Trinitat   作:文月りんと

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イギリス とある島の近く


7.介入者

『…やぁ、大十字九郎ぉ。そして、アル・アジフゥ』

 

『ん? 誰だ!? マスターテリオンじゃ、ない!?』

『…あぁ、そのようだ』

 聞き覚えがあるが、九郎もアルも思い出せない。でも、仇敵であるマスターテリオンとナコト写本でないことがわかる。説明はできないが、九郎とアルは脳がそう理解していた。

『おい、赤いの。ここはオレらに任せて、お前ははやてちゃんを助けてこい』

「え? でも…、いいのか?」

『いいもなにも、こればかりは譲れねぇんだ』

 デモンベインの顔がヴィータへ向く。コックピットの中はわからない。けれど、真剣な声で話す九郎達から「早く行け」なんて言われているように思えた。

「………わかった。死ぬなよ」

 ヴィータは背を向けて、はやてのいる島へ移動した。

『…さて、いっちょ行きますか!!』

『応!! ぶちかませ、九郎!!』

『だぁりゃああっ!!!』

 デモンベインは大きくパンチを振りかぶり、リベル・レギスに突撃していく。

だが、パンチは空を切った。

『おいおい、今日はこんなんばっかだな!』

『グチるでない! 右だ!』

『おおおおおおおっ!!?』

 かろうじてガードするもデモンベインが大きく揺れ、九郎は苦悶の表情を浮かべた。リベル・レギスの反撃として、水平蹴りが飛んできたのだ。

『どうだぁい、この蹴りはぁ。必殺技は流石に再現出来なかったけれどぉも、君達を倒すのなら、この程度で充分だぁぁぁぁっ』

『気持ちの悪りぃしゃべり方だな! …悪いがオレ達にはそうやって余裕かましてられる程の時間的な猶予ってのがないんでな、すぐに決めさせてもらうぜ!!』

『あぁん?』

『アトラック=ナチャッ!!』

 デモンベインの頭部から、蜘蛛の巣が出現する。

『その程度ぉの術式などぉ!!』

 リベル・レギスは腕を組み、その場で待機しているとあっさりと捕縛されてしまった。

『なにぃっ!!』

『アイツ、バカか? …まぁ、いい! 一気に決めるぜ!!』

 デモンベインの右手が光り出す。

『オオオァァァッ!! 光射す世界に! 汝ら暗黒棲まう場所なしッ!!』

 デモンベインが空中を奔っていく。

『渇かず、飢えず、無に還れッ!!! レムリアッ、インパクトォォォォ!!』

 デモンベインがリベル・レギスの胸元に拳を叩きつける。

『昇華!!』

『なんだとぉぉぉぉぉぉ!!!』

 アルの一喝で、デモンベインがリベル・レギスから離れると、その空間が消失した。無事にリベル・レギスを倒したことを確認する。

『うっしゃ。なんだって今みたいな亡霊を見せんだろうな?』

『そうぼやくな、九郎』

『ま、そうだな。あ、今の声って、アウグス………、いやなんでもねぇ…』

 九郎は以前戦った敵幹部の名前を言いかけたが、結局やめた。その程度の輩だったというのも思い出したからだ。

『…さて、三下程度に大技を使ってしまったが、下のあちらは大丈夫かのう?』

『まぁ、平気だろ』

 

『そうそう、あんまり細かいとぉ、背中から刺されちゃうよ?』

 

『!!? 今の声は!!』

 リベル・レギスがいた空間を改めて見渡すと、今度は白のリベル・レギスが現れた。

『はぁい。愛しの九郎くん。そして、ごーきげんよう、アル・アジフ』

『今回も貴様が元凶か! ナイアルラトホテップ!!』

 デモンベイン越しにナイアを睨みつける九郎とアル。

『ご明察ー。どう面白かったでしょ?』

『全然つまんねぇもん作りやがるな、相変わらず』

悪態をつきながら、九郎は今の状況の最善策を考え始めた。

『それは、それはお褒めの言葉として受け取っておくよ』

 

