綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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52.私は単なる子ども好きです

バカは風邪をひかないとはよく聞くけど、自滅する形で風邪をひいて熱まで出した私のことは何て言うんだろう。アホ?アホなの?アホの子?自分を大切に、なんてベビー5に言えた立場じゃないなぁ…。

 

「ママ、アイス!デリンジャーの!」

 

ベッドからアイスが生えてきた……いや、デリンジャーがアイスを松明のように掲げて、ベッドの上の私に見せようとしてた。か…かんわいぃーい!!!一気に喋ったり一人で動き回るようになり始めたデリンジャーは、とびきり可愛かった。デリンジャーのお母さん!あなたの息子はめちゃくちゃ可愛いですよ!

 

「そっかー。デリンジャーのアイスかぁ。誰にもらったの?」

 

「あのね、ピーカ!」

 

…ヴェルゴがいなくてよかったね。さんを付けろとか絶対教育的指導されてただろう。あの鬼教官、真面目すぎて子どもにも容赦ないんだよなぁ。

 

「そう、良かったね。お礼は言った?ありがとう、って」

 

「うん。ありがとうした」

 

「よしよし。デリンジャーはいい子ね。ねえ、ベビちゃん」

 

「はい!…あ、デリンジャー、鼻にまで付けちゃってる」

 

ハンカチでデリンジャーの顔を拭ってあげるベビー5は、この数年でぐっとお姉さんらしくなってきた。可愛いなぁ、可愛いなぁ!

 

「なんかそうやってると姉弟みたいだねぇ。……ん?どうしたの?ロー」

 

ジョーラに包帯で可愛くリボンを作られたローが、いつものようにじっとこっちを見ていた。うーん、リボン付けててもローはあんまり可愛くないね!破壊衝動バリバリな悪ガキ感は少し薄れて、ヤンチャな悪ガキ感は出てきたけど。前世の小学生の頃の、クラスの男子って感じ。ローは好きな子イジメしちゃうタイプだろ〜?

 

「……あんた、バカだろ。その風邪…あの時のが原因だろ?」

 

「違うんじゃない?私もともとしょっちゅう体調崩すキャラだったし。ま、風邪ひいたってことは私がバカじゃないと証明されたってことで!」

 

ふん、と胸張って言うと、うんざりしたようなジト目で見られた。なんか…道端のミミズでも見下ろすような…。ねえ、ロー…一応私、まだ胸は痛むんですけど?救いようのないバカを見るような目はさすがに傷つくからやめてくれない?

 

「バカだろ。あんたバカだ。救いようのないバカだ」

 

また言いやがった!まともな会話ができるようになったのは嬉しいけど、なんか酷くなってる!

 

「…なんか前より辛辣になってない?なんで?」

 

「知るか。さっさと病人らしく寝てろ」

 

「わぶっ!何これ?」

 

見事な投擲で顔にぶつけられた何かに、息ができなくなった。焦ったー。顔から剥がしたら、ちょっと凍りかけの濡れタオルだった。洗濯して外で干してたやつだろうか。

 

「頭冷やせってんだよ。見りゃ分かるだろ」

 

素っ気なくそれだけ言って、ローは医務室から出て行ってしまった。…嫌われてはいないんだろうけど、好かれてるとは言い難い感じだ。もうちょっとさあ…仲良くしたいのになぁ…。ちょっとへこでたら、ベビー5がこっそり教えてくれた。

 

「…あのね、ルシーさん。ローがね、ルシーさんが寝込んじゃった時にすごく落ち込んでたの。でね、若様にお医者さんの読む本をいっぱい買ってもらって勉強し始めたの。きっとルシーさんのことが心配だったのよ」

 

「え、そうなの!?」

 

(ハハァン?いわゆるツンデレってやつですか?クーデレ?)

 

デレの部分も見せて欲しいんだけどなぁ、なんて思ったけど、嫌われてはいないと分かって私の頬がダラッと緩んだのが分かった。

 

「やっぱり、ルシーさんは子ども好きなのね。ショタコンなのかしら?ロリコンって言うのかしら?」

 

ねえどっち?と満面の笑みで尋ねてきたベビー5の顔を3度見ぐらいしてしまった。ちょっとベビちゃん!?そんな言葉どこで覚えてきたの!!?

 


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