Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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ついに現れた極アームズ。やはり最強フォームになり続ける事での弊害が・・・?

気になって仕方がないですね。

場面の切り替わりが多目の34話でございます


第34話『月下の王』

日は沈み、外灯が街を照らし始める頃、セイバーはただ1人で、新都のオフィスビルを目指していた。

 

数時間前、家を訪ねていた間桐桜を送り出し、門を潜ろうとした直後、セイバーに向かってナイフが投擲された。後頭部に当たる直前、振り返ると同時に指二本でナイフを受け止め、飛んできた方へと目を向けるが、気配はすでにない。

 

「これは…?」

 

ナイフの柄に紙が結んである事に気づいたセイバーは周囲を警戒しながら紙を解いていく。その紙はビルゲニアが記したセイバー宛の果たし状であった。

 

内容は、セイバーが応じなかった場合に起こす行動と、彼女が動かざる得ない情報が記されていた。

 

「………」

 

せめてマスターである衛宮士郎に伝えるべきかと悩むセイバーであったが、彼は友人の兄であり、ライダーのマスターである間桐光太郎との共同戦以来一層セイバーとの鍛錬に励むようになっていた。セイバーにとっては喜ばしいことではあるのだが、彼の繰り出す攻撃には『焦り』しかなかった。

 

より強くなり、自分の夢へと近づきたい。セイバーとしてもマスターの抱いている理想は共感できるものだ。だが、聖杯戦争という魔術師同士の殺し合いとゴルゴムと戦い続ける間桐光太郎という存在が、彼がどこかで望んでいた状況を造り出し、一秒でも早く強くなり夢を実現させようとしているのではないか…

 

士郎は強くなれる。しかし、今日明日で叶うことではない。さらに誰かのためならば簡単に自らの命を投げ出す彼の性分を以前から危惧していたセイバーはマスターへ伝えず、単身ビルゲニアの元へ向かうことを決めたのであった。

 

 

 

ビルゲニアの指定したオフィスビルへと入り、催眠術にかかった警備員の誘導により屋上まで稼働するエレベーターの中でセイバーは改めて送られた果たし状、セイバーから

見れば脅迫状と変わりない内容にもう一度目を通す。

 

「聖杯…か」

 

ボソリと呟いたと同時に、エレベーターは最上階へと到達した。

 

 

 

一方、間桐家では魔道書を読み耽っていた慎二はふと時計を眺める。

 

「そろそろ衛宮の家に近くに着いた頃か」

 

体調が回復した義兄と彼のサーヴァントは衛宮家…そこに住まうセイバーのサーヴァントを狙ってゴルゴムが動くと予測して見張りに向かっていた。だが、衛宮家には結界が張り巡らせており外見だけでは光太郎の超人的な視覚、聴覚でも把握できないこともある。そこで慎二が士郎に電話をかけて上手く敷地内の情報を聞き出し、光太郎達へ伝える手筈となっていた。

 

(衛宮の奴、なんで今時携帯の一つも持ってないのかね)

 

通じるのは家にある黒電話のみと聞いた時はギャグとしか捉えていなかったが、遊びに尋ねた際に実物を目にした慎二は後日、メーカー別のカタログを士郎へ投げ渡したが、未だに購入した様子は見られない。

 

(まさか、魔術師は近代の機器を嫌ってる所を真似てるわけじゃないよな…?)

