もし59話でロシナンテを生存させる道があったら、です。
すみません、ドラム島までは辿りつけませんでした…。
サン&ムーンさん、リクエストありがとうございました。
もし59話でロシナンテを助けて生存させる道があったら
勝ち筋を探した。頭の中じゃ考えつけなくて、時系列もキャラの行動も、何もかもを紙に書きなぐって。見つけられたのは、その方法だけだった。
(さようなら、ドフィ、みんな…)
縋り付く私に背を向けた家族たちに、心の中で別れを告げた。私はもう彼らと生きる道を選べない。だから今ここで…決別する。ベビー5のことだけが気がかりだったけど、原作通りなら彼女はサイと結婚して幸せになるから。何も心配なんてしていない。
「ママ?どこに行くの?」
「外の世界に行くのよ」
荷物はあらかじめ配達してもらっているから、持って行くのは最低限のものだけにした。そして逸れてしまわないよう、デリンジャーとしっかりと手を繋いで、避難用の船に乗り込んだ。行き先は、双眼鏡で見える場所に待機している海軍船。鶴の字が書かれた、中将の船。雪の舞う中、着の身着のままでレスキューと書かれた小舟に乗って子どもを抱えて手を振る女を、見捨てる海兵なんていないと、私は確信していた。あとは私の顔を見て驚くつる中将に、こう言えばいい。
「助けてください!ドフラミンゴが潜入任務中のロシナンテ中佐を、殺そうとしています!」
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「とまあ、そういうわけで。兄上とローは一生私に感謝して長生きしてくれたらいいよ!」
「いーよ!」
ふん、と胸を張る私の横で、デリンジャーが真似をして仰け反った。ああ…そんなに仰け反ってたら後ろに転んじゃう!ベッドでチューブまみれになったロシナンテが呼吸器に遮られながらも、本当だな、とか細く笑っていた。ベッドを挟んで向かい側の椅子に座るローは、腫れぼったくなった瞼を持ち上げてじとりとこっちを見上げてきた。
「…なんであんたがいるんだ」
「言ったでしょ?私も抜け出すから、って。…でも…ごめんね、ロシー。結局海軍に戻ることになっちゃって」
「…いや、おかげで助かった」
「……問題はローだよね。肌の色も見られたし、誰だってオペオペの実と結びつけて考えるよ。…どうしようか」
海兵嫌いのローのことを、おそらく世界政府も危惧しているはずだ。白い町の生き残りが糾弾し復讐してこないようローを殺すか、オペオペの実ごと活用しようと擦り寄ってくるかは分からないけれど。…できれば後者であってほしい。
「兄上が復活したらみんなで一緒に逃げるってのも手だけど。海軍からの逃亡生活ってかなり辛いよね?」
「まあ…お尋ね者扱いに、なるには…ルシーもデリンジャーも、いるしな…」
女子供を連れて逃亡なんてまず無理だろう。特に私とロシナンテは元天竜人で、あのドフラミンゴの弟と妹。長年海兵をしていたロシナンテはまだしも、長年ドフラミンゴと暮らしていた私が国宝のことを知らぬ存ぜぬじゃ通用しないだろう。…ステューシーさんにもバレてるし。…え、これ、詰んだ?
「おい」
「…ちょっと待ってて…今考えてるから…」
「何考えてんのか話せ」
「いや、それはちょっと…ローも疲れてるだろうし寝てていいよ」
「っ!おれも一緒に考えてやるって言ってんだ!バカ!あんたの貧弱な頭で考えるより100倍マシだろ!?」
「ヒンジャク!?」
ローの発言にめちゃくちゃ驚いた。ちびっ子にすさまじい罵倒をされた!でも確かにあんな難しい医学書を延々読んでいるような子どもに頭の良さで勝てるわけがない。ぐう、と頭を抱えたらロシナンテが私に言った。
「ローなら、大丈夫だ」
「でも…」
「おれは、こいつを信頼してる」
ロシナンテの言葉に照れたのか、うるせえ、と怒鳴るローの顔は真っ赤で。ああ、大丈夫だな、と理由もなくそう思えた。
「じゃあ…お願い。助けて、ロー」
一緒に生きていくために。