新聞を読んでいて、端の方に珀鉛病の話が載っているのを見つけた。なんでも、フレバンスの周辺国でも一部伝染病患者が現れたけど、最後の1人を適切に処理したからご安心ください、という内容らしい。
(…そりゃそうか。珀鉛が含まれる地層が、人の決めた国境なんかで区切られるわけでもなし。きっと近くの村なんかでも珀鉛が採取できたりしてたんだろうな)
可哀想に、と他人事のように薄っぺらく思った。思った後で、ふと、ローのことが気にかかった。あの子、本当に原作通り3年未満までは保つの?もしかしたらもっと死期が早まってたりしない?そう思うといてもたってもいられなくて、さっそく兄に相談しようと思った。もちろん、怖い方の。
「あにうえー。ちょっといいー?」
「あ?どうした?…もうデリンジャーの服が小さくなったのか?」
赤ん坊ってすごいよね。服を買っても買ってもすぐ大きくなって着られなくなるんだから。…じゃなくて。
「いや、服はまだもうちょい大丈夫っぽい。それより、うちに船医入れない?」
「船医だ?応急処置ならおれやジョーラでもできる。お前が病気になってもおれやロシーがなんとでもしてやれる。何より今まで船医なんざ必要なかっただろ?」
「まあね。でもローの珀鉛病をなんとかできないか研究してもらいたいのよ」
「ローの?…なるほどな、確かに運なんてもんに委ねるにはあいつは惜しい。延命程度でもしておくべきか」
「ってか私思うんだけど。運が良かったらフレバンスなんかに生まれてなかったはずでしょ?」
ミニオン島でロシナンテはローが生かされていると、救いの神がと考えていたけれど、実際のところはとんでもない不幸を先取りして、とんでもない幸運が後から来たってだけの、いわゆる帳尻合わせなだけだと思う。それでも、帳尻が合わせられるだけ、ローは運がいいんだろうけど。でなきゃ不幸だけの人生を歩んで終了だ。
「…!フッフッフ!違いねェ!!!」
私の言ったことがお気に召したのか、ドフラミンゴが膝を叩いて笑った。
「ローの血液…あと、珀鉛病の人の死体とか体液とかが裏で回ってない?伝染病って報道だし、細菌兵器的な扱いで。あと、結婚とかして国外に移住した人の存在とか。別に船医じゃなくても、そういうので研究してくれる人でいいから、うちで雇えないかな」
「……そうだな、分かった。専門家を雇って研究させようか」
何の専門家かは聞かないほうがよさそうだ。けど、ドフラミンゴに頼んでおけば、私なんかがあーだこーだと提案する何万倍もの手段で必ず研究を進めてくれるだろう。その辺りだけは私はドフラミンゴを信頼している。
「しかし……」
「ん?」
「……フッフッフ…いや、何でもねェさ。ルシー、ローの面倒も見てやれよ」
「うん。…まあ、あの子が嫌がらない程度にね」
だってあの子、私のこと嫌いっぽいし。嫌がる子相手にくっついていくのは…まあ、それはそれで反応が楽しいからいいんだけど、グラディウスの時と違って四六時中べったりくっついていくわけにもいかないし。ほら、デリンジャーがいるからね。
「あいつがここから抜け出そうと考えねェように、だ」
「へ?いやいや、別にローは理由もないのに自分から抜け出したりしないでしょ。なんでわざわざ?」
「お前、分かってねェのか?」
「何が?」
え、いや、何の話?質問の意図が全く読めない。首を傾げた私をドフラミンゴはじぃっと見つめてきた。…やだ、何その熱視線…照れる…。
「……ルシー」
「なにー?」
「お前、とんでもねェ悪女だなァ」
妹になんて事言いやがる!!!
「はあ!?悪の大魔王に悪女とか言われたくないんですけどー!」
「フッフッフ!」
心の底から心外だとぎゃんぎゃん文句を言う私を見て、ドフラミンゴは楽しそうに笑っていた。