Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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若干お遅いですが、新年あけましておめでとうございます!

新年一発目はインターミッションのような内容で、少々短くまとめてあります。

では、今年も宜しくお願いします!


第11話『彼女の記憶』

自分は夢を見ている。

 

そう光太郎は断言できた。

 

今、光太郎が見ているのは『彼女』の記憶。

 

かつて神話の時代。その姉妹は生まれ持った美しさ故に主神の娘である女神アテナの嫉妬を買い、誰一人いない孤島へと追いやられた。

 

しかし彼女は2人の姉にいびられ、泣かされながらも愛する家族と幸せに暮らしていた。

 

だからだろう。姉達を守る為に島へ上陸した人間たちを次々と手にかけた。

 

一目見ようとした者も、求婚を求めた者次々と石へと変え、『殺した』

 

 

愛する姉達を守るために。次々と。

 

 

だが、どこかで狂った。

 

 

守るためでなく、殺すために殺し始めた。

 

 

それが楽しくて楽しくて、仕方がなかった。

 

 

彼女は自分でも気づかぬうちに反転してしまった。

 

 

どれ程の人間を殺したかも、自分がどのような姿となったのかも、もう分からなくなっていった。

 

 

そして彼女が最後に飲み込んだのは、守るべき2人だった。

 

 

2人の姉は恐れることもなく、ただ妹の身を案じて消えていった。

 

 

 

それが彼女が彼女であった最後の記憶。

 

 

 

過去の聖杯戦争について義弟に聞いたことがある。残された記録によれば、マスターとサーヴァントの間には何かしらの共通点があるという。それは信念、抱いている野望と千差万別らしい。

 

ならば彼女との共通点とは見た夢の中にあったのだろうか。

 

自分が原因で、愛する者を失くした悲しみと後悔。

 

彼女を召喚し、すぐにでも義弟と義妹に紹介したかったのは、彼女を一目見た瞬間に『かつての自分』を重ねていただけかもしれない。

 

もう、一人ではないと思えたあの暖かい感情を彼女にも知ってもらいたかった…

 

 

目覚めた光太郎がまず目にしたのは見慣れた天井だった。

 

「ようやくお目覚めか」

 

パタンと本を閉じた方へと顔を向ける。いつも通りに不機嫌そうな顔をする義弟がこちらを睨んでいた。

 

「…ライダーは、無事?」

「第一声がそれかよ。まあ、光太郎らしいか…ライダーは問題ないよ。今も情報集めに外に出てる」

 

それを聞いて安心した光太郎は自室のベットに寝かされていることにやっと理解した。上半身をゆっくりと起こすと、脇腹がズキリと痛む。シャツを捲ると、ランサーのサーヴァントに貫通された傷は綺麗に塞がっている。しかし、内部まではそうはいかず、未だ組織再生に力を費やしているだろう。

 

光太郎の体内にあるキングストーンはそう簡単に宿り主を死なせてくれないらしい。

 

「桜に感謝するんだね。ずっと光太郎の傷が塞がるまでずっと魔力を使い続けたんだから」

「桜ちゃんが…?治癒魔術を?」

「あいつはまだそこまで出来ないよ。言った通り、簡易的な魔術で傷口を塞いでただけ」

 

ライダーによって急ぎ間桐邸に担ぎ込まれた光太郎は、自身の治癒能力によりすでに背中の傷は塞がっており、腹部の傷口も半分まで縮小していたが、出血の量はライダーが応急処置を施しても止まることはなく溢れ続けていた。そこで桜が行ったのは、傷口の周りにルーン文字を書いたテープで囲い、そこを魔力を通し小規模ながら『結界』を発生させる方法だった。

これにより血液をせき止め、後は光太郎自身が傷口を塞ぐまで結界の維持を続けていたのだ。

 

「後で礼でも言っておきなよ?」

「そうだね…慎二君も、ありがとう」

「…なんで僕に向けていうんだよ」

 

目を細める慎二に光太郎は笑顔で返答する。

 

「確かに魔力を使って俺に処置してくれたのは桜ちゃんだけど…そうやるように指示したり方法を教えたのは慎二君だろ?」

「…………………知らないね」

 

たっぷりと間を置いて答えた慎二であった。

 

事実、桜に対して指示をしたのは慎二である。

魔術師としての才能を持っているとしても、間桐家の養子となった後に魔術に触れることなく育った桜には知識は全くなく、出来るとしたら、予め用意された式に魔力を流し込む事を感覚的に可能。というのが光太郎の聞いた話だった。

 

先程話に出た光太郎の傷口に結界を張ることができたのも、その時に利用されたルーン文字が魔力を流せば結界という力場を作るという内容だからこそできた事だ。ルーンの文字を書くことができ、そのような事が考え指示できる人物は、常日頃から魔導書を読み耽っている慎二しかいなかった。

 

 

「…そういえば、あれからどのくらい時間がたったかな?」

 

