綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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そろそろ楽にならせてほしいと私は力なく笑った
だってもう色々と疲れてしまったのだ

親の頭はお花畑、ついには死んでしまった
兄はトンデモ級の極悪人だし、もう一人の兄なんて死んでしまったし

とんでもない世界、とんでもない時代
そしてとんでもない人たち
そんな中に生まれ育って、でもまあ…幸せだったかな

家族を愛し、家族に愛され
時に憎み、逃げ出すことはできなかったけれど

苦しくて悲しくてあんまり順風満帆じゃない
こんなとんでもない全てに対して
私は恋をしていた



33〜29年前
1.結末はとっくに見えている


「私、嫌です!絶対ここにいる!」

 

ドンキホーテ・ドゥルシネーア、2歳。現在絶賛反抗期中。

 

「ルシー、分かっておくれ。ここにいるのはお前たちのためにも良くないんだよ」

 

「嫌っ!」

 

「ねえルシー。地上にはたくさんの素晴らしいものがあるのよ?」

 

「嫌ーっ!」

 

父親と母親の説得に対して嫌だと喚きまくる。こうなることは生まれてすぐ分かっていた。だってここ、ワンピースの世界じゃん。しかもドンキホーテさんの家で、兄2人。これからどうなるか分かっているからこそ言える。天竜人なんてお家から出た瞬間、こんな貧弱な幼児なんて死亡確定だ。

 

「地上に行くなら死んでやるっ!」

 

「ルシー!!!」

 

「そんなこと言わないで、ルシー…!」

 

「泣かないで、母上…」

 

ついに泣き出した母親に寄り添い慰めているのは2番目の兄だ。つまりロシナンテ、後のコラさんである。この気弱な2番目の兄は喋れるようになってすぐキャンキャン喚き出した妹が宇宙人にでも見えるのか、あんまり近付かないしいつも困った顔をしている。チッ、ヘタレめ。親がダメなら兄たちを説得して地上反対組に引き込みたいのに、それが上手くいかなくて困ってしまう。原作ではとんでもない長男&ドジっ子次男だが、なんだかんだと親が好きな素直な子なのである。少なくとも今は。むしろそんな大好きな親を困らせる妹が嫌なようだが。

 

「どうせ地上に行ったら殺されるんだ!それなら今死ぬ!すぐ死ぬ!さあ殺せー!」

 

「ルシー……」

 

火炙りも銃で撃たれるのも罵声浴びせられて踏みつけられるのも、絶対嫌だ。何より、こんな優しい家族が目の前で暴行されて死んで行くのなんて、絶対見たくない。地上に行くなら好きにすればいい。それならそんなのを見なくて済むように私を置いて行くか、むしろ殺してくれたなら。

 

「ワガママ言うなえ、ルシー」

 

「ドフィ兄上…」

 

「ルシーは妹だえ、家族だえ。誰も殺さないえ」

 

「じゃあ置いてって。私、地上は嫌」

 

「それもダメだえ。家族は一緒にいるものだえ」

 

「じゃあみんなでここにいようよ。せめて私が大人になるまではここにいよう。そしたら地上に一緒に行くよ」

 

「でもね、ルシー。ドフィもロシーもあなたも、地上で育つべきなの。ここにいるよりも、地上でのびのびと育ってほしいの」

 

「だから地上に行ったら殺されちゃうんだってばー!」

 

「そんなわけないえ。そんなやつはドレイにして遊んでから殺してやるえ」

 

「こらこらドフィ」

 

「ドフィ兄上、地上に行ったらドレイ持てないよ?好きなもの買えないよ?兄上の好きな遊びも全部できないよ?」

 

「なんでそんなのが分かるえ?ドレイは地上から持ってくるんだえ?」

 

産地直送だと言いたげなドフラミンゴに頭を抱えた。あーもう!この人たちはなんで分からないんだ!むしろ2歳児の言葉にまともに取り合っている時点でこの人たちは普通じゃないんだろうけど。天然というか…。頭のアンテナでも毟り取ってやれば正気に戻るんだろうか?

 

「ルシーは…ぼくたちといっしょがイヤなの?」

 

「そんなことないんだけど…!」

 

「大丈夫だよ、ルシー、ロシー。いつだって家族みんな一緒だ。大丈夫、みんなでいれば怖いものなんてない」

 

「むしろ怖いものしかないよ!?」

 

「行ってみなきゃ分からないだろう?」

 

ニコニコしながら母親の肩を抱いて何の根拠もなく言いやがる父親に、ちょっと全力のアッパーでもかましてやりたくなった。頭沸いてんのかこのバカップル!

 

「とにかくっ!私は!絶対に!地上には!行かないんだからねーっっ!」

 

そう叫んだのがつい先日。

 

「……………………2歳児って無力…」

 

寝ている間に強行されて連れてこられたよ。地上に。ええ、もちろん地上に。

 

「ほらルシー、地上もいいところだろう?見てごらん、あれが海だよ」

 

「綺麗でしょう?ルシー。あなたたちに地上の素晴らしさを見せてあげたかったの」

 

「見せるだけなら天竜人やめなくてよかったじゃんかよおおお!!!」

 

後ろでドレイを買いに行こうと言っているドフラミンゴと私を見て、両親が困った子たちねと笑った。

 

「この子たちにはちゃんと教育しなければいけないな」

 

むしろあんたたちに教育が必要だ。今後のことを思うと頭が痛くなって、私は父親に抱き上げられたまま滂沱の涙を流したのである。

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