Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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今回はかなりの捏造&こじつけとなっております。

不思議なことが起こった、ということで見て頂ければと思します…

では、30話です!


第30話『彼の記憶―覚悟―』

第30話

 

マキリ・ゾォルケン

 

彼が日本で間桐臓硯と名乗る前。

 

聖杯戦争を成立させる前。

 

蟲を使役して不死の体を手に入れるより前。

 

まだ魔術師として大成する前に、彼には一人の友がいた。

 

 

その男はゾォルケンと同じ魔術を学んでいたわけでもなく、それどころかお互いの素性もろくに知らず、名前すら呼び合ったことがなかった。

 

 

それでも、彼はゾォルケンの掛け替えのない友だった。

 

 

 

家督を継ぐ為に朝から晩まで独学で魔術の研究へ没頭していたゾォルケンの前に突然現れた彼はとにかく五月蠅かった。木陰で魔道書を読み耽るゾォルケンの横に座っては他愛のない話を続け、気がすんだら離れていく。

そんなことが何時から始まったのかは、ゾォルケン自身も覚えていない。当初は大半を聞き流していた為、唯一わかったのは、この男の家系が代々考古学者であり、勉強する傍らその辺りの発掘作業を手伝っているということだ。

 

ならば一生穴でも掘っていろ。

 

遂に我慢できなくなったゾォルケンがつい口に出した事に男はようやく反応したなと破顔一笑して前以上に話しかけるようになってしまった。

 

これ以上無視しても収拾が付かないと半ば諦めて相手を始めたゾォルケンだったが、彼が話す内容を聞いてみると思った以上に面白く、ゾォルケンが魔術以外の学問に初めて興味を抱いた程だった。それは常に自分という世界から踏み出そうとしない魔術師であるゾォルケンにとっては外界へ初めて触れる機会だった。

 

魔術を学ぶ傍ら、数日に一度現れるその男と談笑することがいつの間にか楽しみとなっていた。

 

そんなある日。いつものように話しつくした男が踵を返す前に次に会う時は世記の大発見を見せてやると豪語して去っていった。

 

彼の言う発見となれば、何かを発掘したということだろうか。どうせ使い古された壺の部類だろうと特に期待するわけでもなく、ゾォルケンも自分の屋敷へと戻っていった。

 

数日後、彼はいつの間にか待ち合わせ場所となっていた木の下にいた。

 

 

 

 

 

血だらけの腹部を手で押さえ、焦燥して駆け寄ってくるゾォルケンへ笑顔を向けながら、木に背を預けていた。

 

 

 

見れば腹部だけでなくから体中の至る所に傷がある。最初に目にした腹部は…致命傷だ。

 

そんな傷でどうしてこんなところに来たと怒鳴るゾォルケン。必死に治癒の魔術を施すが、未熟な彼には苦しみを引き伸ばすことしかできなかった。

彼がゾォルケンへと返した答えは、本当に彼らしい言葉だった。

 

ここで会う約束だろ?

 

ゾォルケンの目から何かが流れる。風前の灯火である彼には何一つ自分に出来ることはない。だから、せめて彼の言葉に耳を向ける。こんな状態になっても、彼の口は閉じることを知らなかった。

 

彼の見つけたものは今まで見たことのない物質と文字で描かれた石版であった。これが解読できればまた一歩、一つの文明が明らかになると家族、仲間たちと喜びを分かち合った。

ようやく解読の兆しが見え、その報告をゾォルケンへ聞かせようとしたその時、彼らを悪魔が襲った。

 

発見された石版に何が刻まれていたかは結局は不明なまま、彼の家族と仲間を皆殺しにした怪物によって、砕かれてしまった。余程知られたくない情報が載っていたのであろうか。

 

 

人間如きが我らゴルゴムを知ろうなど万死に値する

 

 

 

そう言って白いローブを纏った怪物が立ち去った後、誰かに知らせるべく立ち上がり、たどり着いたのがゾォルゲンのいるこの場所だったのだ。

 

ゾォルケンの手を掴む彼の指は冷たく、もうすぐ目を閉じようとしている。

 

彼が最後に口にしたのは忠告と、願いだった。

 

 

 

