しかし、最後の映画予告に色々と持っていかれました…
ここまできました、13話です!
間桐慎二にとって高校で起きた事態を義兄に報告できたのは不幸中の幸いと言えた。
その日、光太郎が負傷して以来部活を欠席していた慎二は、以前自分が失態し部長である美綴に説教を受けている際に影で笑っていた無礼な後輩共に備品の整理するよう指示した事を思い出し、その結果を確かめるべく休み時間に道場の倉庫へと足を運んでいた。
無論、自分をバカにしたという私情以外にもしっかりと理由はあり、普段の態度が悪かったことを顧問に焚き付け、気合を入れ直す意味も含まれてる。
しかし、それは失敗だったと慎二は後悔した。
その成果を見る限り、備品類は勿論物置も整理がなされている。慎二の知る限り、あの後輩達にここまで綺麗に仕上がるはずがない。しかもその配置や丁寧さには見覚えがあった。
「…あのバカが遅くまで学校にいたのはそういう理由か」
備品整理を面倒がった後輩共は、たまたま通りすがったかつての先輩…衛宮士郎に声をかけ、適当な理由を言って彼に押し付けたと慎二は推理する。断る事を知らない士郎は肩代わりをし、備品どころか倉庫の清掃まで行ったのであろう。
作業は下校時刻をとっくに過ぎており、その帰りにサーヴァント同士の戦いに巻き込まれ、今にいたる…
(…遠回しに僕の責任みたいじゃないか。クソッ!)
イライラしながら弓道場を後にした慎二はサボった後輩共の処遇を考えながら移動する。今度は美綴や藤村の立会いで的場と安土の整理を1ヶ月やせてやろうかなど次々と案を浮かべる慎二だったが、校舎に近づくにつれて妙な違和感を覚えた。
静かすぎる。
移動教室のためにバタつくはずの廊下やグラウンドの方から生徒の声どころか足音すら聞こえない。
「なんだ…?」
慎二は校舎に入らず、外から教室の様子を伺うことにした。1階にある1年生の教室の窓の下に移動し、ゆっくりと顔を上げながら室内の様子を見る。傍から見たら変質者だな…とぼやきながら教室内を見回すが誰一人見当たらない。別教室での授業の可能性があったが、さらに隣の教室内を見ると同様にもぬけの空だ。
「………っ!」
もう他の教室を確かめるまでもない。これは異常だ。慎二は状況を把握するため校舎に入ろうと下駄箱を駆け抜ける。上履きに履き替える余裕などない。
(桜…っ!)
まず義妹の安否を確かめなければと急ぐ慎二だったが、それは早計だったと思い知ることになった。
「なん…だ…?」
眠い…校舎に入った途端、慎二は突然の眠気と脱力感に襲われた。壁に寄りかかり、倒れる事は間逃れた慎二は廊下の空気中に漂う香りに気付く。
(まさか…こいつが!?)
これ以上この香気に吸ってはまずいと悟った慎二は口を手で押さえ、手近の窓を全開にして外の空気を目一杯に吸った。だが、このままでは自分が眠ってしまうのは時間の問題だろうと考える慎二の目に、何かの影が見えた。虚ろな目で見上げると、それは屋上から見下ろす植物に似た『何か』だった。
「ハハ…連中、とうとうここまで来るようになったのかよ…」
身体から力が抜けていくのが分かる。だが、その前に出来ることをしなければと慎二は携帯電話を取り出す。
(まさか身内の問題が学校まで及ぶなんてね…たまんないよ実際)
振るえる指でボタンを操作する慎二。携帯電話をいじるのにここまで苦労とは人生初の事態だろう。あまり長文を打てる状態ではないので必要最低限の文だけを打ち込む。あの義兄なら、見て1秒もしないで理解できるはずだ
(だから…責任取ってとっとと片付けてくれよ…)
義兄へのメールが送信された事を確認できた慎二の意識はそこで途切れた。
同じ頃、穂群原学園の様子を数キロ離れたビルの屋上からその千里眼で見ていたサーヴァントは隣に立つマスターへ状況を伝える。
「どうやら学校内に睡眠作用のある香気を空中に散布。それにより意識を失った生徒職員を一か所へ集めている。場所は…体育館か」
「…本当に、眠ってるだけなの?」
「そのようだ」
顎に手を当て、敵の狙いを探ろうと遠坂凛は思考を巡らせる。
凛は元々、こちらの忠告を無視して学校に向かった半人前の協力者を連れ戻しに来たのだがその途中、彼女のサーヴァントより学校で異変が起きた事を知った。
「…その運んでいる奴って、キャスターの使い魔の骸骨だったりする?」
これが柳洞寺を根城にしているサーヴァントであれば、眠らされた人々を魂喰いするという最悪な展開を凛は予測した。だがその不安は彼女の契約するサーヴァントにすぐ否定される。
