ベポ宛に日持ちする食料と、あと手紙を書いた。…もしかしたらロシナンテは無理かもしれないけど、ローは必ずベポの所にたどり着く。だから、『モコモコの帽子で肌の白い男の子が荷物を受け取りに行くから、町の外れで待っていてほしい』と書いて。…原作に載っていた情報だから、きっとその通りになるだろう。そもそも原作ではこんな私の行動なんてなくてもローは仲間を作ってちゃんと大人になる。だからこれは、単なる私のお節介だ。…ロシナンテが生きるための、単なる手伝いでしかないんだから。ロシナンテと、一応ローの血液型の輸血パックを複数、それから手術道具一式と薬品多数、電伝虫と金品と食料と衣類とドンキホーテの縄張りで通用する手形と書類…。ローの能力が使い物になるまでは、これで保つ。保たせてもらわないと、困る。
「では確かに。…それで、誰宛てにするんだい?」
ベビー5に密かに呼んでもらった商人に、大小の荷物と手紙を託した。運賃でぼったくったりしない辺り、割とちゃんとしていそうだ。……ベビー5によれば、ドフラミンゴの息のかかった商人ではないらしいけど…いや、そこは原作の流れを素直に信じよう。
「スワロー島のとなり町のはずれに、シロクマがいるんです。着ぐるみみたいなモコモコの。彼に預かっててもらおうかと」
「シロクマァ!?おいおい…!そんなんに荷物とか大丈夫なのかよ!?」
「あ、大丈夫です。ミンク族って一族の少年で、年の離れたお兄さんを探すために一人ではるばる旅をしてる健気で可愛い子ですから」
「ウッ…!よしてくれよ…おじさん涙腺弱いんだからさァ…!!!」
強面のくせに、とちょっと思ったけど、涙腺の緩さに関しては私も人の事を言えないし…まあいいや。でも、商人なのに情に流される辺りはダメだと思う。もしかしたらドフラミンゴの息がかかってないって、彼的にその辺がネックになったからか?私にとってはぴったりな条件だけどさ。
「大きい方は兄と連れの子宛です。ベポくんにこの小さい方の荷物と手紙を…あ、手紙が読めないようなら読んであげてもらってもいいですか?お代は弾むんで」
「喜んでェ!!!」
「もしベポくんがいなかったら…町の男の子でペンギンやシャチの帽子の子が居ると思うんで、その子たちに託してください。その場合もこっちの手紙を渡していただければ…」
しっかりと金を握らせて、荷物を託した。またのご利用を、と涙目ながらも愛想良く出て行った商人を見送って、無意識のうちに自分の肩に力が入っていたことに気が付いた。
(そういえば、他人を信用して荷物を預けるなんて…何年ぶりだろう…)
天竜人時代の荷物の換金で失敗しまくったことを思い出して笑えた。あの時も今も、必死なのは変わりない。必死になって、でも肝心なところは他人任せにするしかなくて、結局裏切られて…。
「変わってないなぁ、私…」
どれだけ体が大人になっても、どれだけ齢を重ねて精神が成熟しても。子どもの頃と同じ、私は無力なままだった。