ゴルゴムには手を出すな。俺のようになる。

 

自分の夢を叶えてくれ。俺には出来なかったから。

 

そして、彼は眠りについた。

 

 

 

以前にも増して魔術を学ぶ傍ら、最後に彼が口にしたゴルゴムと呼ばれた者の正体を、ゾォルケンは必死に探っていた。家の財源を駆使して多くの歴史専門家を雇い、相手にされないと分かっていながらも魔術協会、聖堂教会にそれぞれ頭を下げて情報を貰えるよう懇願した。

 

結果、両者からには端から相手にされず、唯一得られた情報は、世界の歴史には常にゴルゴムの影が見え隠れしていたという専門家たちの報告だった。

 

 

ゾォルケンはこの時決意した。ゴルゴムという見えない悪によって彼のように命が奪われるなら、この世界から悪を滅してみせる。

 

例え今実現出来なくても、実現出来るまで、生き続ける。

 

彼の願いを、叶える為に。

 

 

 

「それが、始まりじゃ」

 

場所を蟲倉から冬木の街全体が見渡せる丘まで移動した間桐光太郎は、背中を向けたままである臓硯の話を黙って聞いていた。以前よりも痩せ細った臓硯は、出会った頃よりもさらに小さく見える。

 

「しかし、儂は…」

 

 

 

願望器である聖杯を再現させる為に極東の島国へと訪れ、間桐臓硯と名前を変えたゾォルケンは、理想を叶える為の一歩を踏み出せたと勇んでいたが、その過程で彼は歪んでいった。

 

時間の経過が彼の魂を次第に不安定なものにさせ、当初抱いていた友への誓いも、悪を憎む正義も忘却の彼方へと去り、彼に残ったのは人を苦しめることを悦とする歪な心と、他人の命を取り込み、ただ自分だけが生き延びるという欲望。

 

それが現代を生きる間桐臓硯の姿だった。

 

しかし、臓硯はある出来事を境に、外道となった彼らしからぬ行動を無意識に行っていた。

 

 

養子とした遠坂の次女を間桐家の属性である『水』に変えるために体を蟲を使っての『調整』をせず、ごく普通の少女として生活を過ごさせていた。

 

間桐の血を引きながらも魔術回路を持たずに生まれた慎二には、魔術師以外の道を選ばせるため幼いうちに敢えて事実を突き付け、選民意識を持たせないようにした。

 

特に前者の調整は外道となった頃の臓硯の趣向が強く、もし桜が蟲による調整という責め苦を受けていたとしたら桜は蟲なしでは生きられない操り人形となっていただろう。

 

 

なぜ、堕ちた蔵硯が孫たちに手を付けなかったのか。そのような温情をかけるような人間ではないことは蔵硯自身がわかっている。以前鶴野に『らしくない』と言われるまで気付くことすらできなかったのに、だ。

 

蔵硯がこのようになるきっかけとなった『出来事』に光太郎は目を見開いた。

 

 

 

「お主と出会った時…お主を食らおうと蟲を放った際に、無意識に体の内にある王石の光を放ったことを覚えておろう。あの光は蟲どもを葬っただけでなく、儂の魂にまで届いたようじゃ」

「――っ!?」

 

 

 

「まさか…キングストーンにそこまでの力が…」

 

2人の会話をずっと聞いていたライダーは2人の出会いを思い出す。ただ1人で逃亡生活を続けた果てに冬木にたどり着いた光太郎は、倒れている所に蔵硯に発見された。自決しようにもすぐ治癒してしまう光太郎の体内に何かがあると見抜いた蔵硯は、その『何か』を残して食い尽くそうと蟲を彼に向かって放つ。しかし、防衛本能が働いたキングストーンの赤い光は蔵硯の体を構成する蟲を次々を焼き払った。

 

そしてその時、光を浴びたのは蟲だけではなかったのだ。

 

キングストーンの光は、劣化した蔵硯の魂を本来の状態に戻そうと働きかけた。しかし百年単位で歪んだ魂に効果はすぐ発揮されず、蔵硯の人格を無意識に変化させることから始まったようだ。

 

さらに大きな引き金となったのが、光太郎が蔵硯に放った一言だった。

 