 

そんなことを考えなら携帯電話を操作し、コール音が響くこと数回。目的の人物へどうアプローチを取ろうかという悩みはすぐに打ち消されてしまった。

 

「ようえみ―――」

『その声は慎二か!?すまないが、セイバーがどこに行ったか知らないか!?』

「……………」

 

どうやら手遅れだったと声を聞いて判断した慎二は、電話の向こうで焦る士郎に可能な限り知りえることを聞き出すことにした。

 

その日の夕食、珍しくお替わりどころかおかずを残して自室に戻ったセイバーを不思議に思った士郎は、おかずを更に作り足してセイバーの部屋を尋ねたらしい。

だが、その時にはセイバーの姿は部屋になく、他の部屋にも見当たらない。居候中の遠坂凛に聞いても知らないと言う。

 

「おい、遠坂のサーヴァントは何してたんだよ。常に見張ってるはずじゃなかったのか?」

『そうなんだけど、何日か前から遠坂の家の大掃除をさせてるらしいんだ。なんでも遠坂が寝てる間に魔力を勝手に消費したとか…』

「なんだよそれ…」

 

監視が役に立つここぞという時になぜでそんな指示を出すのか…だが気にする時間も惜しいと慎二は2.3言葉を交わした後に電話を切り、直ぐに義兄へと連絡を取った。

 

 

「そうか…ありがとう慎二君!」

「…どうやら私達は後手に回ってしまったようですね」

 

慎二との通話で事態を察したライダーの言葉に頷く光太郎。もはやここにいても意味をなさない。急ぎビルゲニアのいる場所へ向かったセイバーを探しに行こうとしたその時であった。

 

「…っ!?あれは!!」

 

月に映る2つの人影…いや、腕に羽を持った異形が気を失った人を足に吊るしてこちらを見下ろしている。

 

「…ゴルゴムのコウモリ怪人!!」

 

光太郎がコウモリ怪人の存在に気付いた途端、コウモリ怪人は移動を開始する。捕まっている人間…女性のようだが目を覚ます気配がない。

 

「くっ!こんな時に…ライダー!!君はセイバーの方を頼む!俺はあの人を助けに行く!」

「承知しました!!」

 

指示を受けたライダーはその場から離れ、セイバーの捜索に向かった。光太郎は予め乗ってきたロードセクターに搭乗し、走らせると同時に腹部へベルト『エナジーリアクター』を出現させる。

 

アクセルを回し、段々とロードセクターを加速させながら、光太郎は右腕を左下へ突出し、素早く腰へ添えると入れ替わるように左手を右上へと突き出した。

 

「変っ―――」

 

扇を描くように突き出した左腕を右から左へ旋回し…

 

「―――っ身!!!」

 

咆哮と共に両腕を右上へと突き出した。

 

 

さらに加速するロードセクターのハンドルを強く握る光太郎―――仮面ライダーブラックは頭上を飛ぶコウモリ怪人を追い、疾走していった。

 

 

 

 

 

「よく来たと褒めておこうか、可憐な王よ」

「………」

 

ビルの屋上でビルゲニアと対峙するセイバー。ビルゲニアの軽口など耳に通さず、セイバーは本題に入るべく果たし状に記された内容を確認する。

 

「…ビルゲニアよ。この文に書かれていることを今一度確認したい」

「む?」

「まず一つ。私と一対一の決闘。この場には私と貴様しかいない…違いないな?」

「無論だ。気配が読めない貴様ではあるまい」

 

ビルゲニアの言う通り、ビルの屋上にはビルゲニア以外に怪人が息を潜めている様子は見られない。だからと言って目の前にいる悪党を信用知ずに、警戒しながら確認を続ける。

 

「私が応じなかった場合、シロウとリン…そして帰宅中のサクラに怪人を差し向けるという脅迫。私がここに来た時点で取り下げているな」

「ああ。監視させていた怪人は既に小僧の家から離れている。今は別件に当たらせているがな…」

「…?」

 

ニヤリと笑うビルゲニアの言う『別件』が何を指すのか理解できないセイバーだが、マスター達から脅威が離れたと今は信じるしかない。

 

「最後に…呼び出しに応じたら聖杯についての情報を教えるとあった…これも―」

「クハハハハハ…」

 

セイバーにとって、大望を叶える為には絶対に必要とする聖杯。その情報を開示すると果たし状の最後に書かれていたのだが…

 