  ◆◆◆

 

 先に小型船で上陸したナンシーと読子は辺りを見回す。

「怪しげな島だこと。まずは入口を探さないとね」

「ナンシーさぁん、この島、なんだか気味が悪いですよぅ」

 読子はナンシーにべったりとくっついて、行動している。

《読子、聞こえるか?…》

 そこにドレイクから無線が入った。

「ドレイクさぁん、どうですか追加の紙は?」

《ありったけ用意してきた、あと三分で現地に着く。だから、もう少しだけ待ってろ》

「はぁい」

「行くわよ、読子! あんた教え子を助けたいってこっそり言ってたじゃ無いの」

 

「お涙頂戴ですかぁ、特殊工作部のエージェントさん」

 

「!!?」

 驚く読子とは対照的にナンシーは拳銃を構えた。

「そこね!」

 挨拶代わりに一発お見舞いするが、周囲に溶け込んでいるからか、

あっさりと外れてしまった。

「誰ですか?」

「こんばんわ、新生偉人軍団が一人、ジェンナーです」

 カメレオンの力がなくなったのか、ジェンナーは目の前に現れた。すぐに異なる注射器を取り出して、首に突き刺す。すると、鳥になった時のようにボコボコと身体が変化し始めた。

「これはこれは…私は読子ですぅ」

「コラ! 読子、そんなヤツに挨拶なんてすんじゃないの!」

 お辞儀をしている読子を突き飛ばして、ナンシーは何発も銃撃を浴びせる。

「読子! こいつはあたしにまかせてあんたは、はやてちゃんの救出に行きな!」

「でも、それじゃナンシーさんが…」

「そうですよぉ、あなた死ぬ気ですかぁ?」

 銃弾に倒れたはずのジェンナーが、起き上がった。

「なっ!?」

「驚くのも無理ありませんね、さてコレじゃ私を倒すのは到底無理ですよ?」

 銃弾を受けた場所が盛り上がっている。弾丸が貫通せず固い甲羅のような細胞が受け止めていた。

「お返ししましょう、プッ!!」

 身体についていた弾丸を口に含むと、ジェンナーはナンシーに吐き出した。速度もナンシーが撃った拳銃と同じ速度だ。

「危ないわね!」

 ナンシーは後ろに宙返りでよけると、頬から血が垂れてきた。どうやら敵の攻撃が

掠ったらしい。

「女の顔に傷をつけるとはふざけたやつね!」

「なんとでもいいなさい、プッ! プッ!!」

 ナンシーは、ジェンナーの唾弾丸をひらりとかわしていく。

「どうです? 私の身体は今、様々な動物達の能力が備わっているのです!」

「あーやだやだ。こういう自意識過剰なオトコって…」

 ジェンナーの様子を見て、ナンシーはうんざりとしてしまった。

「読子、行きなさい。大丈夫よ、この程度」

「わかりました」

《ちょっと待て! これ持ってけ!!》

 気づくと、ドレイクを乗せたヘリが三人の上空へ来ていた。ドレイクは上空から大きなジュラルミンケースを取り出し、投下した。

「プッ!!」

 ジェンナーはケースを撃ち落とそうとしているのか、弾丸を吐き出した。

だが、ケースからはかろうじて外れた。

「受け取りました!」

 紙の力でキャッチした読子は大きなジュラルミンケースを受け取った。

《よし、下から攻撃食らっちゃひとたまりもねぇから、一時退却だ!》

「はい!」

 読子が受け答えると、ヘリは遠くへ離れていった。

「本当にいいんですね?」

 読子は改めてナンシーに確認を行った。

「いいから早く!」

「わかりました…ナンシーさん、気をつけてください」

 心配そうな読子だったが、見渡すと洞窟が見えた。読子はそこへ駆けていった。

「…とはいえ、あたしじゃ倒せるかな、コイツ」

《おい、ナンシー!》

 ドレイクからの無線だ。

「なに?」

《あと三十秒したら、ヤツの身体を三時の方向に向けさせろ!》

