…今後はおいそれと出来ないなど書かないように気を付けます。
さて、お待ちかね。あの方が準備運動を始めました33話です!
間桐光太郎がアーチャーとの戦いを繰り広げていた一方、ゴルゴムの秘密基地では3神官が憂いな表情を浮かべ、人間1人が入れるほどの緑色をしたカプセルを囲んでいた。
そのカプセルから浮かび上がる輪郭は細部が異なるものの、仮面ライダーとなる前に光太郎が姿を変えていたバッタ怪人と酷似している。
「…度重なる失敗に、もはや創世王様のお怒りは抑えられん」
「その怒りを鎮めるためにも、我々は命を投げ出さねばならんのか…」
「それも…創世王様の決定です」
三神官はそれぞれが胸にかけている結晶へと手を伸ばす。
ダロムが持つ『天の石』
バラオムが持つ『海の石』
ビシュムが持つ『地の石』
ゴルゴムの幹部である証であると同時に、命の源である石を3人は戸惑いながらも掴み、カプセルへと向ける。すると3つの石は輝きを放ち、カプセルの上空に現れた機械へ吸い込まれるように組み込まれた。すると機械から発生したエネルギーがカプセルへと放射され始め、カプセル内に浮かぶバッタ怪人に似た者の目が怪しく光を放った。
「う…おぉぉぉぉ」
「あぁ…」
石を失い、苦しみだした3神官はその場で倒れてしまう。ダロムは石碑に背を預け、懇願するようにエネルギーを受け続けるカプセルを見つめていた。
「目覚めよ…もう一人の『世紀王』よ…」
その様子を物陰から伺っていた剣聖ビルゲニアは拳をワナワナと震わせていた。
「なぜだ…なぜ今更になって奴を目覚めさせようとする。このサタンサーベルを手にしている俺がいるというのに…なぜだ!!」
創世王の証であるサタンサーベルを預けられ、仮面ライダーのキングストーンを奪えば世紀王、そしていずれは創生王となり、世界を手にするはずなのに…もはや、『月』のキングストーンを宿す器でしかなかった奴を覚醒させなければならないのか…
もし、このままもう一人の世紀王が目覚めれば厄介な事になる。そう考えたビルゲニアは足早に離れていった。
(もはや一刻の猶予もない。あの小娘から聖剣を奪い、仮面ライダーを倒さねば…)
数日後
「…本気ですかコウタロウ」
「ああ、俺の過去を見ていたなら、俺が何のために聖杯戦争へ参加したかも分かっているだろう?」
「はい。ですが…」
「これは、聖杯戦争が始まる前から慎二君と話していたことでもある」
「………」
間桐家のリビングで向かい合い、光太郎の淹れたコーヒーを飲みながら今後の方針を話し合う2人。だが、光太郎の持ち出した内容に、どこか不安を抱くライダーは両手で持ったカップを見つめている。冷めかけた黒いコーヒーに映る自分の顔が、いかにも対面している相手を心配させてしまう表情を作ってしまっている。
案の定、その相手である光太郎は無理に明るい顔を作ってライダーへ声をかけた。
「元々慎二君からも否定的な意見しか言われてなかったし、俺も絶対に上手くいくとは考えてない。けど、可能性があるなら、諦めたくないんだ」
「コウタロウ…」
アーチャーとの激闘を終えた帰り道。光太郎とライダーはお互いの過去を夢で見たことを打ち明けた。
お姉さんに甘えるライダー、可愛かったね。や、
コウタロウは随分とモテたのですね…など
お互いの過去に負った傷に触らぬよう気を使った結果、それぞれ別の意味で触れられたくなかった部分を抉り合いながら2人は聖杯戦争の最大の目標である聖杯についての話となり、現在に至っている。
聖杯に託す願いを元より持っていなかったライダーは光太郎が成そうとする事には賛成していた。本心を言えば、聖杯を光太郎の望むものに利用してもらいたかったが、あの時臓硯の言った通りならば、光太郎は決して聖杯を使おうとしない。いや、例えそうでなくてもここにいる間桐光太郎という男は自身の願いがあったとしても自分で叶えようとする性分だ。
ならば、マスターである光太郎を全力でサポートをするのがサーヴァントである自分の役割だと意気込んでいたのだが、先の方針を聞いてマスターの正気を疑ってしまった。
戦いの時もそうだが、何故こうも無茶な方へと足を進めてしまうのか。心配するこちらの身にもなってもらいたいと溜息をついて、ライダーはコーヒーを啜った。
「ライダー…?」
「いえ、なんでもありませんよ。コーヒー、相変わらず見事な味ですね」
「あ、ああ。どうもそれくらいしか上手くいかなくってさ」
「また、ご馳走して頂けますか?」
「こんなものでよければ、いつでもね」
先程の重い空気から一変して笑い合う光太郎とライダー。どうにも後ろ向きになってしまう状況だが、この人とならば大丈夫。何の根拠もなしにそう思えてしまう自分も問題だなと思いつつも、無条件に光太郎を信頼できる自分も悪くないなと、コーヒーの話を続けるマスターの顔を見つめる。そう考えていたことに没頭していたためか、ライダーは自分達以外に室内へ現れた存在に気付けなかった。
「…そろそろいい?」
「あ、慎二君に桜ちゃん、お帰りなさい!」
「……っ!?」
思わず立ち上がったライダーの目には自分へ冷ややかな視線を送る慎二と口元を押さえながらニッコリと笑顔を向ける桜の姿があった。
「シンジ、サクラ…い、何時からそこに…」
