綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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コラソンの部下は原作76巻登場人物欄で古参なのに軍の下部に描かれているあの2人にしています(コラソン軍解体後に他軍に入った設定と仮定して)



33.次兄の仕事

ロシナンテ…2代目コラソンは大役に似合う仕事ができるようにするためか、仕事やファミリーの内情を覚えようと積極的に頑張っていた。部下にあたるジョーラやマッハ・バイスから、仕切っている街からどう取り立てをするのか、奴隷をどう買い取り、どう売り捌くのか、なども。

 

(熱心なのは妨害するためなんだろうなぁ…)

 

特に人身売買を。取り立てでは大したヘマをしないくせに奴隷の扱いとなるとすぐヘマをして逃しちまう、と奴隷担当のディアマンテが呆れていたから。おそらく、武器の密売やら違法薬物の取引やらになっても、同じように盛大にヘマをしでかすだろう。もちろん…わざと。ドフラミンゴの弟で、ドジっ子と周知されているから全て許されているけれど、これが下っ端ならば即座に血祭りにあげられているはずだ。予想だが、取り立てであまり失敗しないのは、悪党から金をせしめ取ることには罪悪感が薄いからだ。

 

「海兵かぁ…」

 

ロシナンテが中佐にまでのし上がるには、どれだけ努力したんだろう。ドフラミンゴまでとはいかずとも、私と違って才能はあっただろうから、覇気でドジをカバーして戦ったりしていたんだろう。きっと、とても強く、なったんだろう。ドフラミンゴと同じように。ーーーひ弱な私が守ったりしなくてもいいぐらいに。

 

「ルシー、久しぶりに海軍が襲ってきたぜー!べへへ!しかも2隻だ!」

 

「ルシーさん、今日は私が護衛です!」

 

珍しいなと思った。もう北の海では3億目前のドフラミンゴ相手に仕掛けてくる海軍なんていないと思っていたのに。しかもたった2隻で?もしかしなくてもロシナンテが通告したんだろう。あのドジっ子…もうちょっと家族の懐に入り込んで怪しまれないようにしてから、とか考えないのか。ベビー5が寄ってきたので、手を繋いでよろしくねと笑いかけた。…笑顔が引きってないといいんだけど。

 

「……また海楼石が手に入るね。バイスに沈めないように言った?」

 

「そりゃもちろんだ。お前はさっさと船の中に戻ってろよー」

 

「ルシーさん、早く早く!」

 

「はいはい」

 

海軍の船は潰したところで金銀財宝などの旨味はないけれど、船の底にある海楼石はいくらあっても足りないから、みんなこぞって狩りに行く。海楼石は船底に敷き詰めるのはもちろん、銃弾にしたり、手錠にしたりしても活用できる。もちろん、高値で売りつけることだって。自室に戻る前に船を確認したら、遠目に『鶴』の字が見えた。おっと…さっそくつる中将に派遣要請をしたのか。今まで将校クラスがが挑んできたことはあるけど、さすがに中将相手は初めてのはず。

 

(ロシナンテは…)

 

ちら、と戦いの準備をしている仲間たちに視線をやると、その中で大砲の弾を足の上に落として盛大に悶えているロシナンテがいた。ディアマンテとバッファローがそれを指差して笑い転げている。ああ、海軍のレベルがいつもと同じだと油断してるなぁ。ロシナンテも油断を誘っているんだろうけどなぁ。

 

「ルシーさん?」

 

「ああ、ごめんごめん。行こうか。…ねえ、ベビちゃん。大人になって、もし海賊じゃなくなったら…何になりたい?」

 

「えっ?えーっと、えーっと…若様やルシーさんの役に立つ人になりたいわ!」

 

「うーん…まだだめかぁ」

 

お花屋さんになりたいとか、お嫁さんになりたいとか、そういう夢があればいいのに。いっそ武器商人になりたいとかでもいいのに。

 

「ルシーさんは何になりたいんですか?」

 

子どもは無邪気だ。相手がとっくに大人になってても、これからもっと違うものになれる可能性があるのだと信じて疑わないのだから。キラキラした目で見つめられるのがむず痒くて、苦笑しながら、そうだなぁ、と考えた。

 

「……社会人、かな」

 

大砲の撃ち合いが始まったのをバックサウンドに、それは何ですか?と手を繋ぎながらベビー5が尋ねてきた。今の私と違う人になりたいってことだよ。

 


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