ドフラミンゴと幹部を除く家族たちが忙しく動き出したのを確認して、自室のベッドに潜り込んだ。まだ話し合いをしているだろうし、情報を伝えるには今しかない。痙攣しているように震える手で拳を作って、ぎゅっと顔に押し当てた。
(大丈夫…大丈夫…まだ失敗してない…まだ、やれる)
深く息を吸って、電伝虫のボタンを押した。
「…二人とも、聞いて。ロシーのことを家族たちが怪しんでる。スワロー島に海軍を配置するのはやめるように伝えて…!」
「ルシー、ローが…ローが!!!」
電話の奥でローの荒い息が聞こえた。涙ながらにどうすればいいんだと尋ねてくるロシナンテの声に、ついにか、と覚悟を決めた。ああ、本当に、原作通りのタイミングじゃないか…!
「…毛布で体を包んで、できるだけそばにいてあげて。オペオペの実を食べるまで、体力が落ちないようにしてあげて。兄上はすぐに出発用意を」
「ああ、分かった!」
ロシナンテの声が小さくなった。出航準備をしに行ったんだろう。けど電伝虫からは荒い息が聞こえる。情報をローに伝えないと。失敗しないように…悲しいことにならないように。
「ロー。ロー、聞こえる?今から言うことをよく覚えて」
「……ハァ……ハァ…なに…?」
聞こえてくる弱々しい声に、胸が詰まりそうだった。
「海軍にうちのスパイがいる。たぶんミニオン島に上陸してるはず。だから、絶対にミニオン島の海兵には近付かないで。用があるなら正義の服を着た老年期の女性海兵に頼むの。つる中将よ、分かるわね?」
「ハァ………コラさんは…ハァ……海兵、なのか…?」
苦しそうにしているのに、気がかりなのはそこなのか。ロシナンテをコラさんと呼んで、信頼を寄せているのが手に取るように分かって……いじらしくて、辛かった。でも、ローがロシナンテを信頼できたことが、たまらなく嬉しかった。やっぱり私は子どもに甘いみたい。
「ーー本人に聞きなさい、ロー」
「わか、た…」
視界が滲んできた。ぐい、と手で目をこすって、腹に力を入れた。まだ伝えることがある。
「ロー、ロシーの防音壁を見たでしょ?オペオペの実はあれと同じ、無菌のroomを張らないと発動しないわ。銃で撃たれた人の手当の仕方は分かるね?」
「……うん…」
「ロシーは撃たれるから、鉛玉を取り出すオペをすればいい。無理なら応急処置で、焼いた鉄やホッチキスで傷を塞いで出血を止めるの。物体の位置を入れ替えるシャンブルズとか、色々あるから、あなたが後で治療すればいい。…合流前にもう一回電話するからね」
「……うん…」
朦朧とする頭で、それでも必死に話を聞こうとしているんだろう。こんな病人に無理言うなんて、したくないのに。
(ごめんね、ロー…)
でも、ローにしかできない。私じゃできないから。
「ロー!行くぞ!」
ロシナンテの声が近付いた。通話を切られる前に、と私はロシナンテに再度繰り返した。
「ロシー、スワロー島に海軍の船を近付けさせないで。絶対にだからね!」
「ルシーさーん!デリンジャーがおれのおやつまで取ろうとするだすやん!なんとかして!」
バッファローの大声が近付いてきた。ハッとして電伝虫の通話を切った。知らないうちに声が大きくなっていただろうか。バレていない?大丈夫?そっと廊下に顔を出したけど、誰もいなくてホッとした。その後すぐに廊下の角からバッファローが走ってきて、私の顔を見て首を傾げてきた。
「なんか顔色悪いだすやん?貧血?」
「……そうかも。デリンジャーはどうしたの?」
「あっ!そうだすやん!デリンジャーがおれのおやつを!」
いつも文句を止めるベビー5がいない間に、とバッファローはデリンジャーの愚痴をわあわあと話し始めた。