「…それは無いようだ。運んでいたのは同じく香気で眠らされた人間だ。どうやら催眠術の類で操られているようだが、サーヴァントの気配は感じられない」
「そう…」
ひとまず安心する凛。眠らされているだけであれば、妹…桜も無事なのであろう。
「そして…屋上に犯人が偉そうにふんぞり返っている」
「犯人…?」
「ああ…その隣には数か月前から新都に出没しているという『怪人』らしき異形もいる」
「なんだってそんな奴らが真昼間から学校にいるのよ」
「さぁな。む…どうやら君にとっては頭の痛くなる状況のようだのな」
「…?どうゆうこと」
「そいつらと同じ場所に衛宮士郎がいる」
サーヴァントの衝撃的な発言にしばし固まる凛。
「…ハアァァァァァッ!?」
「…離れているとはいえ、そう大声を出すとは感心しないぞ凛?」
「あンのバカ士郎!どうしていつも厄介事の中心にいるのよ!!」
サーヴァントの忠告を無視し、敵の手に落ちた士郎への怒りを抑えられない凛は地団太を踏む。これならまだ他の人間と一緒に眠っていた方がまだマシだ。
「衛宮士郎の事はとうでもいいとして、どうするのだマスター?予想外のトラブルとはいえ、これは聖杯戦争とまるで関係のない事だぞ」
「アンタほんとに士郎の事嫌ってんのね…?確かに聖杯戦争とは関係ないし、まだ全快じゃないアーチャーに何体いるか分からない怪人相手を頼むわけにはいかないわ…でもね」
一度言葉を区切った凛は腕組みをしたまま穂群原学園を監視している赤い外套を纏ったサーヴァント…アーチャーの正面に立ち、自分を一回り上回る長身の男の眉間に向かいビシッと指を刺す。
「だからと言ってこの町で好き勝手やらせるのとは話は別よ!遠坂家の当主として見過ごすわけにはいかないわ」
ニヤリと笑う赤い少女を見てアーチャーは溜息をつく。
「…やれやれ。どこまでもお人好しなことだ」
「何よ?マスターの決定に逆らうわけ?」
「残念なことに、サーヴァントとしてはマスターの決定には従わなければならないな」
皮肉を言いながらも賛同するアーチャーの回答に満足した凛はこの後の対策に頭を切り替える。敵の戦力、目的がまだ見えていない。どうにか策を練ろうとする凛に監視を続けるアーチャーが提案を持ちかける。
「凛。先程言った通りにこれは聖杯戦争と関わりのない件だ。ならば、協力を求めるのも一つの手段だと思うがね」
「協力…ねぇ」
アーチャーの進言は有効な手段だ。しかしその現時点で協力が見込める人物は何故か主犯に捕まっており、そのサーヴァントは彼の自宅で魔力温存の為に待機している。
(あまり頼りたくないけど…)
凛の頭に今回の聖杯戦争の監視役であり、凛の後見人でもある兄弟子の顔を浮かべる。かつて代行者として腕を振るった彼ならばあのような異端の怪物相手ならエキスパートであろうが…
(ないわね。ないない)
顔が浮かんだ瞬間その案は却下した。あの神父になるべく借りを作りたくない。さてどうするかと頭を捻る凛にアーチャーから新たな報告が告げられた。
「どうやら協力が見込めそうな相手が近づいているようだ。それも、『専門家』のな」
「え…?」
どうゆうこと?と凛が尋ねようとした時、穂群原学園に向かい、法定速度を無視してバイクを走行させる人物の姿があった。しかもその後には、同じ速度で並走する女性の姿もある。
穂群原学園の屋上で、縄で拘束された衛宮士郎は目の前に立つ赤い甲冑を纏う男…ビルゲニアを睨んでいた。だが男はそんな視線を物ともせず、寧ろ楽しんでいるかのように士郎の姿を見ている。
「クックック…いい目をするではないか衛宮士郎。やはり聖杯戦争のマスター共は全員そのような目をするのかな?」
(こいつ…聖杯戦争の事を知っている?けど…)
士郎はビルゲニアの背後で佇んでいる異形の姿を見る。
体躯は人間に近い。しかし全身から棘の生えており、両腕からはまるで鞭のようにツタが垂れ下がっている。肩から肩から上が無数の薔薇で覆われており、顔に当たる部分が他よりも大きな薔薇となっており、猛禽類を思わせる鋭い目があった。
言うならば薔薇怪人。
今は感じられないが、この薔薇怪人から発生した香気によって士郎を除く学校にいる人間全員が意識を奪われてしまったのだ。
ここで士郎が疑問に思ったのは何故自分だけが意識を奪われずに、屋上まで連れてこられたかという点だ。ビルゲニアは聖杯戦争については知っているようだが、関わっているとは考えずらい。むしろ友人の兄が変身し退治したあの怪人側ではないのだろうか?
