「ん…んぅ」
「あ。目が覚めましたね」
聞き慣れない声がしてゆっくりと目を開ける。
「あれ? あんた…たしか」
「はい、読子。読子・リードマンですよ。ちょっと待ってて下さいね」
「シャマルさん、ヴィータちゃん、起きましたよぉ~」
「はーい!」
今度は聞き慣れた声がしてきた。
「シャマル…。ここって…」
確か自分ははやてと一緒に本屋にいたはずだ。なのに、今いるのはチェックインしたホテルの一室だった。
「よかった。ヴィータちゃんが無事で」
シグナムとザフィーラも駆け寄ってくる。
「大丈夫か」
ザフィーラが優しく声をかける。
「…あぁ、大丈夫、だってててっ」
「あまり無理をするな。人間ならばおそらく致死量に匹敵する電撃を浴びたのだぞ」
「そ、そうか…。…そうだ、はやてっ!!!」
ヴィータははやてが部屋の中にいないことを思い出すと、急いで起き上がる。
「やめろ。主はやては何者かに連れ去られた」
ザフィーラがヴィータの肩をつかむ。
「おい、なんだよそれ!!」
「………」
シャマルもシグナムも落胆していた。
「どうして落ち着いてられるんだよ!! すぐにでも助け出そうぜ! なぁ、あたしら守護騎士じゃなかったのか!!」
「落ち着いて、ヴィータちゃん!!」
シャマルが一喝する。
「そうそう、落ち着かんとこれからの話できんじゃろ?」
モグモグと何かをほおばりながら、アルが部屋の隅から現れた。
「おい、アル! 勝手にホテルの冷蔵庫から、メシ引っ張り出すなよ!」
よく見ると昼間本屋の前で痴話ゲンカしていた兄妹だった。
「おまえら…」
「おっ、起きたみたいだな。自己紹介しとこう、オレは大十字九郎。こいつは嫁のアル」
「よめぇ?……」
アルと九郎の顔を見比べる。
「どうみても、兄妹とかが限度だと思うぞ…」
珍しくヴィータが冷静にツッコむ。
「ほれ、ちゃんとした挨拶をせんから、誤解を招くのだ。ワシはアル・アジフ、またの名を【ネクロノミコン】という。こう見えても、汝よりは年上じゃから、敬えよ、小娘」
「【ネクロノミコン】って、超有名な魔導書じゃねぇか!」
ヴィータは開いた口が塞がらない。
「でも、あたしを小娘って呼ぶのに、背丈じゃ同じくらいだろ? …一体、何歳なんだよ」
「デリカシーのないやつじゃのぅ。女に年齢は聞くもんじゃなかろうて。カッカッカ」
「・・・で、そのお二人がどうしてここに?」
ヴィータは溜息を混じらせながら、会話を続けていく。
「実は同じ本を探しててな、そこに出くわしたのがあんた方だったってワケだ」
「なるほど」
事情を伺い、ある程度飲み込め始めたヴィータだった。
「なぁ、シャマル。はやてと交信はできないのか?」
「残念だけど、ヴィータが気絶してる間も何度もやってみたけれど、変な壁みたいなものがあるのか、連絡が取れないのよ」
シャマルは苦虫をつぶしたような顔を浮かべた。
「そうか…。そういや、さっき読子せんせーがいたけど、なんであの人が?」
「案ずるな、赤いの。それについても説明をしてくれる輩が来る頃じゃ」
アルは腕を組みヴィータに伝えると、すぐ近くの部屋の壁から手が生えてきた。
「は? …手ェェェェェェ!!?」
後ずさるヴィータを余所に、花が咲くように女性が現れた。女性はピッチリとしたラバースーツを身にまとった妖艶な姿をしている。
「…ふぅ。こういうのも慣れないわね」
「今度は誰だ!?」
驚くヴィータを余所に、女性はしゃべり出した。
「あら、可愛い子ね。私はナンシー。ナンシー・幕張よ。大英図書館でエージェントをしてるわ」