Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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さぁ、明日はいよいよ獣電戦隊の最終回…待ち遠し過ぎます!
その前に15話、投下致します!


第15話『復活の怪人軍団』

「…さん!慎二兄さん!!」

「ん…」

 

自分の名を呼び、何度も揺さぶられて間桐慎二はようやく目を覚ました。呼んでいる張本人の姿を視界に入れてみれば、見慣れている顔が、見たくもない泣き顔で慎二を見ている。

 

「…よぉ。無事だったみたいだな」

「兄さんっ…よかったですぅ…」

「いちいち泣くなよ…泣き虫桜」

 

昔、こんなふうに言ってからかってたらあのお人好しが笑いながら「めっ」なんて気色悪いこと言ってたっけ…などと過去を思い出しながら体を壁にあずけ、どうにか立ち上がる慎二。

 

「どんな状況か、分かるか?」

「いえ、私もさっき目が覚めたばかりですから…」

「自分の目で確かめるしかない、か」

 

現状を桜に尋ねる慎二は手首を動かして調子を確かめる。まだ本調子とまではいかないが、動くには問題ないだろうと考えた途端、2人のいる廊下を揺るがすほどの激震が走る。

 

「な、何だよいきなり!?」

「校庭の方から…すごい音が聞こえました!」

 

床に放っておいた携帯電話を拾い、時間を確かめる慎二。義兄に怪人が出現した旨をメールで送ってから2時間以上経過している。

メールの着信に気付くのに時間が掛かったとしても、既に学校へは到着しているはずだ。あの心配性が自分たちを探しにこないとなるとそう出来ない状況にいるはず。ましてや先程の衝撃に巻き込まれているようであれば…

 

「桜、どの程度に動ける?」

「え?特におかしな所はないのでいつも通りには」

「…充分だ。付いて来い」

 

説明を受けないまま、桜は校庭とは反対方向へ進んでいく義兄の後に続いて駆けて行った。

 

 

 

「これは…」

「倒したはずの怪人…!」

 

背中合わせで立つ光太郎とライダーは、自分達を囲う怪人達に向かい、構える。ジリジリと迫る怪人達は光太郎がライダーと契約する前…聖杯戦争以前に倒してきた個体が半数以上であった。

 

アンモナイト怪人、

 

マンモス怪人、

 

サイ怪人…

 

他にも倒すだけでもやっとの相手ばかりであった。

 

「これは…光太郎に頼る他ありませんね」

「そうしたいのは山々だけどね…」

 

見たことのない怪人には、どうしても戦った経験のある光太郎頼みになってしまうライダー。光太郎にはどのように戦い、倒してきたかは嫌というほど記憶に焼き付いている。しかし、いかんせん数が多すぎた。クモ怪人のように、同じ個体が複数いる相手ならば動きもパターンも同じであったが、目の前にいる大群は全てが別個体。同時に対処するという手段は厳しい状況だ。

 

「ハハハ…どうだ再生怪人たちの勇姿は?どいつもこいつも、仮面ライダーへの憎しみにあふれているぞ!」

「ビルゲニア…!」

 

バラ怪人の背後から光太郎達の姿を見て高笑いをするビルゲニア。睨む光太郎に向かい、ゆっくりと指を向ける。

 

「者共…かかれぃ!」

『■■■■■■■■ーッ!!!』

 

ビルゲニアの号令と共に、各々の雄叫びを上げて怪人達が襲いかかった。

 

「くっ!トァッ!!」

 

最初に突撃してきたサイ怪人の頭を足場にジャンプし、上空から迫ったツルギバチ怪人を蹴り落とした光太郎。着地と同時に切りかかるカマキリ怪人の鎌、サボテン怪人の腕を前転して回避する。

 

「ハッ!」

 

凄まじいスピードで駆けてくるヒョウ怪人の顔面にカウンターとして蹴りを叩き込んだライダーは次に鎖を振るい、ヤギ怪人の角に巻き付けると全力で引き寄せ、彼女の背後に迫ったクロネコ怪人、ハサミムシ怪人にヤギ怪人に衝突させる。さらに鎖を光太郎に向かって投擲する。

 

「コウタロウ!」

 

ライダーの叫びに振り返ると同時に鎖を掴んだ光太郎は、その腕を上に向かい力一杯に振るう。

 

「ウオォォォォッ!!」

 

光太郎の力により、金属の擦れ合う音を立てながら鎖は重力に逆らいに上空へと上がっていく。その鎖は当然、手に持つライダーをも空へと誘い、それによってライダーはマンモス怪人の突進を回避し、手に持った短剣で飛行していたタカ怪人へ切り付け、ダメージを負わせることが出来た。

