「!? ここは」
目を覚ますと、ヴィータとシグナムは先程とは違う場所に寝ていたことを知った。
「…ここはね、ちょっとした疑似空間さ。ほら、そこに九郎くんやアル・アジフ、読子とかいう子もいるだろ?」
ナイアの声の方向を見ると、先程別れたはずのデモンベイン、そして、読子がジュラルミンケースを持って、おかしな浮遊大陸へ立っていた。
「面倒だから一箇所に閉じ込めてもらったのさ。さて、これから何して遊ぼうか?」
『遊ぶだと? 悪いがそんなヒマねぇっての! 先手必勝ォ!』
人のサイズをしたナイアに向かって、デモンベインで殴りつける九郎だったが、白いリベル・レギスの手に阻まれる。
『くっそ、またか!』
「あははははっ、中身はないけれど、それはボクの駒なのさ」
ナイアはほくそ笑みながら、三ツ目の顔へと変貌していく。
『おい! 守護騎士のお二人さんに読子さんよ、ちょっとばかし力を貸してくれ。目の前にいる女の動きを止めてくれるだけでいい!!』
九郎は他の全員に指示をした。
「え? え? なんですかぁここぉ?」
読子はキョロキョロと辺りを見回す。ナイアの近くに見えたはやてを見つけると、ジュラルミンケースを開いた。
「はやてちゃんを返して下さい!」
「なんだか知らないけど、わかったよ!」
「承知した」
ヴィータとシグナムは自分の武器のチェックに入っている。
『おい、九郎! まさかこんな狭い場所でアレを出す気か!?』
心配そうにアルが質問を投げかける。
『さすが、我が嫁わかるじゃねぇか!』
アルの背中をバシッと叩く。
『バカ者! そんなことをすれば、デモンベインにいる我らはよくても、他の者達が巻き添えを食ってしまうではないか!』
『そりゃなんとなくだけど、大丈夫な気がしてんだ』
『大丈夫って…』
「ゴホン、夫婦の会話は終わりでイイかな?」
会話の内容が途切れないよう待っていたかのようにナイアは話しかけた。
『あぁ、お前を捕まえる鬼ごっこの開始だ!』
「てぇぇぇぇぇぇぇい!!!」
「アイゼン!! 続けぇ!!」
『Jawohl(了解)』
読子の操る大量の紙がナイアを襲い、同時にヴィータの放つアイゼンが鉄球を打ち出した。放たれた紙と鉄球はナイアのいる場所へ打ち込まれていくが、どちらも手応えがない。
「なんだよ、その程度?」
ナイアはあっさりと避けており、やれやれといった表情だ。
「ならば、これはどうだ!」
『Bogenform』
音声と共にシグナムのレヴァンティンが変形していく。
「オオオッ!! 翔けよ、隼ッ!」
『Sturmfalken』
シグナムが放った一筋の矢がナイアを貫く。
「おおおっ、効いたよソレ」
大穴が開いているにもかかわらず、冗談交じりでナイアはつぶやく。
「ヴィータ!!」
「あぁ、任せとけ! やるぞ! アイゼェェェン!」
『Gigantform』
グラーフアイゼンが巨大化し、大きなハンマーの形へと変形していく。
「今度はモグラ叩き? 面白いね、その武器」
「ここです! でぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁ!」
読子はありったけの紙を結合させ、ナイアの身体に巻き付けた。
「ありゃ? 捕まっちゃった」
ナイアは簀巻きのようにくるまると、もぞもぞと芋虫のような動作をした。
「ごぉぉてん、ばぁぁぁくさい! ギィガントォシュラァァァァァク!」
ヴィータが巨大な、グラーフアイゼンを振り下ろした。読子は防壁を紙で作り対処、シグナムも即席の防御壁を作り、踏みとどまった。
「やったか?!」
「ふーむ、まだまだ甘いよー」
フワフワと首だけになったナイアは溜息をつくような顔になった。
『今だッ、アトラック=ナチャ!!』
「なっ、大十字九郎!? 君の出番はもう少しあとじゃないの?」
『んなもん、知るか!!』
デモンベインから蜘蛛の糸がナイアに向けて発射され、見事ナイアの首を拘束した。
『さぁ、ハネムーン旅行としゃれ込むぞ、ババァ!!』
デモンベインは疑似空間を飛翔し始めた。白いリベル・レギスも追随するが、追いつけない。
『アル!』
『もうどうなっても知らんぞ! 最終必滅兵器シャイニング・トラペゾへドロン!!』
『うおおおおおぁっ!!』
デモンベインが金色に光り輝いていくと、天井の空間からシャイニング・トラペゾへドロンを取り出した。そして、アルと九郎は、二人で言葉を紡いでいく。
『『祈りの空より来たりて!』』
『『切なる叫びを胸に!!』』
『『我らは明日への路を拓く!!!』』
『『汝、無垢なる翼、デモンベイン!!!』』
一気に手に持ったシャイニング・トラペゾへドロンを振り抜く。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ナイアの断末魔が聞こえ、同時に白いリベル・レギスも飲み込み、そして、疑似空間が崩壊していった。