兵士よ、安らかに Die Ruckkehr des Soldaten 作:文月りんと
『…それから私は仲間達の手で回収されたようだ』
話をしていたら、夕方になっていた。そこから先は記憶に無く、憶測でしかない。確かに意識が途切れたあの時、自分は死んだのだ。
「そう、なんだ…」
シュトロハイムが自分の最後の時の事を告げてから、クレアの様子がおかしい。
『クレア。つかぬことを聞くが、君は”波紋使い”ではないのか?』
これは直感だ。
自分が目覚めた理由、そして、この話をしなければならないという使命感、それが
シュトロハイムを突き動かしていた。
「うん、あたしはシュトロハイムさんが言う”波紋使い”だと、思う。
昔から自覚がなかったんじゃないんだけど、おじいちゃんがこの事は秘密にしろって、そう言われててね」
『あぁ…』
「多分、貴方を倒した弾丸を撃った射手って、きっと…」
『…いや、皆まで言わずともいいのだ。私がこの時代に蘇ったのは、君に一言、言わなければならない事があるから、なのだろう』
何かを悟ったように笑顔になるシュトロハイム。
「!? シュトロハイムさん、口から血が…」
『すまないが、もう時間のようだ』
「そんな! ま、待ってよ! あたしの事、まだ自分の事を全部話したわけじゃないんだよ! だから、だから…」
クレアは涙を浮かべ、必死にカプセルを叩く。
『いいのだ、クレア。…そんな顔をしないでくれ。私の為に泣くのなら、私と君を合わせてくれた君の祖父に宜しく言って欲しい。さぁ、…これで、私も部下達の元へ、行け…る」
シュトロハイムはそうつぶやくと、笑顔のまま動かなくなった。
クレアは泣き崩れた。
クレアの本名は、クレア・グリゴーリエヴィチ・ザイツェフ。
そして、彼女の祖父は正真正銘、ヴァシリ・ザイツェフその人だった。
もっと話をしたかった。
短い時間しかそれは叶わなかったが、この時間は彼女にとって、とても有意義なものだった。
自分や以外の”波紋使い”の話は、そして、シュトロハイムとの巡り逢いこそ、運命を感じずにはいられなかった。
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シュトロハイムの死から一晩が経ち、クレアは研究所跡を去った。
去り際、彼の周囲にある機械を”波紋”の力によって破壊。研究所跡も跡形もなく吹き飛ばしてきた。
もしも、他の誰かによってあの場所が暴かれる前に静かに眠っていて欲しいとの願いからだった。
清々しい顔でクレアは空を見上げる。
「さーて、これからどこへ行こうかな…。あ。そういえば、研究所で見つけたこの赤い石のカケラ、キレイだよねぇ…。お宝ってヤツかな?」
彼女は、まだ知らない。透き通るような色をした、その石はドイツ軍が解析していた赤石のレプリカだと言うことを。
「せっかくだから、おじいちゃんの家に遊びに行ってみようかな?」
久しぶりに祖父に会うのも悪くはないだろう。ここ数日の出来事を酒のつまみにでも話せば、絶対に喜ぶに違いない。
「ただなぁ、おじいちゃんの家、トラップだらけだからなぁ…。まぁ、いいか。
それじゃあね、シュトロハイムさん。あたし、あなたと出会った事忘れないよ…」
To be continued…