「…なにそれ?」

《いいから! それから、俺の合図で透明化しろよ? わかったか!》

「あーも、わかったわよ!」

 一方的な通信だったが、おそらく勝機があっての連絡だろう。

「フン! 戦闘中に独り言とは、なめられたモノですね」

 同じ場所に何発か銃弾を発射する。

「同じ場所に穴などできませんよ、プッ!」

「ハッ!」

 段々と敵が繰り出す唾弾丸の速度が速くなっている気がした。

「まずいわね…、なら!」

 ナンシーは息を止めると、地面に潜り始めた。

「? なんですか?」

 手を振ってナンシーはその場から消えた。

「逃げる気ですか!」

 背後から銃声が聞こえる。

「だから聞かないと言ってるでしょう!!」

 何発弾丸を浴びても、ジェンナーは怯まない。

「そこです!」

 ジェンナーの変化した右腕のハサミが空を切る。

「ちくしょーっ!!」

 ジェンナーは暴れ回っている。

「はぁい」

「見つけましたよぉ!」

 ナンシーの首筋にハサミでガッチリと掴んだ。

「捕まえましたぁ、これで終わりです」

 ゆっくりとハサミの力が強まっていく。

《今だ!》

 ドレイクの無線を合図にナンシーは改めて空気を吸い込み、透明化を発動した。そして、掴まれていたハサミがたたまれると、次の瞬間、巨大な射撃音が辺りに木霊した。

 ナンシーは、ゆっくりと地面から出てきて、小刻みに息をしながら、ジェンナーの頭部は跡形も無く吹き飛んでいる事を確認した。

「はぁ…はぁ…、全く、こういうの嫌なのに」

《…とはいっても対処法あったか?》

 アンチマテリアルライフルを装備した、ドレイクが奥から出てきた。ヘリから急降下して、指定した方角で待機していたのだ。

「…ないわね。おかげさまで助かったわ。読子を追いかけましょう」

「あぁ」

          ◆◆◆

 

「キシャァァァァア!!」

「おい! こいつらキリが無いぞ!」

 ヴィータとシグナムは洞窟に群がるインマウスの怪人達と攻防を繰り広げていた。

「弱音を吐くな、ヴィータ!」

 シグナムの斬撃が木霊する。

「レヴァンティン!!」

『Explosion』

 シグナムの持っていた剣が反応する。

「紫電…、一閃!!! デェェェェェイ!!」

 百体はいたであろう集団目がけてシグナムが剣を振りかざすと、その一団は跡形も無く消し飛んだ。

「進むぞ」

「あぁ」

「はぁい。守護騎士さんたち」

 進んだ先に妖艶な女が立っていた。見るからに怪しい。

「なんだよ、今あたしたちは急いでるんだ、邪魔するなら、力尽くでも退いてもらうよ!」

 ヴィータはアイゼンを振り、威嚇する。

「おー、怖い怖い。そんなんじゃ、はやてちゃんに嫌われちゃうよ?」

「!! どうして、主はやての名を!」

 シグナムは手に持ったレヴァンティンを引き抜こうとした。

「ダメダメ」

「っ!!」

 耳元で囁くように女の声がする。

「ボクの名前は、ナイア。ヨロシクね」

 二人に向かって礼をすると、ナイアは地面に手を置いた。ズルりという音と共に、はやてとリインを取り出した。はやての手には魔導書がくっつている。

「ほーら。君達が希望してた子でしょ?」

「はやて!」

「ヴィータ、落ち着け!」

 今にも飛び出しそうなヴィータの肩を抑えて、シグナムはナイアを睨みつける。

「我が主、返してもらおうか」

 剣を引き抜き、ナイアに向けて突きつける。

「あはっ、でもボクを倒せるかな?」

 パチンと指を鳴らすと、自分達がいた場所が大きくすり替わった。

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