さあみなさんやって来ましたよ!月に一度のアレ!生理が!この人生でもやってきてしまいました!なぜこんなにテンションが高いのかというと、痛覚がないから生理痛もないからである。前世で毎月死ぬほど辛かったので、これに関しては本当に最高にハッピー極まりない。
「…で、懲りもせずお前は料理してるってのか」
「え、別にいいでしょ?」
「今朝まで貧血でぶっ倒れてたやつが言うことじゃねェだろ。さっさと布団で寝てろ」
「それはそれ、これはこれ。今は大丈夫だし。あ、グラディウス、そこのお皿とって」
ぶっ倒れるんじゃないかと心配してくれているのは分かるけど、超巨大に成長しつつあるドフラミンゴが私の後ろを常にくっついて動くのでめちゃくちゃ邪魔だ。おいグラディウス、お前からこの過保護兄に何とか言って…アッだめだ、グラディウスはドフラミンゴ教の信徒だった…!
「…これか?」
「ううん、その隣の平皿を人数分」
「ちゃんと持てよ」
「ありがとう」
あれからグラディウスとは普通にやり取りができるようになった。もしかしたらドフラミンゴがとりなしてくれたのかもしれない。…いや、ドフィがそんな繊細なことしないか?
「…もう、兄上!料理やりにくいから先に座って待ってて!」
「ルシー!若に何て口のきき方だ!」
「だって動きにくいんだもの!」
「あとは配膳だけだろ?ならグラディウス、お前だけでいけるな」
「もちろんです」
「なら先に行くぞ」
後ろからドフラミンゴに捕獲されて子どものように抱き上げられた。やめろ!やめてくれ!恥ずかしさの極み!恥ずか死ぬ!
「ぎゃー!ひとさらいー!」
「フッフッフ!…人攫いか」
手足をばたつかせようにもホールドされてろくに動けないし、ドフラミンゴが暴れてもビクともしないせいで効果がなかった。
「べへへ!んねーんねー何何何してんだー?」
「人攫いごっこだとよ!全く、ごっこ遊びが好きたァルシーもまだまだガキだなァ!!!」
「ニヒヒヒ!」
トレーボルやディアマンテたちは相変わらず他人事だと笑っている。薄情なやつらである。他の家族たちもニヤニヤしたりお互いに会話したりして、私を助けようなんてしてくれなかった。私の味方はいないのか…。あ、以前襲ってきた敵船をフルボッコにしたら、船長だったマッハ・バイスが傘下というか家族に加わった。彼、めっっっちゃデカイ。主に横に。あと敵船から襲撃された時にうっかりうちの船で能力を使われると沈没してしまうので、その辺に関してはみんなでよくよく言い含めたらしい。
「おい、トレーボル」
上座に座り、当然のように私を膝の上に乗せて、ドフィはとても悪い顔で参謀に声をかけた。
「何だァドフィ」
「そろそろ船や島を襲うケチなやり方はやめて次のステップに移ろうじゃないか。つまり…『商売』だ!」
「べへへ…商売か…!べっへへへ!なら拠点を作って準備していこう…!」
「フッフッフ…ゆくゆくは武器…薬…そして人間も売りさばいて金に変えてやる!」
ヒューマンオークションか、と遠い目になった。天竜人時代に幼少期のドフラミンゴが好んだ場所だ。もしかするとまだ現天竜人と接点を持とうとしているんだろうか。そういえば以前、天竜人の弱みを知っている、と言っていた。……嫌な感じだ。天竜人を強請ろうとでもしているんだろうか。
「…ドフィ」
「ん?ああ、体調が悪いか?…体も冷えてるな。だから寝てろって言っただろうが」
私たちも、家族たちも同じ人間だというのに、人間を売り買いすることに抵抗のないドフラミンゴの頭の中は相変わらず謎構造だ。たぶん家族は別格なのだと無意識に除外しているんだろう。それでも、少しも幼少期から変わらない恐ろしさに身震いしてしまう。ドフラミンゴは私をモフモフしたコートの中に入れて、温めるようにお腹や腕を手で撫でてくれた。…優しいところもあるのになぁ。なんでドフィはこんな人なんだろう。
「お前にもおれと揃いのコートを仕立ててやるか。お前の好きなこのピンクで作ろうか?それとも服と揃いの白にしてやろうか?」
あれ、私、ピンクが好きだって言ったかな。どうかというと海や空みたいな青色の方が好きだけれど。ーー…ああ、もしかしたら昔に私が言ったことを覚えていたのかな。どんな船がいいかと言われて『花柄ピンクのメルヘンな船』と言ったから。…ドフィに微妙に似合ってるあのコートは、私が好きな色だからとピンク色にしたのか。こういう時、ドフィは嫌な人だけど、可愛いところもあるなと思う。でも、お揃いのピンクのコートは恥ずかしいから嫌だけど。それなら、そう、かっこいいし黒とかがいい。
「黒色がいい。汚れても目立たないし」
「黒?……ジョーラ、どう思う?」
「ルシーは白い服ばかりでございましょ?それなら黒より断然白の方がいいに決まってるざます!せめて身なりだけでもお上品に、かつエレガントにすべきざます!」
おいジョーラ、せめてって何だ。母親似の可愛い系の見た目に中身が伴っていないって言いたいのか。…その通りだけどな!くそう!
「フッフッフ!…だそうだ。決まりだな。コラソン、頼んでもいいか?」
「ああ、任せてくれ」
ヴェルゴがこっちを見て意味深にニヤリと笑った。きっとジョーラが言ったようなお上品(笑)かつエレガント(笑)な白いモフモフコートを作らせるんだろう。自分がそれを羽織るところを想像してゾワゾワと鳥肌がたった。そんな私を寒がっていると思ったのか、ドフィがぎゅむ、と私を抱き込んで笑っていた。