Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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UA4万突破しました!お気に入りももう少しで300まで届きそうです!みなさん、本当にありがとうございます!!

余談ですが最近、「ウルトラゼロファイト」を視聴。なんでしょう、このウルトラマンらしからぬ少年漫画もビックリな王道展開と守るために戦い、仲間との絆を重ねていくとてもウルトラマンらしさ兼ね合わせた作品は…

どこかをリスペクトしたいと思いつつも自分流で頑張っていきます35話です。


第35話『思い出の場所』

「だいぶ遅くなっちゃったな…」

 

時刻は午後6時を過ぎようとしている頃。買い物に出かけていた間桐光太郎は腕時計を見ながら急ぎ帰宅しいていた。

 

(鍋か…ライダーは初めて食べるみたいだし、喜ぶといいな)

 

買い物袋の中身を確認して本日の夕食に自分のパートナーがどのような反応を示すか密かに楽しみにしながら、光太郎は間桐家の門を潜る。

 

「あれ?」

 

玄関に明かりが燈っていない。今日は慎二も桜もとっくに帰宅しており、光太郎が買い出しをしている間に食事の準備に取り掛かっているはずだ。不思議に思いながらもドアを開けた途端に光太郎の鼻腔を突く異臭が届いた。

 

 

「………まさか」

 

 

この臭いを光太郎は知っていた。幼い頃に、自分を育ててくれた養父が目の前で死んだ時に、浴びたものと全く同じだった。

 

食材の入ったビニール袋を投げ捨て、光太郎は臭いを辿りリビングへと駆けていく。

 

その先には、いつものと変わらず自分の家族が待ってくれている場所だ。

 

何も起きてはいない。

 

起きていてはいけない。

 

そこに入れば、いつも通りに家族が迎えてくれる――――

 

 

 

 

 

必死に自分が抱いた可能性を否定した光太郎が目にしたのは、血の池に横たわっている義弟と義妹の姿だった。

 

 

 

 

 

月の光のみが照らすリビングを光太郎はよろよろ歩く。近付けば近付くほど、もう動くことのない兄妹の姿がはっきりと見えてくる。

 

仰向けに倒れている慎二は何の抵抗も出来ず、一撃で胸を貫かれていた。

 

隣にいる桜は背中を斜めに大きく切り裂かれていた。

 

 

もはや足に力が入らない光太郎はドサっと音を立てて膝を付いてしまう。

 

「う…そだ。どうして、どうして…」

 

震えながら倒れている慎二の頬に触れるが、手のひらに伝わるのはとっくに死後硬直を迎えた冷たさだけだった。

 

「…っ!?ライダー…ライダーはっ!?」

 

この場にはいなかった自分のパートナーを名を呼びながら周囲を探すが、気配はない。その変わりにとてつもない殺気を内包した存在が光太郎の背後に現れた。ゆっくりと振り返る光太郎の目に映ったのは、自分とよく似た姿をしていた。しかし、そんなことは光太郎に取っては2の次であった。

 

 

 

ソイツの手が、命がこと切れたライダーを首を掴みあげていた。

 

 

力なくだらりと手を下げ、小さい口から一筋の血を垂らしているライダーをゴミを捨てるように放り投げたソイツは金属が重なり合うような足音を立てながら光太郎の前へと移動していく。

 

 

「…ブラックサン。次は貴様がこうなるのだ」

 

「……ウワァァアァァァァァァァアァァァァ!!!」

 

声を上げてソイツに飛びかかり、押し倒した光太郎は馬乗りになるとライダーにそうしたように、ソイツの首を絞めつける。

 

「何故だ、何故こんなことをするんだっ!?」

 

涙を流しながら手に力を込める光太郎に、ソイツは冷たく答えた。

 

「なぜだと?」

 

 

 

 

 

「だって、ずるいじゃないか。俺の家族はみんな死んだのに、光太郎は新しい家族と生きている」

「っ!?」

 

 

 

銀色の仮面と装甲に覆われていたソイツの姿は、いつの間にか幼い頃に離ればなれとなった秋月信彦の姿となっていた。

 

信彦の姿を見た途端に手を離して飛び引く光太郎。気が付けば自分も改造人間となる前の少年に戻っているではないか。全く状況が理解できない光太郎を立ち上がった信彦が見下ろしながら口を開いた。