「ここに誘い出すために、ついでとして書いただけなのだが、まさか信じられていたとはな!随分と真面目な奴だ!ハハハハハ」

「やはり、か…」

 

高笑いするビルゲニア。セイバーとて敵の戯言としか捉えていなかったが、少しでも聖杯に繋がる情報が知ることが出来るのであればと、期待を抱いてしまった。

 

「だが、このまま何も知らずに剣を失うのも憐れ。少しは教えてやろうではないか」

 

サタンサーベルを出現させ、さらに腰に下げていたもう一振りの剣…修復されたビルセイバーを引き抜く。

 

「この地に現れる聖杯には貴様の願いは叶えられん…絶対にな」

「なっ!?どういうことだッ!?」

「ククク、貴様の剣を素直に差し出せば、教えても構わんがな」

「…どうやら、貴様を倒して聞き出すほか無いようだ」

 

あくまで挑発的な態度を崩さないビルゲニアに対してセイバーは静かに告げ、銀色の甲冑と不可視の剣を顕現させた。敵は聖杯について知っている。その情報を得るためにも、戦うしかない。セイバーは両手で剣を構えた。

 

 

 

 

 

間桐邸では慎二がパソコンと睨みあっていた。画面は冬木の街の地図を展開しており、その上で赤い点滅するアイコン…光太郎の現在地を知らせる点が段々と街から遠のいている。

 

(なんだ…?セイバー達も移動してるってのか…)

 

推測する慎二の横で携帯電話から着信音が響く。画面から目を離さず手を取り、画面を見ると義兄と共に外へ出たライダーからであった。

 

光太郎以外との通信手段として昨日から持たせたものだったが、こんなにも早く使いこなすとは…桜の実姉にも見習ってほしいところだった。何かあった場合には光太郎から連絡を受けるはずになっていたが、ライダーからの連絡となると余程の状況ということなのか…通話ボタンを押すと、前振りなしにライダーが簡潔に話を始めた。

 

『慎二ですか?状況を伝えます』

 

ライダーから伝えられた内容を聞いた慎二は光太郎の移動方向を現す画面で地図を拡大する。もしこれがゴルゴムの作戦のうちであるならば…

 

「ライダー、急いで新都へ行け。そっちにセイバーがいる可能性が高い」

『それでは光太郎が追った怪人とは逆方向では…?」

「それがあっちの狙いだ!反対方向にやっかいな光太郎をおびき寄せる…それが狙いだ」

『わかりました』

 

電話は直ぐに切られた。ある程度範囲を絞れば同じサーヴァント同士の気配を感知して見つけられるはずだ。あとは、愚兄が早く怪人を片付けて新都へ向かってもらう事。そして…

 

「…伝えるだけ、伝えておくか」

 

言った後、どのような行動に移るか手に取るように分かる。しかし、伝えずに妙な行動をとられるよりはマシか…と、慎二は発信履歴の画面にある『衛宮士郎』の名を眺めた。

 

 

 

 

 

 

「…追いついた!」

 

ロードセクターでコウモリ怪人を追っていた光太郎はジャンプすれば届く距離まで迫っていた。ロードセクターを自動操縦に切り替えた後、シートを足場にそこから高く跳躍。コウモリ怪人の後頭部に手刀を叩き込んだ。

 

「ギギィっ!?」

 

奇声を上げて吊るしていた女性を離してしまうが、光太郎は落下しながらも女性を抱え、何とか着地する。

 

「…随分遠くまで来てしまったな」

 

辺りを見渡すと冬木から10㎞以上離れた場所にいるようだった。変身を解除して女性を起こそうとした光太郎だったが、身を裂くような殺気が女性から発せられた。

 

「シャァッ!!」

「くっ…!?」

 

気を失っていたはずの女性が突如光太郎の首めがけて、爪を立てた腕を振るってきたのだ。間一髪、女性を手放し回避した光太郎はゆっくりと立ち上がる女性…否、正体を現した怪人の姿を見た。

