綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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66.原作にはない海軍からの襲撃の最中に

 

 

七武海会議の後、モネが出て行った。そのままドレスローザに向かい、国内に潜伏する手はずになっていたらしい。

 

(もう、あと10年ちょっとでルフィがドフラミンゴを倒すんだ)

 

そう思うとほんの少しだけは良心が痛んだ。もう前世とほとんど同じだけ生きた第2の人生、その全てをドフラミンゴと共に過ごしたのだから。今はもうたった1人の肉親になってしまったドフラミンゴが倒されるというのは、やはり寂しかった。…もう、私が守るなんて言えるような存在ではなくなったし、ロシナンテのように原作を改変してドフラミンゴを守ろうど思わないけれど。ドフラミンゴは自業自得でやられるのだから。

 

(七武海でドフラミンゴは私をもう1人の船長って公言した…。それはつまり、ルフィが倒すべきドンキホーテ海賊団のメンバーに私も含まれたってことなんだろうな)

 

ヴィオラさんみたいに上手く行動して裏切れたならそれが理想なんだけど。ドレスローザ編の後、私も一緒に投獄されるのは間違いない。今から考えるだけでもとめどなくため息が出てくる。

 

「お嬢様、本日は私が護衛です」

 

ディアマンテが処分し忘れていたという私が昔着ていた服を、シュガーは気に入ってよく着ている。とはいえ多少は生地が傷んでいるから、染め直したりしてるんだけど。今日もシュガーは好物のグレープ色のワンピースを着ていた。果物の方は海上生活が長いから手に入らないし。

 

「あら、敵襲?デリンジャーは?」

 

「バッファローと一緒に砲術訓練してる。ホント子どもよね」

 

部屋に入るなり、シュガーは口調を崩して肩をすくめた。ベッドに座って足で空を蹴り、つまらなさそうにため息を吐いてみせる姿は、もう二度と成長しない。原作通りにしただけとはいえ、悪魔の実を進めた者として、罪悪感はある。じっと見つめる私に視線に気付いたのか、シュガーがちらりとこっちを見てきた。

 

「なに?」

 

「ううん、何でもない」

 

「嘘ね。何でもないって顔じゃなかった」

 

この子は賢い。賢くて、強い。悪魔の実を食べたことなんて、まるで気にしたそぶりを見せない。…私はシュガーのように強くなりたかった。頭も心も体も、彼女のように強くなりたかった。

 

「…私の服、まだまだ可愛いのがあるのになぁ、って思ってた」

 

能力者になったことを、本心から彼女は後悔していないだろう。だって実を食べたことで彼女は永遠にこの海賊団に居場所を得たのだから。だけどやっぱり私としては、この子が選べたであろうここ以外の道を断ち切った身として、罪悪感があった。だから、大人のサイズの服をシュガーに着させてあげられない、そんな風に暗に伝えるしかできなかった。シュガーは陰鬱な私の言葉を鼻で笑って、上から響く大砲の砲撃に負けない声で言った。

 

「私ね、今までお姉ちゃんの服のお下がりばっかり着てたの。うちはお金がなかったし、そもそもお姉ちゃんも誰かのお下がりとか古着ばっかりだったからいつもボロボロの服ばーっかり」

 

それも町ごと全部焼けちゃったけど、とシュガーは言った。彼女とモネの昔話を聞くのは初めてで、私は驚いた。辛い出来事だっただろうに、シュガーが軽く昔話として語れるほど強くなっていたことに、素直に驚いた。

 

「でもこうなってからは若様も幹部も家族もみんな新しくて可愛い服をいっぱい買ってくれるし、お嬢様の服もとっても綺麗だし、なかなか悪くないの」

 

グレープも美味しいし、と目を伏せて笑う姿は可憐だった。

 

「それに、お嬢様は知らないかも知れないけど、子供服ってブランド物ばっかりだし、高くて可愛いのばっかりなのよ?他の人たちは子どもの頃しか着られないものを、私だけはずっと着られるの」

 

「…うん」

 

「私もお姉ちゃんも、望んで能力者になったの。…なんでもかんでも自分のせいだなんて思い上がらないでよ」

 

ふん、と不機嫌そうにシュガーはそっぽ向いた。

 

(……ああ…慰めてくれたんだ)

 

「シュガー」

 

「え?」

 

小さな体を思いっきり抱きしめた。

 

「きゃっ!な、なによっ!」

 

「ありがとう。シュガーのことも、モネのことも、私、大好きよ」

 

砲撃音や戦闘音に負けないぐらい、大きな声で伝えた。シュガーは驚いたように一瞬息を詰まらせて、やっぱり不機嫌そうに囁いた。

 

「……そんなの知ってるわよ。…ほんとバカね」

 

顔を寄せて擦り寄るようにしてきたこの子が、この先とんでもない数の不幸を呼び寄せるとしても。それを私が断罪することは、できないのだ。

 

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