 

「…だから、死んでくれよ光太郎。みんなも待っているから」

 

その手にサタンサーベルを握る信彦の視線は光太郎の左右へと向けられた。恐る恐るその視線を追う光太郎は、頭を抱えて悲鳴を上げてしまう。

 

 

なぜなら、そこにいたのは秋月家にいた頃の家族が血だらけで、身体のあちこちが欠けている姿で転がっていたのだから。

 

 

「あ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ………」

 

「苦しんだまま逝くがいい。ブラックサン」

 

再び目にしてしまった光景に、嗚咽する光太郎に向けて、再び銀色の姿となったソイツは光太郎に向けてサタンサーベルを真っ直ぐ振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ここは?」

 

光太郎がいる場所は間桐家にある自室のベットだった。直前まで眠っていたと考えると、先ほどまで光太郎が体感したことは…

 

「夢…か」

 

安心しきってベットに倒れた光太郎は目を抑えて先程までの夢に現れた存在を思い出す。もう、間違いなく『相手』が現れてしまった。その事実が光太郎の胸を締め付ける。

 

「…もう、戻れないんだ」

 

言い聞かせるようにポツリと呟いた光太郎は再び眠りに落ちて行った。

 

 

 

翌日

 

 

光太郎はリビングのソファーに腰かけている桜を見た。両手で紅茶の入ったカップを持っているが、肩を落としたまま一向に口に付けていないようだ。

 

桜は実姉である凛から昨日に起きた事を聞いた。

 

ビルゲニアを退けたセイバーは自らの宝具を使用した際に膨大な魔力を消費し、現界すら危うい状態となっている。持って、あと数日であると…

 

桜にとってはセイバーは複雑な相手である。聖杯戦争に参加する義兄の敵対するマスターのサーヴァントであり、自分の思い人の一番近くにいる女性。それでも嫌いになれず、寧ろ好感の持てる友人に近い存在だ。

 

このままだとセイバーは消える。

 

事実だけを伝えた姉に何か方法はないのかと尋ねても、凛はただ目を逸らすしかなかった。

 

自分でも言っていることはおかしいとは桜は理解している。義兄の競争相手が戦く必要もなくリタイアになり、衛宮士郎も傷つく必要がなくなる。なのに、どうしてここまで胸が苦しくなり、一番最初に考えた事がセイバーの存在させる手段だったのだろう…

 

「このお人好しが」

「きゃうっ!?」

 

ペチンと桜の頭を叩いた慎二は桜の対面に座る。紅茶を零しそうになった桜は暴挙に出た義兄を涙目で睨むがあまり効果は見られないようだ。

 

「お前が落ち込んでセイバーに魔力が戻るんなら好きなだけ落ち込めよ。本当にそう出来るならな」

「…どうしてそんな意地悪なこと言うんですか?」

「僕は事実を言ってるだけだ。それに…どうにかするのはお前じゃなくて衛宮だろ?」

「え…?」

 

テレビのチャンネルを変えながら知人の名を口にした慎二はキョトンとする桜に、慎二はテレビから目を離さずに続けた。

 

「サーヴァントが消えそうって時にどうするかはマスター次第だろ。そこであの超が付くほどのお人好しのバカは、何もしないで消えるのを眺めてると思ってるのか?」

「そんな事はありません!先輩は…きっとどうにかするために行動してくれるはずです!!」

 

立ち上がり、大声で義兄の質問に答える桜。優しいあの人は悩んでいる。けど、決して諦めずにどうにかするために動くはずだ。力説する桜を一瞥した慎二は軽く溜息を付くと再びチャンネルを変える。

 

「なら、それに期待してるんだね。お前に出来るのは、そこまでだよ」

「兄さん…?」

「…お前に取っては、そういう事が出来る相手なんだろ?衛宮は」

「勿論ですよ…先輩なんですから」

「あっそ…僕にも紅茶入れてくれ」

「…はい!」

 

ようやく笑った桜はキッチンへと向かって行った。入れ替わるようにリビングに入った光太郎は不器用にも程がある義兄の励ましに賛美を送る。

 

「流石だね。俺にはああいうのは出来ないなぁ」

「…衛宮の名前使っただけだ。単純だよほんと…」

 