もしそうであれば、ますます自分を拘束する理由が分からない士郎の頭に痛みが走る。ビルゲニアが士郎の頭を乱暴に掴み、フェンスに叩きつけた。
以前にも慎二に同じような目に合わされたが、その力は比ではない。しかも前回と違い、フェンスに顔を押し付けられている状況だ。
「お前にはやって貰うことがある。なぁに簡単だ。その手にある令呪を俺に寄越せばいい」
「!?」
顔を圧迫される痛みよりも衝撃な内容だった。令呪を自分から奪う。即ち、自分と契約するサーヴァントを奪われることと同義である。
「お…前、何を言っている…」
「小僧、お前に拒否権などあると思うな。今、お前の目の前に映っている建物は…理解できるな?」
押さえつけられている士郎の視線の先にあるのは体育館だ。
「あそこには生徒、教員共が全員収容されている。もし俺の言うことを聞かなかった場合は…」
その先の言葉を言わなくとも士郎には理解できた。なんとも分かりやすく、恐ろしい手段を使う奴なのだろう。
「…こうすれば返事をしやすいか?」
フェンスに抑え付けていた士郎を今度はボールのように後方へ放るビルゲニア。まともに受け身を取れないまま士郎は落下し、その痛みに一瞬呼吸が止まってしまう。
「か…はぁ」
身をよじる士郎が目を開くと、彼の前には人が立っていた。顔を見ると、学校に雇われている用務員だった。しかし目の焦点が合って
おらず、生気の抜けた顔をしている。おそらく他の人間同様に意識を奪われ、催眠術のようなものにかかっているのだろう。
男は士郎の前で膝を着くと、手に持っている何かを広げる。それはノートパソコンだった。
「っ!?」
何のつもりかと思った士郎はその画面に映し出されていた映像に息を飲む。
その映像には体育館内部の映像が映し出されており、眠らされた生徒、教員、学校関係者全員が床に転がっていた。
どうやら体育館から中継されているようであり、体育館全体を映す画面の他に幾つかの部分拡大された画面も見られた。
拡大された画面には間桐桜、藤村大河、柳洞一成…いずれも衛宮士郎と親しい間柄の人間ばかりであった。
「これで分かったか小僧?お前に選択する余地などないことに…」
「…る」
「ん?」
「どうして…こんなことができるんだお前はぁッ!!」
立ち上がり、ビルゲニアに向かって走り出す士郎だったが、ビルゲニアの手のひらから放たれた放電により、逆に吹き飛ばされてしまう。
「フンッ!まだ一人も殺していないだけありがたく思うのだな。だがな、今のような事をすればこの後はわからんぞ…?」
ビルゲニアはその手を今度は体育館のある方向へ向けると、先ほどとは色の違う波動が流れて行った。その直後、パソコンに映る
体育館に新たな動きがあった。見ると、倒れている人間が数名立ち上がり、倒れている他の人間の周りを囲い始めた。そして、予めその場に設置されたいくつものポリタンクの蓋を開け、同じように置いてあったライターを注ぎ口に近づけている。ポリタンクの中身はガソリンである。もし、ライターに着火した場合は…
「や…やめろォ!!」
士郎の悲痛の叫びが屋上に響く。
「次に俺に逆らったらどうなるかは言うまでもない。さぁ、大人しく令呪を俺に渡してもらうぞ」
倒れている士郎へビルゲニアの足音が近づく。
もう…どうすることもできないのか。多くの人たちを苦しめたまま、自分と共に戦うと誓ってくれた少女を敵にされてしまうのか。
そんことは…
「そんな…ことは…」
「絶対に…させ、ない」
「そう思うのは結構だけどいつまでも寝てないでくれる?」
聞き覚えのある声が聞こえた直後、ビルゲニアの背中に機関銃のように大量のガントが撃ち込まれた。
「…何だ?」
何もなかったかのように振り返るその先には、屋上の出入り口から人差し指を向けていた遠坂凛の姿があった。
「…分かっていたけど、あそこまで利かないとなるとちょっとショックね」
