Fate/Double Rider   作:ヨーヨー

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SHTが両方いいとこで止まっているので次週までの生殺しが辛い…

さてようやく3話でございます。


第3話『蜘蛛の怪人』

新都へと繋ぐ鉄橋を光太郎が運転するバイクが駆ける。先を走行する車を次々と追い抜き、

白バイにいつ呼び止れてもおかしくない速度を出している。一刻も早く、衛宮士郎を見つけるために…

 

「ッ・・・、・・・、・・・」

 

(ん?慎二君どうしたんだ?)

 

さらにスピードを上げようとした光太郎だったが、背後に乗る義弟の慎二に背中を

叩かれていたことに気付き、前を見ながら声をかける。

 

「どうかしたかい!」

「どうも…こうもな…いぃぃぃ!?」

 

大声で尋ねたが返事も弱々しい。どころかビクビクしていうことにようやく気付いた。

どうやらバイクのスピードが堪えているらしい。

 

「ここで止まるわけにはいかないから、もう少し我慢してくれよ!」

「ちょ…ッ!?」

 

慎二の答えをまたず、光太郎はさらにグリップを回す。新都へは今までの最短記録で到着することができたが、限界を迎えた慎二の回復に暫く時間を有することになってしまった。

 

 

 

 

頭上の存在が何であるのか、士郎は理解できなかった。いや、自分の知っている生物に形状は近いことは確認できる。問題はその体躯。士郎の知る生物は見た事あるもので精々数センチだ。しかし目にしている存在とは数メートル離れているが、恐らく自分より一回り上回っているだろう。

 

 

養父より『魔術』に関しての教えを受け、士郎は少なからず世界の理から外れた側に属しているつもりになっていた。

しかし、自分を見下ろすあの姿にその価値観はあくまで「人間」での場合と思い知らされる。

 

士郎は本日学校で散々その噂を耳にし,この新都まで足を運び探し当て…遭遇した存在の名前を口にする。

 

「蜘蛛の…怪…人」

 

言うと同時だった。ビル間に張った巨大な蜘蛛の巣から飛び降り、士郎の3メートル手前にクモ怪人が着地する。

その姿は人間に近い形をしながら、基となった蜘蛛と同じように黄・黒の模様、いくつもの赤い複眼、左右対称の脚を持っていた。

 

「クッ…!」

 

所持していた竹刀袋から木刀を取り出し、クモ怪人に向けて正眼に構える士郎。同時に成功するかも分からない、魔術を施すために自分の『スイッチ』を入れる。

 

「―――同調、開始」

 

日課として鍛錬を積んでいる対象の構造を把握し、魔力を通し補強することで強度を向上させる『強化』。自身の魔力を木刀に通し、硬度の底上げを試みる。鍛錬ではほとんどが成功しなっかったが…

 

「ッ!?うまく…いった!?」

 

成功したことに士郎自身が驚いた。強化した木刀を強く握る。気が付けば、怪人はゆっくりと士郎に近付いてきた。

正直、手にしている木刀が通用するとは思えない。が、今の士郎には今以上の武器はない。さらに距離を縮める怪人に士郎は仕掛けた。

 

先手必勝。

 

振りかぶった木刀を怪人の肩に目掛けて、全力で叩き付ける―――つもりでいた。

 

 

「なッ!?」

 

木刀を振り上げたまま士郎は固まる。躊躇しているつもりも、目の前の怪人に情けをかけるつもりは毛頭ない。しかし、自分の持つ木刀が固定されているかのように動かせない。戸惑う士郎は自分の得物を見上げると、木刀の先端を何者かに掴まれていた。

 

「そ、んな」

 

自分でも間抜けと思える声を発する。木刀を掴む。いや、摘まんでいるソイツは目の前にいる怪人と全く同じ姿をしていた。

 

(…2体いたのか!?)

