Trinitat   作:文月りんと

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イギリス とある島


6.召喚

 礼拝堂で掲げられた十字架を見ている老年が立っていた。十字架にはキリストでは無く、全く違う歪なナニカが身体を貫かれている。

「ナイア神父、準備整いましてございます」

 跪いたジェンナーは深く礼をする。

 ナイア神父と呼ばれた男は、人では無かった。だが、誰に知られる事無く、この島へ居座り、誰に疑問がられる事無く島民を操り、そして改造していった。

「ありがと。君達、新しい偉人軍団の調査も、この島の島民がいなかったら今頃、頓挫してただろうね。もっとも、調べた人間は僕の遊び道具になって、自壊しちゃったわけだけどさ。ハハハ」

「………」

 ジェンナーは何も言えなかった。

 礼拝堂の地下に奇妙な洞窟があった。洞窟の中に何千人という人ならざるナニカが、うごめいていた。

「た、しけて…」

「もう死に、たいよぅ…」

「殺してくれー!!!」

 地獄絵図とはこのことなのだろうか。そんな中央部に小さな椅子と、八神はやてが座らされていた。

「………」

 はやての目は虚ろなままだ。

「はやてちゃん! はやてちゃんってば! 起きて下さい!」

 ポケットに隠れたままだったリインはこの場所へ連れられてきてから、何度もはやてを呼び掛けた。

「なんやぁ…」

 時折、反応があるかと思えば、やはり抱えている本に囚われているからか、反応うすい。

「どうしましょう…ワタシ一人じゃ…」

 他のヴォルケンリッターにテレパシーを送れないかも試してみたが、強力な結界がこの島を覆っているらしく、連絡が取れない。

「人形がペチャクチャと喋っちゃダメじゃないか?」

「きゃっ!!」

 ひょいっとはやてのポケットからリインが放り出された。

「いたたっ」

 上を見ると、そこにいたのはナイア神父だった。パチンと指を鳴らすと、ぽすっという音と共にリインは気絶した。

「ふむ。面白い形状をしているが、所詮はこの程度か。さぁて、これで…準備は整ったかな。あとは君達が来るのを待つばかりだね? 【神をも断つ剣】クン」

 

 連れ去られたはやては、ヘイ・オン・ワイから百キロ近く離れた海上にある、地図にもない島だという事が衛星からの調査でわかった。しかしながら、正しい場所までの特定には至らなかった。そして、ヴォルケンリッターの面々、そして、九郎とアル、大英図書館特殊工作部の一行は覇道財閥が用意した船に乗船し、問題の島まで近づいていた。

 

「…なぁ、シグナム。あたしらの場合、やっぱ空飛んだ方が早いんじゃ無いのか?」

 ヴィータは隣にいるシグナムに対してぽつりと愚痴をこぼす。

「確かにそうだが、今回ばかりは一筋縄ではいかない敵が待ち受けているかもしれん。仮にお前は敗れたのではないか? …体力は温存しておけ」

「わーったよ、いくらシャマルの治癒魔法をもらってるからっていっても、もしもの時に大技を出せなきゃダメだしな」

 ペンダントになったグラーフアイゼンを見続けていた。

 

 ホテルで読子も大英図書館特殊工作部の一員だという事を聞き、驚いたものの彼女が紙を使って、折り紙を作ったのを見て信じることにした。その場にはいなかったが、後ほど合流するドレイクという男の説明もあった。その後、はやてを誘拐したワットは九郎の手で倒されたという事を聞いた。しかし、次の刺客としてジェンナーが現れ、はやてを連れ去ってしまったという。

「ホントすまなかった。謝ってもこればかりは変わらねぇんだが、オレの気持ちの問題だからな」

 話の最後、九郎はヴィータや他のヴォルケンリッター全員に対して、謝罪した。

「…もういいよ。それに次はあたしも本気出すから」

 ヴィータから真剣な表情を返され、九郎は笑みをこぼした。

「わかった。宜しく頼むぜ、守護騎士さん。オレも次は全力だ」

 

「…さぁて、そろそろ問題の場所へ到着よ」

 ナンシーが皆に声をかける。周りを見ると、全員がそれまでとは異なる姿へ変身し、臨戦態勢となっていた。

「何が出てくるか判らないわ。力はなるだけ温存しておいて」

「バックアップは私とザフィーラがします。とりあえず、目の前にあるであろう結界を破壊することを最優先で対応しましょう」

 

「オオオオオッ!!!」

 ザフィーラが結界前で雄叫びをあげ、結界に殴りかかった。

『チッ、なんて堅い結界だ』

 九郎達は遠くに船を止め、上部甲板から様子を見ていた。

「ザフィーラ、選手交代よ。やっぱりアレを打ち破る術式を撃てる魔術師が出番みたい」

「了解した」

 シャマルの声でザフィーラはその場を離れた。

「…なら適役は大十字クンとヴィータちゃんね、あとは任せたわ」

 ナンシーはそう伝えると、甲板を透過するようにいなくなった。

「よっしゃーぁ!! オレ達が最初から本気だっていうのを見せつけねぇとな、いくぜアル!」

 マギウススタイルの九郎が吼える。

「応よ!」

 それにアルも続いた。

 

「「憎悪の空より来たりて…」」

「「正しき怒りを胸に…」」

「「我らは魔を断つ剣を執る!」」

「「汝、 無垢なる刃! デモーンベィィィィン!!」」

 

二人が言葉を紡いでいくと、雲が割れ光の中にデモンベインと呼ばれた巨神が顕現した。

「うお!! でっけー。なに、あのカッケーロボットは!!」

 空中に浮かんだヴィータが興奮している。

『へへっ。こりゃな、鬼械神(デウスマキナ)ってんだよ』

「ふーん。じゃ、あたしのグラーフアイゼンと破壊力勝負としゃれ込むかい?

九郎のにーちゃん!」

『おう!望むところだ! シャンタク!!』

 そう九郎が伝えると、デモンベインは背中から羽を生やした。

 

 一人と一機は必殺技のモーションへ入る。

『いくぞぉアル!!』

『応!』

 

「グラーフアイゼン! ロードカートリッジ!!」

 ヴィータも負けじと叫ぶ。

『Explosion. Raketenform.」

 

「ラケーテン、ハンマァァァァァー!!」

『『アトランティス、ストラァァァァイク!!』』

 

 同時タイミングで、分厚い結界に着弾する。ビシっという音が聞こえると、ガラスが砕け散るように崩れ去った。

 

『いよぉぉっし!』

「やったな、九郎のにーちゃん!!」

『あぁ! しかし爆発力がすげぇな、そ…』

 会話の途中で、デモンベインの背中が大爆発を起こした。

『あんだぁ!?』

『九郎、上を見ろ!』

 アルからの言葉で顔をあげると、九郎は絶句した。

『………。な、なんで、アイツがココにいる?』

 

 この場所にいるべきのない、もう一体の鬼械神、リベル・レギスがそこにいた。

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