ぐだ鯖日和 作:独覚曼
最初はぐだ×カーミラです。
少年と伯爵婦人
「触らないの?」
その一言は唐突であった。
ここは人理保障機関フィニス・カルデア、そこに所属する人類最後のマスターのマイルームである。
部屋にいるのは一組の男女。一人は部屋の持ち主であり、人類最後のマスターである少年リツカ。そして彼の召喚に応じた英霊の一人であるカーミラ。
「えー、とぉ……」
カーミラの言葉にリツカは首筋を押さえながら、少し困ったような笑みを浮かべる。
そして現状に至るまでを考える。
マイルームで今日はもう休もうと思っていたところ、廊下でカーミラと会い、魔力供給として血を要求された。首筋を押さえているのも、直接牙をたてられ吸血されたからである。吸血が終わり、しばらく首筋を押さえていたらカーミラの一言である。
「言ったでしょう?『 触れる代わりに血を貰うわ』って、覚えてないかしら?」
「あぁ……いや、覚えてるよ。ちゃんと、覚えてる」
「なら、わかるでしょう? 私は貴方の血を貰ったわ。だから、触れていいのよ」
つまり、触れるなら血を貰う、ということの逆説的な発想とでもいうことだろうか。
何だか突拍子もない話である。血による魔力供給も行ったりはしているが、そのようなことを口にされたことはなかった。そこでリツカはふと、思い至る。
「ねぇ、カーミラさ――」
「もちろん、好きな場所に触れていいわよ」
「―――」
その言葉にリツカは、喉まで出かけた疑問を飲み込む。
好きな場所、つまりはカーミラの身体のどこに触れてもいいという。
「え、と……ホントに?」
「えぇ」
「……後で怒りません?」
「怒らないわよ」
どこに触れるつもりなのよ、とカーミラは思うが確認する時点で察しはついていた。
「じ、じゃあ、失礼します……」
怒らないと言葉を得たリツカがおずおずと手を伸ばす。
ゆっくりと伸ばされる指先が、自身へと向かってくるのをカーミラはただ見つめる。
(まぁ、そうなるわね……)
指先が胸へと伸ばされるのを見ながらカーミラは、予想はしてたが少し残念に思う。
しかし、リツカの手は胸には触れずに過ぎて、顔へと伸ばされる。
「あら?」
そのまま指先、掌と頬を撫でるように触れる。触れながら顔を赤らめつつ、リツカは口を開いた。
「――やっぱり、あの、カーミラさん、綺麗です」
「――」
リツカの言葉にカーミラが固まる。しかし、頬をわずかに赤くし、微笑みながらリツカの手に自身の手を重ねる。
「こんなこと――触れることができるのはマスターぐらいよ?」
「……マスター、だからですか?」
カーミラの言葉にリツカが問う。少し不満げに。
「あら? どうしたのかしら? 何か不満?」
対して、カーミラはどこか楽しそうに。
「マスターだから、だけですか?」
「それ以外に何かあるかし――」
カーミラの言葉は遮られる。
自分から黙ったのではなく、リツカによって。
唇を重ねられて。
「……も、もう一回訊きます。マスターだから、だけですか?」
「……いいえ」
顔を真っ赤にするリツカに、愛しそうに微笑みながらカーミラは答える。
「恋人だからよ」
恋人。
改めて口にされた二人の関係。
それを聴いたリツカは照れくさそうに、口にしたカーミラは優しげに、幸せそうな笑顔を互いに浮かべた。
「あ、あれー……?」
目の前にあった幸せそうな笑顔の恋人は何処に。
視界がぐるんと回ったと思ったら、目の前には自分を見下ろす妖艶な表情の恋人が。
「あ、あのー、カーミラさん?」
「ふふ、最近構ってくれないから血を貰いに来たのだけれど……」
あ、やっぱそれで吸血にきたんだ。
と、リツカが納得すると同時にカーミラが自身の唇を舐め、薄く開いた口から牙が覗く。
それを目にした瞬間、リツカは悟った。喰われる、と。
「いいわ。恋人として、もっとスキンシップをとりましょう?」
「あ、あの……」
「何かしら?」
「や、優しくお願いします」
「……ふふふ」
「は、ははは」
「嫌よ。啼かしてあげるわ、リツカ」
翌日、マスターはやけにやつれていたという。
基本的にこんなノリで書いていきます。