顔を向けずにうんざりと答える義弟の答えにクスリと笑った光太郎は洋服掛けにあるジャンパーを手に取り、玄関へと向かおうとした。

 

「出かけるのか?」

「ちょっと用事があってね。そうだ!今日は外食にしようよ。俺のおごりで!!」

「…100円寿司意外なら考えてやるよ」

 

ハードルを上げた義弟のリクエストに了解しつつも、光太郎はリビングを後にした。その姿を見送った慎二はニュース番組の見出しを口にした。

 

「連続ガス漏れ事件…か」

 

 

 

 

 

ガレージでバトルホッパーとロードセクターにそれぞれ挨拶を終えた光太郎は日中の移動手段と使っているバイクに搭乗する。すると、バイク後部に誰かが乗ったのような揺れを感じた。

振り向くと、ヘルメットを被った自分のサーヴァントがバイクの後部に座っていた。

 

「ライダー?どうして…」

 

ヘルメットのバイザーを上げて尋ねる光太郎に、ライダーは静かに答える。

 

「…今の貴方を1人に出来ない。と、いう理由では駄目ですか?」

「…ライダーも、見たのか」

「はい…ですから、これから光太郎が向かう場所の見当もついています」

「…わかった」

 

どうやら光太郎が見た悪夢をライダーと共有してしまったらしい。光太郎はこれ以上たずねることなく、ライダーが自分の腰に手を回した事を確認してバイクを発進させた。

 

 

 

 

高速道路を利用してバイクを走らせること数時間。

 

光太郎とライダーが到着したのは、とある山の麓だった。バイクを付近の設備に駐車し、山をロープウェイである程度の高さまで移動すると整備された山道から外れ、茂みの中へと進んで行く。

その道は不思議と何の障害もなく人が通れるようになっており、初めて歩くライダーも途中で道に躓くこともなかった。

 

「コウタロウ…この奥が」

「ああ…思い出の場所、だよ。そして、父さん達が眠っている」

 

光太郎達が目指しているのは、彼がまだ秋月の姓を名乗っている時に家族で訪れていた山の穴場である丘だ。他の誰にも発見された様子もなく、そこから見る景色は四季折々が楽しめる秋月家しか知らない秘密の場所であったのだ。

 

家族を失った光太郎はその丘に簡素ではあるが死んだ養父の遺体と手首だけとなってしまった養母と義妹を埋葬していた。

 

夢で自分を殺した相手…その墓にはいない親友と避けられない戦いが起きる事を家族に話しておきたかった。感傷に浸っているに過ぎないと自覚しながらも光太郎はここに来てしまった。

それが、より自分を苦しめる事と知りつつも…

 

沈んだ気持ちで道を進む光太郎の手を、ライダーは優しく握った。

 

「ライダー…?」

「私のマスターは、随分とさびしがり屋見たいですから…いけませんか?」

「…ありがとう」

 

ライダーに感謝しつつ、光太郎は手を握り返す。そのまま無言で歩き続ける光太郎とライダーは茂みを抜け、目的地である丘へとたどり着く。

 

景色全体が見渡せる位置に子供の頭ほどある石が3つ並んでいる。そこが秋月家の墓石となっている。

 

 

光太郎から事前に話を聞いていたライダーは、その丘には墓石しかないと思っていた。だから、自分達より先に到着していた者がいたとは想定外にも程があった。

 

 

 

 

家族の墓の前に立つ者の姿を見た光太郎に衝撃が走った。まさに、夢で見たそのままの存在が立っていたのだから。

 

 

 

 

「宿命か…」

 

 

今まで墓へと目を向けていたソイツは光太郎達の気配に気づき、ゆっくりと振り返る。

 

 

「あのサーヴァントの言う事も、馬鹿に出来ないという事か…」

 

 

光太郎の変身する姿に反し、全身を機械のような装甲で纏い、腹部に月のキングストーンを宿すエナジーリアクター。

 

 

「そうだろう…ブラックサンよ」

 

 

 

世紀王シャドームーンが,そこにいた。




前回のあとがきで書いた通りに本当に半分ほどになっております。

豆腐メンタルとなりつつある光太郎に現れてしまった世紀王。さて、対決なるか…

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