綺麗なまま死ねない【本編完結】   作:シーシャ

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79.お守り代わりに持っておこう

 

 

「フッフッフ…世界会議だ!出かける用意をしろ!」

 

今日はどうやって逃げ出してやろうかとベッドでだらけながら考えていたら、今度はドフラミンゴが部屋の扉を蹴り開けてきた。なんだなんだ…揃いも揃ってみんな何か扉に恨みでもあるの?

 

(…ん?世界会議?)

 

レヴェリーってオリンピックみたいに4年に1回だっけ?ってことは…原作時間の8年前だから…なるほど、今年なのか。国獲りをして落ち着いてきているし、ってことかもしれない。未だに国ではドフラミンゴ人気はうなぎ登りだし、クーデターも何もシュガーが芽を摘んでいるし。

 

「私は留守番してるね。兄上いってらっしゃいー」

 

ごろ寝しながら後ろ手を振って、ばいばい、と言ったら、ドフラミンゴから不可解と不機嫌を混ぜこぜにした声が返ってきた。

 

「あ?行かねェのか?」

 

「うん。なんか怖いし」

 

あとドフラミンゴがいない方が逃げやすそうだし、とは口に出さない。言ったら即座にパラサイトされて連れて行かれそうだ。私に完全に興味が無いと知ってやる気が失せたのか、ドフラミンゴはため息を吐いて諦めてくれた。

 

「…まァいい。何も世界会議は今年だけのもんじゃねェからな。だが、護衛はつけるぞ」

 

「いらないいらない」

 

「フッフッフ。まあそう言うな。どうせまた逃げ出す算段でもつけてんだろうが」

 

「げっ!…で、護衛って?」

 

「セニョールだ」

 

というわけで、建築中のスマイル工場に来た。まだ工事中ということでセニョールがここにいる意味はないんだけど、ドフラミンゴにとって要になる産業なだけに幹部がちょくちょく建築の様子を見るのが常になってるのだとか。知らんわー。そのくせ私を捕まえる余力があるとかズルいわー。久しぶりに会ったセニョールは胴回りがむくむくと成長して、あと女の人たちにキャーキャー囲まれてた。

 

「場違い感がパないんですけどぉー?」

 

露出度からして真逆だし。そもそもこの国の人たちはくっきりはっきり華やか系で、私は母親によく似たマイルドなおっとり系だし。何より…。

 

「キャーッ!セニョール!」

 

「こっち向いてーっ!」

 

「………はぁ…」

 

テンションが天と地ほど違う。積極性とか趣味とか…まあ、その辺の感性も大いに違うのだろうけど。

 

「モテモテだねぇ、セニョール」

 

チュパッ、とおしゃぶりをくわえ直しながら、セニョールはどうでも良さそうに答えた。

 

「こいつらが勝手に寄ってくるだけだ」

 

「うわー。罪深いー」

 

事実、彼は興味がないんだろう。セニョールの愛する女性はルシアンだけなのだから。心のどこかでそんなセニョールを尊敬はしているんだけど、どうしても………見た目がアレすぎて……なんていうか、近寄りがたいというか。船旅では小さな空間にみんながいて、もっと、距離が近くて。こんな風ではなかったのに。

 

(…前の方が、家族って感じだったのになぁ)

 

女の子たちに囲まれてキャーキャー言われてるセニョールなんて見ていられなくて、スマイル工場の外壁の施工場所に向かった。

 

「これが海楼石?」

 

知識としてはあるけど、実物を見たのは初めてだ。…いや、自覚症状は全然なかったんだけど、ステューシーさんに捕まった時も海楼石で縛られてたんだったか。指でなぞっても粉っぽさはないし、軽く叩いた音などからも普通のレンガと何も変わらない感じがする。

 

(そういえば、原作ではドフラミンゴの糸で切れないスマイル工場を利用して、鳥籠を押し返そうとしてたんだっけ)

 

個人的には麦わらの一味が好きだから、あの時のゾロとかめちゃくちゃカッコよくてテンションだだ上がりだったんだけど。でも…そう、確かあの時原作を読んでて思ったんだよね。なんで国民たちがスマイル工場に避難しないんだろうって。だってスマイル工場に逃げたら鳥籠で殺されないし、人の重みで工場が動かないから、工場をわざわざ押さなくても鳥籠の動きを抑制できただろうに、と。

 

(…ああ、そっか、工場長がいたり、フランキーとセニョールが戦ってたりしてたから、国民たちは近付けなかったのか)

 

確か戦いが終わってすぐに鳥籠対策で押したりしてた……よね?うーん、セニョールの過去の話ばっかり覚えてて時系列が曖昧だわ。後でちゃんと思い出しておこう、と壁を眺めていて、ふと地面の小さなカケラが目に付いた。色も材質の見た目も壁と類似している。

 

(もしかして…海楼石のカケラ?)

 

ぐるりと周囲の地面を見て行って、ほんのわずかな小さいカケラをいくつも見つけた。

 

「何かの役に立てるかな…」

 

子どもが石ころを拾うように、ポケットの中に小さなカケラを放り込んだ。後からヴィオラさんに触ってもらったところ、ただの石ころだったり塗料の剥がれだったりがほとんどだったけれど、本物の海楼石のカケラもいくつかだけ混ざっていたようだ。

 

「それ、どうするの?」

 

「うーん……海楼石って高いらしいし。売って生活費にしようかな!」

 

「せめてドフラミンゴや幹部に飲ませるとか言いなさいよ…」

 

その手があったか、とヴィオラさんに拍手したんだけど、小さいとはいえ小石ほどの物を食べさせるなんてそうそうできることじゃないし。そもそももう女中のようなことはやめろと言われて食事を作ることすらなくなった私に、異物混入なんてできるわけもなく。

 

(…まあ、お守りってことで)

 

小さな袋に海楼石のカケラを入れて、ポケットに忍ばせておくのが新たな習慣となっただけだった。

 

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