 

 

「す、すごい…あれだけの攻撃をかわして反撃。それに…あの二人、息がピッタリだ」

「………………」

 

離れた場所から戦闘を見ていた士郎は、興奮して見入っているが、隣に立つ凛は無言で2人の様子を見るとボソリと呟く。

 

「…まずいわね」

「何がまずいんだよ遠坂。光太郎さん達はなんとか…」

「そう、その『なんとか』なっている状態が一番まずいのよ」

「え…?」

 

士郎には凛の言うことが理解出来なかった。戦っている2人は怪人達の攻撃を華麗に避け、反撃もしている。どこに凛の言うまずい要素があるのか必死に考える士郎だったが、彼の顔を見て察した凛が尽かさず説明を開始した。

 

「士郎に分かりやすく説明するわ。いい?2人の戦い方にはまったくのがなブレい。だから自分のリズムを崩さずに敵の攻撃を予測、回避、反撃。おまけにお互いにフォローし合って、隙がないように見える。例えるなら譜面通りにミスなく楽器を演奏しているようなものよ」

 

けどね、と凛は士郎の眉間に指を向ける。

 

「譜面にある音を一つでも間違えて、演奏する手を止めてしまったらそれはもう曲として成り立たない。つまり、一瞬でも隙が出来るか、動きを止めてしまえば…どうなるか流石に分かるわよね?」

「…っ!?」

 

凛の言いたいことが理解出来た士郎は再び2人へと視線を向ける。先に士郎の言った通り、2人は怪人達の攻撃を何とか凌いでいる。しかし、多勢に無勢であることには変わりないのだ。休む間もなく攻撃をしかけてくる大勢の怪人達に対し、光太郎とライダーの戦い方は紙一重の回避と牽制にすぎない反撃だ。それに体力も体無限ではない。疲労して一度でも手を止めてしまえば、怪人達の攻撃の餌食となるのは明白だった。

 

「光太郎さん…」

 

 

光太郎は内心焦っていた。怪人達の攻撃を回避して反撃に出るのは上手くいっているが、所詮は次の攻撃をかわすまでの繋ぎであり、大きなダメージを与えるに至っていない。援護にバトルホッパーを呼ぼうにも、再生怪人の中にタマムシ怪人が紛れているので以前のように乗っ取られる可能性もあり、敵を倒す必殺の一撃を与えるにしても、光太郎もライダーもその為の『溜め』が出来ない以上、チャンスが生まれるまで動き続けるしか光太郎には策はなかった。

 

正面に立つクモ怪人が口から吐き出した糸をかわすため、跳躍しようとした光太郎とライダーだったが、突然足の自由を奪われる。

 

「何っ!?」

「これは…!」

 

慌てて足元を見ると、緑色のツタが地面を突き破り、光太郎とライダーの足に絡みついていた。さらにクモ怪人の糸で腕までもが縛られてしまった2人はビルゲニアの隣に立ち、伸ばした両腕が地面に潜っているバラ怪人の姿を見る。恐らく腕のツタで地面を掘り進み、奇襲を仕掛けたのであろう。

 

「奴らの動きは封じた!徹底的にいたぶってやれ!」

 

ビルゲニアの命令と同時に光太郎とライダーはサイ怪人、バッファロー怪人の体当たりを受け、吹き飛ばされてしまう。

 

「グワァッ!?」

「クゥッ…」

 

地面を転がる2人への攻撃は止まらない。起き上がれない光太郎とライダーに対し、怪人達は容赦ない攻撃を続けた。殴り、踏みつけ、飛行できる怪人が数十メールまで持ち上げ叩き落とす…聞こえるのは、ダメージを受けるたびに聞こえる光太郎とライダーのくぐもった声のみだった。

 

蹂躙されていく2人の姿に凛は奥歯を噛みしめる。今、眠っている学校関係者達を護衛しているアーチャーを呼び寄せ、2人を救出に向かわせても、万全ではない彼も同じ目に合う可能性もある。こんな時、命呪の魔力を消費して彼を全快させることが出来ればと、自分の手の甲にある、あと一画しかない令呪を恨めしく睨んでしまう。

 

「…………」

 

凛は先程から沈黙している隣に立つ少年を見た。何かを決意したかのように未だ使用されていない令呪の刻まれた拳を強く握りしめている。

 

「待ちなさい士郎」

「止めないでくれ遠坂…これ以上、光太郎さん達があんな目に合うのは、我慢出来ない!!」

 