 

纏っていた衣服だけでなく、皮膚を裂いて姿を現したのはクロネコ怪人。フシュー…と息を吐きながら鋭い爪を光らせ光太郎に迫る。尽かさず構える光太郎は自分の背後に着地したコウモリ怪人が先程の攻撃を返してやると言わんばかりに羽を震わせている。

 

「…まんまと引っかかったってところか」

 

光太郎が自らの失態をぼやくと同時に、2体の怪人が襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアァァァッ!!」

「うっ…くぅっ!!」

 

ビルの屋上ではビルゲニアとセイバーの激戦が続いていた。

 

前回での戦いでセイバーの間合いを把握していたビルゲニアはセイバーに反撃する隙を作らぬように次々と攻撃を繰り出す。サタンサーベルとビルセイバーを交互、または同時に振るうことでセイバーは防戦一方となってしまっている。距離を置いた途端にビルゲニアは剣を交差させ、「サタンクロス」なる破壊光線をセイバーに向けて放ってくる。

 

「ハハハハ…どうした?先程から避けてばかりだぞ!その剣は飾りなのか?そうであるならば尚更俺が持つべきであろうな」

「………はぁッ!!」

 

地を蹴って間合いに入ったと同時に不可視の剣を横薙ぎ振るうがサタンサーベルのみで受け止められ、残るビルセイバーがセイバーの喉目掛け、突きを繰り出してくる。無理矢理首を曲げることで回避するが、ビルゲニアは間髪いれず、セイバーの胴体に蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐっ…!!」

 

吹き飛びながらも着地したセイバーは立ち上がろうとしたが剣を杖にして倒れずにいることが精一杯であった。

 

「…どうやら貴様は魔力の補給がままならない…いや、供給すらされていないようだな。このまま消滅を待つのもいいが剣まで消えてしまったら本末転倒。そろそろ貴様から――」

「何故だ?」

「む?」

「なぜ、これほどの力を持ちながら更に力を求める?いや、お前は…」

 

 

 

「何に怯えている?」

 

 

 

セイバーの言葉にビルゲニアの表情が固まった。顔には余裕が見られても先程からの攻撃は早期に決着を付けようと一撃一つ一つに無駄な力が籠っている事をセイバーは感じていた。まるで、鍛錬中のマスターのように、攻撃に焦りが見えた。

 

「俺が、怯えているだと?何故そんなことが言える!?」

「…貴様は、私の剣を奪う為にここまで呼び寄せた。だが、シロウの学校での事を見る限り、貴様は策略を練って挑むのが本来の戦法のはずだ。それがまるで何かに迫られているように事を急ぎ、私と戦っている…私の剣を奪取し、力を持たなければ貴様の中で何かが崩れる…だから」

「黙れぃッ!!」

 

怒号と共にサタンサーベルから飛来した雷撃を不可視の剣で弾くセイバー。やはり、図星を突かれ動揺しているようだ。

 

「黙れ…俺に怯えるものなどない…ありはしない!俺は創世王となり、この世界を手に入れる存在なのだぁ!!」

 

セイバーに駆け寄り、2つの剣で同時に振り下ろすビルゲニア。しかし、サタンサーベルは不可視の剣に止められ、ビルセイバーはセイバーの手によって刀身を握られてしまった。

 

「なんだと…!?」

「それほど動揺するとは…貴様が恐れている相手は余程の存在なのだな」

 

青い瞳に映るビルゲニアは自分自身の姿を見る。そこにいるのは自分自身とは思えぬ程に焦燥しきった顔であった。その背後に、自分を脅かす存在が迫るという幻想が見えてしまうほどに。

 

 

「貴様に…貴様に何が分かる!?」

 

後方に飛んで距離を置いたビルゲニアは叫んだ。

 