『お爺さんも、ゴルゴムなの?』

 

完全に記憶から消えたはずの名前が、心の底で燻るように蔵硯の脳裏で浮かんでは消え始めた。その正体を確認するために、蔵硯は光太郎を養子として迎え、情報を得る為に定期的に身体調査をさせていた。

 

光太郎に続けて桜を養子として迎え入れた頃から、蔵硯は魂の形が是正されるにつれて過去と現在の記憶がせめぎ合い、幻視と幻聴に苦しむようになっていた。

 

今の自分を悪だと否定する過去の自分。

 

過去の自分を愚か者と蔑む今の自分。

 

 

本当の意思はどちらなのか。そんな二重人格のような自分に苦悩する日々が続いていた頃、桜が養子となったと聞きつけた雁夜が帰国する。自分が聖杯戦争を参加させる代わりに子供たちを解放しろと

持ちかけて来た息子を見て、『現在の記憶』が打ち勝った蔵硯はそれから一年、雁夜を修行という名の責め苦を与え続けた。

 

雁夜が体内に刻印虫を宿す強引な修行は、蔵硯は自分に言い聞かせるように苛烈を極める内容となっていた。

 

そうだ。これが今の自分なのだ。過去の記憶など、理想など、今の自分には必要としないものだと。それが、今の間桐蔵硯なのだと。

 

だがその行為は、後に蔵硯をさらに苦しめる結果をもたらした。

 

 

 

第四次聖杯戦争の終結。

 

 

本来欲したものを自らの手で壊し、生きる屍となった雁夜は全てを手にした幻想を見て、蟲倉に落ちた。

 

その哀れな最期を見ていた蔵硯は次第に自分の手が震え、涙を流していることに感ずく。

 

蔵硯の行った雁夜への拷問と言っても過言でもない仕打ちが続いている間も、彼の魂は正しい形に戻りつつあった。あくまで今が本来の自分であると記憶を押し留め、誤魔化していたに過ぎず、彼本来の記憶は消えておらず、心の奥底で目覚めを待っていたのだ。

 

そして魂が完全に以前と同じマキリ・ゾォルケンの形となり、かつての理想をはっきりと思い出したのは、雁夜が完全に姿を消した直後であった。

 

「光太郎よ…儂は、笑っておった」

「……………」

「雁夜が…儂の血を引く者が壊れ、最後に蟲に食い尽くされている間…笑っておったのじゃ」

 

老人の肩がわずかだが、震えていた。さらに小さく見える老人に掛ける言葉が見つからない光太郎はただ、老人の話す事に耳を向けるしかなかった。

 

 

自分の出した犠牲者は雁夜だけではない。自分を延命するために多くの命を散らしたことに蔵硯は自責の念にかられた。数百年に及んだ自分の行いが一度に押し寄せ、亡き友への誓いも、理想も捨ててしまった自分は一体なんのために生きてきたのだろうか…

 

三日三晩泣き続け、悩み続けた蔵硯が戒めとして誓いを立てた。

 

二度と、人間を犠牲にしない。

 

自分の肉体が人1人を取り込まなければ維持できない状態だが、蟲倉に生息する蟲を凝縮して取り込み、維持する方法を考え出した。しかし、蔵硯の体として維持出来る期間は人間と比べて遥かに短く、蟲を取り込み続けても10年は持たない計算であった。

 

それでもいい。

 

自ら生み出した悍ましい『吸収』の魔術は自分で終わりにしよう。人という養分を絶った蔵硯の体は人の形を維持していたが、次第にやせ細り、蟲同士の結合が段々と合わなくなり、体にヒビが走るという形で現れていた。だがこうすれば着実に蟲を始末し、自分の命が絶えれば終わるのだから。

 

「それで朽ちていくことが、儂の末路と考えた。間桐の知識のみなら、慎二の奴めが理解できるしな」

 

かつては間桐家にそんな人間がいた程度にしか認識していなかった慎二の名を口にする蔵硯。その言葉はどこか暖かく、本心から慈しむように、聞こえてしまった。

 