これ以上追及してもまた癇癪を起こすだろうと話題を変えた光太郎は壁に掛けてある時計を見る。正午をさしているが、流石に日にちまでは分からなかった。

 

「光太郎達がボロボロで帰ってきたのは、3日前になるよ。それから随分と事態が動いた」

「…詳しく教えてくれ」

 

3日間。

 

それほどの期間がたったのに自分や周りの人間が無事であるなど奇跡的だと光太郎は思った。そしてその3日間で起きた事をライダー、そして衛宮邸に通っている桜から聞き得た情報を慎二は事細かに光太郎へ伝えた。

 

 

慎二の友人であり、桜の思い人である衛宮士郎が聖杯戦争のマスターとなったこと。

 

その衛宮士郎が魔術の名門アインツベルン家のマスターとサーヴァントに命を狙われていること。

 

成り行き上その場に居合わせた同じく聖杯戦争の参加者である遠坂凛が彼と同盟を組み、衛宮邸に住み着いたこと。

 

 

 

「…最後のは桜ちゃんにとって穏やかな話じゃないね」

「遠坂に危ないから出禁と言われても通い続けてるよ…で?」

「ん?」

「これからどうするのさ?」

 

慎二が尋ねたのは今後の方針だろう。

光太郎の聖杯戦争の初戦は敗北で終わっている。それでも大きく事態が動き出した戦いの中でも光太郎はまだ考えを練れる状態ではある。衛宮士郎のように狙われている訳でもなく、ランサーが再戦を求めて来襲する様子もない。

 

「…暫くは情報収集だね。それに俺もこんな状態だからね」

「ま、そうなるだろうね。それじゃ、僕は戻るよ」

 

光太郎の方針を聞いた慎二は立ち上がり、部屋を後にしようと立ち上がる。

 

「…ありがとうね、慎二君」

「………ん」

 

本日二度目の感謝に慎二は小さく頷いて部屋を出た。

 

「ふぅ…」

 

扉が閉まった途端、光太郎はベットに身を沈めながら慎二の聞いた情報を整理しながら、窓の外を見つめた。

 

(さっき聞いた情報の中にはゴルゴムが出現したという内容はなかった。あいつ等が大人しくしているはずがない。それに…)

 

光太郎は刺された腹部を手で押さえながらあの夜を思い出す

 

(あの時…ランサーとの戦いに出てきた怪人は明らかに俺の隙を狙って攻撃してきた。もしかしてゴルゴムは知っているのか…?この町で聖杯戦争が起きていることを)

 

 

 

ゴルゴムの秘密基地

 

水晶玉に映し出されているのは、バッファロー怪人が後一歩で仮面ライダーに止めをさせる所で爆発した映像が何度も映し出されていた。

 

 

「この破壊力…仮面ライダーを助けたのは間違いなく『英霊』であろう」

「まさか奴が契約している英霊以外に協力者がいたとは…」

「教会から送られた情報だけでは不足ということですか」

 

映像を眺3神官。聖堂教会の協力者から得た冬木で行われる聖杯戦争の情報を得たゴルゴムは、間桐光太郎がマスターとして参加していることを知り、その戦いに乗じて彼の抹殺を狙っていた。

 

「そんなチマチマした方法などで奴が倒せるものか!!」

「…ビルゲニアか」

 

神官達は振り返る先に立っていたのは赤い甲冑を纏った男、剣聖ビルゲニアである。

 

「…貴様に勝機があるのか?先日の戦いで武器であるビルセイバーは仮面ライダーによって破壊されたであろう」

「無策で動く俺と思うなよ…?」

 

ニヤリと笑うビルゲニアの手に握られている剣を見て、バラオムは驚愕する。

 

「そ、それは『サタンサーベル』!?」

「もしや…あの御方に!?」

 

神官達の動揺に満足するように笑うビルゲニアは紅く輝く刀身を持つ魔剣を振るう。

 

「そうだ!『創世王様』より授かったこのサタンサーベルで、俺は仮面ライダーを確実に葬ってやる!!ハァーッハッハッハッハ!!」

 

高笑いをしながら神官達から離れるビルゲニアが向かったのは、ゴルゴムの諜報員が収集した様々な情報や記録されている空間。

そこにはいくつものモニターが設置され映像が流されている。

 

(このサタンサーベルがあれば仮面ライダーごときに遅れは取らん。だが、勝利を確実にするにはビルセイバーに変わる剣がもう一振り必要だ…)

 

手に持ったサタンサーベルを強く握るビルゲニアは、ある戦いを映し出さしているモニターの一つを凝視する。

 

「前回の聖杯戦争とやらから引き続き参加するとは…ご苦労なことだな」

 

それには光太郎と戦ったランサーと互いの武器をぶつけ合う一人の少女の姿があった。

 

「星が鍛えた剣…まさに世紀王であるこの俺が持つに相応しい!!」

 

 




…あまり記憶に残っていない彼をどう動かすか、今年始めの課題ですな。

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