「ただ剣を引き抜いた…それだけで王となった貴様に俺の怒りが分かるか!!時期がずれて生まれた…それだけで創世王どころか世紀王にすらなれなかったこの屈辱が!!」

「………………」

「俺は、俺は必ず創世王となるのだ!そして、俺を見下した連中を全て屈服させ、俺という存在を認めさせるのだ…」

「無理だ、ビルゲニアよ」

 

再びセイバーの言葉に興奮していたビルゲニアの動きは止まる。月が雲で覆われているためか、セイバーの表情は良く見えない。

 

「貴様が私から剣を奪い、力を得ようが、王になろうが…貴様の望みが叶うことは…ない」

「何だ…何を言っている!!」

 

先程の聖杯についての問答をこの場で返しているつもりなのか?しかし、セイバーの声にはこちらを貶めるような意図は見えず、まるで自分を窘めるように。言い聞かせるように。そして悲しそうに口を開いた。

 

「例え絶大な力を持とうが、自分以外を否定し続け、誰も受け入れなければ…王に待っているのは…」

 

 

 

 

 

「孤独…だけだ…」

 

 

 

雲が晴れ、ビルゲニアの目に映ったセイバーの顔は、自分への、憐みしかなかった。

 

「だ、黙れ…黙れ黙れ黙れえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

剣を頭上で交差させるビルゲニア。再び破壊光線を放つかと構えるセイバーだったが、これまでと様子が違うことに目を細める。見れば交差したサタンサーベルとビルセイバーの刀身の間に小さなエネルギーの球体が生成されている。球体は段々と巨大になり、バスケットボールほどの大きさまで膨らんでいた。

 

「これは…一体」

「ハハハハ!仮面ライダーを倒す為に生み出した最後の手段を貴様にぶつけてやろうというのだ…ありがたく思え!!!」

 

球体の肥大化は留まることをせず、今やビルゲニア本人よりも巨大になっている。そして余程の圧力が周囲を覆ているのか。ビルゲニアが纏っている甲冑にも所々にヒビが走り、足場などいつ崩れ落ちてもおかしくはない。

 

「バカな…それほどの力を放てば…自分すらも…」

「もはや貴様が持つ剣などいらん!この場で、街ごと消滅させてくれるわぁ!!」

「くっ…このままでは…」

 

あれ程のエネルギー量。ビルゲニアの言う通り、ここで放てば自分やビルは勿論、周囲など跡形もなく吹き飛んでしまう。こうなれば上空に飛んで、せめて街への被害だけは避けようと

したセイバーであったが…

 

「セイバー!!大丈夫か!?」

「シロウ!?なぜここに!?」

 

突然の乱入者…衛宮士郎が屋上の扉を開いて現れた事にセイバーは油断してしまった。これを好機にとビルゲニアはセイバーと士郎に向けて巨大な球体を放った。

 

「くらえ!!ダーク・インフェルノオォォォォォ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライダーァ!キィック!!」

 

 

エネルギーを纏った右足を叩き付けられたクロネコ怪人は断末魔と共に燃え上がった。

 

「さぁ!残るは…!あれ?」

 

クロネコ怪人の消滅を確認した光太郎が振り返ると、コウモリ怪人は撤退した後であった。深追いしている時間はないと判断した光太郎はロードセクターに搭乗しようとしたが…

 

「なんだ…?」

 

赤い輝きを宿すはずのエナジーリアクターの中心が一瞬、『緑色』の光を放ったのだ。これまでにない現象に、胸騒ぎがした光太郎は急ぎ元来た道にロードセクターを疾走させる。

 

(これは…まさか)

 

 

 

しばし時間は遡る。

 

 

(セイバー…無事でいてくれ!!)

