※注意※結婚式直後ぐらい。カタクリ夢です。
Re.さん、サン&ムーンさん、VVHさん、リクエストありがとうございました。
なんやかんやで結婚式まで終了した段階で、カタクリさんはドンキホーテ海賊団からのお呼び出しに出向いてしまった。
(うわぁー…まだ顔赤いかも)
誓いのキスで間近になったイケメンの顔に、未だに照れが爆発中だ。いやあ、もう、なんであんなイケメンなのか!物憂げに少し伏せられた目に長い睫毛!切りそろえられた短い髪の毛!マフラーから出ている口の端からの縫い目が気になるけど…あれ、幼少期からあったからもう痛くないのかな。また今度聞いてみよう。で、誓いのキスも口でなく額に、しかもマフラー越しにってのがミソだけど。
(それにしてもイケメンだったなぁ…)
顔が近付いた時に親族席から上がった強烈な悲鳴の数々。トン、と軽く当てるようにされた誓いのキスでは、もはや爆音並みの悲鳴と殺意が飛び交っていた。……主にカタクリさんの妹たちと、私の家族たちから。グラディウスの爆発であちこちのケーキがライスシャワーよろしく飛び散っていたのは面白かったけど。…あんな阿鼻叫喚な結婚式は一回きりで十分である。
(アイドルの結婚式ってもしかしたらあんなのかも…)
これから妹さんたちに刺されないかなぁ…。めいっぱいカタクリさんに密着して守ってもらおう、そうしよう。あとはお友達(予定)のブリュレさんに助けてもらおう!できる限り前向きに考えて、新婦の親族控室の扉に開けてちょうだいと頼んだ。扉が「今修羅場よ!」なんてコソッと教えてくれたけど……え、どういうこと?
「おっじゃまっしまー…す……ワァ、修羅場…」
「「「………………」」」
「………………」
どう……声をかけたらいいのかな…?嫁の親族と新郎がタイマンで無言のまま見つめあってるって…ねえ、これどんな状況…?しかも新郎の方がめちゃんこデカい。あー、グラディウスが見上げすぎて仰け反ってる…腰痛めそうだな…。
「あのー…何して…って、ロシー?」
無言のまま腕を引かれて、部屋の隅に連れて行かれた。誰だ、と顔を上げると、カタクリさんまではいかないものの、一般人から見れば十分巨人級なロシナンテがそこにいた。
「………」
「ロシー…泣かないで」
ロシナンテは涙目で私を見下ろしていた。白い手袋越しに頬を撫でると、とうとう耐えきれなかったのか涙がぼろっと滴って、私の顔に降ってきた。
「ねえ、笑っててよ。妹の晴れ舞台だよ?幸せになれって応援しててよ」
「……っ!!!」
「…そいつがお前の言っていた兄か」
謎の修羅場を抜けてきたのか、カタクリさんがそばまで来てくれた。
「そうそう。ね?可愛いでしょう?」
ぐずぐずと泣き始めたロシナンテの背を撫でて、カタクリさんに自慢した。ほぼ垂直に顔を上げてドヤ顔をしたけど、カタクリさんの反応を確かめる前にロシナンテの腕の中に抱き込まれてしまった。はいはい、あなたの可愛い妹はまだここにいますよー。
「ルシーさん…その人はルシーさんの理想の人?」
「………」
沈黙を破るようにされたベビー5の質問に答えられなくて、無言でにっこりと笑い返した。カタクリさんが身内を切り捨てても嫁の味方につくような人かって?答えはNOよ。ありえない。私の考えを正しく読み取ったらしいベビー5が、悲痛な顔でドフラミンゴに訴えた。
「わ、若様っ!この結婚やめてください!ルシーさんに帰ってきてもらって!」
「…ビッグマムに伝えろ。おれの妹を蔑ろにするってことは『おれ』への宣戦布告と同じだってなァ!ーー行くぞ」
「若様っ…ルシーさんっ!」
わあん、ととうとう泣き始めてしまったベビー5を担いで、ドフラミンゴたちが帰って行った。みんながみんな、時々振り返って。港まで送って、出航して、船の姿が見えなくなってしまうまで、ずっとずっと手を振り続けた。
「……理想の人ってのはなんだ」