「…光太郎のコーヒーを褒めてる辺りから。よく飽きないね、何分もそんなにやけ顔を見続けて」
恐る恐る尋ねるライダーへ、慎二はだるそうにショルダーバックをソファーに降ろしながら答えた。
「仕方ないですよねライダーさん!『夢中』だったんですものね?」
背後からライダーの両肩に手を置いて彼女の顔を覗き込む桜はフォローをしているつもりであろうが、逆にライダーが両手で顔を覆い隠す状況と追い詰めてしまった。
「…もしここにいたのが僕達じゃなくて敵だったらどうするって話なんだけど。まぁいいや」
ライダーからグサリとなにかが突き刺さる音が聞こえた気がするが、慎二は気にせず光太郎へと顔を向ける。
「やっぱりあそこには『人』として潜り込んでるみたいだね。遠回しに聞き出すのに苦労したよ」
「じゃあ…」
「ま、続けて話を聞きに行くよ。ったく、せっかくの休校中なのにお勤めとは生真面目な奴だよホント」
頷いた光太郎は桜へと視線を変える。
「…姉さんは特に変わった様子はありません。なにか、先輩への魔術指導に問題が発生したようでしたが…先輩はセイバーさんとの鍛錬に一層力をいれてるみたいです。一度様子を見たんですけど…ひどく焦ってるようにも見えました」
落ち込むライダーの頭を撫でながらも、衛宮家の状況を報告する桜。彼の焦りというのは、アーチャーの言っていた『悪影響』が原因なのだろうか…そして最後に告げた内容に、光太郎の目が細まる。
「先輩のお宅を出る際に私を外まで送り出してくれたのはセイバーさんでした。少し歩いて後を向いたら、セイバーさんがいつの間にか手紙みたいなものを見て凄く、難しい顔をしてました」
「………」
顎に指を当てて考える光太郎に、同じ予感を抱いていた慎二が口を開く。
「…ビルゲニアか?」
「あぁ。以前あいつは、明らかにセイバーを…彼女の持つ武器を狙っていた。その手紙もセイバーを誘い出すか、奪いに行くといった内容に違いない。けど…」
学校での戦いで撤退知る際にセイバーに向かい、必ず彼女が持つ剣を奪って見せると宣言したビルゲニア。
自分の目的のためならば手段を選ばないビルゲニアがそのような単純な手段に出ることが思えない。それとも、手段を選んでいられないのだろうか…
「しかし、それが単なる果たし状の類であるならば、なぜセイバーは悩んでいたのでしょう」
復活したライダーの意見も気になる事であった。彼女を揺さぶりをかける程の手段をビルゲニアは持ち合わせているのか…?
「…ともかく、今夜は俺とライダーは衛宮君の家付近を回ろう」
「わかりました」
「慎二君と桜ちゃんは家で待機してくれ。それと慎二君。念の為、俺たちが出発してある程度時間がたったら衛宮君に連絡を取ってくれないか?様子を知りたい」
「夜中に野郎へ電話するなんて、色気のないことだね」
「そう言わないで。桜ちゃんも衛宮君とお話したいところだろうけど――ッ!?」
憧れの先輩との夜に電話という機会を逃し、シュンとする桜をなだめようとした光太郎を突然頭痛が襲い、額を押さえて膝を付いてしまった。
「コウタロウッ!?」
「兄さん!大丈夫ですか!?」
「おいおいどうしたんだよいきなり!」
駆け寄った全員に体を支えられてなんとか立ち上がる光太郎。見れば額から大粒の汗が流れている。
「おい、本当に大丈夫なのかよ?」
「…はは。ちょっと昨日遅くまで起きてたからね…夜まで少し休むから慎二君、悪いけど…」
「部屋まで送りゃいいんだろ?ったく、驚かしやがって…」
悪態を付きながらも義兄に肩を貸した慎二はゆっくりと光太郎を部屋へと送っていった。
その後姿を心配そうに見つめるライダーを励ますように、桜は笑顔で大丈夫と声を張った。
「最近夜更かしすることが多かったからそれが祟ったんですよきっと。あれだけ早く寝るように言ってるのに兄さんったら…」
義兄の生活態度のダメ出しをする桜。だが。彼女は力いっぱいに、自分のスカートを握りしめている。
笑顔の裏でここまで兄を心配している。きっと自分の不安がライダーにまで伝わらないようにと気を張っているのだろう。そのような気丈に振る舞う桜をライダーはそっと抱きしめる。
「ライダーさん…?」
「本当に…いけない人ですね。こんなに優しい妹を心配させてしまうのですから」
「ほんとうに、そうですよ…何で、いつも弱音を言ってくれないんですか…」
(コウタロウ…貴方の身に、なにが…?)
これまで戦いで大きな怪我を負っても慎二と桜の前では笑って済ませていた光太郎。昨晩のアーチャーとの戦いが影響したとしてもあれ程弱った姿を見せるなど初めてだった。ライダーは蓄積したダメージとは別の原因が、彼に現れたのではないかと嫌な予感を抱いた…
自室のベットで横になった光太郎は、先程発生した頭痛と同時に、自分の頭に送られたメッセージを掠れるような声で口にした。
誰に送られたかも分からない。しかし、その名は光太郎に取って決して忘れられない名前となるものだった。
「世紀王…シャドームーン…」
数時間後
回復し、目を覚ました光太郎は予定通りに衛宮家周辺へと向かった。
しかし、事態は既に動いており、新都の高層ビル屋上では、セイバーとビルゲニアが対峙していたのであった。
楽しみにしていた方々、お待たせいたしました。
ご意見・ご感想おまちしております!