 

慎二からセイバーは新都に向かった可能性が高いと聞いた士郎は凛の声に耳を貸さずに家を飛び出していった。捕まえたタクシーで新都まで移動し、辺りを全力で走りながら自分のサーヴァントの姿を探す士郎は汗を拭いながら妙な気配を感じた。

 

「ここは…?」

 

自分が立つ背後では多くの人間で賑わっている。しかし、目の前の通りから人どころか街灯すら燈っておらず、周りの人間誰一人それを不思議に思っていないのだ。

 

「人避けの…結界か?なら――」

 

何の躊躇もなく結界に踏み込んだ士郎の足に妙な感覚があった。アスファルトで固められている地面が、なぜこんなにも『柔らかい』のか?

 

「これは…砂?」

 

辺り一帯に広がる砂。それも撒かれたものではなく、掘り返されたものだ。一体誰がと見渡す士郎の目に見知った人影があった。

 

「ら、ライダー!!」

「来ないで下さい!!」

 

近付こうとした士郎は一括されその場で立ち止まってしまう。見れば砂だらけのライダーは手に武器を持ち、一歩も動こうとしていない。一体何がと考えた士郎の足元を襲う振動。

直後、地面の砂から2体の怪人が飛び出し、ライダーへ襲いかかったのだ。ライダーは前方に転がって何とか回避するが怪人は再び地中深くへ潜ってしまった。

 

「シロウ…なぜこんな所へ?人避けの結界を張ったはずですが…」

「あれは、ライダーが張ったのか…そうだ!セイバーのこと――」

 

知らないかと聞き出そうとする前に、士郎は振り返る。そのビルの屋上から感じる、大きな力同士の衝突…間違いなく、ここにセイバーがいる。

 

「ライダー。すまないけど」

「言わずとも分かっています。それに、これは元々私の戦いです。気になさらないでください」

「―――すまない!」

 

士郎はライダーに一度頭を下げると、ビルの中へと駆けて行った。それを見送ったライダーは一度溜息を付くと周囲を見渡す。一足先にセイバーを発見したライダーに襲いかかった2体のアリジゴク怪人は自分を口から発射した粘液で地面に落下させた後にアスファルトで張られた地面を一瞬で砂に変えてしまい、攻撃を仕掛けては再び地面に潜る戦法を繰り返していた。

 

一度浮上してくるまで全く気配を見せない怪人達に苦戦するライダーだったが…

 

「準備に時間が掛かってしまいましたね。ですが、おかげでシロウが巻き込まれることはなくなりました」

 

もし発動した後に彼が現れて何かがあった場合、桜に申し訳が立たない。

 

「ですが、これで終わりです―――」

 

 

ライダーが唱えたと同時に彼女を中心に展開された巨大な魔法陣。その影響下の為か、空間一体が『真っ赤』に染まっている。

 

『他者封印・鮮血神殿』

 

魔術師でなければ抵抗すら出来ずに溶かし、術者の養分としてしまう彼女の宝具の一つだ。ライダーはアリジゴク怪人の攻撃を回避しながらこの大結界を展開するための準備をしていたのだ。

 

「…私には光太郎から送られる魔力がある。貴方達などの食す必要などありません。ですが…」

 

足元で何かがもがき、苦しんでいるように砂が振動している。

 

「骨も残さず、消えてもらいます」

 

 

 

 

 

最上階に到着した士郎は急ぎ、屋上の扉を開く。そこには探していた自分のパートナーの姿があった。しかし、セイバーが対峙していた相手から放たれた力の塊の圧力に吹き飛ばされそうになってしまう。そんな自分の様子を見て何かを決意したのか。セイバーはビルゲニアが放った攻撃の前に立ち、剣を握る手に力を籠めた。

 

 

 

 

風が起きた。

 

 

 

それもセイバーが構える剣を中心に強い風が巻き起こり、不可視だった剣が輪郭を現していく。

 

 

 

 

やがて完全にその姿を現した黄金の剣を振りかぶったセイバーはその名を告げる。

 

 

 

「約束された――――」

 

 