これから士郎がやろうとすることが手に取るように分かる凛は、怒りを抑えられない彼の言葉に首を横に振る。

 

「…違う。たた、確認したいだけ」

「……………」

「士郎にも分かっている通り、これは聖杯戦争とは関係のない戦いよ。それで令呪を消費するということがどういうことか。理解しているわよね?」

 

無論士郎も分かっている。令呪の消費。この先にある聖杯戦争でのもしもの時の切り札を失う事になってしまうのだ。凛や彼のサーヴァントからは令呪の重要性は耳にタコができる程聞いていた。しかし、自分達を助ける人が目の前で傷つくことを黙って見ることは、少年にはどうしても出来なかった。

 

「…アイツには、後でたっぷりと謝るよ」

「そう…私は手助けしないわよ」

 

一言だけ言うと凛は一歩下がった。頷いた士郎は再び拳を掲げる。それに答えるかのように、手の甲にある令呪の一画が魔力を放った。

 

 

「ようし、仮面ライダーを起こせ!」

 

サタンサーベルを持ったビルゲニアが、ボロボロとなった光太郎の元へ歩み寄る。全身の黒い皮膚はあちこちに傷が入り、口元に当たるクラッシャーからは吐血の後が見られた。未だにクモ怪人の糸で拘束されている光太郎は自力で立ち上がることが出来ず、左右から怪人に肩を掴まれ、無理矢理立たされてる。

 

「ククク…この瞬間を、俺はずっと待っていた」

「………」

 

サタンサーベルの切っ先を光太郎の喉元に当てるビルゲニア。抑えきれないほど歓喜の表情を浮かべ、どの角度から光太郎の首を切り落とそうかと刃の角度を変えている。だが、光太郎もただ捕まっている訳ではない。

 

(奴が剣を振り上げた瞬間に、キングストーンの力を使えば…)

 

近距離からのキングストーンフラッシュ。それが自由を奪われた光太郎に残された最後の手段。今を打破するには怪人達を指揮するビルゲニアを倒すしかない。隣で倒れているライダーも光太郎の手段に感付き、ただ光太郎の出方を待っている状況だ。

 

「哀れなものだな。あのような『汚物』を取り合う人間同士の殺し合いなどに参加しなければこのような目に合わずに済んだものを」

「…?」

 

ビルゲニアの言う『汚物』とは何を指す言葉だったのか光太郎には理解できなかったが、言葉の前後から聖杯戦争と関係するのかと考える光太郎だったが、続いた言葉に衝撃を受けてしまう。

 

「まぁいい。俺には関係のないことだ。さぁ、貴様の首を神官共と眠っている『世紀王候補』にさらしてくれよう!!」

「なっ!?」

 

ビルゲニアの口から出た『世紀王』という言葉に再び驚く光太郎。

 

(まさか…生きてるのか…!?)

「死ねぃッ!!」

「しまったッ!?」

 

動揺した光太郎はキングストーンフラッシュを放つタイミングを逃し、ビルゲニアの振るったサタンサーベルが自分の目の前に迫った事にようやく気が付いた。

 

(く…ここまでなのか!)

 

死を覚悟した光太郎だったが、サタンサーベルの切っ先は光太郎の首に触れる寸前で止まってしまう。否、サタンサーベルは『不可視の剣』に受け止められていたのだ。

 

「き、貴様…!?」

 

突然の乱入者に驚きを隠せないビルゲニア。光太郎を庇うように現れたのは、青いドレスの上に銀色の甲冑を纏った剣士だった。

 

「…君は!?」

「御無事ですか?」

 

振り返ることなく光太郎に返事をした剣士は、両手で握る不可視の剣に力を込め、ビルゲニアのサタンサーベルを振り払った。

 

「ぬぅッ!?」

 

剣士に押されたビルゲニアは後方に下がり、改めて自分の邪魔をした者を睨んだ。

 

「貴様…そうか、貴様が!」

 

剣の切っ先をビルゲニアに向けたまま、剣士は光太郎へと振り返る。それは強い意志を瞳に秘めた金髪の少女だった。

 

「大体の事情はマスターから伺っています。ライダー、そしてライダーのマスターよ」

 

少女はビルゲニアに向けて、より強く風を纏った不可視の剣を構える。

 

「義により助太刀致します!」

 

最良のサーヴァント、セイバーが参戦した。

 

 

 

 

 




倉持さん、おしゃべりが多すぎたためセイバーの乱入を許してしまいました。

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