兵士よ、安らかに Die Ruckkehr des Soldaten 作:文月りんと
あれから、どれぐらい時間が経過したのだろう?
あれから、どれぐらいこの場所で眠っていたのだろう?
永遠ともいえるそんな時間を微睡みながら、私は一体、何をしているのだろう?
………わからない。考えても何も思い浮かばない。
この目を開けられれば、きっとどうなっているかを把握できるのに。
だが、今となっては、そんな力すら
残っちゃあいない。
時間だけが、ただ過ぎていく。
この暗闇を照らす光を持った、
誰かが来ることを僅かでも願って…。
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「ほっ!」
勢いよく蹴った排気口が、吹き飛んでいく。
「よっと!! ふぅ…」
うまく着地ができ、少女は安堵する。
背負っていたリュックに不備が無いことを確認し、辺りを見渡した。
少女が今いるのは、ソビエト連邦の
バルチースクにある軍事基地跡。
「入れそうな穴があったから、入っては見たものの、こうカビ臭くちゃ長居もできないかな」
昔から施設跡で宝物を探すことが彼女の趣味だった。
「んーなんかよさそうな物、あるかなぁ?」
少女は再び辺りを見渡すと、扉のすき間から緑色の光が漏れているのに気がついた。
「なんだろ? …調べてみますか」
そして、少女は扉の奥で、緑色にきらめく不自然な巨大なカプセルを見つけた。
「なに、あれ…」
そのカプセルは不思議な培養液に満たされ、カプセルの中央に人間の頭部らしきものがぷかぷかと浮いていた。
【頭部】にはケーブルが接続され、目蓋を閉じ、何かを待っているようにも見えた。
「あたし、あなたとどこかで会った事あるのかしら? それとも…」
その時、少女はどうしてなのか自分でもわからないまま、自然と深呼吸をしながら、カプセルに触れた。
すると…。
『アァァァァァアアア!!』
反応した【頭部】が急に大声を上げ、目を
カッと見開いた。
ゴボゴボとカプセルの中が気泡で見えなくなり、それはまるで、やかんの水が沸騰するかのようだった。そして、やがて【頭部】は沈黙した。
少女はすぐにカプセルから手を離し、後ろへと下がる。
「れ、冷静になれ! おじいちゃんも言ってたじゃない、焦ったらやられる。
だから、何よりも深呼吸! 次は自分の身を守れって!」
「はぁぁぁぁぁぁ…」
少女は目蓋を閉じて深呼吸をし、心を落ち着かせると、パリパリと音を立てて静電気のようなものが、少女を包み込んでいく。
そして、少女は自らを守るための武器を組み立て始めた。
「できた!」
少女が手にしたのは、折りたたみ式のクロスボウだった。すぐにカプセルに対し、構えをする。
『………待、て。待って、くれッ!』
「喋った!?」
『私、は…シュトロハイム。
ルドル・フォン…シュトロハイムだ。
すまないが…フロイライン。
今、何年なのか、…それを私に教えてくれないだろうか?』
二人が巡り会ったのは、ソビエト連邦にあるドイツ軍が数十年前に放棄した地下研究所
だった。