ビルゲニアのダーク・インフェルノの力を押し返すほどの光を、その剣は放った。

 

 

「―――勝利の剣!!!」

 

 

 

 

「ば、バカなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

光はダーク・インフェルノだけではなく、放ったビルゲニアをも飲み込んでいった。

 

 

 

 

目を開けた士郎が見たのは静寂に包まれたビルの屋上。そして魔力を使い果たし、ゆっくりと地面へ沈むセイバーだった。

 

「せ、セイバアァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

セイバーの宝具を真正面から受け、ボロボロとなったビルゲニアは裏路地を片足を引きずりながら進んでいた。

 

「俺は…俺は…あんな小娘に負けた…創世王となる俺が…」

 

セイバーに敗れた事が余程の衝撃だったのであろう。ブツブツと呟くビルゲニアの目には生気が宿っていなかった。手にしていたビルセイバーは再び真っ二つに折れしまっている。

そして歩き続ける度に、唯一傷一ついていないサタンサーベルを握る手の力が弱まり、ついにサタンサーベルを手放してしまった。

 

ビルゲニアの手を離れたサタンサーベルが地面に落下する直前にピタリと止まり、一人でに浮遊するとビルゲニアの後方に立つ者の手に握られた。

 

 

 

「創世王の気まぐれとはいえ、授かっていたゴルゴムの聖剣を地に落とそうとするとは…」

 

手をゆっくりとビルゲニアに向けると、緑色をしたエネルギーが指から生成されていく。

 

「万死に値する」

 

エネルギーをビルゲニアにぶつけようとしたが、手を下ろしたと同時にそれは消失した。

 

 

「…まるで魂の抜け殻、だな。あの様な者、殺すにも値しないか」

「なるほど。貴様が片割れということか」

 

突如耳に届いた声に、ゆっくりと振り返る。

 

月で照らされたその姿は変身した光太郎と似ていた。

 

だが、生物的な外見をする光太郎と反し、全身をメカニックなボディで包み、両肘と両足には禍々しい黒い棘を宿している。そして光太郎と同じエナジーリアクターに『月』のキングストーンを持つ彼こそがもう一人の世紀王であった。

 

 

「…貴様は、情報にあった前回の聖杯戦争から生き残ったサーヴァントか」

「口の聞き方に気を付けよ『器』。今貴様が目の前にしているのは同じ地を踏んでやっているとはいえ、この世の王なのだからな」

「ほう…いずれ世界を征服する王である私の前でそう名乗るとはな…」

「…二度とは言わんぞ?」

 

世紀王と対立する金髪の青年は笑いながら自分の背後に幾つもの武器を出現させる。対して世紀王は動じる事なく手にしたサタンサーベルの切っ先をゆっくりと青年へと向ける。

 

暫く張りつめた空気が漂っていたが、それを崩したのは青年だった。武器を収納すると振り返り、その場を離れて行った。

 

「まぁいい。貴様と一戦交えるのまた一興と思ったが、ここで消しても面白くない。それに、貴様の相手はまだ成長の過程にある」

「…逃げるのか?」

「我が見逃してやるのだ、勘違いするなよ?今日は再び『星』を見れたことに免じて見逃してやる。自らの宿命に感謝するのだな。あのように面白い輩と鎬を削るなど、どの時代にもそうはあるまい」

 

そう言って金髪の青年の姿は消えて行った。

 

「宿命…か。ブラックサン、貴様の命は、必ず私がもらうぞ」

 

ガチャン、ガチャンと足音を立てながら月の世紀王―――シャドームーンはその場から離れて行った……

 

 

 

 

 

 

数時間後、山に迷い込み、倒れたビルゲニアを見つめる影があった。

 

「フフフフフフ…良い駒を見つけたわ」

 

 




倉持さん、新技決まらずに敗退いたしました。彼の運命や如何に

次回は半分くらいの長さになるかな~

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