綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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2.猶予は残されていない

 

 

「どうして誰も跪かないのかえ!?」

 

ちっちゃいドフラミンゴが地団駄を踏みながら怒った。ちょうど食事時、広すぎてサッカーできんじゃね?って感じの食堂で荒ぶる兄の姿を見ながら、やわやわなオートミールを食べた。うーん、薄味。ちっちゃいドフラミンゴよりテレビ見たい。テレビが恋しすぎて今なら幼児向けアニメ代表のアンパンマンでも許せる。

 

「…んぐっ!?げほ…っ!」

 

現実逃避しながら食べていたら気管に入ってしまった。むせる私の背中を白魚のような手とも言うべき母親の柔らかな手が撫でさすった。

 

「あらあら、ルシー。慌てないでゆっくり食べなくちゃ」

 

「はい、母上…」

 

私の体は2歳児というには未成熟だ。元々生まれた時に未熟児だったとかも関係してるんだろうけど、メンタルが大いに関係していると私は踏んでる。主にストレスで。だって成人済みのいい年した成人女性が気が付いたら乳児でおしめ替えられながらギャン泣きしている最中でしたとかどんなよ!?しばらく現実逃避で拒食とか育児全力拒否とかしていたのが懐かしい…あれからもう2年か…。まあそんなわけで、私は今なお離乳食を食べている。大人と同じ固形物食べてたら嘔吐か下痢しちゃうしね。

 

「ルシー。これ、あげる」

 

卓球の試合が6試合同時にできそうなくらい大きな食卓の端から、小さい方の兄が果物を持って来てくれた。ちっちゃいロシナンテは自分より流暢に話して文句言いまくる妹に時々怯えながらも、こうやって私の好物を分けてくれたりする心優しい兄である。あーーー、コラさんマジ天使!

 

「よかったわねぇ、ルシー。いい子ね、ロシー」

 

「ありがとう、兄上」

 

皿から数切れ果物を取らせてもらって例を言うと、ロシナンテは丸々した頬を染めてはにかんで笑った。その控えめな笑顔に胸いっぱいである。ロシナンテとドフラミンゴ…まさに天使と悪魔である。遠くで父親が荒ぶる悪魔、もといドフラミンゴを宥めていて…うん、アレはまあ、原作通りと言うかなんていうか…。

 

「父上!ドレイが欲しいえ!母上!新しいオモチャが欲しいえ!」

 

「ドフィ…」

 

「街に行っても誰も跪かないえ!誰も命令を聞かないえ!下々民のくせに!」

 

「こらこら…今は我々も天竜人ではないんだぞ、ドフィ」

 

(あーあ…あぁあーーぁー………もーうやっちゃってたのか…!)

 

天竜人一家がフルボッコにされる前兆来ちゃったよ!クッッソ!せめて満足に私が走り回れる年齢になるまではおとなしくしてて欲しかった。…ん?待てよ…?ドンキホーテ家がフルボッコにされるまでに何かなかったっけ?

 

「ルシー?どうしたの?」

 

「…へ?あ、ううん何でもないよ」

 

ロシナンテの声にハッと我に返った。フォークにブッ刺した果物を食べようとした姿のままで考え込んでいたらしく、膝の上には果物の汁がすさまじく滴りまくっていた。服はもう気にせず、ムシャリと果物を口にすれば甘くて柔らかで幸せな味がした。

 

「おいひい……………あ…あーっ!」

 

火事だ!火事が起きて家が丸焼け、そんでゴミ山生活とかになるんだ!案外平和な日常にウッカリ忘れていたことを思い出して悲鳴をあげてしまった。そんな奇異な末娘を見て母親と小さい方の兄が目を丸くしていた。ついでにいうと遠くにいた父親と大きい方の兄も。

 

「ど、どうした?何かあったのか?」

 

「ルシー、あなた最近どうしたの?あんまり外にも遊びにでかけようとしないし…」

 

「いやそれは街の人が怖いだけで…じゃなくて、ちょっと私、部屋に戻る!ごちそうさまっ!」

 

「えっ、ルシー!?」

 

子供用の椅子から飛び降りて自室へと走った。マズイ、マズイ…マズイって!このままじゃガチで一家共々路頭に迷いまくって原作道まっしぐら!母親死ぬし父親殺されるし…ってかその前に拷問だよ、拷問!父親は最悪もう自業自得って諦められ…いや、諦められないけど。天竜人界隈でも何アイツやばーいみたいな噂出てたような私を擁護してただの子として育ててくれた恩があるし。あんな天然アホバカ親父でも愛すべき父親なんだし。…じゃなくて、家族全員を助けるなら何か手を打たなきゃ。金…そう、とりあえずは金だ!

 

「えっと…私の誕生祝いにもらった金銀財宝が……あった!」

 

これで貴女も奴隷でも買うアマス、なんて親戚のドンキホーテさんたちや母親のママ友天竜人たちからお祝いでもらっていた金目の物一式の入った宝箱を開けて中を取り出そうとした。

 

「くっ…!クッソ重い!なんで金ってこんな重いの!?」

 

金の延べ棒の半分ぐらいの質量しかない金の首輪(言わずと知れた奴隷の人間用サイズ…)を一つ取り出すのにすら、両手で必死になってじゃないと無理だ。それならば、と煌びやかな金貨を持つと、こっちは普通に持てそうだった。ただし、片手に1〜2枚が限界。

 

「……避難用のリュックサックでも用意しとこうかな…」

 

持てるだけの金貨と薬と食料…なんでこの世界ってインスタント食品が発達してないんだろうか。仕方ないから飲み水と乾パンとビーフジャーキーでも突っ込んでおこう。あーあ、うちの親ったらもう!せめて天竜人やめる前にドフラミンゴの性格を矯正させとけよな!

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