 

 

現れた2体目のクモ怪人に動揺した士郎は、自身の目の前まで接近した1体目への警戒を怠ってしまった。

 

「ぐッ!?」

 

襟を掴まれ、吊し上げられた士郎は思わず木刀を手放してしまう。振りほどこうと怪人の腕を掴む。掌に伝わる体毛の嫌な感触など構わず力をいれるがビクともしない。

 

「こ、のぉッ!!」

 

吊るされたままの状態からクモ怪人の頭部目掛けて蹴りを叩き付ける。しかし、帰ってくるのは鈍い音と自身の足に返るダメージだけであった。

その反撃に怒りを覚えたクモ怪人は士郎を放り投げる。受け身を取れない士郎は背中からアスファルトに叩き付けれた。

 

 

「ッ……!?」

 

背中に走る激痛に耐えながら、士郎はクモ怪人たちへ目を向けるが、さらなる絶望を抱くことになった。

 

 

さらに新たなクモ怪人が姿を現したのだ。

 

 

これで合計5体。先頭のクモ怪人は立ち上がろうとする士郎目掛け、口から糸を吐き出す。その糸は士郎の首に巻き付きくと、音を立てて絞めつけはじめた。重症を負った女子生徒も、同じ目にあったのだろう。

 

 

「ガ…ハァッ……」

 

必死に巻き付いた糸を掴むが、先程のダメージもあり力が入らない。

 

 

(こんな所で終わるの…か?爺さんと約束した…『正義の味方』になれないまま…)

 

死んだ養父との約束。それを実践するために士郎は今まで鍛えてきたが目の前の存在に何の効力を成し得なかった。

さらに首を絞める力が強まる。もう目の前にいるクモ怪人たちも霞んで見え、ハッキリとするのは耳に入る音だけだった。

 

自分の首を圧し折ろうとする音。

 

そして段々と大きくなる『なにかが走行する音』

 

 

 

「ギぃッ!?」

 

初めて声を発したクモ怪人も同様に自分たちへ近づく音の方向へ振り向く。一台のバイクが減速することなく、こちらに突っ込んできた。

 

「オオオォォォッ!!」

 

バイクは士郎の首を絞めつけているクモ怪人に狙いを定め、その背中にバイクごと体当たりを仕掛けた。

 

「ギヤァッ!!?」

 

二転三転と転がるクモ怪人。絞めつけていた糸が緩み、せき込みながら士郎は先程のバイクと同じ方向から自分に駆け寄る顔見知りの姿に驚愕した。

 

「し、慎二!?お前こんな所で何やってるんだよ!」

「それはこっちのセリフだよ!バカだと普段から思っていたけど本物のバカだなお前は!」

 

手に持ったナイフで慎重に士郎の首に巻き付いている糸を切り裂きながら、慎二は罵声を浴びせる。

 

「衛宮君!無事かい!?」

「え?光太郎…さん?」

 

さらに士郎にとって以外な人物が近づく。ヘルメットを片手に掴んだ光太郎が自分と慎二を庇うようにクモ怪人たちと対峙したのだ。

 

「……慎二君。衛宮君を連れて遠くへ」

「分かってるよ」

 

躊躇もせずに光太郎に従う慎二は今でも自力では立ち上がれない士郎に肩を貸した。

 

「光太郎さんッ!こいつらは…」

 

危険だと言おうとした士郎だったが、光太郎は振り向かずに手で制する。

 

 

 

心配は無用だと、言わんばかりに

 

 

それと同時に5体のクモ怪人が一斉に光太郎へと襲いかかった。1体目が振り下ろす爪を回避しつつ、靴底を腹部に勢い良く当て距離を取るが近くにいた2体の腕が光太郎に迫る。前方へ転がりながら危機を脱するが、クモ怪人の攻撃は休まらない。

立ち膝を着いた光太郎は背後から近づいたクモ怪人は羽交い絞めにされてしまう。

 

「しまった!」

 

身動きが取れない光太郎目掛け、1体のクモ怪人が頭を突き出して突進してくる。自分たちがやられたように、体当たりで仕返しするつもりなのだ。

 

