Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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またもや本編とは関係ない話ですが、解禁となった聖闘士星矢の新作映画予告を見て心が燃え上がりました。フルCGで描かれる世界、大胆にアレンジされた聖衣…公開まで待ちきれません!

いつもより短めの19話、どうぞ!


第19話『夢の中へ』

衛宮家を後にした間桐兄妹とライダーは並んで家路へと付いていた。特に話をせず無言で足を進める4人だが、両脇を歩く光太郎と慎二はそれぞれ笑い、呆れた顔で間にいる女性2名の様子を横目で伺っている。

衛宮家を出た直後から、桜がライダーの服の裾を掴む…というより摘まんだまま離さず歩いているのだ。母親と手を繋いだ幼い子供のように手を放そうとしない桜の意図が分からず、困惑するライダーは隣を歩く光太郎に視線で助けを請うが、光太郎の指示は

 

『家までそのまま!』

 

である。

 

拒むことなど出来る訳がなく、ライダーは小さく溜息を付き、マスターに従うしかなかった。

そして桜の手が離されたのは、間桐家の門を潜った後であった。

 

 

「まったく、桜は…」

「どうかした?」

 

帰宅後、リビングのソファーに腰をかけた慎二は雑誌のページをめくりながら先程桜が取った行動の理由を光太郎に告げた。

 

「・・・真に受け過ぎなんだよ。自分でも分ってるくせに」

「仕方ないさ。自分で納得しているつもりでも、それを改めて本人以外の口から聞いてしまうとさ」

 

補足する光太郎はテーブルに自分と慎二の分のコーヒーを置くと、慎二の向かい席であるソファーに座る。

 

『聖杯戦争が終われば、英霊は現代から消え、元の場所へと帰る』

 

実姉である遠坂凛が衛宮士郎を説き伏せた際にでた言葉が、帰宅中にライダーを手放さなかった原因と慎二は踏んでいる。凛の言ったことは英霊が冬木に召喚された時点で定められ、覆せない宿命であった。

 

「あの時みんな衛宮の馬鹿と遠坂しか見てなかったのが幸いだったよ。分かりやすく動揺しやがって・・・」

「よく見てるねぇ。さすがお兄ちゃん!」

「黙れよ愚兄」

 

コーヒーカップを乗せていた皿を光太郎に向けて投擲するが、すんなりと人差し指と中指に挟まれ止められてしまった。

 

「きっと、嬉しかったんだよ桜ちゃん。実のお姉さんとは家の決まりで学校でしか会えないし、お母さんは・・・ね」

 

光太郎の言わんとしていることは慎二も理解している。大昔の決まり事で本当の家族が目と鼻の先にいるのに関わらず、接触を禁じられた桜にとってライダーは新しく出来た同姓の家族も同然であった。二人でお茶をして以来、ライダーも家の中では霊体化せず、暇な時間を見つけては桜の話相手となり家事も進んで手伝うなど桜を気にかけてくれている。

いずれ来る別れの時を忘れてしまう程、桜にはライダーの存在は大きくなっていたのだろう。

 

「急に心細くなったからついつい甘えちゃったんだろうね」

「本当にいなくなった時はどうすんだよ。泣くだけじゃ済まないんじゃない?」

「その時は、慎二君が雑誌の間に挟んである本を参考に頑張ってくれると助かるよ」

「・・・!?」

 

慎二が隠し持っていた『家族が悲しんだそんな時』というタイトルの文庫本を指さした光太郎は早々と退散した。階段を登る光太郎の耳に入ったのは、壁に向かい雑誌を叩きつけて怒鳴る慎二の声であった。文庫本を投げない辺りが彼らしいなと考えながら自分の部屋へ戻ったのであった。

 

 

 

 

 

その頃、桜の自室では・・・

 

「ごめんなさいライダーさん…今日は我儘ばっかりで」

「気にしないでくださいサクラ」

 

桜とライダーは、それぞれがパジャマに着替えて同じベットで横たわっていた。光太郎と慎二の考えた通り、聖杯戦争中にしか存在できないライダーが目の前からいなくなってしまうという不安。それが今の桜の心を占めていた。帰宅中に何も言わずに自分の服を掴れた時は流石に驚いたライダーだったが、こうして理由を吐露された後、今の桜の要望に笑顔で答えていた。

 

「で、でも本当に内緒ですからね!?ライダーさんと一緒に寝たってバレたら兄さん達は…」

「コウタロウは何も言わないでしょうが…シンジは分かりませんね」

「うぅ…ライダーさんもそう思います?」

 

恐らく長兄は笑って甘えん坊だなと一言で済むだろう。だが、次兄はにやけ顔でからかってくるに違いない。

 

「大丈夫です。朝になったら私は霊体化して桜の部屋から離れますし、普段通りにしていれば誰も気にしません」

「はい…」

 

ライダーのフォローに申し訳なさそうに頭を下げる桜。その様子を見てクスリと笑ったライダーは彼女を視線に入れないよう眼鏡を外し、眼帯で両目を覆った。

 

「あれ?それを付けちゃうんですか?」

「念のため、です。桜を石化する訳にもいきませんし、それに…現界してから初めて眠りにつきますから、眠れる自信が…」

「えぇ!?じゃあ今までライダーさん、ずっと起きてたんですか!?」

 

桜は驚きのあまり身を乗り出してライダーに迫った。サーヴァントは現界に必要な霊核が無事であり、契約するマスターから魔力供給があれば基本的に疲労することはないので睡眠も必要ない。ライダーは召喚されてからは間桐兄妹が眠りについた後も屋敷の警備や情報収集を行ていたのだと言う。

 

「ええ。ですので、睡眠を取るという事自体が可能なのかも…」

「そうなんですか…でも、眠れたらきっと素敵な夢を見れますよ!」

「夢…ですか」

 

もし、見ることが出来るとしたら何時以来の事であろう。神話の時代、姉達と過ごしていた頃はよく夢を見れていた。内容は楽しい時もあれば怖い時もあり、後者であった場合は今の桜と同様に姉と同じ寝床に潜り込んだことをあった(直後に蹴り返されてしまったが)。

 

「夢の中でも、今のようにみんなと過ごせたら幸いですね」

「あれ?光太郎兄さんと二人きりじゃなくっていいんですか?」

「…サクラ、何を言っているんですか?私には理解出来ないません」

 

ライダーは眼帯越しに、既に頭を枕に沈めて寝る準備を整えた桜を見る。平静を装っているつもりであろうが、返答にしばしの間があった事と声がどこかぎこちないことを桜は見逃さなかった。

 

「いいじゃないですか…夢の中…くらい…す…な人…」

 

ライダーの反応に満足した桜は最後まで言い切れず、眠りについた。

 

「はぁ…貴方には敵いませんね」

 

桜の寝顔はとても穏やかなものだ。暫く眺めていると、自分の瞼が重くなってきた事に気付く。本当に眠気が催したようだ。

 

(本当に…夢で…見れるのなら…)

 

マスターの姿を思い浮かべたライダーの意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

現代で初めて眠りに付いたライダーは、彼女の希望通りに光太郎を夢で見ることになる。

 

 

 

 

 

 

それが光太郎の壮絶な過去を垣間見ることと知らずに…




と、いう訳で唐突に過去のお話となります。


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