光太郎の心は揺れていた。この老人の言っていることは、本当に真実なのだろうかと。余命が残り少ないために全てを自分に告げているのか。それとも、蟲倉で起きたことのように未だ自分の体を狙っているのか…そして次の老人の言葉に、光太郎はこれまで以上の衝撃を受ける。

 

「じゃが…そうも出来ない事態になっておる…ゴルゴムが活動を再開した」

「まさかっ!?」

 

予想出来なかった訳ではなかった。いや、今まで何も起こさなかったこと自体が奇跡に近い。幼い頃、光太郎と同じく改造された信彦によって大打撃を受けたあの基地も10年もあれば復旧するのに

充分な期間だろう。再び、あの悪魔たちが動き出したとしたら、どれ程の事件が起きるのか…

 

「奴らが…」

「だから…頼む光太郎よ」

 

戦慄する光太郎に対し、蔵硯の起こしたことでさらに光太郎は混乱する。

 

蔵硯は光太郎に対し、土下座をしていた。数百年に渡って生き、魔術の名門である間桐家の当主が、魔術師でもない光太郎に対して地面に頭を擦りつけ懇願していた。

 

「お主の力で、ゴルゴムを葬ってくれ。儂にはもう力も、時間もない。その為に、お主を利用した事も、そのために苦しめたことも重々承知の上じゃが…頼む!」

「…身勝手過ぎますよ!!」

 

対して光太郎は怒りをぶつけた。確かにこの老人にとっても、自分にとってもゴルゴムは憎むべき敵だ。ゴルゴムの出現を察知した蔵硯は対抗策としてに自分を追い詰め、黒い戦士へ変身できるようにしたのだろう。しかし…

 

「その為に慎二君と桜ちゃんを利用したのは俺は許せない!あのまま、俺があの姿になれなかったら、貴方はどうするつもりだったんですか!?」

「…………」

「答えてください!!」

『フフフ…随分面白い話をしているではないか』

「っ!?」

 

突如の乱入者に2人は声が聞こえた方へ同時に顔を向ける。既に夜となり、明かりも眼下で広がる街の街灯以外、月明かりしか相手を照らすものはない。森の奥からゆっくりと姿を現した相手は、昆虫のカミキリムシ思わせる姿だった。鋭い顎を持ち、ギョロリとした目で光太郎と蔵硯を見つめたままゆっくりと近づいてくる。

 

「その声…お前は!?」

『覚えていたか…間桐光太郎。いや、ブラックサンよ』

 

忘れるはずがない。自分と信彦を改造した3人の幹部のうち1人…ダロムがカミキリ怪人を通して話しかけているのだ。

 

『それに随分と懐かしい話を聞いた…まさか私が始末した連中の顔見知りがここにいるとはな』

「なんじゃと…まさか、貴様が…」

 

ワナワナと震えながら立ち上がる蔵硯を見て、カミキリ怪人の向こうに見えるダロムはあざ笑うようにその醜い口を開いた。

 

『そうだ。あの人間どもは愚かにも我らゴルゴムの聖地であった土地を掘り返すだけに飽き足らず、そこに眠る文献まで解読しようとした。人間如きがゴルゴムの情報を得ようなどと許されん!そのためにこの私自ら成敗したのだ』

「それだけ…それだけの為に、貴様はッ!!」

 

怒り心頭の蔵硯は身体に僅か残った蟲を放ち、カミキリ怪人に向けて一斉に向かわせようとしたが…

 

「我が友の仇!今こそ…」

『遅いわぁッ!』

 

地を蹴ったカミキリ怪人は飛び散った蟲の群を躱し、蔵硯の腹部にその腕をズブリと音を立てて突き刺した。

 

「むぅ…!」

「お爺さん!?」

 

蔵硯を突き刺したまま腕を大きく振るうカミキリ怪人。放り出された蔵硯は鈍い音を立てて光太郎の目の前に落下した。

 

 

「くっ…まさか…もう分裂出来ぬほどに力が衰えておろうとは…」

「お爺さん!大丈夫ですが!?」

 

本来、多くの蟲で身体が構成されている蔵硯は自分に直接の攻撃を受けた場合、『核』となる部分さえ無事であり、『養分』を摂取すれば死ぬことはない。しかし、長年にわたり餌を与えていない弱り切った蟲と、弱った『核』だけとなった今では体のダメージがダイレクトに『核』へと伝わってしまっていた。