クモ怪人の頭部が当たる寸前、羽交い絞めしていた別個体は上空へと逃れる。体当たりを受けた光太郎は受けきることが出来ず吹き飛ばされてしまった。

 

「うわあぁぁぁ!?」

 

ビルの外壁に衝突した光太郎。しかしその衝撃はそれだけに留まらず、ビルの外壁に突き抜けて大穴を開けてしまった。

 

 

「ウソだろ…」

 

目の前の光景が信じられない士郎の声は震えていた。外壁に穴が開くほどの衝撃を受けのなら…光太郎は。

 

「衛宮、さっさと歩け!ここから離れるんだよ!」

「なッ――」

 

何を言っているんだこいつは。家族が、兄弟があんな目に合っているというのに。士郎は自身へのダメージを忘れ、慎二の胸倉を掴む。

 

「慎二!?お前自分が何を言ってるのか分かってるのか!!」

「はぁ?衛宮にそんなことを言われなくても十分分かってるよ!」

 

手を振りほどいた慎二は未だフラつく士郎の腕を無理矢理自分の肩に回すと強引に歩き始めた。

 

「離せ慎二!あのままじゃ光太郎さんが…!」

「あいつが言ってただろ!ここから離れろって!それにこのままだと、あの化け物たちは――」

 

慎二が言わんとすることが分かる。光太郎を排除したクモ怪人たちは、士郎たちに狙いを定めた。

 

 

 

「待て」

 

 

外壁の穴から聞こえる低く、腹の底に響くような声。声の主は衣服を汚しながらも身体には傷一つなくその姿を現した。

 

「え…?」

 

士郎は穴から出てきた光太郎を見た。普段からは考えられない気迫を発し、クモ怪人達を睨み付けている。

 

気難しい弟と優しい妹を常に優しい目で見守っている。それが士郎が抱く光太郎の人物像だ。あそこに立っているのは自分の知る間桐光太郎なのか?

いや、それ以前に壁が突き抜けるほどの衝撃を受けて五体満足でいられるなんて、彼は『人間』なのか?

士郎の疑問は、同時に先ほどの慎二の言ったことが、『兄を見捨てる』ことではなく、『自分の役割』を全うしようとしたことと知ることになった。

 

 

 

 

 

警戒を強めるクモ怪人達に対し、光太郎は自分自身を変えるための『スイッチ』を入れる。

 

 

 

 

 

 

左腕を腰に添え、右腕を前に出した構えから両腕を大きく右側へ振るい、右半身に重心を置くと右頬の前で両拳を握る。

 

拳からギリギリと軋む音が響き、その溜めた力を解き放つように右腕を左下へ突出し、素早く腰へ添えると入替えるように左腕を右上へと突き出した。

 

 

「変ッ――――」

 

 

伸ばした左腕で扇を描くように、右から左へ旋回し―――

 

 

「――――身ッ!!」

 

 

叫びと共に両腕を右上に伸ばした。

 

 

光太郎の腹部が赤く発光すると、銀色のベルトが出現。ベルトの中央から放たれる光は光太郎を包み、彼の姿をバッタ怪人へと変貌させる。

 

だがそれも一瞬。

 

ベルトの光はバッタ怪人を強化皮膚「リプラスフォース」で包み、さらに姿を変えていく。

 

 

虫の触覚を思わせる2本のアンテナ、一対の赤い複眼、そして漆黒の身体。

 

「トァッ!!」

 

完全に姿を変えた光太郎は跳躍し、慎二たちとクモ怪人の間に着地する。

 

姿を変えた力の余剰エネルギーが蒸気となって関節部からユラユラと立ち昇る。

 

それを振り払うように、腕を振るうと光太郎は変身した姿の名乗り上げた。

 

 

 

「仮面ライダー…ブラァックッ!!」




士郎のリアクションばっかりでしたな。そして…あの煙は独自解釈でございます。設定があったのなら申し訳ありません。

感想おまちしております。

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