けど、と凛は不的に笑う。
「注意を向けるには大成功」
突然現れた少女の言うことが理解できないビルゲニアだったが、その答えは身をもって知ることになった。
「トァッ!!」
「ぬおぉッ!?」
掛け声と共に自身に走る衝撃。転がりながら立ち上がると、目の前には宿敵の姿があった。
「貴様ッ…間桐光太郎!!」
「剣聖ビルゲニア…!お前の好きなようにはさせん!!」
横からビルゲニアを飛び蹴りで吹き飛ばした光太郎は、急ぎ倒れている士郎を介抱し、縄を引き千切った。
「大丈夫か?衛宮君」
「こ、光太郎さん!俺よりも…」
「体育館にいるみんななら、心配いらないよ」
「え…?」
士郎が一刻もなんとかしなければならない事をすでに光太郎は知っていた。正確には凛から知らされた情報ではあるのだが、この時の士郎にとって、どうして知っていたなどどうでも良かった。光太郎の『心配いらない』の一言ですでに大丈夫と確信できたのだ。
「おのれぇ!こうなれば人質は全員皆殺しだ!!」
再び波動を体育館に向けるビルゲニア。
「さぁ、後悔するがいい!!」
口元を歪め、体育館が燃え上がるを待つビルゲニアだったが、いつになっても火が付いた気配がない。
「ど、どういうことだ!?」
「残念だったなビルゲニア!人質にされた人たちがお前の催眠術にかかることはない!!」
その声に振り返ると、先程まで催眠術にかかっていた用務員の男は凛の手により気を失い、壁に寄り添っている。そして薔薇怪人は
宿敵が契約しているサーヴァントと睨みあっている状態だ。
「き、貴様ら…!!どういうことだ!!」
「体育館に、怪人1体でも見張りを置いておくべきだったな!」
光太郎の言葉に士郎はハッとする。ここにいるべき遠坂凛のサーヴァントの姿が見えない。思わず凛の方へ顔を向ける士郎。
それに気づいた凛はコクリと頷いた。
「まだ弱っているとはいえ、催眠術にかかった人間をまた眠らすくらいなら、ね?」
とウインクで答えてくれた。
あの時、学校へ駆け付けた光太郎とライダーに接触した凛とアーチャーは『今回限り』の休戦を結び、お互いに情報交換をした。
体育館に集められた人々、そしてビルゲニアに囚われた士郎。同時に助けるには侵入と奇襲を同時にしかけるしかないと決まり、
体育館の侵入をアーチャー自ら買って出たのだ。
『今の私は足手まといだろう。ならば、相応しい役割に徹するさ』
そう言って霊体化し、体育館に向かった。
後はビルゲニアの性格から、士郎を脅すために何かしらの動きをするはずという光太郎の分析をもとに、その動きを合図に奇襲を仕掛けたという流れである。
「う、ぬぅうぅぅぅぅ!!」
拳をワナワナと震わせるビルゲニア。
「覚悟しろ、ビルゲニア!!」
右腕を前に、左腕を腰に添えた構えから大きく腕を振るうと右半身に重心を置き、右頬の前で両拳を作る。
ギリギリと拳を力強く握りしめる音が響き、その力を解放するように右腕を左下へ突出し、素早く腰へ添えると入替えるよう
に左腕を右上へと突き出した。
「変ッ―――」
突き出した左腕で扇を描くように、右から左へ旋回し―――
「―――身ッ!!!」
叫びと共に両腕を右上に突き出した。
光太郎の腹部に力の源となるキングストーンを収めたベルト『エナジーリアクター』が出現。その中央から放たれた閃光により
光太郎の姿はバッタ男へと変貌する。
だがそれも一瞬。
ベルトの光はバッタ怪人を強化皮膚「リプラスフォース」で包み、戦士へと姿を変える。
左胸に走るエンブレム、関節より蒸気となって湧き上がる余剰エネルギー。
変身を終えた光太郎はビルゲニアに向かい、その姿の名を名乗った。
「仮面ライダー、ブラァックッ!!!」
戦いの火ぶたが、切って落とされた。
そう言えば、以前も変身して終了した回があったような…
ご意見、ご感想お待ちしております!