 

蔵硯の体を起こす光太郎は、蔵硯の体が見た目以上に軽く、さらに腕、足が次々と崩れていることに気付く。

 

「お爺さん…貴方は、こんな身体で」

「カカカ…またその名で呼ばれようとは…儂は、お主を利用してあ奴らと戦わせ、ようとした悪党じゃぞ…?」

 

弱りながらも偽悪的な言葉を続ける蔵硯に、光太郎はかつて自分の手の中で息絶えた養父…秋月総一郎の姿が重なった。生き方も、性格もまるで違うはずなのに。養父と違い、目の前で弱っていくこの男は自分で言った通り多くの人間を犠牲にした悪い人間のはずなのに、光太郎の目には涙が溜まっていた。

 

 

『フンッ!死にぞこないが…』

「なんだとっ…」

『我らゴルゴムに逆らう者はそうなる宿命なのだ!そこの蟲も、その知り合いとやらも、この時代の人間もなぁ!!』

 

ダロムの言葉に光太郎の中で何かが切れた。

 

ゆっくりと蔵硯を寝かせ、立ち上がった光太郎は血がにじみ出るほど拳を強く握る。静かに、冷静を装いながらも、ダロムに尋ねた。

 

「お前たちは…昔からこんなことを繰り返しているのか?」

『何を当たり前の事を言っている。ゴルゴム以外の人間は、死ぬべきなのだからな』

 

ああ、そうか…こいつらは人を、人間をその程度にしか思っていないのか。それこそ『そこにいるから』というだけで。ゴルゴムを調べようとしただけで祖父の友人達を皆殺しにした。

きっとゴルゴムは、これからも犠牲者を出し続ける。明日を懸命に生きようとする事も、理想を持って生きる事など関係なしに、殺すのだろう。自分の家族を殺したように…

 

 

 

 

ふざけるな!!

 

 

 

 

「お前たちに…何の権利があってそんな酷いことをするんだっ!俺は…貴様たちゴルゴムを絶対に許さん!!」

 

 

右半身に重心を置き、両腕を大きく振るうと右頬の前で握り拳を作る。

 

ギリギリと音が聞こえる程込めた力を解放するような勢いで右腕を左下へ突出し、素早く右腰に添える。入替えるように伸ばした左腕を右上へ突き出す

 

 

「変っ―――」

 

 

伸ばした左腕で扇を描くように、ゆっくりと右から左へと旋回し――

 

「―――身ッ!!」

 

両腕を同時に右上へと突き出した。

 

 

光太郎の腹部にキングストーンを宿した銀色のベルト『エナジーリアクター』が出現し、光太郎を眩い光で包んでいく。

 

その閃光は光太郎の遺伝子組織を組み換え、バッタ怪人へと姿を変貌させる。

 

だがそれも一瞬。

 

エナジーリアクターから流れ続ける光はバッタ怪人を強化皮膚『リプラスフォース』で包み込み、黒い戦士へと姿を変えた。

 

 

左胸に走るエンブレム。触覚を思わせる一対のアンテナ。真紅の複眼。そして黒いボディ――

 

カミキリ怪人を通してその姿を見たダロムは狼狽えながらその名を口にする。

 

 

『な、なんと!?何時の間にその姿へなれるよになったのだ、ブラックサン!?』

「違う!俺は―――」

 

 

ダロムの使った名を否定した光太郎は、かつて義弟との話で登場した、戦士の名を思い出す。

 

自分は『彼ら』のような強さと誇りを持っているとは思えない。

 

しかし、目の前にいる悪魔を、絶対に許せない。そして、二度と自分や蔵硯のように、奪われる悲しみを広げさせない。

 

自分を家族である慎二と桜を――そして今を生きる人々を守るために、その誓いと覚悟を自分に負わせるために、光太郎は『彼ら』の名を借りた。

 

 

「俺は、仮面ライダー…」

 

 

 

「仮面ライダー、ブラックだッ!!」




本来死ぬはずの人物が救われるという話もあるように、たまにはキレイな蔵硯がいてもいいのではないかなと…

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