~」
「せんせーのパンツ見えてるし、どんな体勢で捜し物してんだよ。あんたの足下にあるぞ?」
ヴィータは近づいてメガネを拾ってから、受け渡す。
「ほい」
「ありがとう、ヴィータさん。…ひっ! なんですかぁここは!?」
手元の光が、先程の戦闘で斬った相手を照らし出していた。
「あー、こいつら、魚人みたいだぜ?」
「おそらくナイアという曲者に惑わされた者もいるのだろう…」
斬ってしまった相手に対して、寂しそうな目を浮かべるシグナムだった。
「おーい!!」
九郎の声が入り口から木霊する。九郎の後ろをアルやナンシー、ドレイクもやってきた。
「良かった。これで全員無事みたいだな、はやてちゃんも助け出せたみたいだし、万万歳だ」
「おかげさまでな。しかし、すげぇもんぶっ放したな、九郎のにーちゃん」
「少しばかり危険は伴ったが、やっぱなんとかなったろ?」
「うつけが。こちらで多少の制御をしておらねば、危なかったろうに…」
「大十字九郎、アル・アジフの言う通りだぞ?」
暗闇の奥から聞いたことのある老人の声がした。カツカツとしっかりとした足取りで現れたのは、ラバン・シュリュズベリィとハズキだった。
「ラバン先生! いらしてたんですか!」
九郎の顔が明るくなる。
「奥にいた残党は始末しておいた。お前達には戦う余力は残っておらんだろうしな」
ラバンの笑顔が暗闇でも眩しく感じた。
「あはははは、ありがとうございます」
冷や汗をかきながらも、この人すげぇなんて心底思う九郎だった。ラバンは、はやてが抱えている魔導書を手に取る。
「この本は…、今ここにいるお前達以外の陣営が欲しているというのも把握している。こちらで取り分けられるよう、細工を施しておこう」
「イエス、ダディ」
ラバンはハズキに手渡すと、数分も経たないうちに、まったくうり二つの本が出来上がった。
「これでよし。まずは、大英図書館にはコレだ。魔術の力がなくても開けるようにしておいた。他の本と変わらん」
「本!!」
待ってましたとばかりに読子が奪い去った。すぐに読み耽っている。ナンシーもドレイクも頭を抱えている。
「…続いて、この本を守護騎士とやらにお渡ししよう。呪いの効果は先の戦闘で
なくなった。届けるにしても、問題の無い状態だ」
「ありがとう、じーさん」
「…ダディはじーさんじゃない」
本を渡す手前でハズキがヴィータに食い下がる。
「ハズキ! 別に年齢は気にしておらんぞ?」
「…イエス、ダディ」
寂しそうにするハズキの頭を撫でるラバンだった。
「すまないな、これでもいい子なんだが…」
「気にしてねぇよ」
無事に本を受け取ると、ラバンは来た道を戻ろうとしていた。
「…では、私達はまだ調査があるので、これにてな」
「はい、また!」
一同がみな、ラバンに一礼をした。
「…大十字九郎よ、できれば次に会う時は君がトラブルの渦中でない事を祈る」
◆◆◆
「はいはい、こんな風にいじっても、また負けだよ!」
黒いナニカこと、ナイアルラトホテップはどこか暗闇の、もっと暗闇にある虚空を見つめていた。
「まー、それでも少しは楽しめたかな? うーん、パンチが弱かったかな? やっぱり巨大メカ戦をもっと増やすべきだったかも? あるいは魔法少女の連中をこてんぱんにしてから、やればよかったかな? 次はもーっともーっと、苦戦するように仕込みが必要になるかなぁ?」
誰に対してでもなく、独りごちる。
「あー、そうだ、次こそはこんな風にしてみようっと。面白いアイデアが浮かんだし、何より愉しめそうだ!」
何かを閃いたかのように掌を叩く。
「ふふふっ、愉しみだなぁ」
彼、もしくは彼女が練る次なる世界はなんなのか、それはそれは先の話。