綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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89.やっぱりこうなった

 

 

後はお察しの通り。原作通りにルフィが暴れて、天竜人たちはフルボッコ。…ここはあえて言おう。ざまあああ!!!

 

(久しぶりに胸がすいたわ…。さすが主人公!)

 

ニヤニヤしながら見てたら、ローに頭を押さえつけられて席の中にしゃがみこむことになった。乱暴な!

 

「おい、伏せてろ」

 

「デリンジャー 、ルシーさんを守るのよ!」

 

「キャー!楽しくなってきたわね!」

 

わあわあと観客たちが逃げ惑う悲鳴と、ロズワード聖の怒鳴り声、銃声がうるさく響く。いやあ、さすがにこっち向けて銃を撃ってくるとかない……よね?でも頭に血が上ってるっぽいし、可能性としてはあり得そうだな、と素直にローとデリンジャーに押さえ込まれた。ベビー5が両手を巨大な刃物にして覆うように守ってくれてるのがチラッと見えた。ああ、ベビちゃんも危ないのに…。

 

「「海軍大将」と「軍艦」を呼べ!!!目にものを見せてやれ!!!」

 

(自分の力じゃ何もできないくせに、よく言ったものだわ…)

 

まさに虎の威を借る狐…あっ、私もそうだわ。人のこと言えないわー。

 

「ちょっとママ!動かないで!」

 

今どんな状態か様子見たいのに、とウズウズする度に、デリンジャーに怒られた。ハイ、スミマセン…。

 

「首についた爆弾外したらすぐ逃げるぞ。軍艦と大将が来るんだ」

 

「えェ!!?」

 

すぐ側でそんなやりとりが聞こえた。えっ、まさか?まさかこの声って!?

 

「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」

 

「えっ、ちょっ、ロー!ルフィくんいるの!?会いたいぶふっ」

 

「もうっママ!静かにしてなさいよっ!」

 

「デリンジャー、お願いどいてえぇぇ…」

 

ぎゅうぎゅうに押し込められて、私、そろそろ内臓が口から出てきそうな気がするよ…。

 

「ん?そこに誰かいんのか?」

 

「…気にするな」

 

トドメとばかりにローに頭を押し込められた。なんでだよ!憧れの主人公に会いたいだけだってのに!とかモダモダしている間に、ローとルフィの会話がぐんぐん進んで、遠くからシャルリア宮を呼ぶ声が聞こえてきた。バリバリ、と布の裂ける音が妙に生々しく聞こえる。まさか?まさか!?

 

「考えても見ろ………こんな年寄り、私なら絶対奴隷になどいらん!!わはははは」

 

「言い値で買わせてくださ「「「静かに!!!」」」

 

ローとベビー5とデリンジャーの三重奏が圧迫感と一緒に上から降ってきた。お、折れる!背骨が!このままじゃ折れる気がする!デカい胸のせいで圧迫感が増し増しだからか、酸欠で呼吸がしづらい。くそっ!こんなことなら前世のように貧乳の方が……いや、やっぱ巨乳の方がいい。ないよりある方がいい…。なんて葛藤していたら、酸欠じゃない強烈な何かに意識を持っていかれそうになった。

 

「ママ?えっ、やだママ、しっかりして!」

 

体の上からデリンジャーたちが退いたのか、視界が一気に開ける。明るいその場で、ぼやけた視界の中でデリンジャーの顔がドアップになった。ガクガクと揺さぶられて、やっと呼吸ができた。

 

「は……っ?」

 

「おっと…そんなところにお嬢さんたちがいたのか。失礼したね」

 

「へ?あ、いえ…」

 

こちらこそ、と頭を下げたらベビー5が激おこで銃の腕をレイリーさんに向けた。おいおい、待ちなさいっての!

 

「ちょっと!ルシーさんになんて事してくれたのよ!」

 

「あああ…ベビちゃん落ち着いて…」

 

「落ち着いていられるもんですかっ!」

 

「まあまあ。可愛い顔が台無しだよ?」

 

「えっ!?」

 

ポッと頬を赤らめて銃の腕を解除したあたり、まだまだ若いなぁ、と笑ってしまった。うーん、年頃の子って可愛いわぁ。デリンジャーの方はまだまだヤル気満々だけど可愛くないのよね…どうかっていうと物騒。周りがそろそろ脱出しよう、という流れになる中、キッドの言葉にローの顔色が分かりやすく変わったのが見えた。…訂正。ローとルフィの、だ。

 

「もののついでだ。お前ら助けてやるよ!表の掃除はしといてやるから安心しな」

 

「…ベポ。ルシーさんを守ってろ」

 

「アイアイ!」

 

(あーあ、分かりやすいなぁ……ん?ルシーさん?えっ、「ルシーさん」って呼んだ…!?)

 

「………!?ろ、ロー、今「ルシーさん」て…」

 

今まで頑なに名前を呼ぼうとしなかったくせに?今?呼ぶの?このまま一生あんたとか呼ばれ続けるんだろうな、となんとなく思ってたから、まさか名前で呼ばれるなんて思いもしなくて目玉が飛び出るかと思った。震えつつ手を伸ばしたら、ローが口をへの字に曲げて鬱陶しそうに言った。

 

「いいから行け!」

 

「あっ、待って!ロー、怪我しないようにね!」

 

「ーー誰に言ってんだ?」

 

ニヤ、と口の端を上げてキッドとルフィの背を追って行った。なんかもう、本当に大きくなったなぁ…!

 

「えっと、じゃあルシーさんはおれがおんぶするよ」

 

「おー!ありがとう」

 

別に一人で歩けるんだけど、という言葉は飲み込んだ。だってモフモフ!ベポのモフモフに合法的に抱きつけるんだから!でもなぜかデリンジャーがムキになって張り合ってきた。

 

「えー?クマなんかよりあたしの方がいいよね?ねっ?」

 

私の腕に抱きついて、ギラリとベポを睨んでる。こ、怖いわよ、デリンジャー!

 

「クマですいません…」

 

「てかデリンジャーは背びれあるからおんぶ無理でしょ?」

 

「あ」

 

忘れてた、と可愛く笑っていたので、ベポくんへの態度は許す!なんたって可愛いからね!

 

「まあとりあえず歩くよ。ベポくん、案内お願いね」

 

「アイアイ!」

 

「さあ、ベビちゃんも一緒に行こう」

 

「え、ええ!」

 

ベビー5がしっかりと頷いたのを確認して、ベポやシャチ、ペンギンの後を追って外へ出た。まー、何というか死屍累々?船長たちが倒した海兵たちが哀れなほどに力の差が歴然としていた。しかも誰も死んでないってのがいいね。

 

(これがドフラミンゴなら殺処分だろうからなぁ…)

 

ああ、主人公ってすごいなぁ。そして私はやっぱり、ドフラミンゴの妹であるというのに、悪の道をひた走るなんて到底無理だったんだな、と改めて分かって、なんだか笑ってしまった。

 


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