「妹でなく姉として生まれていたら」の天竜人続行ルート3です。
※注意※
・フィルムゴールドの登場人物とネタが出てきます。
・今回は家族との絡みがないです…
天然水さん、リクエストありがとうございました。
ドゥルシネーア宮は変わり者。成人の頭脳を持つドンキホーテ家の異端児。親兄弟の代わりに奴隷を愛でる。そんな風評で私の体がコーティングされる頃、フィッシャー・タイガーがそろそろ解放しろと言ってきた。
「ええー…おかしら、もう出て行っちゃうのぉー?サービーシーイー!」
数年も同居していれば立派な身内だ。あの手の水かきとかしっとりした皮膚に触れなくなるのはとても寂しい……あっ、人柄もね!兄貴!って感じだったからいなくなるのはとっても寂しい。
(他の奴隷たちも悲しむだろうに…。隻眼ちゃんなんか御頭にメロメロだから泣くだろうなぁ)
色々思うところはありつつ、廊下の隅のもみの木にクリスマスツリーみたいに飾ってた鍵を一つ投げて渡した。好きな時に出て行っていいよ、とみんなが取りやすい所に置いてるのに、一向に誰一人として出て行こうとしないとか。どんだけー。あ、たまに旅行で出て行く人は例外とする。またすぐ戻ってくるしね。
「…結局何年いたっけ?」
「ここに来てからは7年ほどか」
ガチャ、と首輪を外して、鍵ごと袋に入れていた。たぶん後で解除方法とかを解析して、奴隷解放の時に役立てるつもりなんだろう。
「……本当は1年で奴隷たちの居場所なんて全部把握してたんでしょ?」
なのに7年もここにいた。それは、私の自惚れじゃなかったら、きっと彼はーーー。
「…馬鹿を言うな。半年だ」
極悪な笑みを浮かべて、御頭は私の頭を押さえつけるように撫でてきた。この容赦ない撫で回しも…もう最後なんだな、と悲しくなった。
「私のこと、みんなのことも、忘れないでね、おかしら」
「忘れねェさ。人間にも、天竜人にも、お前みたい変なやつがいるってことはな」
お別れのパーティをして、隻眼ちゃんは一つの目で号泣しながら御頭に告白して、バッサリ振られて、ますます泣いてて。御頭はそんな隻眼ちゃんの頭を撫で回して、幸せになれよとグラスを掲げる奴隷たち一人一人に挨拶をして回っていた。
「失礼します。ドゥルシネーア宮、船の手配が済みました」
「ご苦労様です。おかしらー、そろそろ出発だよー」
「分かった、すぐに行く」
荷物を取りに戻る魚人を見て、7年前にはあたふたしていた海兵がにやりと楽しげに笑って言ってきた。
「寂しいですか?ドゥルシネーア宮」
「当たり前でしょ。私は自分の奴隷たちが大好きなの。でも、みんなが幸せになる方法を自分の手で掴めるなら…それが一番だもの」
「ドゥルシネーア宮って可愛くないですね!」
「お黙るアマス!」
「似合わねえー」
久々に天竜人っぽく言ってみたら、海兵に大いに笑われてしまった。……この人、本当に海兵?私の方が偉いのよ?世界一偉いんだよ?クッソ!…アマス!
「私の『家族』たちは元気?」
「あー、はい。ご両親はフーシャ村で農業の手伝いをしているそうです。母君は体が健康体になったとか。父君も労働後の酒が美味いことを知ることができたとか言ってたそうですよ。天竜人って可哀想ですよね。あの一杯の美味さを知らないなんて」
かわいそうに、としみじみ言う海兵には激しく同意。分かるわー。私も前世で給料日のちょっとした贅沢をどれだけ楽しみに生きていたことか…。そして母親については素直によかったねと言ってあげたい。元気で長生きしろよ!
「で、弟たちは?」
「あー…それがですね……ロシナンテは…失礼、ロシナンテ様は」
「いや、呼び捨てで結構」
「そうですか?なら遠慮なく。ロシナンテなんですけど、あのドジっ子、ガチなんですね。ビビりました。この間あいつが入隊して始めての訓練を見学したんですけど、めちゃくちゃ転んでました。周りのやつらからめちゃくちゃ心配されてました。いやー、おれ、あんなドジっ子初めて見ました」
いや、そんな感動されても…。でも元気にやっているようなら安心だ。周りから心配されてるってことはそれなりにいい関係を作れているようだし。
「ドフラミンゴは?」
「あーーー…うーーーん……」
なんか唸ってる。いや、分かるよ。ドフラミンゴの報告を最後の最後に回すとか、それだけ言いにくい話だよね。うん、なんとなく想像できる。
「毎日毎日毎日毎日サカズキ少将に噛み付いて行って、毎日毎日毎日毎日ボコボコにされてます。あいつが暴れだすと覇王色の覇気でみんながぶっ倒れるからホント厄介で…ハァ……」
「そりゃまた……」
「あ、CPから報告も上がってくると思いますけど、今のところチンピラとか裏の組織的なやつらと繋がるそぶりはないですね。というかサカズキ少将とガープ中将が常に相手してるんで、そんな暇はなさそうです。つる中将も時々洗濯してるようですし」
「そう。…なによりだわ」
どうやらガープさんも手伝ってくれているらしい。あの人、噛み付いてくる子を力で屈服させるのは上手そうだし。むしろ歯をむき出しにしてくる反骨精神の塊な子ほど可愛がってそうだし。サカズキさんも、よくもまあ7年もガキの相手をしてくれるものだ。お礼の一つでもしなくては。あの人何が好きだっけ?盆栽?薔薇?…後で良さそうなものを送らせよう。
「ルシー」
「あっ、おかしら。電伝虫持って行って」
「おう。またな」
「うん。元気でね」
ばいばい、と手を振って、御頭を見送った。別れの挨拶は手短に。だってまた会えるのだから。早々に姿が見えなくなったのを、やっぱりどこかで寂しく思いながら、屋敷まで引き返そうとした時。元気な声が聞こえた。
「離せ!離せっ!ステラはどこだ!?どこにいるんだ!!?ステラ…っ、ステラーっ!!!」
「ゴッフ!!!」
あ、あれ…フィルムゴールドのテゾーロさん!?ハァ!?ここで会う!?まだゴルゴルの実は食べてないし、彼がゴルゴルの実を食べるのはドンキホーテ海賊団から奪っての………アッ、もしかしなくても私…この人の運命、変えちゃった…?
「ドゥルシネーア宮、どうされましたか?」
尋ねてきた海兵に、震える指で奴隷を指差し命令した。たぶん、口元も引きつってたと思う…。だって、まさかここでテゾーロさんに会うなんて…映画版のネタとか…原作ならともかく映画版は全部把握してないっての…!
「あの元気な奴隷…欲しいからもらってきて」
「はっ!」
「買い主との交渉は私が出るわ…」
あーあ、ついてない。バカラさんを女中にするか、ラキラキの身を探して私が食べちゃおうかなあ!