手を振り続ける私を少しでも高い位置にと抱き上げて、肩の上に座らせて、そうして最後までずっと付き合ってくれてたカタクリさんが、おもむろにそう尋ねてきた。いや、まあ、そりゃ目の前であなたなんかタイプじゃないわ!と言われたようなものだろうし、気になるよね。あはは……うちのベビー5が空気読めなくてごめんなさい。
「あーーうーん…………まあ、その、ね。あのー…まあ、色々?なんか、こう、あるじゃないですか?」
「話せ」
上手にお茶を濁せません!!!すぐそばで、それも真顔で問い詰められて逃げられる人がいるならぜひ教えてほしい。だって!カタクリさんはイケメ(略)
「……怒りません?」
「……内容による」
無意識なんだろう。タキシードに合わせた白いマフラーを引き上げているカタクリさんを見て、つい笑ってしまった。ああ、カタクリさんが気にするポイントってやっぱりそこかぁ。口元を隠すそのマフラーは、大切な妹のためだもんね。
「家族を切り捨てても嫁の絶対的な味方であり続けてくれる人がよかったんですよ、私は」
そう答えると、ちょっと意外そうに開かれた目が、肩の上の私を見上げていた。かっ……!!!ちょ、ブリュレさん!分かった!これがカタクリさんの可愛いポイントですね!ギャップ萌え!ギャップ萌え!!!キュンキュンしながら手を伸ばして、周りの人たちから見えないように気を使ってマフラーの中に手を突っ込んだ。
「見た目が樽みたいな人でも、ぶっさいくな人でも別に良かったんです。大男でも、口が大きくても、牙が生えてても、家族にすら弱みを見せたくないって頑張ってても…そんなのどうでもよかったんですよ」
感覚がないから今ひとつ分かりづらい中、手探りでカタクリさんの口に触れた。私の手を止めようとはせず、でも戸惑ったように体を硬ばらせる姿に、ちょっと嬉しくなった。自分の弱点を触られてもあえて好きにさせてくれるって、これもある意味私を傷つけないようにっていう気遣いだよね?
「カタクリさんは嫁より親兄弟をとる人でしょうけど、それがカタクリさんですもんね。仕方ないです。でもカタクリさんは外見も中身もイケメンですからね!現時点ではプラマイゼロですよ!」
「…不可がなけりゃ可もないってのか?」
「へ?…あっ!いやいや、言葉の綾ってやつでですね!そんなディスるとかそういうのじゃなくて!なんて言えばいいのかな…!」
あんまり気にせず言った言葉で暗にけなしてた!やっちまったなー!プラマイゼロにしてどうするんだよ!カタクリさんの可愛さも合わせればプラスになるに決まってんじゃないの!
「つっ、つまりですね!旦那がどこからどう見てもかっこよくてイケメンでその上可愛いってのは!私はものすんごい幸せ者なわけです!何回でも惚れ直せますからね!喧嘩しても不満があってもチャラにできるほどのお顔立ちですよ!だからあの、その…、私!カタクリさんと結婚できてよかった!」
口元を叩きながらファンらしく愛を語ってみたら、手の動き何かに止められた。あれ、動かない。………まさか食われてる!?
「カタクリさん、私、お菓子系の能力者じゃないんですが…!美味しくないでしょ?」
「……ふ…」
ふ?え、今の何だ、と見下ろした先で、カタクリさんは予想外なほど優しい目で海を見ていた。カタクリさんの赤みがかった目に、キラキラと水面に反射した光が映っている。頭の処理が追いつかない…!えっ!イケメンの微笑…!?ちょ、待って待って!こんな至近距離でとか破壊力抜群すぎて!!!おそらく照れと興奮で真っ赤になったであろう私をちらりと見て、カタクリさんはますます愉快そうに笑った。これだからイケメンは!!!
「帰るぞ」
「っ、はい!」
(これからの生活…心臓保つかなぁ…)
私の死因が夫にときめきすぎてのキュン死だったら、ドフラミンゴたちはどうするんだろう。もしかして戦争になる?確かに芽生えつつある恋心が爆発してしまわないように、ぎゅうぎゅうと必死におさえつけた。