綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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リクエストより、「もし海兵になっていたらの続編でドフラミンゴとの再会話」です。
紛れもなくギャグです。
シルヴィアさん、リクエストありがとうございました!


続・もしセンゴクさんに保護されて養子扱いで万年三等兵の海兵になっていたら

 

「ドゥルシネーア…お前に任務を与える」

 

「おとーさん、カッコつけてゲンドウポーズしてないで早くお茶碗下げてよ。カピカピになったら洗いにくいのよ?」

 

「………お前、だんだん私に容赦なくなってきてないか?」

 

心なしかしょんぼりしながらも食器を下げて私の分も洗ってくれた。さすがお義父さん!無駄に元帥やってないね!

 

「で、任務って何?どの部屋の掃除すればいいの?」

 

「お前なあ…そんなだからなかなか昇格しないんだぞ?だいたい掃除は雑用の仕事だろうが。…同期が昇格するのはお前も辛いだろう?」

 

いや、そんなに昇格したくないです。たしかに一等兵ぐらいにはなりたいなー、と思うけど、原作ブレイクした時点で今後何があるかわからないし、できるだけ本部でのうのうと暮らしてたいです。…あの時原作通りにドンキホーテファミリーにスパイ任務しに行こうとしたロシナンテを引き留めるのにどれだけ苦労したと思ってんだ。

 

「あー、ヒナちゃんとか?私より後から入ったのにもう中佐だっけ?すごいよねー。もう兄上も抜かすんじゃない?あはは」

 

「笑い事か!だから私が与える手柄を立てやすい任務を大人しく受ければいいものを…!」

 

「お義父さん、それ職権濫用だから。サカズキさんにチクるよ」

 

「ユーモアの通じないやつめ…」

 

そんなことを喋りながらも食器を拭く手を止めない…さすがお義父さん、無駄に元帥(略)。しかし仕事中ならまだしも家で仕事の話をしてくるなんて珍しい。しかもロシナンテのいないタイミングを狙って。…まさかまたお見合いか?前回はヴェルゴがいた時点で完全終了のお知らせだったから、必殺「まだお義父さんと一緒にいたいの…」作戦で躱したというのに…!ロシー!妹がピンチだよ!早く出張から帰って来て!

 

「客人の接待を頼みたい」

 

「お客さん?…え、まさか七武海?やだよー。クロコダイルさんってば怖いんだから」

 

人を値踏みするような目でジロリと見た上で意味深に鼻で笑ったし…。七武海で一番海兵たちに好かれているアラバスタの英雄とはいえ、あの態度は酷くね?私の接待に不出来でもあったのかと思いきや、なんか毎回指名してくるようになったし。何なのあの人…怖いよー。

 

「まあそう言うな。あの気難しいクロコダイルに気に入られているのはお前だけなんだぞ」

 

「だからなんか裏がありそうで怖いんだってば…」

 

「茶を出して会話をするだけだぞ?単にお前の接待が上手いからだろう」

 

「ま、10年はお茶出しやってますからね!ふふん!」

 

「私の義娘なのになんでこうも出世欲がないのか分からん…」

 

泣くなよ、トーチャン。そんな話をした2日後、七武海会議のために続々と錚々たる面子が揃って来た。私が接待するクロコダイルさんは毎回前日に到着するので予定が組みやすい。料理も酒も事前にオーダーくれるし。部屋に案内した後、少し間を置いて葉巻セットと水を持って部屋に伺った。

 

「サー・クロコダイル、ドゥルシネーアです。葉巻と飲み物をお持ちしました」

 

「ーー入れ」

 

奇妙な間があって、けれどクロコダイルさんはいつものように入室を促してきた。

 

「…失礼します」

 

「よォ、ルシ「うぎゃあああああ!!!!!」

 

ピンクのモフモフが見えた瞬間に扉を閉めたけど、あれセーフ?ねえセーフ?なんか私の名前呼んでたけど気のせいだよねっ!?全速力で廊下を突っ走ってセンゴクさんを探した。お、お義父さん助けてえええ!!!

 

「フッフッフ!おいおいルシー…ご無沙汰だってのに、随分とつれねェじゃねえか…!」

 

「ぎゃあああ!!!や、や"だあ"あ"あぁっ!!!」

 

お義父さん!お義父さんっ!魔王が私をつかんでくるよー!魔王が私を苦しめるううう!もうこの際ロシナンテでもいいから助けてええっ!!!15年近く音信不通だった実の妹にパラサイトする兄とか悪夢でしかないー!

 

「おい待て」

 

ザァア、と周囲に砂が舞う音が聞こえた。目を閉じていたんだと気付いてなんとか瞼をこじ開けると、真後ろから風と砂に煽られた分厚いコートの端が見えた。嗅いだことのある特殊な葉巻の香りもした。あっ、体が動く!

 

「く、クロコダイルさん…っ!」

 

あなたが神か!今まで怖がっててすみませんでした。今度からは全身全霊で接待します!具体的には次から飲み水を水道水からちょっとお高い水に!

 

「クク…やはりお前の身内か」

 

「……感動の再会を邪魔するんじゃねェよ、センパイ」

 

あっ見えないけど分かるぞ。クロコダイルさんは絶対悪い笑顔だ!そしてドフラミンゴは怖い笑顔だ。てかクロコダイルさん、私がドフラミンゴの身内って分かってて指名してたのか。ほらな!やっぱそういう裏があったじゃないか!お義父さんのバカ!クロコダイルさんの飲み水はやっぱり水道水のままな!

 

「嫌がる女に無理強いは良くねェな……っ!」

 

「へ?うひっ!?」

 

ふわりと腹に何かが巻きついて、直後に凄まじい力で天井まで持ち上げられた。何事だと目を丸くした私の眼下を、ピュン、と光線が飛んで奥の壁を爆発させていた。もしかして、もしかしなくても?

 

「おやァ〜〜…何事かと思ったら…七武海は会議前後で接触禁止ってェお達しだったろォ〜?」

 

「ボルサリーノ中将!う、っわ!」

 

カッとフラッシュしたと思ったら浮遊感があって、眩んだ目を瞬かせるといつの間にかボルサリーノさんに抱き上げられていた。…肩の上に。お姫様抱っこではなくお米様抱っこである。なんでや…未遂とはいえ見合いに名乗り出たくらいだから私のことが心底嫌いというわけではないんだろうと思ってたのに、まさかの無機物扱い?

 

「しかも女の子を巻き込むとかさァ〜……ちょいとやりすぎだよねェ…。ルシーちゃん、大丈夫かい〜?」

 

「あっ、はい!ありがとうございます!」

 

「ならいいんだけどねェ。じゃあ、ここはもういいからセンゴクさんの所に行ってきな〜」

 

優しく私を床に下ろして、ポン、と背中を押してくれた。どうやらクロコダイルさんへの接待はもういいらしい。

 

「ありがとうございます!今度お礼させてくださいーっ!」

 

「それじゃあ〜〜手料理でも期待しようかねェ」

 

「ガッテンです!」

 

早速明日にでもセンゴクさんのお弁当作るのと一緒に作ってあげよう。

 

「待て、ルシー!」

 

「おおっとォ〜!行かせないよォ!」

 

ドフラミンゴとクロコダイルさんをまとめて止めてくれるなんて!私の中でボルサリーノさんの株が急上昇した。ほ、惚れてまうやろー!今まで胡散臭いオッサンだと思っててすみませんでした!ごはんの上に桜でんぶで大きいハートマーク付けて差し上げますねー!!!

 


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